魔法少女なぎさ☆マギカ   作:黒炉

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一二三四五六さん感想ありがとうございました!

なぎさちゃん可愛いよなぎさちゃんを挨拶にしたいと最近ガチで悩んでます。

なぎさちゃん可愛いよなぎさちゃん!


第三話 契約

 目が覚めると、俺は裏路地にいた。

 ……どこだここ。寝ぼけて変な夢でも見ていたのか? 折れていたはずの腕もしっかりと動くし……しかし、あの鈍い痛みの余韻も残っている。一体何が起きたのか、さっぱりわからない。

 

「あ、あの……」

 

 声を掛けられて、俺はその声の主の方を見た。

 俺のことを心配そうにのぞきこんでいる女の子は、さっき俺が少しだけ金を出してチーズを買わせてあげた女の子。そしておそらくは、さっきデカブツと戦っていた子。

 

「あの、大丈夫なのですか? 腕とか、頭とか……」

 

「あ、ああ。多少痛みは残ってるけど、何ともないよ」

 

 どうやら俺のことを心配してくれていたようだ。

 痛みの余韻は残っているものの、腕も動くし出血もない。まるで怪我したこと自体が嘘のようだ。

 一体どういう理屈で、何が起こったのかを聞きたいところだったが、おそらく事の顛末を知っているであろう女の子があのそのえっとと慌てふためいてしまっているので、話をしようにも何もできない。

 が、このままはいさようならを出来るほど、俺は何もかも割り切れるわけでもない。

 

「あのさ、慌ててるところ悪いんだけど、何が起こったのか、説明してもらえないかな」

 

『その説明は僕がさせてもらうよ』

 

 突如、頭の中に声が響いた。

 当然女の子の物ではないし、目の前にいる相手にまるで念話のようなことをする意味が分からないし、そもそもなぜ念話が出来るのか分からない。

 俺が更に混乱していると、何処からともなく『それ』は現れ、女の子の方に飛び降りた。

 『それ』は、真っ白で、ウサギと猫をかけ合わせたような形をしている、謎の生き物だった。

 

「な……なんだ、お前?」

 

『僕はキュウべえ。いきなりだけど、僕と契約して魔法少女になってよ!』

 

 あとで分かったことだが、俺が目覚めたのは俺が働いているコンビニの裏手だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、魔法少女って一体何なんだよ。第一、俺は男だ」

 

『魔法少女は条理を覆す存在、君がさっき見た、「魔女」を狩る存在だよ』

 

 あんなところで話をするのもあれだったので、俺達は場所を移した。出来るだけ人目につかない場所がよいとの事だったので、とりあえず俺の家まで移動してきたのだ。飯食えるし。

 小学生の女の子を連れ込んでるという表現をすると、もう魔女に殺されて死んでた方が世の為だったような気がするが、冷静になってみれば俺が世の為にしてやることなどないので気にしないことにした。

 

『僕らは君たち人間の願いを何でも一つ叶えてあげる代わりに、魔女と戦う宿命を背負って貰う。「魔法少女」という名前は、僕らと契約できる人間の大多数が第二次性徴期を迎える頃の女性であることから名付けたんだ。この百江なぎさも、僕と契約した魔法少女の一人だよ』

 

「も、百江なぎさですっ」

 

 キュウべえに紹介される形で、女の子――――なぎさはお辞儀をした。

 つまり、さっきのデカブツが『魔女』という存在で、それを狩るのがなぎさを筆頭とする『魔法少女』というわけか。

 

「大多数ってことは、そうじゃない奴がいるってことか」

 

『そう。それがまさしく君だ。「魔法少女」という名前は、分かりやすくするために便宜上僕らが用意した名前にすぎない。もっと分かりやすく言うなら「契約者」と言った方がいいかな?』

 

「契約者、ね……それは確かに伝わりやすい」

 

 しかし、キュウべえの説明するシステムの意味が俺には分からない。魔女をどうして狩る必要があるのか、それをどうしてキュウべえたち自身が行わないのか。

 

「色々聞きたいことがあるな。それにさっきの様子を見る限り、魔女と戦うのは危険なんだろ? 実際、俺も死にかけたしな」

 

『勿論、そこは説明するよ』

 

 キュウべえはむしゃむしゃと俺の夕飯となる野菜炒めを食べながら言う。……この野郎。

 

「あ、あの、月島さん」

 

 俺がキュウべえを睨んでいると、なぎさが俺の用意したうどんをすすりながら話しかけてくる。

 もしかして不味かったのだろうか。だとしたらかなりショックだ。料理の腕はそれなりに自信あったのに。

 

「別に太一でいいよ。これからは同業者になる可能性もあるわけだし」

 

「じゃあ、太一さん。あの、おじゃましちゃって良かったんですか? それに、ご飯まで……」

 

「ああ、別に気にしなくていいよ。まだご飯食べてなかったんでしょ? 夜も遅いし、変な物食うよりはうどんとか消化のいい物の方が体調も崩しにくいしね」

 

 ちなみに今なぎさがすすっているうどんは我が家に残された最後の炭水化物である。そろそろ米を買うべきか……

 

『魔女は、絶望から生まれた存在なんだ。魔女は絶望をまき散らし、魔法と関わりのない人達を自分の結界に誘い込む』

 

「結界?」

 

『君が迷い込んだ世界の事だよ。大抵の魔女は、自分の結界の最深部に閉じこもって、手下である使い魔に人間を襲わせることが多いんだ』

 

「それを阻止するのが、魔法少女なんです」

 

 キュウべえの言葉をなぎさが引き継ぐ形で、言葉を区切る。

 魔女は一般人を襲う悪者であり、魔法少女は一般人を守るために魔女を倒す。その対価が願い事。シンプルっちゃあシンプルだが……。

 

『勿論、魔女との戦いは命がけだ。だから当然、対価が必要になってくる』

 

「契約の願い事がそうじゃないのか?」

 

『それはあくまで、魔法少女を生み出すためのプロセスだよ。魔法少女が使う魔法の性質は、その願い事に左右されるからね』

 

「じゃあ、対価ってのは?」

 

『グリーフシードさ』

 

 グリーフシード? また新しい単語が出てきたぞ?

 

「これを見てください」

 

 なぎさはそう言って、左手にはめていた指輪を外し、手のひらに置いた。

 直後、指輪が装飾を施された薄紫色の宝石へと姿を変える。

 

「これは……?」

 

『ソウルジェムだよ。魔法少女の魔力の源さ』

 

「ソウルジェム?」

 

『そう。魔法少女は魔力を消費して魔法を使う。そうすると、このソウルジェムに「穢れ」がたまるんだ。それを、グリーフシードで浄化できる』

 

「……なるほどな。グリーフシードは魔女から手に入れるんだな?」

 

「そうです。運が良ければ、倒した魔女がグリーフシードを落とすんです」

 

 まるでゲームみたいだな、と思ったが口にはしない。俺はまだ魔法少女(女ではないが)になっていないからそんなことを言えるのであって、なぎさからすれば、異形の魔女と戦う恐怖は相当の物のはずだ。それを茶化すのは良くないだろう。

 

「グリーフシードで穢れを浄化すると?」

 

『魔法少女は再び魔法を使えるようになる。魔法が使えなければ、魔法少女は生きていくことが出来ないんだ。ただ生きているだけでも、ほんの僅かだけど、魔力を消費しているからね』

 

 なるほど。大体分かった。納得できる部分がほとんどだし、現実離れしているが理にかなっている。

 まだ聞いていない、納得していないことは一つだけ。

 

 

 

「で、キュウべえ。この魔法少女のシステムを使うお前の目的はなんだ?」

 

 

 

 まさか、こんなナゾ生物が「人々の平和を守るため」なんていうわけがない。

 この魔法少女システムのどこかに、きっとコイツらが明確なメリットを得ることのできる部分があるはずなんだ。

 

『……エネルギーさ』

 

「エネルギー?」

 

『ああ。グリーフシードにたまった穢れ。それを僕らはエネルギーとして活用しているんだ。穢れを限界までため込んだグリーフシードは、魔女の姿に戻ってしまうからね』

 

 グリーフシードは言ってみれば、魔女の卵だからね、とキュウべえは続けた。

 ……なんとなく、それは納得できるような気もする。が、果たして回収できるエネルギーと、契約者の願いをかなえるためのエネルギーは釣り合うのかなど、気になる点はいくらでもあるが、質問したところで適当な回答でかわされるのが落ちだ。人間に限らず、知的生命体とは総じてそう言うものなのだから。

 

『それでどうだい、僕と契約してくれる気にはなったかい?』

 

「……現状は保留だな」

 

『理由を聞いても?』

 

 勿論、断る理由はないので説明してやる。

 

「そこまでして叶えたい願いがない。俺は現状に満足していないが、さっき魔女に殺されてもよかったと思えるほどに諦めてもいる」

 

「そんな……」

 

「ごめんね、こればっかりは変わらないし、変えられないんだ」

 

 助けてもらったなぎさにこんなことを言うのは失礼かもしれないが、親がいないことをいまさらどうこうする気もない。両親に一番甘えたかった時期を、俺はもう失ってしまったのだから。それに、一度死んだ人間が蘇った場合、働き口や戸籍などの問題も出てくる。やはり、両親の蘇生は望むべき願いじゃないだろう。

 

「なあ、なぎさ以外の魔法少女はいるのか?」

 

『勿論、全世界に沢山。ただ、この街にはなぎさ一人だよ』

 

「そうか……」

 

 無理やり理由を作るのなら、『なぎさを一人にしない為』というのはアリだと思う。なぎさは俺の命の恩人であるし、その恩人に協力するのは道理だろう。

 ただ、魔法少女というのは、はたして同情で始めていい物なのだろうか。もっとちゃんとした覚悟が必要なのではないだろうか。そう考えると、やはり決め手にならない。

 

「まあ、あくまで保留だ。何か願い事が決まったら、お前と契約するかもしれない。まだこの街にいるんだろ?」

 

『しばらくはなぎさと行動を共にするつもりだよ』

 

「なら、必要な時に頼むことにするよ」

 

 俺はキュウべえに食われてしまった野菜炒めの皿と、なぎさのうどんの器をシンクにおく。洗い物は正直後でいい。

 

「なぎさ、帰るだろ? 送るよ。いくら魔法少女でも、夜中に小学生を一人で歩かせるわけにはいかないからな」

 

「あ、ありがとうございますなのです」

 

 この日、俺は魔法少女、契約者、キュウべえ、そして魔女という存在を知った。

 どうして俺が、数少ない例外に当てはまったのかは分からない。けれど、この偶然と奇跡を、少しでも有効活用できるように。俺の生きる目的を見つけられるようにと、俺は心に決めた。

 

「あ、あの、太一さん、チーズ買って貰ってもいいですか?」

 

「あ? さっき買ってたじゃん」

 

「あれは、食べてしまって……」

 

「どんだけ好きなんだよ……」

 

 永遠にチーズを生み出す能力が欲しいとかで契約してもいい気がするぞ、これ……。




なぎさちゃんの細かい設定はまだ明かしたくないので、今回はキャラ紹介はお休みと言うことで。

なぎさちゃん可愛いよなぎさちゃん!
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