大洗の鬼神   作:柱島低督

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-注意-
「ご都合主義」とタグが付いているので重ね重ねになりますが、今回特に戦車の性能が敵味方ともに補正かかってます(特に終盤におけるM4の砲塔旋回速度)。描画というか、それらしく戦いの場面を書き上げるに際して実際の現実の性能が一部無視されてます。


紅白戦 -fine-

「あのM4は湿式弾薬庫を採用して、場所も車体下面に移されています。狙うはエンジン一択!」

「はい!」

 

M4A1(76)Wに悟られぬよう、森林の中から、500mの距離で砲撃を試みるIV号。

 

「砲撃と同時に後退します。準備はいいですか?」

「勿論です!」

 

操縦手にも指示を出す。窪地からハルダウンで砲塔だけ見せていたが、車体の車高が高いのが災いし、後部のエンジンルームが少しはみ出している。また、落射量の大きいIV号の75mm砲であれば、その下も狙えた。

 

「撃てッ!」

「はい!」

「後退します!」

 

砲撃と同時に後進。しかしIV号の放ったその砲弾は、途中で土に当たり、土煙を巻き上げる。しかしM4も同時に反応し、車体を回しながら砲を照準し、土煙の向こう側へ主砲弾を吐き出す。見えているのかいないのか、そんな疑問は、着弾の轟音と纏めて一瞬にして吹き飛んだ。

 

「きゃぁ!」

 

着弾の衝撃がIV号の車体を激しく揺さぶる。至近部に着弾した()()が、左側履帯と転輪を破壊したと判定され、左側履帯にロックがかかる。後退して右側履帯を回していたが、そのせいで車体左側面を大きく晒す形になる。その隙をM4は見逃さなかった。

 

「まずいッ!右側履帯を前s」

 

しかしその声は再びの轟音に完全に掻き消され、届くことは無かった。先程の至近弾のものよりも、さらにその前の7.5-cm-KwK 37 L/24(IV号主砲)発砲時のものよりも、大きく、激しい衝撃がIV号を大きく揺さぶる。

 

IV号D型(判定:M4A1(76)Wにより被撃破)

車体左側面への徹甲榴弾の着弾により、車体側面弾薬庫に引火・誘爆。被撃破と判定。

 

 

「うぅ……想定外です…………」

 

上川がIV号車内、装填手席で項垂れている。有利な立ち位置から一方的に撃破されたのである。無理もない。しかし、戦闘はまだ続いている。38(t)が砲撃を仕掛け、M4が反撃の砲撃をした直後に、装填の合間を縫うようにIII号が突撃をかけて至近から砲弾を撃ち込む。

しかし熟練した乗員で構成されたM4はその一切を受け付けず、2両相手に1両で互角以上に戦っている。III号も至近弾複数と、機銃弾数発を受けて僅かずつだがダメージが嵩んでいる。

 

上川は、周辺の地形を思い描き、新たな作戦を逡巡する。

 

「38(t)の装填、もっと上げられますか?」

 

《すぐにでも!》

 

「それでは、38(t)、III号は2方向から全速で突撃、挟撃してください!ただ、悟られないよう、III号は突撃を辞めて38(t)の近くへ移動。2両の森の中からの砲撃であることを印象付けてください。38(t)は、作戦開始と同時に弾幕密度を2倍に、2両分の砲撃に見せかけて下さい。そうすればIII号も同時に同じ方向へ移動していると錯覚させられます。

また、III号は作戦開始と同時に、38(t)と反対側へ、悟られないよう砲撃せずに移動して、突撃に備えて下さい。こちらの最大火力はIII号です。III号の居所を錯覚させ、予期していない方向から攻撃を行うことで作戦が成立します。それでは皆さん、幸運を祈ります!」

 

予定通り、示し合わせたかの如くIII号がピタリと突撃をやめ、森の中からの砲撃に切り換えられる。そして砲撃元が移動を始め、38(t)のもののすぐ隣へ着く。

その刹那、III号が発砲をやめて弾かれたように移動を始め、38(t)も反対へ移動しながら主砲を次々と撃つ。

M4の砲塔は右へ旋回して38(t)を追う。38(t)を76mm砲弾が掠める。車体が大きく揺さぶられるが何とか態勢を立て直し、再びつるべ撃ちにする。砲塔へ数発直撃はしていたが、内部にダメージを与えることができず、他の弾も跳弾などが多かった。

 

そしてその38(t)が踵を返し、森が途切れると同時にM4に突撃を敢行する。速度を上げて迫り来る相手に、M4はIII号が居ないことに一瞬混乱したようだったが冷静を保って対応した。機銃は駆動輪と車体の接続軸の部分を狙い、主砲は砲塔に照準を合わせる。

 

一斉に放たれたそれらの弾丸が、38(t)を破壊し尽くし、撃破判定を与える。しかしその犠牲は無駄にはならなかった。III号が接近するだけの十分な時間を作り出していた。M4は万が一のことを警戒し、38(t)が出てきた側の森へ機銃を撃ち込むが、金属に当たって跳弾し、上空へ逸れてゆく弾も、跳弾時特有の硬質な音も全く聞こえない。その機銃音がIII号の接近音を掻き消しているとも気付かずに。

 

III号が至近までせまり、停車する時の特徴的な履帯の音がM4車内へ響いた時には既に手遅れだった。音に気付き、エンジンを唸らせて移動を始めようとする頃には照準を終え、トリガーが引かれていた。

 

長砲身から撃ち出された鋼の暴力(砲弾)が車体に食い込む。至近距離から放たれた運動エネルギーの全てが破壊につぎ込まれ、駆動装置を完全に破壊。撃破する。砲塔から白旗が上がり、エンジン音が消え、動きを止める。

 

 

 

III号が。

 

 

M4が放った機銃は車体備え付けのもので、砲塔はIII号の接近に気づいていたかの如く、38(t)撃破直後に旋回されていた。独戦車特有の弱点として、車体正面下部の、装甲が薄い部分に変速機が設置されている。そこをピンポイントに狙った砲撃で、III号が撃破された。

 

『ありがとうございました!』と部員一同の声が車庫前に響いたのはそれから暫くも経ってなかったという。




・此方でも注意を払ってはおりますが、誤字脱字等発見された方はお手数ですがご報告頂ければ幸いです。

・ご意見、ご質問などある方は、感想欄までお気軽にどうぞ。

・次話は滝沢視点の、此方からでは描かれなかった内容について語られる内容になります。
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