もしドラ   作:BeatFran91

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蒼き炎

焼硬鋼(ブルースチール)のランタンを持った歩兵と会ったら、味方と思うな。

 

だが決して敵に回すな。そのランタンは持ち主の魂をくべる炉。

 

奴らは・・・蒼い鬼火と共にやって来る!

 

 

例えその瞳を灼かれても、例えその腕をもがれても、奴等は決して歩みを止めない。

 

死沼へ誘う鬼火(ウィル・オー・ウィスプ)”に導かれるまま、『保身無き零距離射撃』を敢行する。

 

生を棄てた足音・・・死を生み散らす引鉄・・・

 

命を無視された兵隊(ゲシュペンスト・イェーガー)”!!

 

・・・戦場の御伽噺じゃよ」

そういって私の友達、"M1895"は目を閉じる・・・

その御伽噺をまじまじと聞いてしまい、身体を震わせる私、"P38"

「フハハハハッ、どうじゃ?怖かろう??」

「ほ、ホントにいないよね?」

「あたりまえじゃ、そのような隊なぞ存在せんし、そのような銃も存在せん。第一、儂らが戦っておるのはなんじゃ?人間か?戦車か?」

「そ、それは確かに違うけど・・・」

そんな風に話をしているときだった。

突然部屋の扉が空き、そこからは・・・

「・・・二人とも、一体何時まで起きているのですか?」

この基地の副官の"一〇〇式"である。

「もうとっくに消灯時間、過ぎてます。早く寝て(情報整理)ください。」

そう一〇〇式に言われすぐさま布団に入り、スリープモードにした。

 

~翌日~

今日は任務です!

といっても、我がグリフィンの管理下に有る地域の巡回なだけですが・・・

「うわー!P38!一〇〇式!アレ見てアレ!!」

そういって今回の作戦メンバーの一人"G41"の指し示す方をみる。

そこには・・・

「戦車・・・ですか?」

「確かこの辺りの地域は初期の頃鉄血の人形に対して人間の軍や自衛隊で戦闘していたエリアですね。」

「これ、動くの?」

「いえ、残念ながらどれもこれも鉄血の人形逹に破壊されてますね。」

「・・・」

その時P38は、昨日の夜M1895から聞いた御伽噺の一部を思い出した。

 

     『保身無き零距離射撃』

 

(一体どれぐらいこの鉄の塊と近いのでしょうか?)

そう思い、今はもう動かない戦車に近づいてみる。

(・・・・・・・)

その戦車はもう動かないと分かっている所為か、P38が人形の所為か、戦車に近づいても、大きいなぁ、としか思わない。

そんな時だった・・・

(?あれは・・・人?それとも人形??)

その戦車の奥の道の真ん中に倒れている塊がある。

ぱっと見ると、ボロボロの布の塊に見えるが、よーく見てみると人の形をしている。しかし妙な違和感があるような気がするP38。

(って!考えるのは後!まずは二人に・・・)

そう思いG41、一〇〇式を呼ぶ。

 

 

三人でその布の塊に近づく、P38がもつ違和感が段々分かってくる・・・

(あれ?人にしては大きい?)

「うわー!巨人だー!!」

「あ!ちょっとG41!待ってください!!」

G41はその布の塊に向かい無邪気に駆け出す。その後を追ってP38、一〇〇式も駆け出す。

何を思ってか、G41は布の塊の上に立ち、懸命に何処かを探す。

「えーっと、確か巨人の弱点わぁー・・・・あ!あった!!」

何かを見つけたかと思うと、G41の左目が赤く・・・戦闘モードになった。

「巨人の弱点!それは!うなじを削ぎ落とーすっ!!」

「「それ合ってるけどちがーうっ!!」」

二人で全力の突っ込み。

だが突っ込む時既に遅し。G41の牙はその巨人の首に突き刺さる。ガブリッという音がここまで聞こえる。

すると・・・

「・・・・・・いたい・・・です。」

その巨人から声が聞こえた。

「!!G41ちゃん!ステイ!!」

「私は犬じゃないよ!?」

P38の呼び掛けで巨人の首から口を離すG41。

すると、その巨人はゆっくりではあるが立ち上がる。

上に乗っていたG41は落ちまいと必死に巨人にしがみつく。

そして、完全に立ち上がりその大きさを改めて認識する。

身長は2mを軽く越えている。

服装はボロボロだが、何処かの軍服の様に思える。

そしてP38だけ、有ることに気が付いた。

(あれって………ラン、タン?)

ボロボロの上着の所偽で良く見えなかったが、腰の所にランタンの様なものが見える。

そんなことを考えていると。またガブリと音がした。

ひょひふへぇーふぁふぁふぅふぃふぇー!!(きょじんめぇーはやくしねぇー!!)

「わあ?!G41!!早く降りてください!!」

またG41が巨人を倒す為に首を噛む。遠くから見れば、巨人の髪に金色赤青の髪飾りが着いているみたいだった。

ーーー

「先程は仲間が失礼しました。」

そういって頭を深く下げる一〇〇式。隣にいるG41の頭も無理矢理下げさせている。

「あぁっ!いえ!頭を上げてください。私は大丈夫ですので。」

オロオロした様子で頭を上げることを願う巨人。

改めてその外見を見てみる。

髪はセミロングでボサボサ

猫背で2mを越えていると思うほど大きい身長

優しそうな顔

がっしりとした身体

そして、身長、体格に見合うほど

大きな胸

身体は大きいが、その雰囲気は全く恐怖を感じさせない。

「えっと・・・・・貴女は人形・・・ですよね?」

「はい・・・」

「おねーさん。お名前はー?」

「はい・・・『ドア・ノッカー』と言います・・・」

その名前を聞いた途端、P38の(記憶回路)の中でなにかが引っかかるような気がした。

「あの・・・いきなりで失礼ですが。どのような銃なのですか?」

確認のためにP38が唐突に聞く。

するとドア・ノッカーは自分の懐でごそごそと手を動かし、ゆっくりと自分の獲物()を取り出す。

それはとても大きい『拳銃』だった。P38も『拳銃』ではあるが、彼女の銃よりはるかに大きい。シリンダーがないので”リボルバー"では無い様だがマガジンのようなところも見当たらないし、スライドも見当たらないので”オートマチック”でもなさそうだ。

「わぁ~~~~~おっきい銃~~!!!」

「すごく大きいですね。・・・でも、ライフルにしては短いし・・・銃種はなんですか?」

「け、拳銃・・・です。単発式の・・・」

P38の中で昨日の御伽噺がよみがえる。

命を無視された兵隊(ゲシュペンスト・イェーガー)・・・」

なにげなく放ったP38の言葉にドア・ノッカーが反応する。

そのとき、ズンッという重い音が響きわたる。

「他部隊より通信!鉄血人形と交戦。戦況は我々が大きく不利!」

一〇〇式が通信機から聞こえてきた情報を周りに伝える。

「私たちも加勢に向かいましょう!」

そう言って立ち上がるP38、G41は左目を赤くする。

「ダメですっ!今の音は52口径90mmライフル砲の音!戦車が相手かもしれないのですよ!」

必死に止めようとするドア・ノッカー。しかし一〇〇式、P38、G41の三人は何も答えない。

「行ってもただ無駄死にするだけです!一度後退して、ほかの人を呼んだ方が・・・」

「あなたは仲間が危ないのに逃げろっていうんですか?!仲間を見捨てろっていうんですか?!」

唐突に一〇〇式が怒鳴りだす。

「でも・・・戦車に真っ向から勝負をするなんて、まともじゃないです!」

「まともじゃなくても、仲間を助けるために急がないと!」

そんな風に怒鳴り合っている時。突然近くにあった瓦礫が崩れる。

何かが出てきたわけではなく、()()()()()()()()()()()()崩れたのだろう。

遠くでキュラキュラという()()の音が聞こえてくる。

その音の方を見ると、

「早く!早くにげてぇぇぇぇ!!!!」

唐突に叫びだしたのはP38。その目線の先には、

()()()()()()()P()0()8()が居た。

そのP08は左腕がなく頭から(オイル)を流しており、もう体力の限界なのだろうか、ふらふらした状態で走っていた。

その向きに向かい一〇〇式、P38、G41が走り出す。それにつられドア・ノッカーも走り出す。

P08はそんな4人を見てか、顔に笑顔が現れる。しかしそれで今まで張っていた緊張の糸が切れたのか。足元が運悪くとても悪かったのか、前のめりに転んでしまう。

転んだP08に向かい戦車はスピードを緩めずに走る。その距離が段々と近づいていく。先ほどまで笑顔だったP08の表情が、絶望の表情になりこちらに向かって残っている右手を伸ばす。

P38も必死に助けようと右手を伸ばすが、P08との距離はまだ200mぐらいは離れている。

尚もP08に近づく戦車、大きく地面を揺らし、まるで死へのカウントダウンを奏でるようにキュラキュラと音を立る履帯。そして・・・

グシャリ・・・

わざわざその感触を楽しむように、わざわざこちらの反応を見るかのようにP08の上で止まる戦車。戦車の右の履帯からはまるでバラのように広がるP08の血・・・

「う、うう・・・」

4人の足が止まり、P38はうめき声をあげる。

「全員っ!撃てぇ!!!!」

一〇〇式のその合図で顔を上げ、戦車に向かい各々の獲物を振るう。

しかし命中しても、カンカンと乾いた音が鳴り響くだけ、戦車には傷一つつかない。

戦車の向きがこちらに向く。先ほどの()()()()を覚えたのかまた走り出す。その時P08のまだ残っていた塊があったのか、血がプシャリと飛び出す。

(やっぱり戦車には通じないか・・・)

一〇〇式は体は熱くしかし頭は冷静に今の状況を判断する。

戦況は圧倒的不利、グリフィンの援軍が来たところで、たぶん戦況は変わらない。それどころか被害が大きくなるだけ。

突進してくるだけと思っていた戦車が急に止まりだした。その距離、約100m。

「!!皆さん!伏せて!!!」

後ろからドア・ノッカーの叫び声が聞こえる。それと同時に。

ドォォォォォォン!!!

G41が居たところが吹き飛んだ。

その爆風で各々別の所に吹き飛ばされる。

一〇〇式は後ろに飛ばされてからすぐに周りの状況を確認する。

ドア・ノッカーは今は一〇〇式の近く。どうやら爆風の影響は無い。

一〇〇式はもう戦闘は不可能。なぜなら、銃のバレルが損傷。撃ったらたぶん暴発するからだ。

G41は先ほどの爆心地から左の廃ビルへと飛ばされたようだ。壁に頭を打ったのか反応がない。もし反応があったとしても、もう戦えないだろう。

G41の両足が無い。それに銃もめちゃくちゃ。そしてP38は・・・

「あ・・・うゎ・・・」

運悪く戦車に近づく形になってしまった。

「P38!!逃げて!!早く!!!」

一〇〇式の呼びかけに反応しない。

それに反応したとしても移動することは困難だろう。

P38の左足が本来なら曲がらない方向を向いているからだ。

戦車がまた動き出す。確実にP38を潰すためにゆっくりと。

戦車とP38の距離が縮まる。

P38はこの時御伽噺を思い出していた。

『保身無き零距離射撃』

そんなもの、普通の思考を持っている人には絶対できない。なぜなら、戦車から50m以内の所に入れば恐怖してしまうからだ。

さらには先ほどのP08の光景を見ているからなおさらだ。怖くて身動きもできない。

そんなことを考えている間も、戦車はこちらに接近する。

だが突然、急に止まりだした。

P38に砲を向けるわけでもなく。ただただその場で停止した。

P38の後ろから足音が聞こえてくる。その音の方をゆっくりと振り向くと、()()()()()()()()ドア・ノッカーがこちらに向かい歩いてきている。

右手には彼女の大きな銃を握り。ただただまっすぐこちら(戦車)に向かい歩くドア・ノッカー。

「なにをしているのですか!!戦車に真っ向から挑むなんて・・・!!」

そこで一〇〇式は口をとめる。先ほどのドア・ノッカーと自分のやり取りを思い出したのだ。

『戦車に真っ向から勝負をするなんて、まともじゃない。』

最初は戦車の事なんて何とかなると思っていた。仲間を助けたいと思っていた。しかし今は戦車の強さ、恐ろしさに身がくすんでいる。

一〇〇式はさっきの自分を殴りたいと考えていた。その時である。

ドォォォォォォン!!

ドア・ノッカーのいるところが爆ぜた。

「ドア・ノッカァァァァ!!!」

一〇〇式が叫ぶ。砂埃でドア・ノッカーの姿が見えなくなる。

しかしすぐ砂埃の中から蒼い光が現れる。

「・・・う、うそ・・・・」

P38がつぶやく。ドア・ノッカーが歩みを止めずこちらに向かってくるからだ。

 

”例えその瞳を灼かれても”

 

戦車がまた発砲。ドア・ノッカーが砂埃で見えなくなる。しかし砂埃の中から蒼い光が見えてくる。

 

”例えその腕をもがれても”

 

発砲。だがやはりこちらに歩みを止めないドア・ノッカー。

 

”奴等は決して歩みを止めない。”

 

いつの間にかP38よりも戦車に近づくドア・ノッカー。

 

”『死沼へ誘う鬼火(ウィル・オー・ウィスプ)』に導かれるまま”

 

そしてついには、戦車との距離が零になりコツンという金属と金属が当たる音が聞こえる。

 

 

”『保身無き零距離射撃』を敢行する。”

 

ドガキンッ!!という拳銃ではありえない音が鳴り響く。戦車の装甲に穴が開く。

そのとたん戦車が急に前進を始める。ドア・ノッカーは戦車の突進をその大きな体で受け止めてしまう。しかしドア・ノッカーは下がらない。それどころか戦車の上によじ登る。

そしてそのうえで装填(リロード)、銃が上下に別れ、中から薬莢が飛び出る、新しい弾を装填し銃を元に戻す。その時ジュゥゥっという肌を焼く音が聞こえた。

そうして装填が完了し、また銃口を戦車の装甲に付け、ドガキンッと音が鳴り響く。

戦車が急停止し、中から鉄血の人形が一人現れ、自身の銃を何発かドア・ノッカーに向かい放つ、そのうちの数発がドア・ノッカーの体に食い込む。

だが彼女はひるみも痛がりもしない。それどころか左太ももから大きな鋏に似たものを取り出し、鉄血人形に向かい突き立てる。そして突き立てた鋏をゆっくりとじわじわと締めるドア・ノッカー。

鉄血人形が何かを叫ぶ。

「バ・・・ケモ・・・!!!」

しかし言い切る前に鋏が閉じ、血が噴き出し、ドア・ノッカーに吹きかかる。

そして、ドア・ノッカーの腰の蒼い光が消え、彼女はゆっくりと戦車から転げ落ちる。

 

 

~~~

 

 

「・・・報告は以上です」

あの後、グリフィンの援軍が到着し、私達4人は回収された。

一〇〇式は今回のことを事細かく指揮官に報告した。

「指揮官、『ドア・ノッカー』という子は一体何なのですか?あんな子がいたなんて、私全く聞いていません。」

唐突に指揮官に聞く一〇〇式。しかし指揮官は何も答えない。

「軍のデータベースにアクセスして調べてみてもそんな子が製造された記録はありませんし。一体なんなんですか!?」

それでもなお、指揮官は何も答えない。

それよりも、鉄血が戦車を作ったことの方が大事だと話題をそらす指揮官。

「そんなことよりも彼女のことの方が重大です!なんなんですかあの戦い方!!あんな自分の身を捨てる戦い方!!」

指揮官はそんな一〇〇式の言葉を無視して、一〇〇式に修理に行くように命令をする。

「指揮官っ!!お答えください!!!彼女は!!!『ドア・ノッカー』という銃はなんなのですか?!!!!」

何時もは冷静である彼女がここまで感情的になるのは珍しいことだ。そんな彼女に指揮官はとある御伽噺を聞かせた

焼硬鋼(ブルースチール)のランタンを持った歩兵と会ったら、味方と思うな。

 

だが決して敵に回すな。そのランタンは持ち主の魂をくべる炉。

 

奴らは・・・蒼い鬼火と共にやって来る。

 

 

例えその瞳を灼かれても、例えその腕をもがれても、奴等は決して歩みを止めない。

 

死沼へ誘う鬼火(ウィル・オー・ウィスプ)”に導かれるまま、『保身無き零距離射撃』を敢行する。

 

生を棄てた足音・・・死を生み散らす引鉄・・・

 

命を無視された兵隊(ゲシュペンスト・イェーガー)

901 Anti Tank Trooper のことだよ。

「アンチ・タンク・・・対戦車猟兵?」

そのことを聞かされ最後にこの言葉を言われる。

「世の中、知らなくて良いことがたくさんあるんだよ」




 はいどうも。ある時は「提督」ある時は「指揮官」またある時は・・・「指揮官」なBeatFran91です!
 と言うことで今回、『パンプキン・シザーズ』より『ランデル・オーランド伍長』の所属していた部隊『901ATT』の『ドア・ノッカー』がもしドルフロの世界にいたら?を物語にしてみました!
パンプキンシザーズ自体があまりギャグ要素がないので、何かとちょっと暗めの話になってしまいましたが。ま、いっか。
「司令官。こんなところで何をやっているんだい?」
ヴェァ!?なんでここに?!別作品でしょ君?!
「だからこそ来たのさ。ほら、戻るよ。」
あ、ちょ、おまっ!!ひ、一〇〇式!!これ読んどいて!!!
「えーっと。
誤字脱字報告、質問感想等どんどんお願いします。」

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