必要な生活用品を買い終え、俺達は宿泊している宿へと戻ってきた。そしてコッコロに昼間起こったあの光について尋ねたんだが……。
「絆を深めた時に現れる現象……?」
「はい、アメスさまは確かにそう仰っておりました」
コッコロ曰く、あの光は彼女と絆を深めた事が原因で起こった現象らしい。と言っても絆を深めたなど言葉だけでは分かるものでもないが……とりあえずアメスの言った事が本当であればそういう事なのだろう。
「ちなみに……誰でもなるってわけじゃないんだよな?」
「はい、おそらくは。主さまだからこそ起こせる現象かと」
まぁ、俺達以外の奴らは見えてなかったとはいえ、あんなのが頻繁に起こってるとは思えないしな。
……そういえば。
「なぁ、コッコロ。あの時、前に現れた文字って何だ?」
「文字……ああ、CONNECTの事でございますね。あれはコネクトと読み、意味としては『繋がる』という事です」
「『繋がる』……」
あの光は俺達が絆を深めたという証拠……そして現れた文字、CONNECTは『繋がる』という意味を持つ。つまり俺はコッコロとの絆により彼女と何らかの繋がりを得たという事になるのか?
「それで何か変わったりするのか?」
「えっと……申し訳ありません、これ以上はアメスさまからは何も……」
「いや、別にコッコロが謝る必要はないだろ」
コッコロがアメスから聞いた内容がこれだけという事は、もしかして──────
「は~い、昨日ぶりね。あんた、早くもコッコロたんと絆を深めたようね」
「……やっぱりな」
予想しただけだったが、本当に夢の中にまたアメスが出てきた。それにしても今日の出来事を知っているという事は、何らかの方法でアメスは現実世界を見ているんだろうな。
「何よ、やっぱりって」
「コッコロの説明だけであの光の事が終わったとは思えなかったからな。大方、俺に直接言いたい大事な事でもあるんだろ?」
「えらく鋭いわねぇ……ええ、そうよ。あんたには
……俺だけの能力?
「あんたにはね、女の子と絆を深めて『
「ユニオン……バースト?」
「まぁ、本来のものとはちょっと違うんだけど……女の子が内に秘めている力を、あんたは自分の力として使えるの。その力こそが"ユニオンバースト"」
……なるほどな、それが俺がコッコロに尋ねた質問の答えか。"ユニオンバースト"がどれ程のものなのかは分からないが、魔物と戦う時に使えるかもしれない。
「あんたは記憶を失った事で女の子達との繋がりも消えちゃったけど……また絆を深める事ができれば、たくさんの"ユニオンバースト"を使いこなす事が出来るはずよ」
「……何で俺はそんな能力を持ってるんだ?記憶を失う前、俺は何をしていたんだ?」
繋がりが消えてしまった、という事は俺は記憶喪失になる前も"ユニオンバースト"を使っていたんだろう。なら何故使う必要があったんだ?
「悪いけど、言えないわ。前のあんたの事を教えて、混乱させたくないもの」
「それでもっ……!」
「……お願い、あんたには自分の力で全てを思い出して欲しいのよ」
どうやらアメスは何がなんでも記憶喪失以前の俺については教えたくないらしい。流石に……無理矢理というのは嫌だな。
「……分かった。そこまで言うならどうにかして自分で思い出してみる」
「ありがとう。それと、本当にごめんね」
「いいんだよ、俺を思っての事みたいだしな」
まぁ、出来れば教えて欲しいというのが本音だが。
「ああ、そうだ。明日、コッコロたんと一緒に初めての"ユニオンバースト"を試してきたらどうかしら?」
「試すって……どうやればいいんだ?」
「大丈夫、あんたなら教えなくても使えるはずだわ」
「……主さま、危なくなったらすぐにランドソルに向かって逃げてください。わたくしとのこの約束は必ず守ってくださいね」
「分かってるって。そんな何度も言わなくても大丈夫だから」
次の日────俺達は現在、ランドソルの外にある草原を歩いている。
理由は遡ること数時間前、ランドソルの広場を訪れた俺達は求人情報などが貼り出された掲示板を見つけたのだ。庭の草むしりなどから魔物の討伐や遺跡の調査など幅広く貼り出されていた。
その中に、このような紙が貼ってあったのだ。
『ランドソルから北の森にてロックフラワーが大量発生中。この依頼を受け、ロックフラワーの数を減らしてくれた方に報酬金を支払います』
ロックフラワーとはコッコロ曰く、小石を飛ばしてくる岩で出来た花の魔物らしい。魔物の中では弱い方みたいだが、戦う術を持たない人にとってはそれなりの脅威になるそうだ。
それはともかく、数を減らせば金を貰える上に"ユニオンバースト"を試せる。これをコッコロに相談した所、初めは渋っていたもののなんとか了承をもらい────今に至るのだ。
「どうやらロックフラワーが大量に発生している森はあそこのようです」
「あの森か……」
遠くに見える森はここからでもかなり大きい。依頼主から聞いた話によると、ランドソルに来る商人のほとんどはこの森の中を通るとのこと。迂回しても来れるが、それだと結構な時間が掛かってしまうらしい。
だがロックフラワーが大量発生している今の森の中を通るわけにはいかず、迂回している為にランドソルを訪れる商人が瞬く間に減っている……それが今回、この依頼が掲示板に貼り出した理由である。
「ところで主さま」
「ん?」
森の中を槍を構えるコッコロを先導に歩いていると、彼女は立ち止まって俺に問いかけてきた。
「その、"ユニオンバースト"の方は……」
「悪い、まだ何も分からないんだ」
「い、いえ、主さまは悪くありません。……申し訳ありません、不愉快にするような事を聞いてしまって……」
「何とも思ってないから。心配すんな」
だがアメスの言う通りであれば、俺は"ユニオンバースト"を使えるはすだ。なのにまだ使い方すら分かっていない。これでは……"ユニオンバースト"を試すどころではないぞ。
「っ……主さま、止まってください」
「どうした?」
「────来ます!」
コッコロがそう叫んだ瞬間、目の前の茂みから何体かの魔物が飛び出てきた。岩のようにゴツゴツとした体、頭から生えている緑色の葉っぱ……間違いない、ロックフラワーだ。コッコロが教えてくれた特徴とも一致している。
「主さま、わたくしの後ろに!」
「お、おうっ!」
俺がコッコロの背後に隠れるように移動すると、彼女は槍を巧みに操ってロックフラワー達を吹き飛ばしていった。しかし弱いからといってそれだけで倒せるわけではないらしく、立ち上がって再びこちらに向かってきている。
「数は3、4、5……この程度ならわたくしだけでもいけます。主さまは安全な場所に避難を!」
「いや、俺も一緒に!……ん?」
コッコロがロックフラワー達と戦っている場所から少し離れた茂みが揺れている。風かと思ったが、どうやら違うらしい。あの飛び出ている葉っぱは────
「コッコロ、危ない!」
「えっ?」
俺が叫ぶと同時に茂みの中から、1匹のロックフラワーがコッコロに向かって飛び出していった。俺はすぐに走り出すと同時に鞘から剣を抜き、思いっきり振りかぶる。
「させるかよっ!」
「シャウッ!?」
剣はロックフラワーにうまく直撃し、近くの大木へと叩きつける事に成功した。しかし……体が岩である為に斬ったというよりも、殴ったという感じだな。
「主さま……ありがとうございます、助かりました」
「俺も戦う。コッコロ程うまくは戦えないだろうが……邪魔にはならないようにする」
「い、いえ、1人よりも2人の方が心強いです。……ですが主さま、どうしてもと言うのであれば無茶だけはしないでください」
「ああ、分かった……っ」
俺とコッコロが並び立つと、ロックフラワーはいつの間にか数を増やしていた。先程までの数では危ないと感じ、仲間を呼んだのか。大量に発生しているだけあって、この森のどこにでもいるんだろうか。
「仲間を一瞬で……!」
「これは……油断できないな」
辺りを見渡せばロックフラワー達に囲まれてしまっている。仮に……ここから逃げ出しても戦う事を避けては通れないか。
たった2人でこの場を乗り切るには──────
『■■に■の加■■与え■■え────"ホ■■ー"!!』
「っ……!?」
今のはもしかして……というか分かる、分かるぞ。コッコロと
「主さま、ここは危険です!すぐに逃げて────」
「……いや、逃げる必要はない。俺とコッコロだけで全部片付けられるだろうな」
俺はそう言い、剣の切っ先を空へと向けた。ロックフラワー達はその行動に困惑しているが、その方が都合がいい。俺は目を閉じ、そしてゆっくりと────口を開いた。
「我らに光の加護を与えたまえ────"ホーリー"!」
そう叫んだ瞬間、俺の足下には緑色の不思議な紋様が出現した。そこから放たれる暖かな光は俺とコッコロを包み、次第に全身に力がみなぎってくるのが感じられる。
これこそコッコロに秘められた力にして"ユニオンバースト"────その名も"ホーリー"。俺達の力を引き上げ、攻撃の威力や体力などを上げてくれるのだ。
「主さま、これは……!体の奥底から力が湧き出てくるような……」
「これならいけるだろ?」
「……はいっ!」
俺の問いにコッコロは自信を持って答えた。今の状態ならば俺もコッコロと共に十分に戦えるはず。俺は剣をロックフラワー達へと向け、コッコロに頷いて合図を送り──────奴らの元へと突っ込んでいった。
結果だけを言えば、俺達はロックフラワー達の数を減らす事に成功した。つまり依頼を達成し、報酬金を手に入れる事が出来たのだ。"ユニオンバースト"を試す事も出来たが……魔物と戦う際に"ホーリー"は必須だな。倒せたから良かったものの、結構危なかった……。
次回は『キャル編』です!
やっと"ユニオンバースト"の説明回が終わった~。