半年近く投稿が開いてしまい、申し訳ありませんでした(震)
今回で一気に決着まで行きます。
III号B型が地べたを駆け回る。車輌は旧式だが、猛訓練を窺わせる巧みな動きで次々と躱す。
「反撃はしてこないけど、こっちの弾薬はただただ減る一方だよ……」
砲手の古崎が呟くと、上川も反応する。
「今後の本隊との遭遇に備えて、ある程度弾薬は残しておきたいけど……各車、徹甲弾の残弾はどれだけですか!?」
《こちらIII突。
《M93はまだ43発あります!》
《T-34!
「敵の主力はIII突2輛だよ。さっきIV駆撃破したし……」
「そうだね……」
古崎に指摘され、思案する上川。その脳裏には、先ほどIV号駆逐戦車を撃破した時の情景がフラッシュバックする。
『やった!』
『フラッグ車じゃない……?』
最も重装甲のIV駆がフラッグ車になるのがセオリーだが、実際はそうなっていない。罠であると捉えるのが妥当だろう。
「M4!機銃掃射できますか!?」
《いつでもどうぞ!》
「ブローニングの火力なら、車体天板を貫通できる筈です。徹甲ベルトで準備してますから、攻撃開始してください!」
《がってん承知!》
車長の滝沢が意気揚々と車長用キューポラから飛び出し、照準器を睨むや否や、すぐさま銃撃を始める。
その効果は絶大で、凄まじい弾幕に襲われたIII号戦車は、エンジンに支障を来たして動きを止める。そこへ止めと言わんばかりにIII突やT-34の砲撃が突き刺さり、白旗が上がる。
その通信が飛び込んで来たのは、そんな最中だった。
《こちら
《こちら38(t)!奇襲受け大破!戦闘続行不能です!》
そしてその悲鳴にも似た通信は、各車に混乱を広げる。
更に、機銃を撃ち込んでいた滝沢は、遠くで微かに響いた
誰も気付かないまま、M4A1が火を噴き
《クッ!やられた!》
「M4が白旗!」
「嘘っ!?」
唐突に訪れた、突き上げるような衝撃。真横から撃たれたM4は、爆煙を吐きながら横に激しく揺れ、一瞬の後には白旗を上げていた。
その混乱は、上川さえをも襲い、状況を伝えた古崎の言葉に驚きを返すしかできなかった。
【M4A1(76)W、車体側面に直撃弾。車体弾薬庫に誘爆判定!】
審判の声が、通信機からIV号の車内を揺さぶる。
「M3、B1bis、III号は、被弾方向に回ってフラッグ車の楯になって!フラッグ車は敵III突の位置特定を急いでください!」
《りょ、了解です!》
焦ったような声で返答があるや否や、上川は古崎に小声で指示を出す。
直後、砲塔が90°右に旋回し、白旗を上げ黒煙をなびかせるM4越しに、向こうの崖の上、森を睨む。
「さなちゃん、アレがフラッグ車かな……?」
照準器を覗く古崎の目は、既にIII突の姿を捉えていた。
「暗くて不明瞭だね……下の本隊を襲った方かもしれない」
キューポラから頭だけ出して、砲身の向く先を双眼鏡で見つめる上川。その目の前では、T-34/57が目標を捉えている。
《こちらフラッグ車。敵III突を視認しました。これより反撃に移ります!》
「健闘を祈ります!」
一言返し、通信を攻撃隊の各車に切り替えると、続けてこう言い放った。
「撃ち方始め!」
上川が言い終わるが早いか、古崎は一瞬の遅れもなく引き金を引いた。
T-34、III突も初弾を放ち、3発の砲弾がヨーグルト学園のIII突F型に至近弾として襲い掛かった。
「爆発閃光確認できません!第2射急いで!」
《こちらフラッグ車!すみません、後続のパンターが撃破されました!》
【大洗、パンターA型、車体側面スポンソンに被弾。弾薬庫に誘爆し撃破判定】
状況を淡々と告げる審判の声。
しかし、主砲発砲の衝撃で、空気が掻き混ぜられている車内で、誰も聞き取ろうとはしなかった。
(フラッグ車がとどめを刺すのが先か、こちらが撃破するのが先か……)
その直後、IV号を激震が襲う。
「被弾!」
「III突の砲撃を貰いました!」
「白旗は!?」
被弾の白煙が視界を塞ぐ車内で、矢継ぎ早に報告が上がる。上川は衝撃で崩れ落ちた体勢からゆっくりと立ち上がり、後頭部を庇うように手を当てて声を出した。
「まだ行けます」
通信手の声が響き、それを聞いた上川はすぐに古崎に声をかける。
「主砲は?」
「被弾によるダメージが予想できないよ……たぶんあと一発でオシャカになる……!」
「砲尾部、目視点検で損傷見受けられず」
「ならば結構!応戦、撃ち方始め!」
《こちらフラッグ車、更に被弾しました!砲塔旋回の補助動力が停止!……ですが、まだ撃てます》
【大洗パンターA型、車体左スポンソンに被弾。弾薬庫に直撃も、車体左弾薬庫空だったため誘爆判定は無し】
フラッグ車と審判から同時に通信が飛び込む。
「フラッグ車にすべてが掛かっています。絶対に倒してください!」
《了解!》
「装填手は旋回補助して!目標は更に左方向、相対方位左110°へ動きつつあり、距離は400から380!」
「車長!IV号がやられました!」
通信手から報告が来る。滝沢・上川という二大司令塔が実行力を失った今、自分たちでやるしかないと腹を括り、修理完了判定の出た足回りで砲塔旋回を補うように指示する。
「車体後方に入り込まれると、エンジンに被弾した時に厳しくなるから、車体後部をできるだけ晒さないように」
「ん、りょうかい」
落ち着いた声が返ってきて、
「主砲、この一発で決めて!」
「うん!」
「……撃てっ!」
目標を睨み据えた主砲が火を吹き、高初速で砲弾を敵へ送り込む。
「やったっ!」
スコープで目標を睨み続けていた砲手が声を上げ、一拍遅れて白旗を双眼鏡で見た車長も胸をなでおろす。
【ヨーグルト学園、フラッグ車III号突撃砲G型、走行不能。よって、大洗女子学園の勝利!】
そして、通信機から審判の声が漏れ聞こえる。
『ありがとうございました!』
夕焼けの太陽光を真横から受けながら、向かい合って挨拶をする2チーム。正午に始まった戦いは、4時間の激闘を経て大洗の勝利に終わった。
途中、隊長の滝沢が乗るM4A1(76)Wと、チームの軸として活躍する上川のIV号D型が撃破されるなど、危ない局面もあったが、最後はフラッグ者同士の撃ち合いを制した大洗に軍配が上がった。
「いやぁ~、危なかったねぇ」
「はぁ、もうちょっと深く考えるべきでしたかね……?」
「その反省は二回戦以降に、ちゃんと生かせよ?」
「滝沢先輩……そうですね」
夕日を背に、肩を並べて迎えの大型バスへ歩いてゆく2人を、チームメイトがわらわらと取り囲む。
彼女たちの笑顔は、太陽以上に眩しく、温かかった。
・こちらでも注意は払っておりますが、誤字脱字等発見された方は、お手数ですがご報告頂ければ幸いです。
・ご意見・ご質問などある方は、感想欄までお気軽にどうぞ。