少女隠線【完結】   作:畑渚

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404小隊

 「どうして9と一緒に行動してるの?」

 

 銃を突きつけてきている少女はそう静かに言葉を発した。

 

 「あ、あいつは今致命的なエラーが発生している。俺はそれを直すために――」

 

 「ふーん、そう」

 

 少女はジョンの言葉を遮る。

 

 「でも、もう一緒にいる意味はないよね?端末、置いてきちゃったんでしょ?」

 

 その言葉にジョンは自分たちの荷物を洞窟に残してきたことに気がつく。大半の食料や端末、銃弾の予備も置いてきてしまった。

 

 「ふわぁ。私、もう寝たいし……おやすみ」

 

 少女が指に力を入れていくのがスローモーションで見える。咄嗟に銃を右手で掴み銃口をそらそうとするが、びくともしない。人形と生身とでは力の差がありすぎるのだ。

 

 万事休す……か

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ごめん!G11!」

 

 少女の目が驚愕に染まる。全く気配を感じさせることなく近づいてきた9は、緊急停止用の薬剤をG11に打ち込んだ。

 

 「お前いつの間に盗ったんだ!?」

 

 「そんなことはいいから指揮官!早く逃げるよ!」

 

 二人は工場の出口を目指す。ジョンは途中の部屋に端末が置かれていることに気がつくが、足を止めるわけにはいかなかった。

 

 「指揮官、手は大丈夫?」

 

 「駄目だ!出血が止まらん!」

 

 「しょうがないか、ここで治療していこう!」

 

 そういって9はポーチからガーゼと包帯を取り出す。データとして処置の仕方もインプットされているのだろう、手際が良い。

 

 「とりあえず止血はこれでできたはずだから……指揮官?」

 

 「ああ、すまん。ぼーっとしていた」

 

 

 もう一緒にいる意味はないよね?

 

 

 G11の言葉がジョンの脳内をかすめた。

 

 「なあ、ここで別れないか?」

 

 「なにを言ってるの指揮官!?」

 

 「お前のいた部隊は怪我人を見逃すような間抜けじゃないだろ?俺は足手まといだ」

 

 ジョンの言葉に9が俯く。

 

 「それに俺はもう端末を持ってない。お前のシステムにアクセスはできないんだ」

 

 「駄目だよ指揮官。私にとってはもう指揮官以外に頼れる人はいないの」

 

 「無理だ、これ以上は俺の手には負えない。だから……9?」

 

 9は顔を上げてジョンの両肩に手を置く。

 

 「だからお願い指揮官、私を見捨てないで……。もう私に戻る場所はないの……。私一人だけになったらもう自己破壊するしかなくなっちゃうの」

 

 ジョンの肩を握る手に力が入る。ジョンには9の目から涙が溢れ出そうになっているように見えた。

 

 「くそっ、泣くのは卑怯だろ……。わかった、一緒にいてやるから泣くな?ほら追っ手が来る前に離れるぞ」

 

 血はなんとか止まってくれたようだ。これからは痕跡をしっかりと消しながらいかなければとジョンは気を引き締めた。

 

 

 =*=*=*=*=

 

 

 「45、やっと見つけた」

 

 「誰……416か」

 

 「9じゃなくて残念だったわね」

 

 「そういうこと言うのはやめてくれるかしら?」

 

 「トリガーに指をかけても無駄ってことくらいわかってるでしょ?それとも改造のせいでそれすら忘れちゃったのかしらね」

 

 45は銃口を下に向ける。その表情は明らかに不機嫌さを表している。

 

 「……それで、何の用?」

 

 「用って……はぁ、先行しすぎたあなたを連れ戻しに来ただけよ。G11は近くの工場跡に残してきたわ」

 

 「……ごめんなさい、私9のことで頭が一杯になっちゃって」

 

 「そんな素直に謝るなんてあなたらしくないわね……。まあいいわ、それで何か手がかりは得られたの?」

 

 「ええ、存分にね」

 

 45は先ほどまで見ていた端末の履歴に視線を移す。人間が即興で作ったセキュリティを突破するのは容易だったが、その内容は理解できなかった。

 

 しかし幸いにもジョンの残したメモが残っていた。そこから彼が9のシステムをいじっていることは推測できた。

 

 「ねえ416、私G&Kに連絡を取ってくるわ。あなたはG11を……反応が消えた?」

 

 「話は後!早く行くわよ!」

 

 「待って」

 

 45は端末を物資の入ったバッグに押し込んでストラップを肩にかけた。

 

 「よし、行くわ」

 

 「容赦ないわね、まああなたらしいとは思うけど」

 

 12の影が森を駆ける。警戒を最低限にしてスピードを重視した45と416はすぐに工場跡に到着し、迷わずに仮眠室へと急ぐ。

 

 「G11!」

 

 倒れているG11に416は駆け寄る。

 

 「停止してる……45、起動コードをちょうだい」

 

 「なんで……なんであの男がこれを持っているの?」

 

 416の言葉に反応することなく45は床に転がった注射器を拾う。緊急停止用の薬剤が入っているそれは、本来指揮官ですらも手に入れることは不可能だ。

 

 「やはりただものではないみたいね……」

 

こんなにも手応えのある獲物は久しぶりかもしれない

 

 45は自分の口角が上がるのを感じ取った。

 

 「45、聞いてる?」

 

 「ごめんなさい、起動コードよね」

 

 G11にコードを差し込み自分の端末につなぐ。起動コードを打ち込むとG11はゆっくりと起き上がった。

 

 「あれ?私……そうか、9にやられたのか」

 

 G11の表情にいつもの眠気は見られない。あるのは獲物を狩る動物のようにギラついた目だ。416はため息をついた。

 

 この二匹の狂犬を制御しきれる気がしないわ

 

 その呟きを受け止めてくれる存在はいない。

 




ジョンと9に執着する45とG11、そして苦労人と化した416
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