「今日3月31日は深海棲艦と長く戦った海軍最後の日です。明日からは海上自衛隊、海上保安庁、海事研究所に分割されます。」
「各地の鎮守府や分遣隊基地では部隊の解体式や引っ越し準備が進んでいます。」
「今日の特集は シリーズ さようなら 海軍。ある鎮守府の沿岸専門のパトロール部隊に密着しました。」
3月25日
第125沿岸警備団 ここ横須賀鎮守府を拠点に神奈川県沿岸部全域を担当しています。今回取材させて頂くのは第14小隊。隊長を務めるのは深海棲艦との戦争初期に艦娘に拝命した桜庭さんで、駆逐艦 陽炎を務めています。
午前8時 一日の始まりです。
「今日つけ、敬礼!」
しわ一つないピシッとした制服の第14小隊のメンバーが警備団長に敬礼する。
「なおれ!」
「諸君おはよう。えー今日は諸君たち14小隊最後の警備活動日です。ですが、最後まで気を引き締めて任務にあたってください。」
警備団長の朝礼が終わると待機所にいた前日から夜間警備をしていた他の小隊から引き継ぎをします。
前任の部隊と14小隊のメンバーがお互いに敬礼しあいます。
「第25小隊。吹雪以下5名。異常なし。特記事項ありません。14小隊へ引き継ぎます。」
「14小隊。陽炎以下5名。異常、特記事項なし。25小隊より引き継ぎます。お疲れさまでした。」
こうして第14小隊の長い最後の一日が始まりました。
我々取材班は今回特別に漁船くらいの大きさの警備船に乗船させていただきました。艦娘の皆さんは基本は警備船に乗船し、必要があれば艤装を背負い個別に海上で航行するそうです。
「初期は警備船の数も足りなくて、一度出たらずっと艤装を背負ったまま警備活動をしていましたが、今は数が足りたのと活動の趣旨が大きく変わりました。」
と陽炎さんは教えてくれました。初期はハグレと呼ばれる深海棲艦を随時見つけ次第対応していたそうですが、戦争中記くらいから一つの警備船に艦娘が乗り込み目視とレーダーで発見、対応するというスタイルになったそうです。
「2時方向。何かいる。」
皐月さんが隊長でもあり警備船の船長である陽炎さんに報告します。なにか海上に浮いてるのを見つけたそうです。急いで、舵を握っている曙さんがその方向へ船を走らせます。
数分後。浮いていたのは水上バイクに乗る若いカップルでした。どうやら、故障し立ち往生してしまったようです。
陽炎さんは事情を聴いてすぐにカップルを警備船に乗り移させました。潮さんと長月さんが艤装を背負い海上にでます。
長月さんが水上バイクが動かないようハンドルを抑え、潮さんがバイクのエンジンを調べます。
数分後。潮さんが大きく腕で×をしました。どうやら港まで曳航しないといけないようです。長月さんがロープで艤装とバイクを結び曳航準備しました。
30分後。無事に近くの港へ到着し、曳航を終えました。二人を下ろす前に陽炎さんがなにか話をしました。
「深海棲艦との戦いが終わり一般の人も水上バイクなどのレジャーを楽しむのも普通になりました。そのせいか、出航前に全て船舶は点検しないとしけないのですが、それを怠る方も増えています。」
と悲しい顔で語る陽炎さん。
年々、海辺の事故が増えています。艦娘たちの活躍もこうしたレスキュー活動にシフトしつつあるのが現状のようです。
陽炎さんこと桜庭さんが艦娘に志願した理由には悲しいものがありました。
「自分が生まれ育った街が深海棲艦によって壊滅的な被害にあいまして。故郷を守りたい気持ちから志願しました。」
陽炎さんは東北の小さな漁村の生まれだそうです。戦争前はのどかな漁村でしたが開戦後は漁にいくことができず、村はあれるばかりでなく、ある日攻撃を受け壊滅してしまい非難を余儀なくしてしまいました。
正午。休憩の時間です。一度鎮守府へ帰港しますがだれも船から降りません。命令が下ったらすぐに出航できるようにするためだそうです。
ですが、この時ばかりは任務から解放され一人の少女として元気に食事を召し上がっていました。
午後は海上の標識の点検作業です。灯火は正常に稼働するか。電球は切れていないか。一つ一つ点検します。
午後6時30分。点検後は双眼鏡やレーダーを使って警備していましたが、異常はなく帰港しました。
そして次の小隊に引き継ぎをします。
「気を付け!敬礼! なおれ。第14小隊、陽炎以下5名。全員無事。異常なし。20小隊へ引き継ぎます。」
「14小隊異常なし。20小隊綾波以下5名引き継ぎます。お疲れまでした。」
引き継ぎ後。陽炎さんは最後の報告書にサインをして上官に提出しました。
「何もないのが一番なんですよ。私たちは海が平和になるよう日夜任務にあたってますので。」
彼女は我々にそう言って満面の笑顔で答えてくれました。
「いやー無事に終わってなによりですね。」
「はい。無事に終わったそうです。では取材した内藤記者に話を聞きましょう。」
「はい。その後の陽炎さん達14小隊なのですが、31日付で部隊は解散されそれぞれ新たな地で海を守る仕事をするそうです。
陽炎さん、霰さんは呉の海上自衛隊の基地へ、潮さんと曙さんは横須賀の海事の基地へ。長月さんは東北の海上保安庁の保安署へ、皐月さんは東京の海上保安庁の交通監視センターへそれぞれ移動になってしまうそうです。」
「皆さんバラバラになってさぞ寂しいでしょうね。」
「私もそれを聞いたのですが、皆さん口を揃えて海を守る仲間だからいつかまた会える。とおっしゃっていました。」
「離れてても志は同じなのですね。 以上 特集 さようなら 海軍でした。」