少女隠線【完結】   作:畑渚

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応急処置

 「とりあえず銃をおろしてくれないかしら?」

 

 ジョンは9の隣にG11がいることを見て銃をホルスターにしまった。おそらく目の前の少女が404小隊の最後の一人、HK416であることを確信したからだ。

 

 しかし、9は銃を構えたままだった。

 

 「あなたが無抵抗の人形に銃を向ける趣味があったなんて知らないんだけど?」

 

 「無抵抗?笑わせないでよね。416ならその状態からでもすぐに指揮官を撃てるでしょ?」

 

 「指揮官……?ああ、この男のこと?」

 

 416はジョンの方を向いた。

 

 「まさか9が男とかけおちするために小隊を抜けたなんてね……」

 

 「違うぞ」

 

 「知ってるわよ」

 

 ジョンの言葉に416はあきれたようにそう返す。

 

 「あらかた小隊を抜けた9があなたに拾われたって判定になったんでしょ?」

 

 「そういうことみたいだな」

 

 「ただ一つわからないことがあるわ」

 

 「なんだ?」

 

 416はジョンを指差す。

 

 「なんで指揮官権限のあるようなやつが戦場にいるわけ?戦場にでるのは戦術人形とほんの少しの人間、指揮官になるような高い階級の人はいるはずがないわ」

 

 「俺はもともと指揮官じゃないぞ」

 

 416は困惑の表情を浮かべる。

 

 「ちょっと待ってどういうこと?わけがわからないわ」

 

 「そうだよな。でも俺、ただのヘリパイロットなんだ」

 

 「嘘よ!ヘリパイロットなんて下っ端の下っ端じゃない!整備兵並かそれ以下よ!?そんな階級が指揮官権限なんて持ってるはずがないじゃない。」

 

 「まあそうわめくな。話は後にしないか?ここだと鉄血兵が集まってくるかもしれん」

 

 「……分かったわ」

 

 416は銃をおろして、杖代わりの枝を拾った。

 

 「足がやられたのか?」

 

 「ええ、墜落したときにね」

 

 「ちょっと見せてみろ」

 

 そういって416に近づくと、足を触りだす。

 

 「ちょっと何してんのよ!」

 

 「骨格はなんとかなりそうだが回路までダメージをうけてそうだな。まったく動かないみたいだ」

 

 「そんなベタベタさわらないで!」

 

 416は言葉では拒んでいるが、身体は動かせない。この状態で動けばバランスを崩して倒れるからだ。

 

 「とりあえず我慢してくれ」

 

 そういってジョンは416の腕を引く。そのままよいしょと416の身体を自分の肩の上にのせた。いわゆるファイヤーマンズキャリーとよばれる持ち方である。

 

 「9、もしかして嫉妬してる?」

 

 「G11のくせに生意気」

 

 「ほっぺを引っ張らないで~」

 

 

 =*=*=*=*=

 

 

 四人は街へと戻った。森の中で接敵すると、戦いが長期的に成りがちで逃げづらいからだ。

 

 「これで少しはましだろ」

 

 「あ、ありがとう」

 

 416の足には森でとってきた枝がくくりつけてある。足が遅いままなのは変わりないが、松葉杖を持つ必要がなくなり両手がつかえるようになっていた。

 

 その間G11は自身の銃の清掃を、9はせっせと街から物資を集めてきていた。

 

 「あなたヘリパイロットって嘘でしょ?人形の修理ができるパイロットなんてきいたことないわよ」

 

 「修理ってほどじゃないさ。それこそ応急処置だ。こういうときばっかしは人間と似てる構造でたすかるよ」

 

 「人間と……ね」

 

 416は自分の足を見た。少女の見た目としては素晴らしい造形である。しかし、それは戦いに向いてるとは思えなかった。

 

 「私たちはなんでこんなにも人間に似せて作られたのかしら……」

 

 「さあな。研究者の考えることはわからん」

 

 「案外、研究者が変態だっただけかもよ~?」

 

 G11はにやりと笑みを浮かべながらそう口を挟んだ。

 

 「そういえばおまえらは特殊部隊だったっけか?」

 

 「まあそうね。そんなところよ」

 

 「じゃあ存在を知った俺はどうなるんだ?」

 

 「……消されはしないわ。多分ね」

 

 「多分じゃ困るんだが」

 

 ジョンは道具を片付けながら苦笑する。

 

 「ただいま指揮官!」

 

 「9おかえり。どうだった?」

 

 「いい知らせと悪い知らせの2つがあるんだけど、どっちから聞きたい?」

 

 ジョンは少し悩むそぶりを見せた。

 

 「じゃあ良い方からで~」

 

 その隙にG11が答えてしまった。

 

 「じゃあ良い方はね、じゃ~んこんなにあったよ」

 

 そういって9はバッグからいろいろと取り出す。そこにはジョンの想像以上のものがあった。

 

 「じゃあ悪い方は?」

 

 「鉄血兵が近づいてくるみたい。小隊二つ分くらいかな」

 

 9の言葉に息をのむ。こっちの戦力はといえば、戦術人形が三体で、かつ一体は銃をダメに、もう一体は身体に大きな損傷、そして最後にソフトウェアの方にいつ異常がでてもおかしくないと満身創痍である。

 

 「手数が圧倒的に足りないわ。どうするの?」

 

 416の言葉にジョンは肩をすくめた。

 

 「どうするも何も、戦うしかないだろ」

 

 ジョンは立ち上がり、G11と416の方へと向き直る。

 

 「G11には偵察、416は火力担当ってとこか。二人はまだ通信ができるんだよな?」

 

 「うん、問題ないよ」

 

 「よし、じゃあG11はあそこのビルだ。できるだけ高く登れ」

 

 「えっ嘘……あのビルって高すぎるよ。階段のぼるのだるい」

 

 「泣き言を言わないの!それで、私はどうすればいいのかしら?」

 

 「416はあそこだ」

 

 そういってジョンが指を差したのは道のど真ん中だ。

 

 「……私に死ねと?」

 

 「勝手に死ぬな。弾は9がとってきてくれたのを使え。銃は無理でも弾なら民生品を使えるはずだ」

 

 そういって9のバッグから出てきた弾を416へと押し付ける。

 

 「それで、私と指揮官は?」

 

 「俺たちはこれだ」

 

 そういってジョンは酒瓶を手にとった。

 




V●ct●r「……」
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