プリンセスコネクト ~ロストメモリー~   作:白琳

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コッコロ編第3話です!


第17話 青く広くどこまでも(コッコロ編)

「コッコロ、何してんだ?」

 

宿屋の俺達が泊まってる部屋で読み書きの練習を練習をしていると、洗濯物が積み重なって重そうな籠を持つコッコロの姿が視界に入り、声を掛けた。

 

「お洗濯物がそろそろ溜まってきましたので川に洗濯しに行こうと思いまして……よいしょ、しばらくの間、外に出てきますね」

「なら俺も行くよ」

「い、いえ。主さまに仕える者として、お洗濯などの火事はわたくしが……」

 

従者という立場から俺が一緒に行く事を止めるコッコロ。だがそれを無視して俺は勉強道具を片付け、洗濯物が入った籠を彼女から奪い取った。

 

「あ、主さま!お洗濯物はわたくしが持ちますので、籠をお返ししてもらえると……」

「いいって、いつもコッコロには世話になってるしな。で、川……だっけか?どこにあるんだ、それ」

 

少なくともランドソルを歩いてて今まで川というのは見た事がない……と思う。俺が知らないだけで、もしかしたら目にしてるのかもしれないが。

 

「……分かりました。では主さま、お言葉に甘えさせてもらいますね。川の場所については昨日、近所の奥様に水場の場所をお尋ねした所、そちらまでの地図をお渡ししてくれました」

 

そう言ってコッコロが俺に地図を見せてくる。どうやらその奥様とやらの手書きみたいだが、ランドソルを出て離れた場所にあるという事だけは俺でも分かった。

 

「なるほどな、じゃあ行こうぜ」

「はい、主さま♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────で、地図の通りに来たけど……これが川なのか?」

「い、いえ、これは……」

 

地図を持つコッコロを先頭に俺は洗濯籠を持って後ろを歩いていったんだが、森を抜けた先に見えたのは大きな……どこまで続いてるのか分からない巨大な水溜まりだった。確かコッコロの話じゃ川ってのはこう、縦に流れる大きな水って感じだったが……。

 

「どうやらわたくしが言葉足らずだったようです……わたくしが水場で遊びたい、みたいに勘違いされてしまったようです」

「あー……なるほど」

「わたくし、じゃぶじゃぶと水場で遊ぶような、子供ではございませんのに」

 

まぁ、コッコロって見た目子供だからな。本人は子供でないと今みたいに否定してるが、そんな風に思われてもしょうがないか。

 

「にしても川じゃなきゃこれは何なんだ?」

「あっ、主さま()初めて拝見しますからご存知ありませんね。これは海というものです」

「へぇ、海って言うのか……俺もって事はコッコロも初めて見るのか?」

「はい、故郷は山奥ですし……付近には小さな泉しかありませんでしたから」

 

そういえば……前にエルフは森で生活してるって教えてもらったな。コッコロも俺に出会うまではそうだったって言ってたし。

 

「文献知識はありましたけれど……海というのは、こんなにも綺麗なのですね。とても感動的です」

「だな。キラキラ光ってて……なんか、不思議な感じだな」

 

俺とコッコロとで海を眺めていると、何かが足下を歩いているのが見えた。それは魔物と呼ぶには小さすぎ、何故か横向きに歩いている生物だった。

 

「あぁ主さま、ご覧下さい。蟹です。小さな蟹が歩いてます。親子でしょうか……?」

「蟹って……こいつか?」

「はい。こちらも文献知識のみでしたが、蟹は本当に横向きに歩くのですね……♪」

 

そう言ってコッコロは横向きに歩いていく蟹の列をジッと見つめ、嬉しそうにそのまま後に続いていき……って、ちょっと待て待て。

 

「コッコロ、そのまま蟹についてく気か?」

「えっ?……はっ。す、すみません主さま。つい、追いかけてしまっていて……」

「物珍しいんだろ?なら別にいいって。ただ、こいつをどうするか」

 

戻ってきたコッコロから洗濯籠に視線を移し、俺はそう言う。元々川でやるはずだった洗濯を海でやってもいいんだろうか?

 

「海ではちょっと洗濯は出来ませんね……どうしましょう」

「海も川も同じじゃないのか?どっちも水なんだろ?」

「はい。しかし海の水はしょっぱいのです」

 

しょっぱいって……海の水が塩みたいな味をしてるって事か?マジか、水がしょっぱいなんて嘘としか思えん。

 

「主さま、ちょっとお待ち下さいね……よいしょっ」

 

コッコロがしゃがんで海の水を両手で掬い上げる。そしてその手を俺の方へと向けてきたのである。

 

「主さま、試しに舐めてみますか?」

「ああ、気になる」

 

俺はそう言ってコッコロの両手に収まってる海の水に指を入れ、濡れた指先を舐めてみる。すると確かに口の中にしょっぱい味が広がっていった。それと一緒にちょっと苦味が……正直言って、不味すぎる。

 

「ふふ、驚いた顔をしてらっしゃいますね。では、わたくしも一口」

「いや、コッコロ。これは止めた方が……」

 

俺の制止を聞かず、コッコロは海の水を舌先でチロリと舐めてしまった。すると俺と同じような感想を口にし、独特な風味と言っていた。

 

「それに海の水は雑菌も多いでしょうから、ここでお洗濯をしたら逆に衣服が汚れてしまいます。洗剤などを使ったら環境を汚染してしまいますしね」

「じゃあ、どうする?最悪、洗濯をしてくれるギルドにでも頼むか?」

 

確か前にそういう事もしてくれるギルドもあるって聞いた事がある。本当に頼むんなら一度ランドソルに戻らないといけないが。

 

「いえ、生活上の細々とした事は自分でやりたい所です。それにギルドへの依頼料は少々お高いですしね……」

「あー……すまん、コッコロの言う通りだな」

「そ、そんな事はありません、主さま。提案してくださっただけでも、わたくしは嬉しいです」

 

コッコロはそう言うが、俺達の持ち金は少ない。魔物退治や素材集めなどの依頼、あと配達のアルバイトなどで生活費を稼いでいるが結構ギリギリだ。コッコロも色々とやりくりをしてくれてるのに、わざわざ高い金を出させるなんて馬鹿にも程がある。

 

「何にせよ、ここをお洗濯をする場所として利用するのは難しそうです……すみません、主さま。わざわざ一緒に、それもお洗濯物を運んでいただいたのに、無駄足を踏ませる結果となってしまいました」

「気にすんなって。そもそもコッコロだけだったら、一人で洗濯物を持ち帰る羽目になってただろ?なら一緒に来て良かったよ」

「主さま……ありがとうございます♪」

 

しかしこのまま洗濯物を持ってランドソルに戻るのもなぁ……せっかくここまで来たのに何もしないで帰るのはもったいない気がする。

 

「なぁ、コッコロ。ランドソルに戻る前にちょっと遊んでいかないか?」

「遊ぶ、でございますか?」

「ああ。例えば……ほれっ!」

「ひゃわっ!?」

 

きょとんとした表情のコッコロに俺は両手ですくった海の水を掛けてやった。頭から被った事で髪の毛は濡れ、毛先から水がポタポタと垂れているがこの暑さだ。たぶんすぐ乾くだろう。

 

「あ、主さま……突然何を……?」

「悪い悪い。でも冷たくて気持ちいいだろ?」

「それはそうでございますが……濡れてしまうのはちょっと……」

「じゃあ、コッコロもやり返してみろっ……て!」

「ひゃうっ!?」

 

再び水を掛けられたコッコロだが、今度は量が多過ぎて全然ずぶ濡れにしてしまった。ちょっとやり過ぎたか……?

 

「う、うぅ………主さまぁ……」

「えっと……コッコロ、その……」

「……主さまを攻撃するなどあってはならない事ですが……お遊びという事であれば仕方ありません……」

「へっ……おぶっ!?」

 

風を操る魔法を使ったのか、勢いよく巻き上げられた海水がまるで大雨のように俺を真上から襲ってきた。当然コッコロと同等かそれ以上にずぶ濡れである。

 

「あぁっ!?も、申し訳ありません主さま!み、水に使うのは初めてでしたので加減が分かりませんでした!」

「ぺっぺっ……やってくれたなコッコロ……?」

「あ、主さま?……うひゃあっ!?」

「お前ももっとずぶ濡れにしてやるよ!」

 

 

 

 

 

その後、互いにずぶ濡れになった服を干して乾かし、それからランドソルへ戻ると着いた頃には周りがもう真っ暗だった事は言うまでもない……。




そろそろ戦闘シーンと新しいユニオンバーストを出そうかなと考えてます!

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