魔女戦です。戦闘描写は大変ですね…早く上達したいです。
なぎさちゃんマジ可愛いよなぎさちゃん!
【巨富の魔女 アルセトラーテ その性質は強欲】
「なん……なんだよ、さっきから……」
扉を抜けた先にいたのは、俺の知る限りの言葉では到底形容の出来ないような生物。いや、生物かどうかすらも怪しい物体。
かろうじて分かるのは、それに細く異様に長い漆黒の手足が存在すると言うことくらい。人間のような分かりやすい頭部はないが、顔はあるようにも見える。
見た目はもう謎過ぎて、理解しようとするのがアホらしいくらいだ。ただし、これだけは分かる。
「(アイツはまだ俺には気づいてなさそうだ。もしも俺の存在がばれたら、あれは絶対に俺を襲ってくる)」
どんなに心を広くして観察しても、あれが人間に対して有効的なコンタクトを取ろうとするとは思えない。あんな物とはそもそも関わらないのが一番安全だ。
あのよく分からない生物に背を向け、入ってきた扉から逃げようとする。扉の向こうにはさっきの金塊が待ち受けているかもしれないが、人間の数倍の大きさを誇るあれよりはまだ戦っても生き残る可能性がある分、どの道襲われるなら金塊の方がまだマシだ。
なるべく音をたてないようにしながら扉の方へと向かう。が、その直後。
「……な、んだ……ッ!?」
ズドドン!!という音ともに、何かが俺が直前までいた場所めがけて降り注いできた。
それは、ついさっきその辺を歩き回っていた、手足の生えたコインだった。
状況的に見れば、このコインはあのデカイ奴の手下だろう。ということは……
「く……来んな、この!」
バランスを崩し、尻もちをついていた俺に詰め寄ってくるコインを蹴りとばし、俺は走り出す。
ここに入ってくる時に通った扉は、俺よりも少し大きい程度だった。ということは、明らかに俺の数倍以上の身体を持つあのヤバい奴は、扉の外までは追ってくることが出来ないだろう。
扉の向こうまで逃げれば、すくなくとも今すぐ死ぬことはなくなるかもしれない。そう思って、俺は必死に足を動かした。
直後だった。何かが俺の間横を通り過ぎ、遅れて物凄い突風と轟音が俺を襲い、俺はなす術もなく投げ飛ばされた。
「ぐ、がああああああああああああああああああああいてええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」
地面に叩きつけられた衝撃が全身を遅い、次いで右腕を鈍い痛みが貫いた。
おそらく思いっきり折れているのだろう。あまりの激痛に、思わず涙がこぼれおちる。
「ぐ、がぁっ……くっぉ……」
呻きながら身体を引きずり、どうにかして視線をデカイ奴の方へと向ける。が、奴はさっきまでいた部屋の奥ではなく、入り口となるドアがあった場所――――つまり、ついさっきまで俺がいた所の近くの壁にめり込んでいた。
たった一瞬で、俺が一歩逃げることすら出来ないうちに、俺を追い抜き、その風圧で吹き飛ばしたのだ。
「(……直撃してたら、あんなの木っ端微塵は確定じゃねえか……)」
人間の身体丸ごと一つを簡単に吹き飛ばすほどの速度。人間は時速60キロメートルの車に撥ねられても死ぬことが出来る構造になっているのに、それ以上の速度、それ以上の巨体で突進してくるアレをもろに受けたら、俺の身体はその瞬間に弾け飛んでしまうだろう。
どうにしかして、動き回り続けて逃げなければならない。
「(……っつーのは分かってんだが、折れてる腕が痛すぎて立ち上がることすら出来ねえ……)」
のっそりとした動きで、奴は壁から抜け出し、俺の方を向く。コインや金塊といった奴の手下も、続々と集まって俺を囲んでいやがる。
これが、どうあがいても絶望という奴か。
「(……まあ、別に死ぬのが嫌って訳でもないけど)」
両親が死んで、親戚もいなければ兄妹もいない俺は、今までただなんとなく、生きるために生きてきた。
夢もなければ目的もない。本当に、ただ無意味に時間を消費し、生きるために生きていた俺は、別にいつ死んでも良かった。あの時、父さんと母さんと一緒に、死んでいたって何も文句はなかったくらいだ。
強いて言うなら、両親の分まで生きなくてはいけないのだろうかと、そんなことを思わなくもなかった、という程度だ。
一般的に、子供は親より早くに死ぬと、親を悲しませた罰として、河原で永遠に石積みをさせられると言う。その石が決められた高さに届きそうになると、鬼が崩しに来るため、石積みは永遠に終わらないという仕組みだ。
俺の場合、生きた時間は両親より短いが、死ぬのは親より後だから、そんな地獄の永久労働をさせられることはないだろう。
「(……固執する物を見つける前に死ねるなら、それはそれで幸せなのか……?)」
どうしても諦めることのできない何かを見つけて、その志半ばでくたばる。
そうならない分、生きる目的を何も持っていない俺は、今死んでおいた方が幸せに死ねるのかもしれない。
「(どうせなら、可愛い女の子とお付き合いとかしたかったけどなぁ……)」
周囲に集まったコインと金塊とお札が跳び上がり、俺めがけて突進を開始する。
さっきは痛い程度で済んだが、あんなに大量の物体に飛来されたらきっと俺は死ぬだろう。死ぬに違いない。間違いなく死ぬ。
「(……未練も満足もない人生だったな)」
目を閉じた俺を、
…
……
…………
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……俺、死んでなくね?
意識はしっかりしているし、右腕は滅茶苦茶痛いが指先は動かせるし、感覚もある。何より、目の前に広がる世界が、さっきと同じあの謎の空間だ。変わっているところと言えば、あちこちで煙が立っていることだろうか。
「なん、だ……なにが、起こった……?」
俺は、コインやら金塊やらに突進されて死んだはずだ。少なくとも、俺にはあの展開を切り抜けられるような摩訶不思議な超能力はないはずだ。
ならなぜ、俺は生きている……?
「なに、が……っっ!?」
起き上がろうとして、襲ってきた頭痛に顔をしかめる。
まだ自由に動く左腕を頭にあててみると、左手が真っ赤に染まってしまった。これは、血液……?
思考が状況に追いつかない中で、俺は遠くから響いてくる激しい音を聞いた。視線を音源の方へと向ける。
そこで俺は見た。オレンジ色のカーディガンのような衣装を纏った女の子が、あのデカブツと互角以上の戦闘を繰り広げているのを。
「……っっ!!」
とりあえず、あの子の滞空時間の長さに突っ込みたかったが、俺にはもうそんな元気は残っていなかった。
女の子が手に持っていたラッパを吹くと、そこからケーキやビスケットと言ったお菓子がまき散らされる。
「(……なんだ、あれは?)」
どうすることもできず、ただ見ていると、デカブツが出現したケーキやビスケットに向けて腕を振るう。
直後、世界が爆発に包まれた。
「なんッッ……!?」
身体が吹き飛ばされるほどではないが、激しい爆風が俺のところまで届いてくる。あのケーキたちは、触れられると爆発するような性質を持っているようだ。ということは、さっきコインたちが俺に向ってきた時の爆発音も彼女が起こしたものだろう。つまり、あの子は俺を助けてくれたことになる。
女の子は一旦地上におりると、即座に動きを止めているデカブツの後ろに回り込む。デカブツが再稼働する前に後ろを取ると、またラッパを吹いてお菓子をまき散らす。今度はさっきほどの数はないが、代わりにさっきとは比べ物にならないくらいの速度でデカブツへと向かっている。
先頭のお菓子がデカブツに当たった瞬間、再び大爆発が起こった。爆発の威力も、さっきとは全くの別物だ。
「ッッッ……!!」
なんとか爆風にとばされないように地面にしがみつくが、力の入らない右手は役に立たず、左手一本で俺の体を支えることは不可能だった。結果、俺の身体は後方へと思い切り吹き飛ばされ、壁に叩きつけられることになる。
「がっ……」
肺の中の酸素を丸ごと奪われ、視界が明滅する。
ぼんやりする意識の中、顔を上げるとあの女の子が視界に入った。見覚えがある。ついさっき、あったような気がする。
あの子は……
☆キャラクター紹介☆
巨富の魔女 アルセトラーテ 性質は強欲
コイン、金塊、お札の三種類の使い魔を従える魔女。頭のない人の様な形をしており、動きは遅いが攻撃時の突進の速度は視認することができないほど。
使い魔はどれも、突進することで相手を攻撃する。