404小隊 Ghost   作:ひぐらしの雫

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つづかない


mission1-2

ブリーフィングルームにて。

 

 ゴースト、今回の作戦は鉄血のハイエンドモデル、処刑人を暗殺、そしてメモリを回収することだ。我々は鉄血人形の解析を進めているなか、重要な情報を入手した。鉄血のハイエンドモデル、その中でも上位に位置する代理人の会話内容だ。

 その会話のなかで、代理人は「計画」の指示をある人形に下した。我々はその「計画」に強い興味をもっている。その指示された人形の詳細は分からないが、現在最も活発に動いているスケアクロウ、処刑人、ハンターの三体に注目した。この内の一人のメモリを回収してもらうことになる。

 当初は最も戦闘力の低いスケアクロウをターゲットにする予定だったが、グリフィンが攻撃、回収してしまった。ハンターは防衛網が固く、またハンター自信も高い索敵能力を持っている。君たちといえど見つからずにやる、というのは難しいだろう。見つかれば勝ち目はない。鉄血に情報を与えないためにも、出来るだけ静かにやってもらう。隠密性を高めるためダミーを連れていくことも禁ずる。

 よって、戦闘力は最も高いが防衛がハンターより薄い処刑人をターゲットとする。不意を討てば君たちは無敵だ。処刑人は直情的な行動で知られる。君たちなら出来るはずだ。

 

 また、君たちにもう一つ留意してもらうことがある。この画像を見てほしい。

 この人形はM4A1。グリフィンの特殊部隊、AR小隊のリーダーだ。グリフィンはこの人形が余程大事らしく、見つけた場合、最優先で安全を確保するようにと命令を下している。そして、処刑人がいる地域にこの人形の目撃情報が多数確認されている。

 我々の目的はメモリの回収だが、グリフィンの命令を無視するわけにはいかない。人形を見つけた場合、作戦をM4A1の救出任務へと変更する。またグリフィンに情報を与えることを避けるため、救出任務との並行作戦は禁ずる。君たちには昼夜作戦を遂行してもらうことになるかもしれない。覚悟しておいてくれ。

 

 君たちは暗殺を何度もこなしているが、今回のターゲットは別格だ。十分に注意し、作戦を成功へと導いてくれ。幸運を祈る。

 

 

 

 

 

 

 補給が完了し、装甲車が去っていく。

 

「もうつかれた……かえりたい……ねたい」

 

 早速11が弱音を吐く。もう何度聞いたか覚えていないフレーズを小隊全員が聞き流し、同じく何度返したか分からないフレーズを416が返す。

 

「早く終わればその分早く寝れるのよ。しっかりしなさい」

「そうだけど、あの人形のせいで夜になっちゃったんだよ。もうやだよ……」

「人に理由をつけるのは感心しないけど、あの人形のせいというのは同意よ」

 

 目を吊り上げ、416は吐き捨てた。そしてこちらに視線を向けてくる。その顔はやや不満げに見える。

 

「そういえばリード、妙にあの人形に優しかったわね」

「そうか? 別に普段と変わらないと思うが」

 

 そう言ったが、リード自身でもらしくない、とは思っていた。請われたとはいえアドバイスを送るなんて本当にらしくない。作戦中こちら側以外の人形、人間には必要なこと以外は喋らない、と自分に課しているのだが彼女相手には関係ないことを喋ってしまった。

 理由は自分でも分からない。詰問しているような雰囲気を漂わせる416から視線を外すと、45と目があう。その顔はいつもと同じ微笑みのように見えるが、嫌な予感がする。

 

「最初の合流地点で慰めていたよね。すぐに家に帰れますよ、って。優しいね~リード」

「へぇ……」

「私にも言ってほしいな! ねえ、お願い!」

「ねむい……」

 

 作戦中というのにこれじゃあ緊張感がなくなってしまう。何より面倒くさい。こっちが聞きたいくらいなのに、納得のいく説明できる自信などなかった。

 

「ゴースト、こちらオーバーロード。聞こえるか?」

「こちらリード」

 

 いいタイミングで通信が入る。目で集中するよう促すと、皆渋々通信に集中した。

 

「補給は完了したな? 君たちには予定通り作戦を続行してもらう」

「ターゲットの遺体はまだ司令部に?」

「分からない。鉄血に回収されている可能性は否定できない。だが危険を冒す価値はある」

「了解。ゴースト移動を開始します」

「気を引き締めろ。鉄血の夜戦部隊が既に展開している。ダミーを連れていない君たちでは排除に時間がかかるだろう。見つからず、静かにやれ。通信終了」

 

 

「みんな聞いたな、動くぞ。PEQをオンラインに」

 

 小隊が16LAB製のPEQを起動する。リードはかけているサングラスについているスイッチを押した。見慣れた数列が並び、初期化、起動完了の文字が流れ、視界の右上にミニマップが表示される。右下には現在装備しているハンドガンのマガジン内の弾数、所持している弾数、グレネードの残数が表示され、目標地点への距離と方角を示す青点が3.3㎞先に現れる。

 このサングラスは16LABの特別製である。視界に様々な情報を表示する上、ナイトヴィジョン、もしくはマグネティックビューワーの機能をつけることができる優れものだ。小隊の人形達にも同じ機能が視覚野に搭載、リアルタイムで更新されているが、ナイトヴィジョンは別で装備している。そこまでの容量がない、という話を聞いた気がするが、何故かはうろ覚えだ。

 陣形をとれと命令しようとした時、416がこちらに近寄ってくる。

 

「指揮官、あとでね」

 

 呟くように小さな声をリードは努めて聞き流し、ゴーストに指示をだした。

 

 

 

 

 

 

「敵よ」

 

 前方を行く45の言葉に小隊は近くの遮蔽物へと隠れる。

 

「ドローン配置」

 

 11がドローンを飛ばす。通常のドローンとは違う、ステルス性を高められたものは150m先を歩いている鉄血人形兵の小隊に気づかれず、上をとることに成功する。

 

「4人、装甲、ショットガン2、アサルトライフル2」

「近くに敵影は?」

「なし。マークするよ」

 

 11はデバイスを操作し、リードの視界に1、2、3、4のマーカーが表示される。

 

「了解。狙いやすい位置に移動する」

 

 416の言葉と共に、11以外の隊員が音もなく移動する。それぞれが位置についたあと、

 

「捉えた」

「いつでもいいわ」

「指示を」

「いつでも」

「撃って」

 

 全員が頭部に照準を合わせたことを報告したあと、間髪入れず11が指示を出す。サプレッサーごしの乾いた音が響いたあと、立っている鉄血人形はいなくなった。

 

「クリア。先に進むぞ」

 

 リードの指示で小隊は陣形をとり、再び移動を始める。暗い森は静けさを取り戻し、森は小隊の痕跡を隠してくれる。これで2回目の遭遇である。今のところ、問題なく目標へと進めていた。

 

 全員が黙って移動する。作戦中はみな真面目である。元より気を張っている416はともかく、11も作戦中は普段の気怠さを全く感じさせない。その分、作戦のインターバルではだらけきっているが。

 聞くと早く寝たいためにやっているという。オンオフの切り替えがちゃんと出来ていて何よりだ。目が一番いいため、ドローンも彼女に任せている。

 

 

「コンタクト」

 

 9の声に小隊は再び隠れる。敵を確認すべく遮蔽物から顔を出したリードの目に入ったのは見覚えのある人形だった。

 

「待て」

 

 11が同じようにドローンを出そうとするところを止める。

 

「あれはグリフィンの人形、先ほどのスコーピオンだ」

 

 小隊がリードの言葉を聞き、確認する。そこには先ほどの人形、スコーピオンと他4人の人形がダミーを連れて行軍していた。編制拡大を二度済ませているようだ。

 

 ドローンを配置して見つかった場合、装備を見ているスコーピオンにこちらの正体がばれてしまう恐れがある。

故にドローンは使わない。

 

「センサー配置」

 

 リードは腰につけているセンサーグレネードを起動し、効果範囲のぎりぎりを狙い投げる。静かな森とはいえ、その音はグリフィンに伝わらず、気づいていない。

 センサーグレネードとは、効果範囲内の敵性存在を検知、視界に表示するものである。配置するだけでバッテリーが切れるまで働くため、隠密にも戦闘時にも有用性がある。

 

「サブマシンガン1、ハンドガン1、アサルトライフル1、ライフル2よ」

「そのまま待機」

 

 45が敵の部隊編制を報告する。リードは指示を仰ぐべく通信を開始した。

 

「オーバーロード、こちらゴースト。グリフィンの部隊を発見。方角からして鉄血の司令部に向かっているようです。どうしますか?」

「排除することなく、君たちがやったと思わせることなく、陽動するんだ」

「了解。実行します。リードアウト」

 

 通信を切り、目的のものを取り出す。

 

「皆伏せろ。グリフィンの部隊の実力を見てみよう。陽動グレネードを投げる」

 

 小隊が草むらの伏せたのを確認したあと、グレネードを投げる。グリフィンの背後に落ちたそれは着地と共にフレアのように音と光を出す。

 リードもすぐに草むらも伏せる。光に集まる蛾のように、暗い森で音を出すと集まるものがある。

 

「敵よ!」

 

 そう叫ぶグリフィンの人形の声が策が成功したことを伝えてくれる。そして激しい銃声が響く。グリフィンは迎撃を選択したようだ。

 リードは小隊に見えるように手を上げ、ハンドサインで移動を指示する。それを見た小隊は伏せたまま、目標地点へと移動を始めた。近くを通り過ぎる鉄血人形の足音も聞こえるが、眼前で繰り広げられる戦闘の方に気をとられ、小隊に気づくものはいなかった。

 撤退を告げるグリフィンを尻目に、小隊はゆっくりと、確実に目標への距離を縮めていった。

 

 

 

 

 

 

 戦闘もなく、見つかることもなく司令部付近に到達した。

 

「それで、グリフィンの狙いは何だったの?」

「俺たちと同じ目的、そうでなくても情報捜索のため司令部に行くだろう」

「そうだろうね。まあ、いい囮にはなってもらったから感謝しないと」

「あとで表彰メダルをやらないとな。……集中しろ。センサー配置」

「ドローン配置」

 

 近くの廃屋の天井に身を隠す。司令部にセンサーを投げ込み、ドローンで探知しきれない部分を探索し、隅から隅まで確認する。

 戦闘を覚悟したものだ。さすがに司令部がもぬけのからというのは考えづらい。リスクを払うことで、屋内での不意打ちの危険性を少しでも減らす。誰か1人でもダウンすれば全滅の危機であるこの小隊では仕方のないことである。

 だが、その考えは思わぬ方向で裏切られた。

 

「敵影が確認できない」

「……こっちも。ターゲットもだよ」

「ゴースト、固まっていくぞ。これから司令部に踏み込み、安全を確保のうえ、ターゲットを回収する」

 

 リードの指示で小隊が動く。廃屋の天井から降り、集結後司令部に互いをカバーしながら踏み込んだ。

 念入りに時間をかけ、クリアリングする。だが敵影は見つからない。明らかに異常な状況である。

 

「だめ、敵どころかターゲットも見つからない。鉄血はグリフィンの方に行ったのかな?」

「嫌な予感がする。リード、早くここを出ましょう」

「オーバーロードへの通信は外で行う。ゴースト、すぐにここから離れるぞ」

 

 さっきと同じ場所では司令部からあまり離れていない。司令部から100mほど離れた廃屋で身を潜めることに決めたリードは、小隊に指示する。

 45の言う嫌な予感というのはリードも感じていたが、それ以外にもリードは見られている感覚を覚えていた。だが、この場所は念入りにクリアリング済みである。もちろん、監視カメラなどの電子機器によるものも疑ったが、それらしいものを見つけることができなかった。リードとしては後ろ髪を引かれる思いではあったが、何もなく、ターゲットもない以上、長居は無用だ。

 すぐさま小隊は互いをカバーしあい、司令部から離れた。

 

 

 無事に潜伏先へと移動した。

 

「オーバーロード、こちらゴースト。ターゲットなし」

「くそ……遅かったか。了解、君たちの位置を確認した。そこから300mほど南へ行った先にグリフィンが占領した陣地がある。だがグリフィンは撤退したようだ。そこに迎えをよこす」

「了解、移動します。リードアウト」

 

「やったあ、やっとかえれる……」

「最後まで気を抜かないで。撤退したということは鉄血が来る可能性があるのよ」

「416の言う通りだ。先ほどの司令部のこともある。鉄血が来る前に急ぐぞ」

 

 無事帰るまでが作戦である。その点について416は間違っていない。だが、間違えているのは小隊の方ではなかった。

 待ち伏せを警戒しながら進む小隊をあざ笑うかのように、帰還地点まで何もなく到達する。部隊を襲う時は作戦目標を達成し油断しているところを待ち伏せするのが定石である。この小隊は油断などしないが、気を張っていたリードと416にはいい肩透かしだ。

 そうなると先ほどのことがもっと不気味に思えてくる。さらに帰還中の通信がリードが感じる予感を加速させた。

 

「鉄血が撤退していた?」

「そうだ。君たちが陽動したグリフィンの部隊をこのエリアの隅に追い込み撤退させたあと、そのまま撤退したようだ」

「どのタイミングでですか?」

「君たちが司令部に到達するころにはすでに。目的はわからない」

「ターゲットの回収を完了、撤退するまでに私達が間に合わなかった、と考えれば筋は通りますが……」

「ああ、だが不気味だ。君たちの存在に気づいていないとはいえ、疑問が残る。こちらでも調べてみる。次のターゲットはハンターになるが、相変わらず防衛網が固い。指示があるまで待機しておけ。通信終了」

 

「何かこわいね……」

「鉄血が目的としていることが分からない以上、ここで考えてもしょうがないよ。それより、休ませてもらえるみたいだね」

「ああ、指示があるまで待機だ。家に帰るぞ」

「ねだめしなきゃ……」

「メンテが先よ。一日中動いたんだから。問題があるかもしれないわ」

「えぇ……やだ、やっといてよ」

「自分でやりなさい」

 

 そんないつもの掛け合いが終わり、小隊は会話を始める。作戦は成功とは言えないが、全員生還できた。ふぅ、とリードの口から息が漏れる。M4に偉そうにアドバイスした身だが、作戦中は緊張、心配の連続である。気が完全に抜けてしまったリードはぼんやりと車窓から流れる景色を見ていた。

 

「しきかぁーん」

 

 間延びした45の声で意識が戻る。見ると、全員の顔がこちらに向いていた。

 

「何か忘れてない?」

 

 この後めちゃくちゃ絞られた。

 

 

 

 

 

 

 暗く、殺風景はどこかの場所で。

 

 映像を見ていた髪がツインテールで黒のセーラー服を着た少女は新たな自分への命令を確認する。

 内容はある小隊の破壊、そしてリーダーの捕獲だ。ターゲットの情報として送られてきた映像には、鉄血の司令部に突入しクリアリングを行う小隊が映し出されていた。

 そのうちの1人、他の人形とは明らかに違うものに少女は注目する。青い光を灯したサングラスをかける男は、人形達に指示を出している。

 

 

404小隊(Ghost)か……」

「せいぜいわたしが破壊するまで死んでくれるなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





「我々」
 グリフィンの下にいるようだがあまり従う気はない組織。ぶっちゃけ16LABの人。ただし、ペルシカさんとは対立しているらしく、ペルシカさんでも404小隊、特にリードの詳細を知らない。

「計画」
 代理人が進めているあれ。詳細は分からない。作者にも分からない。

妙に優しいリード
 リードは一度死にかけたことがあり、体を機械に置き換えている。言うなれば人形に近い人間。
 もし続けばこの欄は消すかも。

PEQ
 夜戦での命中率が上がる装備。

リードのサングラス
 状況に応じ、補給の際にナイトヴィジョンかマグネティックビューワーに切り替えている。マグネティックビューワーとは物を透視し、金属を探知して視界に移せるもの。文章で表現できなかったので、元のゲームをやった方が分かりやすいと思う。
 みんな、「ゴーストリコン フューチャーソルジャー」をやろう!

夜戦なのに敵を見つける索敵力
 実は補給の際にリードはスナイパーライフルを外し、夜戦時のハンドガンの役割を果たすための装備になっている。
 作者の解釈として、夜戦時にハンドガンを編成することで一マス先が見えるのはハンドガンが小型のレーダーか何かを装備していると考え、このような設定にした。
 間違ってたら指摘していただくと嬉しい。他にもドルフロの設定に詳しい人がいれば教えてほしい。(乞食感)

囮にされたグリフィン
 無事です。修復に資源を多く使うことになったけど。


何もない鉄血の司令部
 実は監視カメラがあった。ただし、見えなくなった状態で。ゲームやった人がいればピンとくるはず。

帰還中の会話
 キャラを立たせようと頑張った結果がこれ。これ別にドルフロにしなくても良かったんじゃないかと思う今日このごろ。反省点。

謎のツインテール
 一体なにボロスなんだ・・・?




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