プリンセスコネクト ~ロストメモリー~   作:白琳

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今回は前回の優衣とは違い、分けずにこの話で完結です!そして最後にちょっとした謎が……?


安芸真琴第1話

「なぁ、騎之。ちょっといいか?」

 

とある日、昼休みを何して過ごそうかと考えていた俺に風邪による休みから復帰した安芸が声を掛けてきた。

 

「何だ?」

「お前、この前……あたしが風邪で休んでた日、遠足の班を決める時に優衣とあたしが組めるようにしてくれたんだってな」

「それは違うぞ?俺も草野も余り組だったからな、自然とそうなっただけさ」

 

……おかしいな。草野には組む理由を誤魔化したし、あいつらにも誰かに言わないよう口止めはしてあるし……どこから話が漏れたんだ?

 

「嘘をつくなよ。優衣が言ってたんだ、お前がわざわざ自分と組んでくれたって。誘いを断った友達に謝ってたってな」

「……なるほどな」

 

たぶん、放課後に教室に残ってあいつらと話していた所を見られたんだろう。それなら帰り道で話をするべきだったな。

 

「その……あ、ありがとな」

「ん?」

「優衣のやつ、結構人見知りでさ。なかなかあたし以外に友達も作れないし。だからあの日、班決めがあるって知ってたのに休んじまったから優衣の事が心配で……」

 

ああ、そういう事か。急にお礼を言われたから何だと思ったが、安芸にとってはその事が感謝する程の出来事だったってわけか。

 

「班の中で一人ぼっちになってたら可哀想だろ?だからだよ」

「お前、知ってたのか?優衣のこと……」

「まぁ、いつも一緒にいるのが安芸しかいなかったしな。気付くのにはそんなに掛からなかったぞ」

 

というかそれよりも、俺はお前の事で驚いた事があったんだが。

 

「それにしても結構優しいんだな、安芸って」

「……はぁ?あ、あたしが優しいだって?」

「だってそうだろ。わざわざお礼を言いに来たり、班決めで優衣がどうなったか心配だったんだろ?十分優しいじゃんか」

 

安芸が男子に対しても怖じ気づかずに強い口調で怒鳴ったりしてる姿を見た事はあるが、こういった一面は初めて知った。たぶんその怒鳴ってたのも、その男子が何か悪い事でもしたんだろ。

 

「そんなわけねぇだろ!あ、あたしが優しいとか!」

「いや、でも……つか何で顔赤くしてるんだ?」

「うるせぇ!まだふざけた事言うならぶん殴るぞ!」

 

いや、殴るな殴るな。拳を振りかぶるなって。言葉と行動が噛み合ってないって──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────四年後。

 

「ふぅ……食った食った」

 

昼ご飯を購買のパンで済まし、学校の屋上に寝転がる。午後の授業まではまだ時間があるし、ここで昼寝をするというのも一つの手だろう。

 

「おい、テメェ……どういうつもりだぁ……?」

「どうもこうも、この子が困ってるって言ってんだよ。二度と近付こうとするんじゃねぇ」

 

ん……?この声、真琴か?あっちの方から聞こえてくるみたいだが、ちょうど壁が邪魔をして見えないな。なんだかヤバそうな感じだし、急いだ方がいいか。

 

「はっ、話し合いなんてガラじゃねぇだろ。俺と話つけてぇなら……拳で語り合おうぜ!」

「お前と語り合う気はねぇが、売られた喧嘩は買う主義なんだ。来いよ、はっ倒してやる!」

 

あいつは……確か三年の不良生徒か。色んな女子生徒に声を掛けて問題になってるって噂がある奴だ。そいつと対峙してる真琴の後ろに隠れてる女子生徒……なるほど、状況は把握できた。

 

「女子が舐めた口聞いてんじゃ──────」

「そこで止めた方がいいんじゃないか?」

 

不良生徒が振りかぶった腕を俺は後ろから掴み、動きを止める。突然の事に驚いた奴が後ろを振り返り、俺を見つけるとギロリと睨んできた。……だから何だよ?

 

「テメェ、何だ?関係ねぇ奴はすっこんでろ!!」

「真琴とは友達なんでな、邪魔して当然だろ」

「えっ……ゆ、悠樹!?何でお前……」

 

不良生徒の背後で真琴も俺がいる事に驚いているが、その理由は後でな。別にただ居合わせただけだから理由も何もないけど。

 

「そもそも男が女に暴力振るうとか、男として恥ずかしくないのか?」

「うるせぇっ!ムカつく野郎だな、テメェは!すっこんでろって言ってんだろ!」

 

不良生徒が俺に向かって腕を振りかぶる。俺を殴ろうとしてる事に気付いた真琴が声を小さく漏らし、止めようとしてくれるが既に遅い。

 

「まぁ、別にいいんだけどな」

「んなっ……!?」

 

正面から迫ってきた拳を俺は片手のみで平然と受け止めた。この事を思ってもいなかったのか、不良生徒は驚き、慌てている。

 

「……で?まだやるんなら、俺も黙ってねぇぞ」

「ちっ……お、覚えてろよぉっ!」

 

手を離してやると、不良生徒は勢いよく駆け出して屋上から出ていってしまう。さっきまで「すっこんでろ」とか「ムカつく野郎」とかって言ってたくせに、ちょっと拳を止めただけで怖じ気づいたか。

 

「大丈夫だったか?」

「あ、ああ……でも何で、お前ここに……」

「偶然だよ、偶然。あっちで飯食って昼寝しようと思ったら、声が聞こえてきたからな」

 

真琴にこの場に現れた理由を説明すると、彼女の後ろに隠れていた女子生徒が顔を少し出して俺を伺ってきた。まぁ、結局は力の差を見せつけて追い払ったんだから怖くてもしょうがないか。

 

「にしても真琴、お前やっぱ……」

「───ち、違うんです!」

 

優しいな、と真琴に言おうとしたが隠れていた女子生徒が突然身を乗り出して遮ってきたもんだから、最後まで言えなかった。

 

「何だ、お前まだいたのか。早く逃げなって言ったのに……もう行けよ」

「私があの人に言い寄られて困ってるのを見て、安芸さんは助けてくださって……だ、だから安芸さんは何も悪くありません!」

「……知ってるよ」

「えっ?」

 

真琴が優しい事はずっと前から知ってるっつーの。

 

 

 

 

 

「あの女子生徒、お前に凄い感謝してたな。名前も知ってたし……知り合いか?」

「別に……前にも助けた事があったってだけだよ」

 

つまりお前は二回もあの女子生徒を助けてるって事か。

 

「やっぱ優しいな、お前は」

「っ……だ、だからあたしは優しくなんか……」

「でも無茶はすんなよ。お前だって女の子なんだし、顔に傷でも付けたらせっかくの可愛い顔が台無しだぞ」

 

誰かを助けるという理由があるとはいえ、傷付いてほしくない為に忠告をしたんだが……当の本人は固まり、顔を赤くしていた。

 

「い、いま、おま、か、かわっ、かわいっ、て……」

「ん?いや、だから可愛い顔が……」

「~~~~っ!に、二回も言うんじゃねぇっ!!」

 

不意打ちにも近い拳を、しかも隣から何故か放たれれば避ける時間も止める余裕もなく、俺は真琴の攻撃をまともにくらう羽目となった。

 

「ぐふっ!?……お、お前なぁ……もっと加減しろって……」

「お、お前が変な事を言うからだろ!あ、あたしを……お、お……おんにゃのこ……とか、か、かわ、いい……とか……」

「小声な上に噛むとか、聞き取りづら過ぎるだろ」

「う、うるせぇっ!しっかり聞いてんじゃねぇよ!」

 

いや、お前が自分で言ったんだろ……。

 

「と、というかお前、よく受け止められたよな」

「何をだ?」

「さっきいたあいつの拳だよ!あたしでも避けるだけで精一杯だってのに……」

「まぁ、これでも鍛えてるしな」

 

あとは……まぁ、経験か。と言っても、これを真琴に言う必要はないだろう。自分の友達までもが自分と似たような事をしてるなんて知ったら、俺を止めてくるかもしれないしな。

 

「そういえばこの前、アストルムで真琴によく似た奴と会ったな。話し方も似てるし、あと優しい所とかも似てる子だったんだ」

「そんな奴と一緒にすんな!……って、あれ?この展開、こないだアストルムでも……なぁ、お前が言ってる子って狼の獣人(ビースト)だったか?」

「ん?ああ、そうだが……もしかして知り合いだったりするか?」

「いや……それはたぶん……あたしだ」

 

……なんだろうか。前に優衣とユイが同一人物だった時も思ったが、アストルムで出会ったプレイヤーは意外にも近場にいるんだろうか。

 

「まぁ、名前がマコトって知った時点で可能性は高いと思ってたけどな」

「あたしもあの時、悠樹に似てるとは思ったけど名前が違うからさ。なぁ、何でお前、ユウキじゃなくてブレイクって名前にしたんだ?」

 

レジェンドオブアストルムのプレイヤー達は基本、自身の名前をそのままアストルムでの名前にしてる奴が多い……はず。少なくとも俺の周りではそうだ。にも関わらず、俺がまったく違う名前を付けてる理由、か。

 

「……笑わないか?」

「何で笑う必要があるんだよ?」

「いいから約束しろ、笑わないって。あと誰にも言うなよ」

「わ、分かったよ」

 

これだけ言っとけば十分だろ。優衣くらいには教えてもいいかもしれないが……どこから話が漏れるか分からないしな。

 

「じゃあ、言うぞ……」

「お、おう!」

「…………からだよ」

「えっと、悪い。もう一回いいか?」

「っ……かっこいいからだよ」

 

俺がアストルムでの名前をブレイクにした理由。それは至極簡単、かっこ良かったからである。ゲームなんてほとんどやってこなかった身としては何にすればいいかなんて分からず、偶然出てきたこの言葉を名前にしたのだ。

 

「か、かっこいいからって……ぷっ、くくっ、あははははっ!」

「おい!笑わないって約束しただろ!?」

「い、いや、だって……ははっ、そんな理由とか、ぷふふっ……思ってもなかったし……」

 

くそっ、やっぱ話すんじゃなかったな。そもそも秘密にしとけばよかったのに、何で教えちゃったんだか。

 

「な、なぁ、悠樹……くくくっ」

「……何だよ」

「笑って悪かったよ。今度、前言ってたモンスターの攻略、手伝ってやるからさ。だから機嫌、戻せって♪」

 

前言ってたモンスター……ああ、あのデタラメな強さのボスモンスターか。どうしてもプリンセスナイトの俺じゃ後方での支援になりがちだからな。味方を強化できるのは凄いが、自分にも使えたらいいんだが。

 

「ああ、分かったよ。そいつで手を打ってやる……ただし、絶対に誰にも教えるんじゃねぇぞ?」

「分かったって、誰にも教えやしねぇよ!」

 

笑うなという約束は破られたが、こちらに関しては大丈夫だろう……たぶん。さて、それじゃあのボスモンスターをどう攻略するか、午後の授業の時間を使って考えるとするか。




真琴第1話、これで終了です!

主人公の名前がユウキではなく、ブレイクなのは作者本人がかっこいいと思ってるからです!なのでゲームのニックネームにブレイクと付けるのは割と多いですね。

そして最後に出てきた謎の一つ、プリンセスナイトの力の使い方が記憶を失う前(ロストメモリー)と失った後(本編)で違うということ。これに関しては本編でいずれ明かされます!
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