土下座聖杯戦争   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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本編じゃなくて昔書いたコラボ
ネタバレやべぇwwwwとかてんぞーさんと一緒になって色々やってたけどまぁそろそろいいかなと。

まぁ一応落ち拳とマテリバのネタバレ気にしない人はどうぞ




 その出逢い自体に意味はなかった。

 理由は誰にも解らないし、原因も定かではない。それぞれがそれぞれの身に宿す運命や宿命とでも言えば簡単かもしれないが、そういうものを理由にするような人間でもなかった。それでも不思議な出来事には慣れていたから、その空間に誘われたときには驚きはあっても焦りはなかった。

 それでも出逢って。

 そして互いの存在を知って。

 それ故に――拳を握ることに躊躇いはなかった。

 

 

 

 

 

 

「おぉ……!」

 

「はぁ……!」

 

 叫びを上げるのは少年と青年だった。

 蒼い短髪と瞳の十代半ばの少年。胸の十字傷が露出する蒼い着流しと同色の袴、指から肘に掛けて巻き付いたバンテージ。そして相対するのは少年よりも二十センチ近くは背が高い琥珀の目の青年。赤い髪を尻尾のように括っていた。少年が極めて和装であるのに対して洋服だ。黒いボディスーツの上に茶色のジャケット、下半身は青のジーンズ。目には特徴的な傷が。

 少年も青年も共に無手であり、だからこそ二人は己の拳を振るっていた。

 

「ゼアッ……!」

 

 少年の腕が閃いた。蒼光を纏った両の拳が疾走し、青年へと叩き込まれる。一瞬にて放たれた拳は十を超えていた。それを青年は迎え撃つ。固く握られた拳が少年の拳を打撃し、それを防御とするが三発は逃した。少年の拳が青年の身体に突き刺さり、

 

「フン……!」

 

 構わずに一撃を叩き込んだ。大気を打撃する右拳は少年の胸の中央に。対して少年は舌打ちをしながら捌きに行く。右斜め下から自身の拳で打撃し、その上で左手の螺旋運動にて一撃を逸らす。頬を掠め、薄皮一枚裂けた。当たっていれば胸に風穴が開いていたのだから、それだけで済んだので御の字だろう。どころか、懐に入ったのだからリスクを補って余りある。超至近距離、接触戦とも言える距離こそ少年の領域だ。打撃防御に使った右腕をそのまま使い、肘打ちを打ち込む。インパクトの瞬間に震脚し、足場に亀裂が入った。

 

「……!」

 

 それでも青年は胸を貫く衝撃に構わない。接触戦を本領とするのは彼もまた同じだ。目と鼻の先にいる少年に対して歯を剥き出しにして笑い――右手で首を鷲掴みにする。

 

「っづ……!」

 

「ハハ」

 

 常人ならば脛骨が砕けるほどの握力にて首を握られる。

 握られ、潰されかけ、

 

「んがぁっ!」

 

「痛ぇ!」

 

 少年が青年の手に噛みつく。一瞬だけ握力が緩み、同時に右足を叩き込み拘束を解いた。背中から地面に落ちるが受け身を取るのと同時に瞬発し、カポエラ気味に下半身を回転させ、逆立ち気味に立ち上がりながら蹴りを打ち込んだ。青年はそれをガードして距離を取り、立ち上がった青年もまた飛び退いて距離を空ける。

 

「――ハハ」

 

 どちらともなく笑い。

 少年那須蒼一と青年イスト・バサラは前に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

・助 手:『え、なにこれどういうこと』

 

・覇王妻:『ふむ……?』

 

・マテ4:『ほほう』

 

・電波嫁:『……』

 

・実妹様:『これは……』

 

・電波嫁:『見た所うちの旦那が見知らぬ場所で見知らぬ男と殴り会いしているんですがどういうことでしょうか』

 

・覇王妻:『奇遇です。私も同じ状況ですね。ちなみに目の前に謎のホロウィンドウが』

 

・マテ4:『僕たちも同じ感じだねー。あ、ちなみにシュテるんと王様とユーリの四人で見てるから』

 

・実妹様:『だからマテ4なわけですか』

 

・助 手:『え? 君たちこの状況にもっとなんかないの? 知り合いが見知らぬ人間と殺し合いと言わんばかりに殴り合ってなぜかそれを僕たちは観戦してるんだよ?』

 

・全 員:『よくあるよくある』

 

・助 手:『えぇー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先に距離を詰めたのは蒼一だった。

 距離を詰めながら同時に蒼一の姿ブレる。ブレて、そのまま数が増えた。一瞬で十六人に増えた蒼一が全方位から同じく距離を詰めていたイストへと飛びかかる。それぞれが拳を振りかぶり、蹴りをぶち込み、投げに行く。

 

「しゃらくせぇ……!」

 

 イストは一々相手にしない。青の魔力光を宿らせた拳を足場に叩き付けた。大地が砕ける。材質がなにかは判別できないが、しかしそれなりの硬度を持っている。それ故に砕かれ、飛び散った破片は凶器に成り得た。分身体に破片が命中し、掻き消える。

 残ったのは――ない。

 

「――上か!」

 

「遅い……!」

 

 上を向いたイストに蒼一の踵落としが振り下ろされた。咄嗟にイストが両腕をクロスさせてガードするが威力を殺し切れない。砕けていた大地にさらに亀裂が入る。数秒拮抗し、弾かれ合う。中空で数度回転し体勢を整えた蒼一は着地と同時に再び駆ける。地面を蹴りつけた際に足場が砕けるほどの加速。同時に先ほどと同じ分身。今度は四人となって並走し、迎え撃つイストへと迫る。

 

「行くぜ……!」

 

「来いやぁ……!」

 

 一対四となってもイストは退かない。

 

「はい、ひとぉーり!」

 

 同時に殴りかかる四人を相手にはせず、確実に一人一人消しに行った。自分の体に打ち込まれる拳撃を身体強化魔法で耐えながら目の前にいた一人の顔面を殴り飛ばす。一人消えれば、他の二人も同じように潰す。

 

「二人、三人……本物見つけたぁ!」

 

 拳を振りかぶって、大地を蹴る。

 

「断空拳……!」

 

 震脚によって生まれた力を全身駆動によって拳へと伝達。それらによって放たれた一撃は蒼一の拳を砕く威力を内包し放たれ、

 

 空振りした。

 

「……!?」

 

「――甘いぜ」

 

 確かに気配も存在し、認識していた。それでもイストの一撃は空振りし、蒼一の声を聴いていた。

 

「乾坤一蒼……!」

 

 断空拳と酷似した衝撃伝達拳。本来ならば疾走による加速と共に放たれる一撃は震脚と関節部の螺旋運動によって再現されて拳を射出していた。響く打撃音。背後からの拳撃にイストの長身が吹き飛んだ。地面を数度バウンドするを目にしながらも蒼一は舌打ちし、

 

「……硬ってぇなおい。何食ってできてんだ」

 

「特別製だぜ」

 

 答えたのは蒼一の拳を両腕でガードしていたイストだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・覇王妻:『残像と気当たりですか』

 

・助 手:『今の攻防で感想はそれだけかい!?』

 

・マテ4:『早いねー、あの青いの』

 

・電波嫁:『貴女も青いでしょう』

 

・実妹様:『レキさんも青いです』

 

・覇王妻:『緑の私が説明しますが最初のは単なる残像分身、イストの断空拳を空振りさせたのは気当たりによるフェイントですね。魔力によるフェイクシルエットとは毛色が違うようなので見切れなかったようです』

 

・マテ4:『器用なことをする』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 硬い、と蒼一は赤毛の青年について感じていた。

 速度は自分が完全に上だろう。技量については互角か自分が上くらいには感じていた。一撃の威力に関してはまだ未知数だが、おそらくそう大差はないはずだ。

 それでも耐久力という一点に関しては段違いだった。有効打を与えた数は圧倒的に自分が多い。無拍子と零拍子を用いた高速拳打は確実にヒットしていた。当たった瞬間にポイントをズラされたというのもあるかもしれないが、ある程度は通っていたはずだ。

 それでもイストは揺らがない。

 

「牛乳好きかよ!」

 

「酒の方が好きだなァ!」

 

 蒼一は酒は嫌いだった。

 軽口を叩きながらも止まらない。身長差故に多くの拳は振りおろし気味に打ち込まれてくる。それらを打撃することで弾き逸らし、掌で捌いていく。無闇に当たろうとは思わない。その拳が生む威力に何故か嫌な予感がする。威力云々の問題ではなく、当たっては拙いと思うから全て避け切っていく。

 だからこそ狙っていくのはカウンターがメインであり、

 

「得意技だぜ……!」

 

 言葉(スタイル)の基礎である相手の攻撃に合わせたカウンター。攻撃の技後硬直を狙うのではなく、攻撃直前の瞬間に合わせる動きだ。イストが振りかぶった拳を打撃、同時に背後に回りながら動きを止めた手首を掴んだ。そのまま動きを止めずに背中に回った。背後から左足を刈りに行った。それをイストは軽く飛び退くことで躱してそのまま回転しながら拘束を解き、蹴りを放った。

 無茶な離脱の仕方だった。あそこから肩や肘の関節を外すこともできたし、元々投げ技に移行して投げ技と関節技を同時に行うつもりだった。それを力技で抜けたということは構う必要がなかったということ。そして関節というものを鍛えるのは基本的に不可能。

 つまり、

 

「義手か……!」

 

 答えは打撃で来た。青い光。蒼一が使うものとは似ているがしかし決定的に違う力。原理が解らないが、肉体強化に特化しているらしく素の状態での異能無効は効きにくい。

 十字で上にズラして、

 

「ヘアルフデネ……!」

 

 開いた胸に必殺が叩き込まれた。

 

「が、はっ……!」

 

 杭打ち機でも喰らったかのような衝撃。防御に回していた気をぶち抜くほどの大威力。炸裂した衝撃が背後の大地を砕くほど。口から血が溢れ出し、

 

「塵、殺……!」

 

 躊躇なく二撃目が叩き込まれた。

 

 

 

 

 

 

・マテ4:『あ、死にましたね』

 

・実妹様:『やめてください』

 

・覇王妻:『あれ喰らうと気持ちいいんですよね』

 

・電波嫁:『へ、変態だぁー』

 

・約全員:『お前が言うなよ!』

 

・電波嫁:『ともあれ――あれで終わると思われたら心外です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イストは塵殺の一撃を叩き込んだ。防御破壊する一撃。迎え撃つわけでも避けるわけでもなく、直撃した拳は確実に必殺だった。もとより相手を確実に絶命させるのが覇王流だ。故にほんの僅かの隙さえあれば即必殺技を叩き込む。

 確かに蒼一は速かった。

 自分とほぼ互角であろう技量は言うに及ばず、その一撃も消して軽くはなかった。なにより自分を完全に超える超速度。高速駆動に関しては蒼一のほうが完全に上だった。当たった回数は間違いなくイストのほうが多いし、こちらの拳もほとんどが逸らされるか捌かれてきた。

 それでも耐えることと一撃の重さでは負けない。それに関しては誰にも負けないという自負がある。

 

「おお……!」

 

 二撃目の塵殺拳。確実に命中し、威力を徹し、

 

「――知ってるか?」

 

「……!?」

 

「男の価値は惚れられた女で決まるんだぜ」

 

 必殺を叩き込み、口から血を零しながら――蒼一には笑みが浮かんでいた。口端を歪ませた、凄惨な笑みが。人ではない、化物染みた笑み。

 ベロリと突き出された舌には『魂』の文字が。

 イストは一瞬だけ蒼一の背後に狙撃銃を構えた水色の髪の少女を見た。蒼一と背を向け合う少女に一瞬だけめを奪われ、

 

「リリース・リコレクションーー!」

 

 蒼一の一撃を赦した。眩い水色の光を放つ拳。不殺の誓いを掲げる蒼一故に殺意はなかったが、しかし全霊ではあった。それはいつかどこかであったかもしれない世界の欠片。けれど、現象としては誰もが理解できる。解き放たれるように放たれたのは那須蒼一という拳士が歩んだかもしれない道の終着点。人ではなく化物として歩んだ歴史の具象だ。

 叩き込まれた。

 

「が、はぁ……!」

 

 先ほどの蒼一と全く同じように胸に突き刺さり、血が溢れた。反射的に自動修復を発動させる。致命傷でなければ即座に回復させるはずの高度の回復魔法ですらも治りきらない。それだけの威力。ただ戦うだけの人外が到達した終焉。

 それでも――、

 

「ハハッ……!」

 

 イストは笑みと共に耐えた。胸を撃ち抜いた衝撃も、溢れる血も。全て構わずに耐えきる。耐えきって、

 

「三発目……!」

        

 三発目を放った。

 

「聖女の祈りよ……!」

 

 避けた。まるで来ると解っていたかのように。イストの動きに合わせるようにして蒼一は三発目を回避していた。同時に蒼一の背後に浮かんだのは銀髪の聖女。背後に立ち、少年を見守るように祈る少女。それがイストの動きを感じさせていた。

 

「そうかよ……!」

 

 そしてそれを即座に理解していたからこそイストのやることが変わらなかった。動きが読まれているのならば、解りやすくぶん殴ればいいだけのことだ。そしてその思考も蒼一には伝わっていた。未来予知にも等しい共感能力であるからこそイストの感情が読めたのだ。

 何があろうとも耐えて殴るというのは変わらない。

 それがイスト・バサラの戦い方だ。

 だから変えずに行った。

 

 

 

 

 

 

・電波嫁:『あの男後で締める』

 

・マテ4:『やれやれ――懐の、もとい胸の小さな女ですね』

 

・電波嫁:『脳天打ち抜きますよ』

 

・覇王妻:『それであれは?』

 

・実妹様:『言葉《スタイル》言魂使い。並行世界の自分と共振して別の自分の能力を引き出すとか。基本的に他の女の人との絆なので使うとレキさんが機嫌が最悪なります。具体的には緊急時以外使用すると折檻で、緊急時でも緊急でなくなった後に締められます』

 

・覇王妻:『なるほど中々やりますねぇ』

 

・助 手:『なんで驚かないんだ……』

 

・マテ4:『簡単なことだ。我らの男も、あの程度では終わらんということさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「人中に呂布在り、馬中に赤兎在り――そして天下に我は在り!」

 

 蒼一の隣に寄り添い合うように浮かんだのは赤髪と褐色の肌、黒の刺青を持ち、巨大な戟を構える少女。それは一瞬で消え去ったが、それと同時に蒼一の武威は飛躍的に向上する。元より人として限界域にある蒼一とイストだったが、宣誓と共に蒼一の武は限界すらも一歩進み歴史上に於いて唯一の存在となる。

 

「――!」

 

 拳は重く速い。全ての動きは連動し、最も威力が発揮するタイミングでイストの身体に命中する。顔面、鳩尾、脇腹、背中、関節部。暴風雨に巻き込まれたかのように拳撃を繋がっていく。秒間に叩き込まれる拳の数は十や二十では足りなかった。それら全てをイストは捌き切れない。彼自身が積み上げた十八年間、そして覇王よりダウンロードした戦乱の記憶。それよって蓄積されたイストの戦闘経験値は膨大だ。けれどそれも蒼一は上回っている。元より彼が師より受け継いだのは、数千数万と戦い続けてきた人外の武威。それを四国が熾烈を競い合う世で完成させたのだ。イストが劣っているのではなく、蒼一が外れすぎているだけだ。

 それでも、

 

「ぉお、オオッ……!」

 

「何食ったらそうなりやがる……!」

 

 イストは倒れなかった。蒼一の拳をどれだけ受けても赤髪の男は倒れない。馬鹿げた耐久力、などという言葉では片づけられないほど。本来ならば死んでいてもおかしくないだけのダメージは叩き込んだし、例え相手が達人の類であろうとも行動不能にさせられたはずだ。

 それなのにイストは止まらなかった。

 

「ジェネレイト、イグナイト、グレンデル……!」

 

 傷ついた体を高速修復させ、身体強化を重ね、その体を魔力の糸で無理矢理動かしている。理屈は解る。『天下ニ我在リ』だとしても根本が言葉(スタイル)なのは変わらない。基礎的な共感能力は残っていたから呟かれた名が術式であるということは解っていた。驚くべきはそこまでやる精神だ。蒼一もまた半死半生にて戦うのは慣れたものだが、イストのそれは常軌を逸している。そもそもが死にかけるのが前提なのだ。受け流しを基本とする蒼一とは正反対のスタイルだろう。

 

「……だったらッ」

 

 蒼一の動きが変わった。人を超えた武威を霧散させながらも拳を振りかぶり、出現したのは長髪の女。露出の多い、踊り子のような彼女は蒼一の頭上にて待ち焦がれるように彼を見下ろし、

 

「咲き誇れ、高嶺華……!」

 

 撃ち抜いた拳が、ガキン(・・・)という音と共にイストが使用していた全ての魔法を打ち砕いた。

 

「な……!?」

 

 概念打撃。誰にも触れられない高嶺の華を手折るための馬鹿の拳。意思と魂を質量に変換する術式がイストの加護を根こそぎ砕いていた。

 そしてそれはどうしようもない明確な隙だ。

 当然逃さない。

 

「打ち、抜け……ェッ!」

 

 振りかぶった拳を全身の連動と共に射出し、着弾と同時にねじり込む。拳撃の基本にして奥義。

 その通りにした。

 無防備になったイストの顔面へと叩き込まれ、

 

「惚れた女で男の価値が決まる、か」

 

 ――銀色の魔力障壁によって完全に止められていた。

 

「な――」

 

「――ナル」

 

 驚く蒼一に、驚きと苦笑を混ぜながら名前を呼ぶイスト。

 それに応えたのは何時の間にか現れた銀髪赤目の女。赤髪の青年を背後から抱きしめるように軽く浮く彼女は蒼一の拳を受け止めながら、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「私よって生じる彼の価値が低いと思われたら心外だ」

 

 同時に障壁が爆散して蒼一の身体が吹き飛ぶ。ダメージではなく時間を稼ぐことを重視したものであるが故に、確かな成果を生んでいた。

 そして何の言葉も必要とせず、

 

「――ユニゾン・イン」

 

 二人は一人になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

・マテ4:『あとであの男締める』

 

・電波嫁:『さっき私に言ったことを思い出しましょうか』

 

・マテ4:『私は貴女ほど胸小さくありません。この先の未来もありますし』

 

・実妹様:『あ、ちょ、レキさんハルコンネンⅡ持ち出すのやめてください! それ国際武偵連盟(IADA)から使用禁止喰らってるんですから! …………こほん、失礼。それであのフュージョンはなんですか?』

 

・マテ4:『ユニゾンという。先ほどの銀髪、リインフォース・ナルはユニゾンデバイスと呼ばれる状態生命体だ。詳細は省くが特定の人物と融合することで融合主の戦闘能力を飛躍的に向上させられる。あの二人の場合はイストの近接とナルの広域に加えて大魔力と超演算能力が付与される』 

 

・覇王妻:『しかし実際いい所を持っていかれましたね……』

 

・マテ4:『ちょっと卑怯ですね。あとでマトリクス行っときますか。ついてに極光斬も! ジャガーノートもだな。無論、真・ルシフェリオンもですね』

 

・助 手:『四人同時に喋ると謎だなぁ。というか死ぬよねそれ』

 

・マテ4:『よくあることです』

 

・助 手:『あー……帰りたい。というかなんでこの面子に僕がいるんだ……』

 

・電波嫁:『そりゃあ突っ込みです』

 

・助 手:『帰りたいよぉー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 融合は一瞬だった。

 銀髪の女――リインフォース・ナルは融けるように消えさり、イストの変生する。赤い髪は銀に、琥珀の瞳は赤く、それぞれが彼女の色に。ボディスーツの色は変わらなくともジャケットも白くなり、ズボンは黒くなる。一変してモノクロのバリアジャケットになったイストがさらに纏うのは銀色の風。ボディスーツに隠れて見えないが、その胸には青年が女に刻んだ傷が生まれていた。

 イスト・バサラとリインフォース・ナル。彼と彼女の絆が生んだ姿がそれだった。

 

『今回復させる。少し動くな。アレの相手は私がやろう』

 

「そりゃ嬉しいけどどうやって来たんだよ。というかここ何処だ」

 

『知らん。だが、此処に来れたのは――愛の力だ』

 

 言葉と共にそれが示された。ボロボロになったイストの身体を急速に修復させていく一方、情報生命体の融合器特有の演算能力で別の魔法を使用する。生み出されたのは血の色の短剣。数百を超える剣陣だ。

 

『鮮血にて染まれ、ブラッディダガー』

 

 射出した。

 

「……っ!」

 

 一斉に襲い掛かる鮮血の刃。全てはナルの演算にて制御されている故に一つ残らず蒼一へと全方位より降り注ぐ。人が通れる隙間は欠片もない。血の色の軌跡を描きながら大気を切り裂き、駆け抜け、

 

「舐める、な……!」

 

 『天下ニ我在リ』を発動し直した蒼一は片っ端から殴り飛ばす。それは台風の中に身を置き、降り注ぐ暴雨の滴を一つづつ打撃していくという行為。不可能と言ってもいい行為をしかし蒼一は実現していく。勿論、無傷とはいかない。捌ききれず、砕けきれなかった血刃が体を掠め、突き刺さっていく。しかし、致命傷だけは避けて刃の嵐を凌いでいた。

 不可能ではない。何故なら、

 

「『拳士最強』だからなぁ……!」

 

 字の証明のするが如く鮮血の嵐を耐えきった。

 

『素晴らしいな――だが沈め』

 

「!!」

 

 刹那、蒼一を中心に闇が世界を覆った。

 広域空間攻撃魔法『デアボリック・エミッション』。闇の世界に取り込んだ存在の生存を赦さぬ死の空間。最上位の空間攻撃魔法であり、決殺技と言っていいソレをナルは躊躇いなく叩き込んだ。

 

『人の男を殴りまくってくれたお礼だ。受け取れそして絶望して闇に飲まれろ』

 

 球体の中で雷雲が轟き、闇が蒼一の肉体を浸食していく。空間そのものに於けるダメージでは『天下ニ我在リ』の意味がない。だからこそ全身を暗黒に蝕まれ、激痛に苛まれながらも拳を握りしめた。

 

「高嶺、摘ッ……!」

 

 闇を砕く。

 概念打撃は確かに一撃で暗黒を砕き、

 

『――ナイトメア』

 

 蒼一の周囲に展開されていた闇球八個から砲撃が発射された。デアボリック・エミッションを砕いた直後故に回避は間に合わず、両手の拳を振るったがそれでも消したのは二本が限界だった。

 残りは直撃する。

 

「ガッーー!」

 

 絶叫は激痛故であり、そして同時に気合いの叫びだった。歯を食いしばり、砲撃に耐える。直撃してしまったが、直撃してから放射中殴って砕けばいい話だ。イストのゾンビぷりは別として、蒼一自身の耐久力も低くはない。だから耐えて、それから振りかぶって、今度こそ残りの悪夢を打ち砕いた。

 

「まだまだ……!」

 

 前に出て、

 

「いや、そろそろ終わっとけ」

 

 滑り込むようにイストが懐に現れた。

 

「な――」

 

『回復完了。やれ』

 

「おうよ」

 

「しまっ」

 

「遅い」

 

 完全に懐に入り、そしてそのまま放った。

 

「魔拳――ベオウルフ」

 

「インカーネイトォッ!」

 

 宣告と叫びは同時。それは極限の魔法と体術の混成奥義。直撃したものを塵殺する一撃必滅の拳。もしも心意によって人外としての矜持がなければその時点で蒼一の身体は消し飛んでいただろう。けれどそれはこれ以上ない致命の一撃だった。認めた人間以外には殺されないという性質であっても、死なないと言うだけだ。死ねないというだけだ。吹き飛び、内臓をシェイクがされ、滂沱の血を吐き捨てながらも辛うじて生きていた。

 

「ッ……く、ぅ……」

 

 なんとか、立ち上がる。イストほどの耐久力がなくても、あと一歩で死ぬというのはいつものことだ。だから、生きているのならば立ち上がれる。

 

「……しぶといな」

 

「はっ、アンタにだけは言われたくねぇ。マジゾンビか」

 

「よく言われるなぁ。ま、いい加減こんな謎空間ともおさらばしたいし……ベオで殺し切れなかったていうなら、やっぱコイツだろう」

 

 そして蒼一へと銃の形にして手を向けた。指先に銀交じりの蒼い魔力弾が生まれていく。それに悪寒が駆け巡り、飛び出したが遅かった。

 

「頼むぜ相棒――」

 

 放たれたのは至高の魔弾だった。

 ――蒼一の心臓に直接転移した魔力弾が叩き込まれる。

 

「――」

 

 少年が崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

・マテ4:『流石にこれは死んだでしょ』

 

・覇王妻:『回避不可能の転移弾。まさしく初見殺しの必ず殺す技ですね。初見では私でもどうにもできません。体内に跳べば拳士だろうと魔導士だろうと関係ない。対抗手段としては転移中の術式を乱すか転移前にそれ自体を潰すですかね』

 

・マテ4:『オホモダチ技で決着というのは気に入らないですが……まぁご愁傷様でした。そちらの人も強かったですが、相手が悪かったです……って、痛。なにするんですか王よ。言い方を考えろ? 知りません、あ痛っ』

 

・電波嫁:『……』

 

・実妹様:『あー……。まぁとりあえず画面見ましょうか』

 

・助 手:『やれやれ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

「……たっく、ついやっちまったなぁ」

 

『これだけの力量ならば、殺さずに済むほうが難しかっただろう。それよりも、どうやってここを出るのか考えなければ』

 

 ユニゾンを解かないままで頭の中から直接聞こえてくるナルの声に頷きつつ、倒れた伏した少年へと歩いていく。何もわからず、意味もなく殴り合ったが、せめて最後に顔くらい見ておこうという思いだった。近づき、その蒼い髪を握って伏していた顔を持ち上げて、

 

 ――緋色に染まった目が合った。

 

「な、に」

 

『イスト!!』

 

「お友達自慢とか止めろよな――張り合いたくなるじゃねぇか」

 

 変生は一瞬で終わった。緋色に染まっていた目だけではない。蒼かった髪は緋色に、ボロボロで血に染まった着流しの下では血よりも鮮やかな緋色の桜の花びらのような文様が。そして溢れんばかりの覇気。

 

「『緋々神之不条理』。俺の相棒の力だよ、友情パワー喰らっとけや」

 

 緋色の拳がイストの顔面を撃ち抜いた。

 

「――!」

 

 咄嗟にナルが展開した障壁をぶち抜いてだ。Sランクの砲撃にも耐えうるナルの障壁がガラスのように容易くぶち抜かれていた。溜まらずにイストの身体が吹き飛び、

 

「おおおおおお!!」

 

 雄叫びと共に追撃する。吹き飛び、中に浮いたイストを追いかける。その途中にナルがブラッディダガーを展開し、先ほどの光景が繰り返されるが、

 

『なんだと……!?』

 

 蒼一の身体に触れた短剣から一つ残らず割砕音と共に砕けていく。防御はしてない。衣服には突き刺さるが、しかしその緋色の身体や覇気に触れた瞬間から悉く粉砕されていくのだ。

 鮮血の刃は蒼一の疾走を妨げることはできず、

 

「捕まえたぜ……!」

 

 足首を掴んだ。掴んで、そのまま振り上げて振り下ろし地面に叩き付ける。

 

「……!」 

 

 叩き付け、そのまま両の拳による連打を叩き込んだ。それはそれまでのような技量の欠片もない。力任せのテレフォンパンチ。けれど威力は凄まじい。滅茶苦茶であり、だからこそ、どうにもならない。緋色の不条理がイストを蹂躙していた。

 

「くそ、ったれ……ッ」

 

 やたらめったらな打撃の合間を抜き、両手で地面を殴りつけながら跳ね上がって蹴りを叩き込む。

 

「砕牙ァー!」

 

 直撃する。ナルの魔力を纏った一撃で、その分は砕かれたが蹴撃としては作用していた。強烈な一撃であり、蒼一も突き飛ばされた。

 

「ハァ……ハァ……なんだありゃあディバイターか?」

 

『いや……結合分断というよりは、術式や魔力そのものが根こそぎ粉砕されている。防御不可能というレベルでな。……あれは私のような存在からすれば相性最悪だぞ』

 

「……まいったねこりゃあ」

 

 それでも――その口端は歪んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

・覇王妻:『……なんと』

 

・マテ4:『これは、さすがに我でも驚いたな……』

 

・実妹様:『驚く皆さんに実妹が説明しましょう。『緋々神之不条理』、静かさと道理を極めてた兄さんとは本来なら正反対の性質を持つ奥義ですね。スキルとしては、単純に受けたダメージに応じて無理矢理耐えられるだけ耐久上げるということと異能の粉砕……まぁ流石に心臓に転移された弾丸に作用するのは私も驚きましたが』

 

・電波嫁:『まぁ、これはオホモダチ技なので気に入りませんが……フッ』

 

・マテ4:『マトリクス行きますか』

 

・覇王妻:『断空拳も載せましょう』

 

・助 手:『いやいやさっきもこのノリやったから。君たち腹いせに必殺技とか止めてくれたまえ』

 

・電波嫁:『うちもこんなノリですが』

 

・助 手:『今から眷属寝返った方がいいかなぁ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「っう……やっぱこれキツイなぁ」

 

 『緋々神之不条理』、馬鹿げた耐久性と対異能効果があるが、結局のところ本来の自分とは対極にある異能だ。簡単に言えば消耗が馬鹿にならない。それでもあの転移弾を防ぐには異能破壊の力が必要だったし、相棒とか出されれば使わないわけがなかった。

 

「……まぁ次はアレだよな」

 

 無理矢理に耐久を上げているだけなので痛みが消えるわけではないし、傷も修復していない。あの拳のせいで瀕死状態というのは変わらない。

 まぁいつものことだ。

 

「ふぅー……」

 

 長く息を吐きながら、髪をかき上げ銀髪になった青年を見る。

 

「……」

 

 幾つか年上だろう男。何がなんだかよくわからないが、それでも拳士として負けるわけにはいかないし。

 

「此処までくれば意地だぜ」

 

「解ってるなぁ少年」

 

 紅と目が合う。至近距離、手を伸ばせばすぐに届く距離だった。

 

「女に背中押されて、相棒の力借りて負けてきましたとか恥ずかしくて言えないよなぁ。家族にボコられる。炎に雷に闇喰らって心臓に杭からの拳」

 

「あ、まじで? 俺もだわー。嫁に風穴開けられそう。言葉使うと怒るし」

 

「おっかない嫁だな」

 

「アンタの家族もな」

 

 ははは、と笑って、

 

「帰って勝利報告しねぇとなぁ」

 

「だなぁ」

 

 だから、

 

「――負けないぜ」

 

 そして二人は最後の力を開放する。

 

「ブレイクリリース――フルドライブ」

 

「色金宿――瑠璃神之道理」

 

 蒼銀と瑠璃の旋風が吹き荒れる。

 互いに二度目の変生であり、それまでとは違う隔絶した強度。

 イストから発生する魔力が限界を超えて高まっていく。ユニゾンした故にオーバーSランクにまでとなった魔力は融合器であるナルの演算によってイストの身体を極限まで強化し、損傷を超高速で再生し、顔や腕に紅いラインが刻まれていく。

 蒼一から発せられる全ての覇気が消失した。全ての気が人の形に収斂していくそれはまるで一つの異界のように。一切の無駄を生じさせないそれと共に髪が肩まで伸びていく。その髪や瞳はそれまでよりもより深い蒼、瑠璃色へと。同時に全身に幾何学的な刺青が浮かんでいた。

 同時に二人は上着を脱ぎ捨てる。

 もとよりボロボロになった意味を為さなかった着流しやジャケットにボディスーツ。そして露わになる十字と心臓の傷。

 

「イスト・バサラ」

 

「那須蒼一」

 

 名乗り、

 

「行くぞォォッッーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・マテ4:『ベオーれ! ベオーれ!』

 

・実妹様:『なんですかその掛け声』

 

・覇王妻:『先ほども使ったイストの絶招によって対象が粉砕されることをベオるといいます。基本的にイストに対する弄りとか何かが盛大にぶっ壊れた時に使いますね』

 

・助 手:『必殺技すらネタになるのか……』

 

・マテ4:『ともあれフルドライブ――つまり自身のリンカーコアの限界を突破して過剰性能を発揮する文字通り奥の手だな。解りやすく言えば全スペックの上昇、それに発動時にナルが傷の修復もしていたようだが』

 

・実妹様:『兄さんのあれは瑠璃色金っていう異能使った変生というか強化モードですね。簡単に言えば滅茶苦茶速く動いて異能とか全部無効化します』

 

・電波嫁:『もっと言えば――この私との愛の証です』

 

・マテ4:『この私とキャラ被ってないですか? というか今更ですけどなぜイングが妻? 正妻は私でしょうが』

 

・約全員:『今更過ぎる!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 速度という分野に関しては二人の天秤は完全に蒼一へと傾いていた。瑠璃神之道理の超強化に加え、言葉(スタイル)による全身を心臓とする身体能力の飛躍的向上。神格の権能と神格に伍する為に生み出された人外による人間の技術。それらを組み合わせ生まれたのは光速機動という速度の最高峰(ハイエンド)

 事実、この超至近距離において放たれた光速の零拍子をイストは認識することすら叶わなかった。

 

「――!」

 

 それでも認識することなくイストは蒼一の拳を受け止めていた。

 

『――ファーサイト』

 

 リインフォース・ナルの持つデバイスとしての演算能力。それによって生まれるのは未来予知にも等しい行動予測。先ほどの蒼一のように共感して先読みするのではなく、蒼一の動きや周囲の空間等全ての要素を計算して動きを先読みしていた。そしてそれを念話などで口にする必要ない。元より融合したことによって二人の思考は合一している。或は融合事故の危険性もあるが、それでも二人はお互いを信じていた。

 だからイストははじき出されたナルの予測に従い、蒼一の拳を受け止めていたのだ。先読みをしていれば受け止めるのは容易い。それが光速であろうとも彼女の指示に応えることが男の矜持というものだ。

 そして放った。

 

「砕け散れ……!」

 

 必殺の魔拳を。

 

 

・約全員:『ベオったぁー!』

 

・実妹様:『まだです!』

 

 

 それは刹那以下の動きだった。受け止められていた右拳を引き戻し、振りぬかれていく魔拳に全力で下がる。しかしそれでも魔拳の範囲外から逃れるのには間に合わなかった。下がったとしてもそれは僅か一歩分程度であり、それ以上退けば無防備な体に一撃必滅が突き刺さる。

 だからそれ以上は退かなかった。

 退いたと同時に震脚、それを光速にて全身を駆動させて拳へと力を伝達し、

 

「お前が散れ……!」

 

 必滅の魔拳を打撃する。

 

「……!」

 

 塵殺の蒼銀と相反する瑠璃が激突した。

 光速駆動によって行われる超絶技巧、それらによって生まれたのはイストの魔拳にも劣らない一撃必滅の理。拮抗させた腕が消し飛んでもおかしくなかったが、それでも蒼一は躊躇わなかった。『瑠璃神之道理』もまた蒼一と彼の愛しき姫君との絆だ。だからこそ塵殺を破壊することによって致命を防いだのだ。

 そして、必殺の拮抗故に生じた刹那の停滞は蒼一がさらなる奥義を叩き込むのには十分すぎた。

 

「蒼の一撃……!」

 

『――耐えろイスト。回避不可能だ』

 

「オーライ」

 

「天下無蒼・改ッーー!」

 

 加速を載せた拳。双拳による拳撃瀑布。打ち落とし気味の前蹴り。裏拳を虚とした回転手刀突きの実。大地を粉砕するいわゆらない大震脚。大気を掴みそのままぶちまける平手打ち。関節部を砕く貫手。単純故に強力な回し蹴り。ひたすらに研ぎ澄まされた手刀。十の爪を振りぬく爪撃。クロスさせた両腕ごと叩き付ける体当たり。首を掴み大地へと叩き付ける投げ技。そしてそれらが生んだ衝撃を倍増させる為に放つカウンター。

 全十三撃。那須蒼一が持つ我流奥義が光速にて残らず同時にイストの身体を蹂躙した。

 

「■■■……!」

 

 声にならない絶叫が上がり、

 

「それで終わるかよ……!」

 

 続けた。

 

「蒼刀・錻、限定奥義――蒼之逆鱗、流星ッ!」

 

 双手刀にて放たれる十字の大斬撃、そしてその交叉点に叩き込まれた飛び蹴り。そしてそこまでして尚、瑠璃色の益荒男は止まらない。十字閃と蹴撃が炸裂した瞬間には行動は完了していた。

 

「天上天下・蒼――!」

 

 無謬の拳撃。拳士が夢見る至高の一撃。概念的な力すら持ち、発動前から決まると約束された拳がイストに突き刺さり――止まらない。全てイストに直撃する。一つ一つが破格の大威力。どう見ても過剰破壊であるが、しかしそれらを蒼一は全て叩き込み、止まらない――止まれない。

 自身の奥義を立て続けに叩き込んでも、目の前の男を斃せる確信を得ることはできなかった。

 そしてそれは違わない。

 零拍子を叩き込み、威力も全て徹ったと確信した瞬間に、

 

「――ハ」

 

 

 イストが動いた。どれもが奥義だったからこそ、続けさまに放った故に生まれた技後硬直をイストは、ナルは見逃さない。

 

「滅びろ」

 

 三発目――否、両腕にて挟み込むように放たれる四発目だった。

 直撃する。

 

「……!」

 

 即死しなかったのは異能無効が働いていたからに他ならない。あらゆる異能を砂上の楼閣の如くに消滅させる色金の力は必滅の魔拳すらも消して見せてた。それでもベオウルフは魔法と技術の混成奥義。魔法の部分を消しても、極限の武術は確かに残り蒼一を軋ませる。

 

「――」

 

 互いに血に塗れながら目が合い――同時に悟る。

 それまでの一撃では相対する拳士を斃しきれないと。例えどれだけ光速を叩き込もうとも倒れない。例えどれだけ必殺を叩き込もうと未完成の技では終わらない。

 

「――決めるか」

 

「――おうよ」

 

 だからこそ同時に最後にして最大の一撃の決意する。

 

「蒼刀・錻、最終奥義」

 

終焉(おわ)れ」

 

 握った拳は鏡合わせのように。全霊を以て、拳を己の魂として振りかぶる。

 集う瑠璃の輝きは今生きる那須蒼一の魂の具現。愛する少女と共に生きるという道理以外の全てを認めないという祈りが森羅万象を打ち砕く拳だ。けれどそれはイスト・バサラの同じこと。日常を、家族を、大切な人を護るために壊すという不器用な愛の形。消滅、塵殺、終焉という概念の完成系。共に拳聖と称されてもおかしくない二人の拳士が生み出した終着点、完成にして完了形。

 

「――瑠天万翔」

 

「――真・ベオウルフ」

 

 激突。

 そして――

 

 

 

 

 

 

 

・マテ4:『あれ、どっち勝った?』

 

・電波嫁:『蒼一さんですね』

 

・マテ4:『イストですね』

 

・助 手:『はいそこー、同じキャラだからって張り合うのは止めたまえ』

 

・覇王妻:『引き分け、でしょうね。見る限りどっちも死んでないし、あれではもう戦えないでしょう……って』

 

・実妹様:『普通に起き上がって、普通に殴り合い始めましたね。瑠璃神もユニゾンも解けて素面ですけど』

 

・マテ4:『男の人って馬鹿ですねーホント』

 

・電波星:『ぐぎぎぎぎぎ……! またオホモダチを……!』

 

・マテ4:『おい、なんか混じってるぞ』

 

・覇王妻:『今度は一緒にぶっ倒れて馬鹿笑いしてますが」』

 

・実妹様:『いつもの展開といえばいつもの展開ですかね。一回VRでも似たようなことあったて言ってましたし』

 

・電波嫁:『あぁ……あのなんか異常に首への攻撃に対してのトラウマ切っ掛けになったアレですか。寝てる時に首なぞりまくっていたらうなされつづけていましたねそういえば。……あれ? もしかしなくてもトラウマの原因ってそれもあるでしょうか』

 

・約全員:『間違いなくそれだよ!』

 

・電波嫁:『こほん。――いずれにせよ、一体なにがどうなってこんなこと起きたんでしょうね?』

 

 

 

 

 

 

・妖怪神:『言っておくが俺は関係ないぞ? いやほんとマジで』

 




まぁネタバレとか気にしない
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