プリンセスコネクト ~ロストメモリー~   作:白琳

9 / 26
イナズマ号さん、評価ありがとうございます!


第2話 腹ペコ少女のペコリーヌ(美食殿編)

「…………」

 

今、俺達はユイやペコリーヌがお昼ご飯を奢ってくれるという事で、案内された店でそれぞれ頼んだ物を食べているんだが……この目の前の光景は一体何だろうか?

 

「もぐもぐもぐっ……すいませ~ん!追加注文してもいいですか?このメニューのここから、ここまで全て大盛りでっ!お願いしま~す☆」

 

既に何回目の注文となるだろうか?注文を聞きにくる人達にも段々と疲れが見えてくる辺り、料理を作っている人達はもっと疲れているだろう。

何せ頼む料理全て大盛りなのだ。しかも運ばれてきて数秒もしない内に料理が消えるという芸当を繰り出し、周囲の客の目を奪っている。どんどん料理が減っていく事に客からは歓声と驚きの声が上がっているが……本当にこれは何なんだ?

 

「凄いですね、本当に……胃に穴でもあいてるんでしょうか……?」

「そ、そうだね……あははっ……」

 

コッコロは冷静さを保っているように見えるが、さっきから料理が減っていない。ユイなんてもはや苦笑いしか出来てないぞ……。

 

「あっ、ちゃんと自分で食べた分のお金は払いますのでご心配なく!もぐもぐっ……これも美味しいですね~☆」

 

まだ食べるのか……と思う俺も一向に食事が進まず、ペコリーヌを見ているだけで腹が一杯になった事は言うまでもない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宿をとる?」

「はい、主さま」

 

昼ご飯を食べ終え、俺はユキとペコリーヌと別れた。まぁ、二人共このランドソルで生活しているって言っていたからな。いずれまた会う事もあるだろう。

 

「主さまの失った記憶を取り戻す為に、ひとまずこのランドソルを拠点にするのはいかがと思いまして」

「……ひとまずって事は、いつかはここを出るのか?」

「それは決めておりませんが……主さまがランドソルを気に入ったのであれば、ここに定住するのも良いかもしれません。わたくしは、主さまの判断に従います」

「そうか……分かった、考えとく」

 

と言ってもランドソルの事はまだ何も分からないからな。とりあいずコッコロの言う通りここでしばらく生活してみて、それから判断しよう。

 

「さて……主さま。宿をとるというお話ですが……」

「ん?ああ、記憶を失ってる俺じゃよく分からないしな。コッコロが決めていいぞ」

「いえ、あの……申し上げにくいのですが……」

 

そう言ってコッコロが取り出したのは口の部分が紐で縛られた袋。確かあれはお金が入っているものだ。俺は計算についてはよく分からないが、入っている量は多かったはずだ。

 

「これは故郷を出立する際に長老から頂戴した路銀なのですが……先程からお店を見ているとランドソルは物価が高いようです。その為、この路銀だけではとる宿によっては数日で底をついてしまうかもしれません」

「……そうなのか?」

「はい……ですから、お金を手に入れる方法が見つかるまではなるべく出費を抑えたいと思いまして……」

 

とりあいず話を整理すると……ここは色んな物が高いって事だよな?だから宿に関してもお金がたくさん掛かる所はとれない、と。

 

「別に構わないぞ?お金の管理についてはコッコロに任せようと思っていたしな。俺に任せたら、何するか分からないだろ?」

「い、いえ、そんな事は……ですがいいのですか?主さまの健康を考え、安宿でも良い宿を探すつもりでしたが……」

「そんな風に考えてくれるから、コッコロに任せておきたいんだ。……それじゃ駄目か?」

 

まだコッコロと出会って一日も経っていないが、この子が俺の為に尽くそうとしている気持ちは十分伝わったしな。それならコッコロの事を信じても大丈夫だと思ったのが理由だ。

 

「……分かりました。わたくし、主さまの期待に応えられるよう頑張らせて頂きます……♪」

 

結果、食事は出ないものの厨房は自由に使って構わず、風呂はないが体を拭く物一式は貸し出してくれる安宿となった。部屋も一人部屋にした事で予想よりも少ない出費となったらしい。

一人部屋にした理由については俺が寝ている時、無防備になってしまう為にコッコロが同じ寝床に入って身辺の警護をする為らしい。この事を宿の亭主に説明した際、なんか引かれていたような気がしたんだが……大丈夫なんだよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうにか宿の確保は出来ましたので、次は腹ごしらえを……と考えましたが、如何しましょう、主さま?」

「そうだな……」

 

宿での手続きに少し手間取ってしまった他、案内された部屋でゆっくりとしていた結果いつの間にか外は少し暗くなってしまっていた。その為、夕食を食べるのが今になってしまったわけだが……。

 

「昼はランドソルの事を知ってるペコリーヌとユイもいたからどうにかなったんだけどな」

「わたくし、都会のシステムには不慣れでございますから……どうしたものか、判断に迷います。これでは、『ガイド役』失格ですね……」

「慣れてないのはしょうがないだろ?それにそれは今から慣れていけばいいだけの話だ」

 

確かに俺にとって頼れる存在であるコッコロに、分からない事があるというのは痛いが……だからと言って全てコッコロに任せるわけにもいかない。俺もこれからランドソルの事について知っていかなければならないんだからな。

 

「主さまはお優しいですね……♪とりあえず、その日の分の糧を手に入られるようにならなくてはなりません。食材を調達して自分で調理するか、どこかで外食をする……という選択肢が考えられますけど」

「今から食材を探しに行くには遅いし、外食でいいと思うんだが……」

 

一体どこの店を選んだ方がいいんだろうか。コッコロ曰く、この辺りは飲食店が並ぶ区域らしいが、それ故に店の数も多い。いい匂いはするし、賑わっている店もいくつかあるがこう多いとな……。

 

「コッコロ、何か食べたい物とかってあるか?」

「いえ、わたくしは主さまが食べたいものなどのご希望がございましたら、そのお店を探してこようかと」

「俺が食べたい物か……」

 

食事をしている人達を見てみると、美味しそうな物は多い。記憶のない俺からすると、どれもが興味を惹かれる物ばかりだ。だから色々な料理が選べる店がいいんだが、どこがいいんだか……と辺りを見渡していると。

 

「……ん?」

「主さま、どうかされましたか?気になるお店でもありましたでしょうか?」

「ああ、いや……あの子、やっぱり昼の子だな」

 

俺の視線の先には診療所で寝ているはずの黒髪の子がいる。何故か先程から建物の影に隠れ、こちらを伺うようにジ~ッの見ているんだが……と、しばらくすると視線に気付いたらしく、こちらに向かってくる。

 

「何よ、あんた。さっきから何見てんのよっ?」

「あぁ、どなたかと思えば……こんばんわ、お加減は如何ですか?」

 

さっきから見ていたのはこの子の方であって、俺はそんなに見ていないんだけどな。それにしても、何故初めからそんな喧嘩腰なんだろうか?

 

「はぁ?何よ、藪から棒に。何者よ、あんた達っ!?」

「……まぁ、気絶してずっと眠っていたんだしな。分からなくてもしょうがないか。昼間、草原で気絶していたあんたを診療所まで運んだって言えば分かるか?」

「診療所の方に名前は伝えたのですが……この方はブレイクさま、わたくしはコッコロと申します」

 

コッコロが名前を伝えると、彼女は俺をキッと睨んできた。……いや、何故そうなる?自分を助けてもらった相手にお礼を言うのは分かるが、睨まれるのは理解しづらい。

 

「一応お礼は言っとくわ、ありがと。でもあんたに言いたいのはそれだけじゃないわ」

「……何だ?」

「っ……何だ、じゃないわよ!あんたがあたしの様子を気にして見に来たり、頭を撫でていたって医者から聞いたけどね!そのせいであいつ、あんたとあたしをこ、ここ、()()って勘違いしてたのよ!!」

 

……マジか。いやいや、恋人ってあの医者……俺とこの子をそんな風に思っていたのか。というか頭を撫でていた所は、一体どこから見ていたんだ?ドアはちゃんと閉まってたし、まさか何か特別な力があの医者には……?

 

「あんた、あたしの話をちゃんと聞いてるのっ!?」

「聞いてるって……その、悪かったな。まさか俺もそう見られているとは思ってもいなかった」

「……ていうか、見ず知らずの人の頭を撫でるとか普通しないでしょ。なに考えてんのよ、あんた……」

 

と言われてもな……頭を撫でていたのは無意識だったし。それにしても……彼女をどこかで見覚えがあると思っていたが、俺の事を見ず知らずの人と言っているという事は勘違いだったんだろうか?

 

「……まぁ、あんたには助けてもらったわけだし、この話はこれで許してあげる。あたしはキャルよ、不思議なご縁だけど、今後ともよろしくね」

「ああ。よろしくな、キャル」

 

もっと色々と怒られるのかと思っていたが、許してくれたようで助かった。記憶喪失である俺としては、見覚えがあるキャルとは良い関係を作りたいと思っていたからな。

 

「それとコッコロ……だっけ?あんたもありがとね」

「いえいえ……困った時はお互い様、というのがアメスさまの教えでございます。キャルさま、元気そうで幸いでございました」

「…………」

 

俺達二人をどこか探るかのように厳しそうな視線を向けてくるキャル。そんな彼女の様子に俺もコッコロも首を不思議そうに傾げる。

 

「……何か?」

「ううん。ごめん、じっと見ちゃって」

 

いや、何もないわけがないだろう。何か気になる事があったんだろうが……声を掛けようにも、「ご大層な連中」だとか「監視」がどうのこうとか、小声で色々言っているせいで掛けづらい。

 

「ん~……まだちょっと体調が優れないみたいで、ボケ~ッとしちゃったわ」

「大丈夫なのか?それなのに出歩いてて……」

「ずっと寝てたら体がなまっちゃうし、外を出歩いてる方が頭がスッキリするのよ」

 

そんなもんなのか?まぁ、それならそれでいいが……しかしこちらを見ていた理由がそれなら、さっきの小声は何だったんだろうか?

 

「そういえばあんた達、なんか困ってたみたいだけど。どうかしたの?」

「えっと……キャルさまはこの辺にはお詳しいでしょうか?わたくし達、今夜の食事をとれる、イイ感じのお店を探しているのでございます。何かお薦めなどございましたら、ご紹介をお願いしたいです」

「あー……なるほどね。世話になっちゃったし、構わないけど……ごめん、あたしも滅多に住み処から出ないからさ。全然、お店とかには詳しくないのよね」

 

今の言葉から察するに、キャルはランドソルに住んでいるんだろう。だが住み処……家から出ない為に詳しくはない、と。だがあの草原で気絶していたという事は、あそこに何か大切な用事があったんだろうか?家の外に出る機会がないのであれば、ランドソルの外に出る事はさらにないだろうからな。

 

「でも適当に賑わってるお店に入れば、外れはないんじゃないの?食事代、良かったら奢るわよ。それで、貸し借りはチャラって事で♪」

「いいのか?別に払ってもらわなくても……」

「いいのよ。借りを作ったままなんて、嫌だからね」

 

まぁ……そこまで言うなら奢ってもらうか。それにコッコロが長老から受け取ったという路銀しか金がない今、節約できる時はしておかないと後が大変になるか。

 

「ならそうさせてもらうか。コッコロもそれでいいか?」

「はい、わたくしは主さまが望むままに……それでキャルさま、賑わっているお店というとあそことかでしょうか」

「えっ?いや、あたしが見てたのはそっちじゃなくて……まぁ、どっちも変わらないからいいけど……」

 

コッコロとキャル、二人が見ていたお店はどっちも賑わっている。ただまぁ、コッコロが向かっているお店の方がここから近いし、キャルも特に問題はないようだからこっちのお店で食事を──────ん?

 

「もぐもぐもぐもぐっ♪……ぷはぁっ、ンま~い♪生き返るぅっ、ごはんは命のエネルギー……☆」

 

…………あの大量に盛られた黄色いご飯や茶色く焼かれている何か等が敷き詰められているテーブル。その反対側から聞き覚えのある声や単語が聞こえてくる。まさかとは思うが、いや、そんな一日にそう何度も────

 

「おやっ?この声は、ペコリーヌさま?」

「ん?私を、ペコリーヌと呼ぶのはもしかして……ちょっと待ってください!目の前の山盛りになった料理を胃袋におさめて、視界を確保しますので!」

 

いや、別に食べなくてもテーブルを迂回すれば済む話なんじゃないか?草原や昼間に見たあの食べっぷりから考えて、単に料理を食べたいからだろう、絶対に……と思っている間に、大半の料理がテーブルから消え去っていた。

 

「もぐもぐもぐっ♪あっ、やっぱりブレイクくんとコッコロちゃんでした!オイッス~☆」

「おいっす……?昼間あれだけ食べられていたのに、もうこんなに食べられるんですか」

「いやぁ、私はすぐにお腹がすいちゃうので!」

 

そうだとしてもこの量はどうかと思うが……昼間にコッコロも言っていたが、ペコリーヌは本当に胃に穴があいてるんじゃ……?

 

……やばっ……

「……って、あぁっ!昼間何故か気絶してた人!」

 

何かキャルが言ったような気がしたが、ペコリーヌが凄まじい勢いで彼女に詰め寄った為に聞きそびれてしまった。まぁ、そんなに気にする事でもないだろうしいいか。

 

「大丈夫だったんですか?元気ですか?貧血ですかっ、ごはんを食べれば解決ですよ!どうぞどうぞ~♪」

「ちょっ、料理の皿を押し付けんなっ!?な、何でこいつこんなにグイグイくるのよ……」

「……まぁ、会って間もないがこういう奴なんだ、ペコリーヌは」

 

おにぎりを勝手に食べ始めたり、いつの間にか離れた場所に行っていたりとペコリーヌは自由過ぎる。まぁ、そのおかげでペコリーヌやキャルと出会い、ユイを助ける事も出来たんだが。

 

「美味しいですよ~?どうぞどうぞ、ブレイクくんやコッコロちゃんも食べてください!」

「いえ、これはペコリーヌさまが……」

「大丈夫です!私、実はこのお店で開催されていたフードバトルの優勝者になったんですよ!それで賞金もらえますし、今回だけ食事代が無料なんです!」

 

……マジか。ペコリーヌの隣にはそこに寝られそうな程に巨大な大皿があるが、そこにフードバトルやらに出てきた料理が乗せられていたんだろう。遠くにこれと同じ皿があるが、ここから見ても尋常じゃない程の料理が乗っている。しかも食いかけなのだから実際はさらに凄かったんだろう。

 

「あ、あの……お客様?食事代が無料なのは貴女様だけですので……」

「あれっ?そうなんですか?」

 

そこに料理を運んでくる店員がペコリーヌに注意する。まぁ、優勝者であるペコリーヌはともかく、後から来た俺達までもが無料になるはずないからな。

 

「なら、ブレイクくん達の食事代は私が賞金から出しますよ!ごはんは誰かと一緒に食べた方が美味しいですからね♪」

「いや、俺達の分はキャルが出してくれるんだ。それで助けてもらった借りを返すって事でな……でも一緒に食べるってのは賛成だな」

「そうですね、渡りに船でございます。ご相伴に与らせていただきましょう。さぁ、キャルさまも一緒に……♪」

 

そういえば……俺とコッコロはペコリーヌと顔見知りである上に食事も共にした事があるからいいが、キャルは初対面だな。ちょっと居づらいかと思ったが、先程の遠慮のないやり取りからしてそれはないか。

 

「あ~……うん。仕方ないわねぇ、毒を食らわば皿までよね?」

「そのとおり☆毒でも皿でも何でも食べて、お腹一杯になりましょう!」

 

いや、流石にそれない。毒や皿を食べでも腹は一杯にならないだろうし、そもそも危険だろう。記憶がないとはいえ、それ位は分かる。

 

「こっちにおいで、私の膝の上でもどこでも座ってください♪早く~お料理が冷めない内に!さぁさぁ、たっぷり召し上がれ!全ての民がお腹一杯ごはんを食べられる国が、私の理想です……☆」

 

そんな国があったら、ペコリーヌは真っ先に行くだろうな。いや、こいつの場合……そこに行っても本当に腹が一杯になるのか?まぁ、とりあいず今は自分の腹を一杯にする事が先決かな……。




次回はオリジナルを含んだ『コッコロ編』第1話になります。
美食家殿以外のキャラクターも早く見たい!という方は、もうしばらくお待ちください!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。