さようなら 海軍   作:つつい

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ある田舎の出張所

 ここは房総半島にある波崎出張所。正式名称は横須賀鎮守府東京警備管区波崎出張所。所属しているのは吹雪、初雪、深雪の3人の艦娘と所長の俺のたった4人だ。

 主な任務は船舶関係の書類の受理と交付、沿岸警備、灯台の維持管理だ。地元の要望で設置されていた。だがここの艦娘たちは月に1度、深海棲艦との戦いがあるかどうかだし、その戦いも去年こちらの勝利という形で終了してしまった。ここ一年くらい戦っていない。パトロールに出ても基本は海水浴客が遭難しないように監視したり、不審船がいないかという警備活動だ。あとは船舶信号管理といって、ようするに灯台の管理とか船舶進入禁止の信号灯の管理維持だ。正直、平和である。そしてとてものんびりした雰囲気だった。

 

だがされも今日まで。今日は3月25日。この派出所の最後の日だ。

 

 

「おはよう諸君。いよいよ最後の日となった。だが最後まで受傷事故等には十二分に気を付けて各自活動にあたるように。」

 

午前8時の朝礼。今日は最後というのもあるのか、それとも気のせいなのかはわからないが、どことなく皆制服の襟を正してきめているように見える。

 

「「「はい!」」」

 

そしていつもより元気なあいさつだ。指令は思わずクスッと笑ってしまった。

 

「なんだお前ら。そんなピシッと決めちゃってさ。」

 

「いやー最後だしな。」

「そうですよ。最後なんですよ。」

「そう・・・」

と各々そういう。

 

「確かに今日で最後だ。だがな、まだ仕事が終わった訳じゃないんだぞ。」

 

そう。最後まで彼らは任務を全うしなければならない。とはいっても今日は全員でこの建物から撤退するための引っ越し準備で、今日中に全ての荷物を段ボールに詰めて明日来るトラックに載せられるようにしないといけない。

 

「さー仕事だ。はいはじめ!」

 

司令官がそう号令すると各々作業を始めた。

「さてとまずはと・・・東京本部東京本部。こちら波崎波崎。感度いかが。」

 

「東京本部です。波崎。感度は良好。おくれ。」

 

「波崎。感度良好。これより課業開始します。おくれ。」

 

「東京本部。了解しました。よろしくお願いいたします。通話終わり。」

 

毎日の日課である、本部への無線開局の定時連絡をするのは部隊を取り纏める司令官の役目である。

 

「さーて。やりますかね。」

 

司令官も自分のデスクなど片付け始めた。

 

 

 

 

 

「司令官、司令官。」

 

「はいはい。司令官ですよー。」

 

「見てくれよーこれ。」

深雪は一枚の少し色あせたカラー写真を指令にみせる。

 

「おー。懐かしいな。」

指令が抱えていた段ボールを床に置いて深雪から写真を撮って眺める。

 

「これ、ここが開設されたときの初日じゃないかな。」

と深雪。映っていたのは司令官、吹雪、初雪、深雪。そして

 

「そーか。最初は白雪もいたもんな。いつの間にか栄転しちまったが。」

 

「そーそー。よく司令官怒られていたもんな。襟を正せとか、司令官としてしっかりしてくださいとかな。」

 

「そいう深雪も字が汚いって怒られたよな。」

 

お互いに自然と笑いがこみあげてくる。

 

「二人とも・・・手を動かして・・・・」

初雪が深雪と司令官を冷たいまなざしで見る。

 

「「・・・すみません・・・」」

二人は作業に戻った。

 

 

夕方。

 

 

「よし。終わったな。」

 

指令室のいろんなものを分解し、書類はそれぞれ重要度に分けて箱につめた。いま指令室あるのは無線機とたくさんの段ボールだ。

 

「じゃ、閉局するね。」

 

司令官が無線機のマイクを取る。

「東京本部東京本部。こちら波崎波崎。」

 

 

「東京本部です。波崎 送れ。」

 

「こちら波崎。課業終了に伴い閉局します。」

 

「東京本部です。了解しましたー。えー波崎は今日たしか最後ですよね。送れ。」

 

「その通り。送れ。」

 

「長い間、お疲れ様でしたー。今後の活躍お祈りいたします。」

 

「ありがとうございます。通話 終わり。」

 

司令官は無線機のマイクを戻してメイン電源スイッチをオフにする。もうこの無線機にこの場で電源が入ることはないだろう。

 

「本部の連中め・・・さて・・・」

 

司令官は一列に並んだ吹雪、初雪、深雪の方に向く。

 

「傾注。」

 

「お前らには色々言いたいことがあるけどこれだけにするわ。」

この場にいる全員が泣きそうな顔になっている。

「ありがとう。」

 

「波崎分遣隊。か・・・かい」

これをいわないといけないのだが、本当に終わってしまう。そういう空気があった。

 

「波崎分遣隊。解散!!」

 

 

全員、その場で声をあげてないた。

 

 

 

 

 

翌朝。

 

出張所の中の荷物は軍が手配した運送会社のトラックにすべて積み込まれた。綺麗に掃き掃除もされどの部屋も空っぽだ。

吹雪達は先に出発して艤装の返却のため、先に出発した。

「いつまでもいるとまた泣いちゃいそうで。」

そう言って出発した。

司令官はトラックが出るのを確認したら公用車で東京の本部へ行く。

激しい戦いがあった訳でも多くの人命を救ったわけでもないがここにいた4年間はとても充実していた。ここに戻ってくることはもうないだろう。だが司令官と彼女たちと過ごした4年間はかけがいのないものになっていた。

「さようなら俺らの出張所。 さようなら海軍。」

 

こうして一つの出張所が任務を終了した。小さな海軍の

 




次回 工廠部

2018/10/5追記
報告頂きました誤字を修正しました。ご協力ありがとうございます。
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