「あれっ?ブレイクくんじゃないですか!おいっす~☆」
「ん?ああ、久しぶりだな。ペコリーヌ」
街の中を歩いていると、後ろから声を掛けられて俺は振り向いた。声の主である、コッコロが付けたあだ名がもはや名前になってしまっているペコリーヌは手を振りながらこっちに向かってくる。
「はいっ、お久しぶりですね!」
「何かこの辺に用事か?」
ちなみに俺はランドソルでまだ来た事がないこの場所を散歩中である。『ランドソル観光ガイドブック』は読んでいるものの、実際に行ってみないと発見できない事もあるからな。
「実は今日、この先でお祭りがあるんですよ」
「お祭り……ああ、人がたくさん来て食べ物屋とか遊べる店とかが立ち並ぶやつか」
「はい!屋台でしか食べられない物もありますから、今日はそのお祭りで食べ歩きをしようと思ってるんですよ!」
食べ歩き……大食いのペコリーヌなら、屋台の食べ物を全部食べ尽くすなんて事もありえるな。
「あっ、ブレイクくんも一緒に私と食べ歩きします?お金なら私が出しますよ」
「……そうだな、もう昼だし俺も混ぜてもらおうかな。でも自分のお金は自分で出すからいいぞ」
一応コッコロからある程度の小遣いを貰ってるからな。元々昼ご飯の為に使おうと考えていたし、そもそも誘ってくれたペコリーヌに俺の分までお金を出させるわけにはいかない。
「そうですか?でも足りなくなったら言ってくださいね!それじゃ、行きましょ~!」
ペコリーヌと一緒に道を歩いていくと、多くの人が集まる賑やかな場所へと出た。色々な屋台が立ち並び、食べたり遊んだりと全員が思い思いに楽しんでいる。
「これが祭り……なんというか、凄いな」
「この辺では大きい方ですからねー。でも、街を挙げての祭りはもっと凄いんですよ!」
「へぇ、ならその祭りも見てみたいな」
俺とペコリーヌは祭りで溢れる人混みの中を避けながら進んでいく。だがここまで人が多いと誰にもぶつからないというのは不可能だったらしい。
「きゃっ!?」
「大丈夫か?」
「ご、ごめんなさい、ブレイクくん。誰かに押されちゃったみたいです」
隣からよろけてきたペコリーヌを咄嗟に抱き止めると、確かにどこからか「すみません」という言葉が聞こえてきた。
「え、えっと……ブレイクくん?そろそろ離していただけると……」
「ん?あ、すまん」
どうやら恥ずかしかったらしく、抱いていたペコリーヌの顔は赤くなっていた。このままでいる必要はない為、手の中で縮こまってしまっているペコリーヌを解放してあげる。
「しかし人が多いな。またぶつかったら危ないし、一旦離れるか?」
「いえ、その前に屋台の食べ物を……あっ、まずはあれからいきましょう!こっちです、こっち!」
ペコリーヌは俺の手を引きながら人混みの中を進んでいく。辿り着いた屋台には「焼きそば」と書かれた布がぶら下がっていた。
「ペコリーヌ、焼きそばって?」
「知らないんですか?野菜とお肉、それから麺にソースを絡ませて完成する麺料理ですよ!」
屋台の中では屈強な男の店主が焼きそばというものを作っている。炒めている麺にソースがかけられると、一気に美味しそうな匂いが漂ってきた。
「ん~♡美味しそうな匂いですね!すみません、焼きそば2つ下さい!」
「あいよっ、ちょっと待ってな!」
ペコリーヌが注文すると、店主は容器に詰められた焼きそばを袋に入れ始めた。ペコリーヌが財布を出している事に気付き、俺も出そうとするとペコリーヌに止められた。
「ブレイクくん、お金はあとで返してくれれば大丈夫ですよ?」
「いや、でも……」
「一気に払っちゃった方が手っ取り早いですし、ここは私に任せといてください!」
「……分かった、ありがとな」
できれば自分の分は払いたかったが、まとめて払った方が効率がいいのは本当だし、ペコリーヌの言う通り後で返すと決め、俺は引き下がった。
「ほいっ、焼きそば2つお待ちっ!」
「ありがとうございます!ではこれ、丁度で!」
店主から焼きそばを受け取り、代わりにお金を渡したペコリーヌは俺の方へと歩いてきた。どこかで食べるのかと思いきや、再び俺の手を握って違う屋台へと進んでいってしまった。
「ぺ、ペコリーヌ、どこ行くんだ?それ食べるんじゃないのか?」
「ん?食べますけど、色々買ってから食べようと思って!食べ終わる度に買いに来てたら疲れちゃいますしね」
「あー……なるほどな」
確かにそっちの方がめんどくさくなくていいか。でも、ペコリーヌってたくさん食べるよな。色々って言っても、どれだけ買うつもりなんだ……?
「ブレイクくん、本当に大丈夫ですか?」
「お、おう……」
両手に屋台の食べ物が入った大量の袋を抱えながら俺は返事をする。ちなみに大半はペコリーヌのものであり、そのペコリーヌも袋を持っているが両手に一つずつだけだ。
女性に荷物を持たせるのはどうかと思い、俺が持つ事にしたんだが結果はこの通りだ。手が震えて今にも袋が落ちそうである。
「辛いんでしたら私も袋を半分持ちますよ?」
「い、いや、このくらい大丈夫だって」
強がりを見せつつ、俺は足を進める。しばらくすると道の脇にベンチが見え、あそこならば休憩が出来ると考えて、ペコリーヌに提案する事にした。
「ぺ、ペコリーヌ。あそこのベンチで食べないか?」
「そうですね!私、もうお腹がペコペコで!」
ベンチに大量の袋を置き、その隣に俺は倒れるように座った。指が痛い、というか絶対に腕とか筋肉痛になるだろうなと思っていると、袋とは反対側に座ったペコリーヌが俺の指をペタペタと触ってきた。
「……えっと、ペコリーヌ?」
「やっぱり大変だったんでしたね。大丈夫ですか?痛くないですか?」
「まぁ、ちょっと位だ。それよりほら、冷めちゃうし食べようぜ」
俺は袋から最初に買った焼きそばを取り出し、箸と共に片方をペコリーヌに渡した。少し冷めてしまっているが、まだ食べる分には美味しく頂けるだろう。
「でも……」
「そこまで気にしなくていいって、ほら」
「……分かりました。それじゃ、いただきましょうか!」
ペコリーヌと一緒に焼きそばを食べ始める。麺を啜ると、ソースの味が口いっぱいに広がっていった。美味いな、と思いつつ横を見るとペコリーヌが幸せそうな顔をしながら焼きそばを頬張っていた。
「ん~♡やっぱり美味しいですね、焼きそばは!」
「だな。初めて食べたが結構美味いな」
「でしょう?あっ、たこ焼き取ってもらってもいいですか?」
「え……もう食べ終わったのか?」
見れば確かに焼きそばが無くなっている。驚きながらもたこ焼きを渡すと、ほんの数秒の内に消えて次の料理を求められた。
これは……この苦労して運んできた料理全てが数分の内に消えそうだな。
「食べ終わったらまた屋台を回りましょうね、ブレイクくん!まだまだ食べますよ~♪」
…………マジですか。