間が長く空いてしまって申し訳ありませんでした。
部活の方がひと段落したので、また投稿を再開させていただきます。
ではひさしぶりの――――なぎさちゃん可愛いよなぎさちゃん!
第六話 奪い合う
ドドドドド!!と、炸裂音が響く。
バックステップで回避を続けるが、敵である使い魔は全身の体毛を飛ばしながら、依然俺と距離をとったまま戦い続けている。
「太一さーん! 攻めなきゃ勝てないのですよー?」
「分かってら!」
遠くで変身だけして待機しているなぎさが言ってくる。言われなくても分かっていることではあるが、相手の攻撃速度が速いせいで回避以外の行動まで手が回っていないのが現状だ。
仕方がないので、俺は一旦回避を停止。直後、飛行しながら攻撃してくる使い魔の、更にそれよりも高く飛び上がる。
一瞬の出来事に、使い魔が俺を見失っているうちに、魔力を練って魔法を発動させる。
「――――『
漆黒の魔力によって編まれた糸が、網となって使い魔の動きを止める。
これが俺の最も初歩的な魔法、『魔糸』。魔力によって練った糸を精製し、攻撃や防御、妨害に使用する。現状、網のように編むことはできても、この糸を糸から作られる物以外に再構成することはできない。
「――――!」
今もなお網の中でもがき続ける使い魔。
まだ契約したての俺の魔法は、長時間はもたない。さっさと決着をつけなければならない。
俺は走りながら、両手にロングメイスを具現化。勿論これも、魔力によって精製された武器だ。この他には、両手で使うための鎌を作ることが出来る。
「くたばれ!」
両手のメイスを振りかぶり、使い魔に叩きつける。
ぐちゃ、という粘着質の嫌な音とともに、使い魔はその場で炸裂した。
同時に、周囲の結界も消えていく。
「……くそ、武器でトドメ刺すと感触が気持ち悪いな」
「太一さん、お疲れ様なのです」
既に変身を解いたなぎさが、てこてことこちらに歩いてくる。いつまでも変身していてもしょうがないので、俺も変身を解除、何の味気もない私服姿へと戻る。
あの日。俺がなぎさのソウルジェムの浄化を対価に、キュウべえと契約した日。俺は『魔術師』となった。
二日が過ぎ、今夜、俺は初めて、使い魔との戦闘に臨んだ。
今回は、俺が使える魔法の確認ということで、適当な使い魔を相手に実戦練習。経験者であるなぎさは、後ろで見ているだけで、本当にやばくなった時のみ助けるという方針だった。スパルタなことである。
今回の訓練で、俺にはかなり多くの種類の魔法が扱えることが分かった。
まず一つ目が、さっきも使った『魔糸』。
魔力で編んだ糸で、攻撃や妨害などと言った動作を行う。これは、様々な局面からの反撃の足掛かりとして使えそうな能力だ。
二つ目は『武器精製』。
今のところはメイスと鎌だけ、それも一度に生み出せる個数は限られているが、これはこれからの成長次第で強化できる気がする。
三つ目は『魔力砲撃』。
具現化した瞳から、魔力その物をぶっ放す魔法。具現化する瞳の大きさに比例して、威力も増減する。やろうと思えば使い魔など瞬時に消し炭にすることも可能だが、その分魔力の消耗も激しいので、使いどころを考えさせられる能力だ。というか、ただ燃費が悪いだけだが。
四つ目は『結界防壁』。
自分の周囲に魔力の壁を展開する。魔力砲と同じく、使う魔力によって効果に差が出る。これも燃費が悪いので、使いどころをを考えなければならない。
このほかにもまだ種類があるが、今のところは魔糸で相手の動きを止めながらメイスか鎌でボコ殴るのがメイン戦法だろうか。
……魔術師と言う割には野蛮な気もするが。
「それにしても太一さんは、色んな魔法が使えてうらやましいのです」
「まあ、近中遠距離対応で、防御能力まであるとか、オーバースペックな気もするけどな。ある物はありがたく使わせてもらおうか」
そう言いながら、俺は自分の漆黒のソウルジェムを見つめる。
よくよく観察すると、ほんの僅かに溜まっていた穢れが、少しずつだが浄化されていた。
「(魔法の本質は願いに依存、ね……)」
なぎさのソウルジェムの浄化を願った俺は、どうやらグリーフシードに頼らずとも、僅かながらではあるが魔力を回復する力を持っているようだ。
この力は変身していなくても発動するし、魔糸と武器生成だけなら魔力消費は多くない。つまり、グリーフシードはなぎさが独占しても問題はないということだ。
「どうしたのです、太一さん?」
「……いや、なんでもねえよ」
魔法のバリエーションは豊富、実践も問題なし、さらにグリーフシードは不要という、破格のオーバースペック。
これなら、よほど切羽詰まらない限り、魔女と戦って行くのは余裕に思える。
なのに、この胸の中で蠢く奇妙な感覚はなんだ……?
☆
魔術師と学校の両立なんて不可能。俺は早々にそう結論付け、唖然とした顔で硬直する担任に退学願を叩きつけて家に帰ってきた。
魔女は基本的に、夕方から夜にかけて活発に動く、というのは、なぎさから教えてもらったことだ。
つまり、昼間は学校に行って、夜はバイト、なんて生活をしていたのでは、魔女と戦う時間が取れない。
勿論、生活の為にバイトをしているのだから、バイトをやめるなて選択肢は俺にはなかった。もっとも、学校に行く意味も意義もなくしていた俺には、ちょうどいい口実ときっかけを得たに過ぎなかったことだが。
そうして昼間の時間帯を開けたことで、来週から俺のバイトは昼間の時間帯になった。給料は下がるが、その分労働時間が延びるので、トータルの金額ではプラスになっている。
ともかく、今日は夜のバイトもないし、家でゆっくりと英気を養うとしよう。
「………」
といいつつ、眠いわけでもないので、必然的に考え事をしてしまう。
結局、当面の問題なのはグリーフシードだ。この街はもうほとんど魔女が狩られ尽くしていて、安定的なグリーフシードを得ることは期待できない。
俺の場合はオートで魔力を回復できるからいい物の、なぎさの場合はこの先どうやってもグリーフシードが必要になってくる。
「……おい、キュウべえ」
『呼んだかい?』
俺が虚空に問いかけると、何処からともなく真っ白な詐欺師ことキュウべえが現れた。相変わらず、意味の分からない存在である。
「最寄りの街で、魔女がそこそこいるのはどこだ?」
『隣町の三瀬か、二つ隣の見滝原だね。方向は正反対だけど』
「……三瀬に見滝原、か」
意外と近所だったことにまずびっくり。魔女狩りのスポットは、案外近場だったのか。
しかし、ならば何故その二か所に挟まれたこの沖島町は魔女が少ない? その二か所から、こっちの方に魔女が移動してきたりはしないのか……?
『仕方のないことだよ。魔女や使い魔は、人間の不安な心を糧にして強くなる。平和な街よりぎすぎすした街の方が、魔女が集まりやすいんだ』
「なるほどね……。有機化学工場の爆発事故があった三瀬と、不自然なほど急速過ぎる都市開発がおこなわれている見滝原。どっちも人の心がぎすぎすしやすいと言えば、その通りなのかもな」
それに比べて、この街は驚くほどに事件が少ない。大きい街に挟まれている割には、比較的田舎くさいのが特徴だ。
そりゃ確かに、魔女は集まらないかもな。
『で、どうするんだい? 君は今は自由の身なんだろう? 他の街に行ってみるのかい?』
「ま、グリーフシードを安定して手に入れられる場所は必要だからな。行ってみる価値はある」
『それはちょうど良かった。三瀬は今、あそこを縄張りとする魔法少女がいないからね。魔女が好き放題に暴れていて、困ってたんだ』
「……縄張り?」
キュウべえ曰く、グリーフシードは動物における食料。それを魔法少女同士で奪い合うのは、当たり前のことらしい。
まあ、ライオンだってライオン同士で肉を奪い合うこともあるということだ。
『もしも三瀬に行くのなら、「佐倉杏子」という魔法少女に気をつけるといい。彼女は魔法少女らしい考え方の持ち主だし、何より強い』
いつも通り偉そうに、キュウべえはそんな忠告をしてくる。
佐倉杏子、ね。確かに縄張り争いに積極的な強い魔法少女は、俺にとっては邪魔な存在になるかもしれない。気をつけておこう。
「……頭の片隅にはとどめておいてやるよ。それとな、」
瞬時に変身し、幾重にも束ねた魔糸でキュウべえをがんじがらめにし、引きちぎる。
テレパシーが使えるとは知っていたんだが、
「勝手に人の思考を読んでんじゃねえよ。殺すぞ」
吐き捨てて、俺は変身を解除し、三瀬に向かうことにした。
四散した元キュウべえは、どうせアイツらが勝手に回収するだろうしな。
☆キャラクター紹介☆
月島太一 つきしま たいち
年齢16歳 高校一年生
身長173センチ 体重69キロ
百江なぎさのソウルジェムの浄化を願い、キュウべえと契約した少年。自らを『魔術師』と名乗る。
距離を選ばないオールマイティな攻撃方法と、防御、魔力回復と幅広いスキルを保有し、破格のオーバースペックで戦闘経験の無さを補う。元々身体能力は低くないので、近距離戦闘が得意。
変身すると、やや自意識過剰、自信家になる傾向がある。
ソウルジェムの色は漆黒。変身時は、右手の甲にはまっている。