「まさか本当にアストルムで出会ったユイが
『ご、ごめん悠樹くん。び、びっくりしちゃったよね……』
「いや、驚きはしたけど謝る程じゃないだろ」
放課後、家に帰った俺はアストルムを始めて真琴が言っていた集合場所で偶然にも今、パーティを組んでいるユイと出会った。だがそのユイこそが俺の友達の優衣だったのだ。
その後、一緒にやるはずだった真琴は急用でアストルムに入ってこれず、俺と優衣だけでクエストをする事にしたんだが──────
「でもモンスターと戦ってる時にパーティメンバーを置いてログアウトするのは流石に勘弁してくれ」
『う、うぅ……ごめんなさい……』
「まぁ、理由が理由だからな。しょうがない」
ユイ、というか多くの女の子が苦手な芋虫のモンスターを討伐する事が今回のクエストの目的だったのだ。そのモンスターと出会った直後、ユイは悲鳴を上げたり俺に抱き着いたりして──────最後には逃げるようにログアウトしてしまったのだ。
「そういえばさ」
『ど、どうしたの?』
「アストルムで真琴からメッセージが来ただろ?俺に好きな奴がいるのかって────」
『わー!!わー!!わー!!』
「うおっ……ってぇ!?」
携帯から飛び出てきたユイの大声が耳を貫き、驚いた俺は座っていた椅子からバランスを崩して床に転げ落ちてしまった。
『えっ!?……あっ、ゆ、悠樹くん!?大丈夫!?』
「いつつ……お、おう……」
心配そうに俺を呼ぶ優衣に俺はどうにか返事をする。咄嗟の動きで頭は守ったが、代わりに背中からはジンジンとした痛みが走ってる。
『ごめん!私が急に大声なんか出したから……』
「……いや、聞いた俺が悪かった。アストルムでもテンパってたもんな」
痛む背中を擦りながら椅子に座る。アストルムで真琴からメッセージが届いた時も、優衣は何でかさっきみたいに慌てていたのだ。
『ううん、今のは私が悪かったよ……そ、それであのメッセージがどうしたの?』
「それがな、さっきまた真琴からメッセージが届いたんだ。アストルムでのと関係あるのかなって……ちょっと待っててくれ」
俺は優衣との通話をそのままにし、真琴から届いたメッセージを確認する。そしてそれを優衣に聞こえるように口に出した。
「『悠樹、優衣との関係は進んだか?』ってメッセージが真琴から────」
『わぁぁぁああああっ!!?』
「きっ……だぁっ!?」
同じ流れでまたもや俺は椅子から転げ落ちた。まだ痛かった背中をさらに痛め、携帯から聞こえてくる優衣の言葉にも返事が出来ず俺は床の上で悶絶していた。
──────翌日。
「お、おはよう、悠樹くん」
「おう、おはよ」
教室に入ると既に着いていた優衣から挨拶をされるが、どこか緊張した様子である。もしかして、昨日の事を気にしてるのか?
「あの!昨日は本当に────」
「それならもういいって言っただろ?おかしな事を聞いてきた真琴が悪いって事で終わったじゃねぇか」
「それはそうだけど……」
アストルムでも現実でも優衣がテンパったり、俺があんな目に遭ったのも真琴が俺におかしな事を聞いてきたせいだ。
「ねぇ、悠樹くん……そういえば、あ、あの質問の答えは?」
「あの質問?」
「ほら、真琴ちゃんが聞いてきた……す、す、好きな人がいるのかって……」
ああ、あれか。そういえば真琴に返信しようとしたら優衣に止められたんだっけか。にしても何で真琴はそんな事聞いてきたのやら。
「別にいないな」
「そ、そうなんだ……!よかった……」
「ん?最後、なんて言ったんだ?」
「う、ううん、何も言ってないよ?」
優衣が安心しきった顔で何か呟いたが、小さすぎて聞こえなかった。一体なんて言ったのか聞いてみたが、何も言ってないと言われてしまった。俺の気のせいだったのか……?
「よぉっ!悠樹、優衣!いやー、昨日はごめんな!急に用事が入っちまって」
「ま、真琴ちゃん!もうっ、昨日は大変だったんだよ!悠樹くんだって──────」
いつの間にか入ってきていた真琴から声が掛けられた。優衣が昨日あった事をちょっと怒りながら説明してるが、真琴はニヤニヤしながら聞いてる始末。まったく、一体何が面白いんだか。
「おい、真琴。昨日はお前からのメッセージでなぁ──────」