少女隠線【完結】   作:畑渚

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本気になったG11は絶対かっこいい。異論は認めない。





 ジョンは焦げ臭い匂いを感じて目を開く。眼の前には朽ちた天井があるだけだ。しばらく辺りを見回して、ようやく自分が倒れていることに気がつく。

 

 「……!戦闘は!」

 

 建物の外からはまだ銃撃音が聞こえている。少なくとも416かG11のどちらかは無事のようだ。

 

 勢いよく起き上がろうとして、視界にそれが入る。

 

 それとは人の足だ。

 

 しかし、それには様々な破片が突き刺さっている。ひと目見てそれが重症であることがわかる。

 

 

 

 

 そしてそれが自分の足であることに気がつくのに、それほど時間はかからなかった。

 

 「まじかよ……痛みがないだけましか」

 

 ジョンは負傷した左足を手で触る。それからは痛みどころか感触すら感じられなかった。

 

 「起きたの?」

 

 窓から飛ぶようにして入ってきたのはG11だった。その肩には脱力した9が乗っかっていた。

 

 「9?いったい何が?」

 

 「覚えてないの?はぁめんどくさい」

 

 そういいながらもG11はジョンの質問に答える。

 ジョンは敵の手榴弾で意識を失い、それを見て死んだと勘違いした9が我を忘れて敵軍へと突撃していったらしい。

 

 「まったく回収する方にもなってほしいなぁ。……416?わかったすぐ行く」

 

 416から通信が入ったG11は9を抱えるために後ろに回していた銃を構え直す。

 

 「9はとりあえず頼んだからね」

 

 ジョンが言葉を返す間もなく、G11は再び外へと飛び出していった。

 

 「くそがっ!」

 

 ジョンはなんとか動く右足と両腕でバッグまで這っていく。膝や腕が擦れて血が滲み始めるが、それを気にする様子はない。

 

 なんとかバッグまでたどり着き、ファスナーを開ける。中から端末を取り出したジョンは再び這って9の元まで戻る。

 

 「待ってろ。すぐに直してやるからな」

 

 ジョンは9の首元に触る。そしてパネルをはずし、コードを差し込んだ。

 端末の作動音は銃声にかき消えていく。エディタが立ち上がり、読み込みが終了する。

 

 「なんだ……こりゃ……」

 

 9のシステムはさらに複雑化していた。まるで何かが上書きしていったかのように、プログラムが荒らされているとジョンは感じた。

 

 ジョンはとりあえず起動することを優先で書き直していく。しかし、書くたびに何かが上書きしていく。

 

 「くそっまたダメか!いったい何が……」

 

 そう叫びながら書き換えられていくプログラムを見ていると、その規則性に気がついた。ジョンはもしやと思い、ある一部を書き換える。

 

 「……できた。書き換えも行われてない!」

 

 ジョンは同じ要領で他の部分も書き換えていく。

 

 ふと、9のシステムを書き換えるのはこれで何度目かと考えた。

 

 9との不思議な出会いをジョンは思い出す。あそこで救われていなければ、彼は今物言わぬ屍だっただろう。そして9も、彼に出会っていなければいつシステムの異常が原因で死んだかわからない。

 

 「さあ寝てる暇はないぞ!」

 

 ジョンは起動コマンドをたたき込んだ。

 

 

 ゆっくりと、実にゆっくりと9の左目が開いていく。

 

 「あれ……指揮官?」

 

 「9、起きろ!まだ戦闘は続いてるぞ!」

 

 「良かった指揮官!生きてたんだね!」

 

 9は勢いよく起き上がり、指揮官に飛びかかる。

 

 「よかった……生きててよかった――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――あれっ?」

 

 9は首をかしげる。

 

 自分はどうして指揮官を押し倒しているのだろう?どうして指揮官の腕を足で押さえつけているのだろう?

 

 

 

 

 どうして、指揮官の首を、絞めているのだろう?

 

 「ちがう!こんなの!」

 

 9は否定するが、手に入る力は強くなっていく。

 

 「お願い!指揮官!私を止めて!」

 

 それが無理な願いであることに9は気がついている。ジョンが9を止める手段だった薬は、すでに手元に残っていない。

 

 「……9、本当に良いんだな!?」

 

 ジョンはかすれた声でそう言った。

 9はその言葉に、涙を浮かべながらうなずいた。

 

 ジョンが突然、数字を読み上げていく。9のシステムはその規則性を確かめるべく、自動でその数列を解析し始めた。

 

 そして、その解析は途中で強制的に終了され、9のシステムは沈黙した。

 薄れゆく意識の中で、9は自分を構成する何かが壊れていく気がした。

 

 

 =*=*=*=*=

 

 

 「ゲホッゲホッ」

 

 ジョンは何度か咳き込むと、自分の上で動かなくなった9を押しのける。

 全く動かなくなった9を見て複雑な気持ちになりながら、窓の外へと目を向けた。

 

 その瞬間、窓を破って何かが投げ込まれてきた。それにジョンは見覚えがあった。自分が意識を失う前に見た光景と同じである。

 

 「また手榴弾かよ!」

 

 ジョンは腕で頭をかばう。しかし、この軌道ではまた直撃してしまう。

 

 無慈悲にも爆発音がジョンの鼓膜を震わせ、顔を爆風がなでる。

 

 

 

 

 しかし、いつまでたっても痛みはこなかった。

 

 「まったく、手がかかるわね」

 

 ジョンをかばった人影は、そう言ってフードを脱いだ。

 





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