少女隠線【完結】   作:畑渚

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さいご

 「45!どうしてここに!?」

 

 「ふふふ、会いたかったわ。なんてね」

 

 そう言いながら、45は銃を落とした。

 

 「……流石に無傷とはいかないわね」

 

 そう言う45の右腕は、今にも千切れそうなくらいの損傷を負っていた。

 

 「おい大丈夫か!?」

 

 「このくらい……どうってこと……」

 

 45の顔が歪む。それはまるで人間が痛みをこらえているときのようだった。

 

 「痛むのか?」

 

 「ええ、少しね……」

 

 45は膝から崩れ落ちる。明らかに異常である。

 

 「どうした?たかが腕一本だろ!」

 

 腕が吹っ飛ぶことなど、人形にとっては日常茶飯事だ。だから、損傷したときの痛みのフィードバックは、それほど高く設定されていない。

 

 「ええ、そうね。たかが一本ね……でもこれは少し……」

 

 45の言葉が続かなくなってくる。ついには、痛みに耐えかねてうめき声をあげはじめた。

 

 「痛覚フィードバックの……異常のようね……お願い、私のポケットに……」

 

 「ああ、わかった」

 

 ジョンは45に近づき、ポケットを探る。そこには注射器が入っていた。45は注射器をもったジョンの手に自分の手を重ねた。

 

 「最期に……私はどうなってもいいから9を……直して。……あと9にごめんって……」

 

 「ばかやろう。俺は記憶力に自信はないぞ?」

 

 「……ふふっ。じゃあ自分で言わなくっちゃね……」

 

 「ああそうだ。二人とも助かるんだ。だから今は仲良くお昼寝してろ」

 

 そう言ってジョンは注射器をさした。

 

 「ありがとう」

 

 45は最後にそう言って、目をつむった。

 

 

 

 

 「45、ありがたく使わせてもらうぞ」

 

 そう呟きながらジョンは、9の隣で眠る45に目を向けた。

 ジョンの足には、45がつけていた外骨格が付いている。あまり正確に調整する時間はなかったが、移動するだけなら問題ない程度には動いてくれる。

 

 「ラストスパートだ!」

 

 ジョンは火炎瓶と45の銃を持って、再び戦場へと駆け出した。

 

 

 =*=*=*=*=

 

 

 戦場は泥沼と化していた。416のいるバリケードは、事前の強化が上手くいってまだもちこたえていた。中にいる416もほとんど被弾していない。G11の二丁持ちによる奇襲も、確実に鉄血兵の数を減らしていた。

 

 「416~、もう弾が残り少ないよ~」

 

 「自分でなんとかしなさいよ!私だって精一杯やってるの!」

 

 「おこらないでよぉ」

 

 そういいながらG11はマガジンに予備の弾を込めていく。そして半分を416の手の届く範囲に置き、もう半分をポケットに無造作に突っ込んだ。

 

 「じゃあいってきま~す」

 

 「頼んだわよ!」

 

 G11はバリケードから飛び出してビルの中へと入ろうとする。しかし、その足元に被弾しかけて思わず躓いた。

 

 「あっしまった」

 

 「G11!」

 

 転んでしまって無防備なG11に、容赦なく鉄血兵の銃口が向けられる。

 

 「ばんじきゅーすか」

 

 G11はせめてもの餞別とマガジンを手でつかみ、416の方へと投げようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まだ諦めるにははやいぞ」

 

 突然上から何かが飛んでいき、鉄血兵とG11との間に炎の壁ができる。鉄血兵たちは突然現れた炎を見て一瞬判断が遅れた。

 

 G11はその一瞬を見逃さない。すぐに体勢を立て直し、牽制のために数体に致命傷を与えながらビルの中へと身を隠した。

 

 「ありがとう、助かったよぉ」

 

 「礼は後だ。まずは目の前の敵だ」

 

 「そうだね。416~作戦を練るからちょっと一人で相手してて~」

 

 「はあ!?えっちょっ」

 

 「416ならできるでしょ~?」

 

 「あ、あったりまえじゃない!……できるかな……」

 

 「よっ!HK416!世界一!」

 

 「あんたら後で覚えておきなさいよ!」

 

 そう言いながらも416は引き受けた。その間に素早く作戦を立てていく。

 

 

 

 

 「よし!じゃあ頼んだぞ!」

 

 「まかされた。416~お願いね~?」

 

 「えっ内容聞いてるわけないじゃないおしえなさいよ!」

 

 「大丈夫だよ。416の役割は変わらないから~」

 

 「そういうことじゃないでしょ!」

 

 そう言いながら416はフルオートでマガジンを使い切るまで引き金をひいた。

 

 

 =*=*=*=*=

 

 

 「G11、残弾数は?」

 

 「あとこれくらい」

 

 そういって指を数本立てる。おそらく416はその半分くらいだろう。早くしなければ416がただの案山子になってしまう。

 

 「そろそろ仕掛けるぞ」

 

 「りょ~か~い」

 

 そう言ってG11は道路へと飛び出した。両手に持っているのはUMP9とUMP45である。

 両方ともSMGにしたG11は驚くほど素早く敵の間を縫って移動していく。SMGではダメージは低く、倒れることはない。しかし、注意は引くことができた。無防備になった背後に、火炎瓶が投げ込まれる。

 

 「よし撃てぇ!」

 

 ジョンの声とともに、三方向からの銃声が鉄血兵を襲う。ジョンは久々に撃つアサルトライフルの反動を必死に抑えながら、なんとか数体に致命傷を与える。

 

 鉄血兵たちはたまらずに物陰に身を隠した。それは木箱やドラム缶など脆いものであったが、射線上に身を置くには幾分かましに見えたのだ。

 

 

 しかし、その木箱やドラム缶は、ジョンや9が設置したものだ。

 

 一体の鉄血兵は、穴の空いた木箱から何かが漏れていることに気がつく。それと、周りを囲んでいる火とを見て、すぐにそれが可燃性の液体である可能性を考えた。

 

 

 気がついたときにはすでに遅く、すぐに足元から全身が火に包まれた。

 

 「もう弾が切れるわ!」

 

 「こっちももうないよ~!」

 

 「くそっあと少しだってのに!」

 

 しかしそう上手くは行かない。炎というのはそう簡単に制御できないのだ。炎自体で行動不能にできる鉄血兵の数は意外と少ない。

 ジョンは考えを巡らす。が、さすがにもう思いつかない。屋外では質量による攻撃はかわされやすく、事前に準備もしていない。炎で足止めすることだけしか、準備できていないのだ。そしてこちらは足に怪我を負っているのが一人と一体、それに加え行動不能が二体である。撤退も難しい。

 

 

 

 

 

 

 そんなときだった。

 

 

 何か大きな音が遠くから響いてくる。それは銃撃音のようでもあったが、それにしては音が大きく、しかも近づいてくるスピードも早かった。

 

 「ちょっと!何よアレ!」

 

 416はジョンの後方へと指をさす。それにつられてジョンも振り返ると、ヘリコプターの郡があった。四方を武装ヘリに囲まれた輸送ヘリである。

 

 「あの型は最新式の……!G&Kの援軍だ!」

 

 ジョンはG11へと目配せする。G11は分かってくれたようで、すぐに416の方へと走り出す。それを見て、ジョンは9と45を置いてきた建物へと走った。

 

 

 ヘリ部隊が通りを制圧射撃していく。その機関砲に捉えられた者はすべて粉々に粉砕されていく。

 

 「あっ……あっぶねえ」

 

 息を整えながらジョンはほっと一息をつく。

 

 「安心してる暇はないみたいだよぉ」

 

 G11は担いできた416を下ろすと銃に手をかける。鉄血兵の方も炎の壁を通り抜けてビルへと避難してきた者がいるらしい。

 

 「あの部屋で立てこもるぞ」

 

 「りょ~かい」

 

 G11は数発撃って鉄血兵を牽制し、416を引きずりながら後退していく。ジョンはその間に部屋へと入り、クリアリングをする。どうやら敵はいないようだ。

 

 部屋の中の物を障害物にして、入り口を警戒する。

 

 

 少しの間、銃撃が止んだ。戦場を静寂が支配する。

 

 

 

 パリンと背後からガラスの割れる音がした。それと同時に、4体の人形が部屋へと入ってくる。ジョンに最も近くに突入してきた人形はすぐさま銃口を向け――

 

 

 

 

 「人間……ですか?」

 

 ――目を見開いて固まってしまった。

 

 「M4!敵はそいつじゃない!」

 

 少し離れたところへと突入した人形が、そう怒鳴る。M4と呼ばれた人形はそれで我を取り戻したのか、入り口へと銃口を向けた。

 

 「M4……AR小隊か?」

 

 「はい。そのとおりです」

 

 M4は目線をそらさぬまま答えた。

 

 「なんで最前線で戦う人形がここへ?」

 

 「助けに来ました。ペルシカさんから依頼されたので」

 

 「ペルシカが誰なのかは知らないが助かった。感謝する」

 

 「……仕事ですから」

 

 それだけ言うと、M4は入り口から外へと出ていってしまった。しばらく銃撃音が響いた後、再び場に静寂が訪れる。

 

 「どうやら……助かったようだな」

 

 ジョンは大の字になると、目をつむった。

 





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