今年もこのプリコネの小説、他の小説をよろしくお願いします!
「こっちの区画に来るのは初めてだな」
前に街を出歩いて迷子になって以降も、俺はよく街中に1人で出ている。あの時と比べるとランドソルには詳しくなったと思うが、まだまだ行っていない場所は多い。今いる所もそうだしな。
「この辺りには何があるんだ?」
俺が懐から取り出したのは表紙に『ランドソル観光ガイドブック』と書かれた本である。コッコロがまた迷子にならないようにと買ってきてくれたのだ。ランドソルについて事細かに書かれており、非常に役立っている。
「【サレンディア救護院】……?ギルドの1つ?孤児院って、何だ?」
この区画にある建物について調べていると、知らない用語が並べられた説明文を見つけた。ここから近くにあるみたいだが……。
「ん……ここか」
周囲の建物と比べると結構大きく、窓が多い事から部屋はかなりあるらしい。一体どういった建物なのか分かっていないが、部屋が多いからと言って宿屋とは思えない。というよりも……大きな家にも見える。
「……?何だ、あれ」
建物の横を歩いていると、何やら窓から部屋の中が光っているように見えた。不思議に思い、近付いてみると──────
「っ!!?」
全身を襲う風圧に押され、俺は地面を転がっていった。周りに瓦礫が落ちていき、破片が俺にも降りかかったが、それは大した事ない。地面に叩きつけられた方が痛かった……顔に触れてみれば少なからず出血している事が分かる。
しかし……何で突然爆発なんかが?
「……ん?」
壁に空いた穴の奥────煙のせいでよく見えないが、誰かの影がある。手に何か持っているらしく、凝視して見てみれば何らかの刃物だと分かった。しかも、自分に刃先を向けているではないか。
「っ……まさか、あいつ……!?」
俺は痛む体を無視して走り出した。穴を飛び越える瞬間に落ちていたレンガを1つ拾い、影の元へと向かっていく。刃物が振り上げられ、勢いをつけていると分かった瞬間に俺の予想は的中した。
理由は分からないが──────自殺をしようとしている。
「間に合えっ……!」
床を勢いよく蹴り、距離を詰める。腹へと突き刺そうとする刃物と体の間に手を伸ばし、レンガを滑り込ませると──────
ガキィィィイインッ!!
「ひぃあっ!?」
レンガと刃物がうまくぶつかってくれた。自殺をしようとしていた奴が驚き、戸惑っている間に刃物を奪って遠くに投げ捨てる。手が痺れていたせいか、すぐに離してくれて良かった。
「ふぅ……」
「え、えっと……どちら様でしょうか?と、当家に何かご用でしょうか?」
自殺を止める事に成功した俺が安堵していると、声を掛けられた。自殺をしようとしていた相手──────いや、彼女は俺が今まで見てきた誰とも違う姿をしていた。頭には何か乗っているし、髪の毛は左右で丸まっている。服装も何やらリボンが多かったり、裾がひらひらしたりしているし。
「用っていうか……あんた、名前は?」
「えっ?あ、はい。私は【サレンディア救護院】に所属している、スズメと申します。正確にはこの救護院を管理している方にお仕えしている、しがないメイドなんですけど……」
「俺はブレイクだ、よろしくな」
なるほど、彼女はスズメと言うのか。メイドと言っていたが、あのような姿をしているのはそれだからか?まぁ、メイドというのが何なのかは知らないが……。
「って、ど、どど、どうしたんですかその傷!?」
「ん?あー……さっきそこの壁が爆発しただろ?それに巻き込まれたんだ」
「あ、あぁっ!?す、すみません!
私の……という事は、あの爆発はスズメが引き起こしたものなのか。しかし……魔法というのは何だろうか?聞き覚えはないし、今度コッコロに聞いてみるか。
「壁を吹き飛ばした上に、通行人にまで被害を~っ!?ますます申し訳ないです!私なんか、切腹という誇り高い死に様を選ぶ権利もないっ!」
「切腹って……ああ、さっきのか。なぁ、何であんな事を────」
「こうなったら攻撃魔法で自分の頭を吹き飛ばして、責任をとるしかない……っ!」
そう言ってスズメは持っているステッキの先端を自分の顔に向けて……いやいや、ちょっと待て。
「なに馬鹿な事してんだ。あの爆発を顔に受けたら本当に吹き飛ぶぞ?」
「いいんですっ!それで責任がとれれば……っ!」
「いや、他にも方法はあると思うんだが」
というか……そんな責任のとり方をされても困る。目の前で死ぬ光景を見せられるなど、嫌に決まっているだろう。
それにまだ知り合ってから数分と経っていないが、自殺をしようとしている彼女を放っておくわけにはいかない。
「そもそも何で壁なんか爆発させたんだ?故意にやったわけじゃないんだろ?」
「当然です!実は……この救護院のお掃除などは全て私に任されているんです。でもなかなか手が回らなくて……お掃除のスピードを少しでも上げようと、辺りを綺麗にしてくれる魔法を唱えたんですけど……」
「けど?」
「それが本当は『弱い魔物をまとめてお掃除する魔法』でして……『お掃除』という部分だけを覚えていたんです」
つまり……壁が吹き飛んだのはスズメの勘違いによる魔法のせいだったのか。それに俺がタイミング悪く巻き込まれてしまって……いや、スズメが自殺しようとしていた事を考えれば良かったと言えるか。
「なるほどな……でもそれなら尚更、無責任過ぎるだろ。あんたが死んだら誰がここの後始末をする?それに悲しむ人だってたくさんいるんじゃないか?」
「……確かに、そうですね。よく考えてみれば……
「……子供達?」
ここに住んでいるのか?とスズメに尋ねようとすると、廊下の方からバタバタと足音が聞こえてきた。おそらく 誰かが爆発の音を聞き付けて走って来たんだろう。
「スズメッ!?今、こっちから大きな音がしたんだけどっ……!」
「ア、アヤネちゃん……は、速いよぉ……」
ドアを開け、入ってきたのは2人の少女だった。大きな縫いぐるみが先端にある棒を持つ赤髪の少女、それから頭に薄紫色のリボンを付けた茶髪の少女である。
前者が勢いよく入ってきたのに対し、後者はおずおずといった様子で入ってきたな。あれからして、おそらく2人の性格は反対なんだろう。
「って、壁に穴があいてる~!?えっ、な、何でっ!?」
「ス、スズメお姉ちゃん……?も、もしかしてぇ……」
「ええっと……はい、また失敗しちゃいました……」
『また』って……どういう事だ?もしかしてスズメはこういった失敗は初めてじゃないのか?それならすぐにあの子がスズメを疑った事に理由がつくが……。
『おいおい、アヤネ!あそこに見た事ない人がいるぜ?』
「えっ?あっ、本当だ!お兄ちゃん、だぁれ?」
……っ!?今の声、どこから聞こえた?縫いぐるみの方から聞こえようたが……あの赤髪の子ではないな。口を開いていなかったし、口調も高さも違っていた。
となると、まさか……?
「今の……もしかしてその縫いぐるみか?」
「縫いぐるみなんかじゃないよ……ちゃんとぷうきちって名前があるんだから!」
『まぁ、初対面の人はまず信じないし、アヤネが喋ったと思うからな。まだマシ────って、何であんたは傷だらけなんだ?』
「う、あ……ひ、ひどい……」
ぷうきちに指摘され、こちらを見たリボンの子が恐る恐る呟く。まずいな、怖がらせてしまったか……まぁ、傷だらけの人がいれば驚くだろうし、怖くもなるよな。
「ごめんな、嫌なもの見せて。怖かっただろ?」
「え、えと……そ、そうじゃなくてぇ……?ひゃうぅ……ご、ごめんなさいぃ……」
俺が謝る立場だったのだが、何故か少女に謝られてしまった。そこまで怯えさせてしまうとは……この子には悪い事をしたな。
『なぁ、アヤネ。もしかしてあの坊っちゃん、スズメの失敗に巻き込まれたんじゃないか?それで怪我をしたんじゃ……』
「えぇっ!?そうなの、スズメ!?」
「は、はい……だからこれからこの方に手当てをしてあげようと……」
確かに手当てをしてもらえると助かるが……それだとこの壁の有り様を放置する事になってしまうんじゃないだろうか。ランドソルの住人からの視線もあるだろうし、もしかしたら泥棒に入られる危険も……。
「ならあたし達がお兄ちゃんの手当てするよ!スズメだとまた失敗するかもしれないし」
「いやいや、流石の私でももう失敗はしない……とは思いますけど……」
そこは断言しようぜ、スズメ。しかしこのままスズメに手当てを任せるのはちょっと不安だな……できれば信じてあげたいが本人がああだし。
「クルミも!これ以上、お兄ちゃんが怪我するのは嫌でしょ?」
「う、うん……わ、私も心配……だから、ダメ……?」
「う~ん……まぁ、私も壁を何とかしたいですし、その方が助かりますけどねぇ……」
「なら決まりっ!お兄ちゃん、手当てしてあげるからこっち来て!」
アヤネと呼ばれる少女は俺の手を握って部屋の外へと引っ張る。まだ小さいからそんなに強くないが、無理矢理動かされるというのは傷に響き、体に痛みが走った。
「ちょっ、ストップ……」
「アッ、アヤネちゃん!?ら、乱暴な事はしないでくださいよ~っ!?」
「はーいっ!クルミも、ほら早く早く!」
「ま、待ってよぉ……」
いや、もうされているんだが……注意が遅いって、スズメ……。
流れ的に分かると思いますが、次回は『アヤネ&クルミ編』です!
ちなみに救護院はランドソルの街中にあります。ゲームのメインストーリーだと、草原っぽい場所に建っていますがそれだとちょっとストーリーが噛み合わないので……。