ソードアート・オンライン ヘイスト・バレット 作:I_Ryuji
嘗ての高校生クイズのメインパーソナリティーは言った、ヒーローは苦しいときにやってくる。・・・と。
地を焼き、廃墟と化したビルを焦がしながら、アスナの方向へ向かっていった灼熱の光線は、寸前のところで僅かに逸れた。
「・・・っ!?」
「私まで巻き込んで死ぬかと思ったわ・・・。一体何が起こったのよ・・・。」
「弾道予測線が出ないって事は、スナイパーライフルか?だが、あの攻撃を怯ませる程の銃弾なんて・・・」
「キ、キリト君!上!!」
「え?」
彼が上を向くと、ビルの縁に片足を上げて狙撃銃を構える何者かの姿が見えた。太陽光エフェクトによって直視が出来なかったが、彼が浮遊兵器をスタンしたのだと予測ながら判断できた。浮遊兵器が落ち着きを取り戻すと再びアスナの方角に銃口を向けるが・・・
「どっしゃああああああああああ!!!」
「!?」
大きな叫び声と共に、アビエイターワンピースの少女、サポートAIアファシスタイプX、カーナ・アビトボルが垂直落下式に一本の光剣を図体に突き刺した。
「これでトドメですっ!『デプス・インパクト with ガンソード』!!」
右手の光剣の剣先と左手の拳銃から放たれた伍連撃にて、1体目の浮遊兵器を完全撃破した。
「レイちゃん!?」
「えっへん(`・∀・´)!アファシスType-X、堂々推参!なのです!!」
クラインに「アホシス」と呼ばれるだけある自信満々過ぎる元気っ娘AIの登場に、mobも合わせて唖然。
「・・・てことはあの屋上の人影は・・・」
【アファシスちゃーん?こちらの『抑え』は一応一段落致しましたわよー?】
【こちらデイジー。敵及び敵対プレイヤーの殲滅完了。そちらに向かえます。】
「了解です!安全の確認が取れたら、直ぐに向かっちゃってください!」
【了解。】【はーい。】
無線が途切れ、突き刺したままの光剣と激レアドロップを回収し、次の浮遊兵器に喧嘩を売る。
「キリトさん達の邪魔をする脳無し共よ、とりあえずとっととお亡くなりになりやがれなのですっ!!」
浮遊兵器がこの言葉に反応し、レーザーライフルの無差別砲撃体勢に入った。だがこのモーションを、彼女は見逃しはしなかった。
「・・・ふふっ、甘い。」
ビルの屋上からクレハの放った銃弾は、浮遊兵器の顔面部に直撃し、またもや爆裂した。
「おっと、残ってる1体がこっちに気付いたようね。」
「レーザーライフルが来るぞ!箱型室外機の陰に隠れろ!」
「了解、頼んだわよフランクリン!」
徐々に上昇してビルを焼きながらレーザーがクレハの元に侵攻する。一瞬の隙を見て回避したら、ステップダッシュで室外機に逃げ込んだ。
「ノックもしないで部屋に入るとは、こりゃ911しないとダメだねぇ。」
デュアルアームズのアサルトライフル二丁流で、隙だらけの頭部側面を一網打尽、見る見るうちに敵HPが減るが、最後の足掻きとばかりにフランクリンへ銃口を向ける。
「こちらの存在を忘れたのかしら?」
これを見逃すクソ野郎ではない。クレハは攻撃態勢に入った一瞬を見切り、速射で炸裂弾内蔵のヘビスナで発砲した。ダメージの無い爆発エフェクトに巻き込まれ、熱風が彼らを纏う。
「さて、私は降りてアファシスと合流するかな?」
「好きなだけ暴れてこい!」
「ビルで爆発!?」
「やったーなのです!マスターとクレハが釣れたマグロを捕獲したのです!!」
「(相変わらずとは思っていたが、まさかここまでとはな・・・。)」
キリトも、もはや成す術無しで突っ立っているだけ。腕組みをして感心してしまう。
「ちょっとキリトさん?サボってないで、働いて下さい!働かずもの食うべからず、ですよ?」
「あ、ああ!(いや手出しすらも出来ねぇんだよな・・・。)」
その時、後ろからくノ一の如く疾風の速さで浮遊兵器に向かいダッシュする桃色の服の少女が過ぎ去った。
「さーて、銃器密造アップデートで作った武器、GGOでどんだけ有用か、試させてもらうわ!!」
「クレハちゃん!?」
「アサルトライフルMk2火炎弾、とくと味わいなさい!!」
段差で勢いよく跳躍すると、銃口から放たれたレーザーを横回転で回避しながら、顔面部にマガジンの火炎弾をぶち込んだ。
「顔面が燃えてる!追加ダメージが入っているわ!!」
「クレハ!今がチャンスなのです!!」
「勿論!この好機、逃す訳にはいかない!!」
目測撃ちする危険な浮遊兵器。だが犯罪都市の凶悪で強大な力を手にした少女は全ての機械兵器よりも格上であった。
「そんなモノ、当たらなければどうってことないわ!!」
速攻でマガジンを切り替えて第二弾倉を撃ち尽くし、HPを全て削り切った。
「こら!キリト!」
「い、いや、俺達が手を出したところで次元が違い過ぎるんですがアファシスさん・・・。」
「もうっ、サボリーマンヲタクは放っといて、あとはあの鈍足ヘタレロボットだけですね!」
【私が行くわよ!デイジー、合わせて!!】【御意!!】
奥のビル街の隙間から颯爽と出現し、歩行兵器に向かって、片や二丁流ショットガンと、片や二丁流マシンガンを構え走る。
「火炎弾はねぇ、クレハの特権という事じゃないのよ!」
「門番のお仕事は終わりです、その辺でのたうち回ってなさい。」
同じく火炎弾を装填したツェリスカのショットガン、デイジーの軍用マシンガンが1体の開眼した歩行兵器の単眼に次々と直撃する。mobではあるが目を閉じたそうにしている、しかし範囲ミサイル攻撃の後はクールタイムで閉じてくれない。
「デイジー!後はお願い!」
「これで終わりです。鉄クズになってください。」
武器を切り替え二丁流グレネードランチャーに持ち替えたデイジーが、高い跳躍からほぼ零距離からの大連射で片方の歩行兵器を亡き者にした。
「そろそろ空芋する必要もないんじゃない?」
【そうだな、あと一発撃たせてくれ!】
怒りに震える歩行兵器、こうも簡単に門番達が片付けられると、黙ってはいられない。だがその出鼻は、冷酷な殺戮者によって挫かれる。
「お前はそこで正座してな。」
炸裂弾が膝にヒットし、片足が崩れ落ちる。炸裂弾を装填したヘビースナイパーを持ち、ビルから大跳躍を魅せる。
「ねぇねぇ、今どんな気持ち?仲間がいとも簡単にぶっ潰されて、自分だけになった怒りをぶつけようにも出鼻を挫かれて、動こうにも思うように動けなくて、どんな気分ですかぁ!?」
フランクリンは跳躍中にも関わらず、スコープを覗いて顔面にまた一発ヒットさせてスタン状態に移行させる。
「近道の防衛はいい事だけど、今回ばかりは相手が悪かったなぁ!!」
早業で次の弾を装填し、これは速射で歩行兵器の体を苛め抜く。
「クレハ!もう片方の膝、よろしく頼む!」
その指示通り、狙い澄まして膝を爆撃した。歩行兵器が前のめりに崩れ落ちる。
「悪いな、チェックメイトだ!『Event horizon』!!」
切り替えた武器はガンソード、光剣で最後は歩行兵器の背面の弱点を狙い突き刺した。直後に訪れるノーダメージの大爆発で靡くマント、結果彼等だけが近付いて回収する方の全てのドロップ品を獲得し、閉ざされた空港の門を破った。
『QUEST CLEAR!!オールドサウス空港を解放』
「クエストクリアか・・・。あんまり嬉しくないな・・・。」
ビルで隠れるしかなかったアスナとシノンも駆けつける。
「手も足も出なかったあの兵器を簡単に片付けるだけの武器・・・私達がこれから踏み入れる舞台は、きっとそれが当たり前なのね。」
「おい、早く入らないのか?飛行機、あと20分で最初の便が離陸するぞ。」
「・・・行こう。」
気分は浮かないが、完全なる敗北を皆が認め、空港へと足を踏み入れた。
彼らは案内用アファシスの指示で搭乗手続きと片道一人100000クレジットを支払って飛行機に乗った。貸し切り状態の機内にキリト達は、窓側の席を陣取った。しかしフランクリン達は、中央の席に5人並んで座った。
「アイツら、窓側に座らないのか?」
「そっか、AIのレイちゃんとデイジーちゃん以外はGTAオンライン経験者だから、敢えて着いた時に全貌を確かめたいのかな。」
「SBC空港オープンまで2時間半、ちょっと予定をオーバーしちまったが、無事にフライングスタートが切れそうだな。」
「・・・いいや、正直言ってあまり嬉しくないな。今回の解放はフランクリン達が成し遂げたようなものだ。GGOにはない武器を使わないと撃破出来ないってことはないだろうが、あれはそう言っているようなもんだ。アイツらがいてこその戦果であって俺達が獲得した戦果ではない。・・・しかし、いつかは超えなくてはならない壁でもあった筈だ。」
「キリト君・・・」
機内で楽しく会話する仲間は見られない。自分達の不甲斐無さを痛感し個々猛省といた感じだろうか。そんななかで、機内のTVにロスサントスの紹介映像が放送される。それは、旅客機が新エリアの領空に進入したことを指していた。静まり返っていた彼らも、仮想世界と言うに言えない完成度の高いアメリカを模した土地に興奮する。
「あ!あの砂浜、フィッシャーマンズの動画で見たことある!!」
「高いビルが多いですね!!」
「スラムっぽい場所もあるじゃねぇか。」
だが、彼らの顔色は変わらなかった。
「カーナやデイジーはAIだからともかく、僕達はPS4版で経験しているんだ。直に見るという観点、FPS限定になってしまったという点以外は、今更見ても何も変わりはしないだろう。一つ変わっている点は、基本バトルシステムがGGOに置き換わっただけという事。」
「あら?私はXBox360の方よ。11eyesとかも同じゲーム機でやっていたわね。」
「ツェリスカさんもやっぱり大人なんですねぇw」
「私は正真正銘大人よ?GTA5は米国版をやっていたわ。」
「あー、てことは色々規制されてない方か・・・。」
マニアックな話をしていると同時に、天井のアナウンスランプにシートベルト着用のサインが点灯した。
(受付)「初めての御来島の方はこちら、一度御来島された方はあちらから入国手続きをお願いします。」
NPCの案内の下、ポップアップウィンドウに選択肢が表示された。キリト達の一部を除いた全員は当然初入国なので左のゲートに、フランクリン率いる既にアカウントを持っているプレイヤーは、iPadモドキのパッドにアカウントを入力して直ぐにゲートを通過した。
「お、早速プレゼントが届いてる。」
『早期住込報酬として、無料GTAマネー200万ドルを振り込みました。また、GGO版GTAオンライン初ログインキャンペーン報酬として、無料GTAマネー100万ドルを振り込みました。』
「おっし!いきなり300万ドル貰っちまった!って、どうやらゲーム機版のGTAマネーまでは使えるようにはならないのか。」
「フランクリン、ここにGGO版GTAの説明があるわよ。多分これは全プレイヤーに配布されてると思うから、読んだ方がいいんじゃない?」
「それもそうだな。けど、ゲーム機版で購入した物件等には入れるみたいだから、早速僕達で組織組まないか?」
「早速組織組むの?いいわねぇ、あなたの組織かしら?」
「マスター、どうやらアカウントの紐付け登録を行ったプレイヤーにはアファシスの同行も許可されているようです。私達も入国許可が下りました。」
「やったー!マスターと一緒にアメリカ散策出来るのです!」
テンションが上がるアファシス達。セッション内のプレイヤーも自分達しかいないという事がよく分かり、ここはのんびり説明書を見る為に、フランクリンが所有するクラブハウスに向かう事にした。
「クイックメニュー、モーターサイクルクラブ、MC登録・・・よし、使える。」
『FranklinがMCプレジデントに登録した』
「そんで、クレハとツェリスカ、カーナとデイジーを・・・って、クレハとツェリスカさんはなんでしたっけ?」
「やだなぁ、ここではクレハじゃなくて、『タニーシャ』と呼んでくれるかしら?」
「私も、GTAオンラインでの登録名は『アマンダ』となっているわ。」
「その会話を聞くだけで、相当な手馴れであることは、容易に想像出来ました。」
「そうか?ならここでの呼び名も、僕が付けてやろうか。キリト達に呼ばれる名前はいつもの通りだぞ?」
「いいのですか!?やったぁ!!」
「簡単な事だ、デイジーは『エバ』、カーナは『トレイシー』と名付けよう。他のプレイヤーに話しかけられたら、こう言うんだぞ。」
GTA5のオフライン、即ちストーリーモードでの名前の一部が丸々プレイヤー名となっている辺り、相当な手馴れである事は大いに想像出来る。
「はーい!」「了解、データベースに記憶しました。」
「さてと移動手段移動手段・・・カーナは僕のバイクに乗ってくれ。クレハ・・・じゃないくてタニーシャ達は他の車両等で移動だ。他のプレイヤーが来ていない以上、焦って移動する必要もない。」
2人乗りのバイクにカーナを乗せて一足先にクラブハウスへ出発したフランクリン。その後を追うように、クレハはペガサスに電話してバザードを取り寄せた。
「風が気持ちいいのです!こんな速いバイクに乗るのは初めてなのです!!」
「そうかいそうかい、けどここには更に爽快な事が山ほどあるんだぜ?そろそろキリト達が入国手続きを済ませて空港の外に出て、チュートリアルを済ませて僕達のセッションに入る筈だ。彼等には『現実』という物を見せてやらないといけないから、準備もしないといけないからな。」
「マスターの技術、しっかり盗ませてもらうのです!!」
上空に飛んだ武装ヘリも、滅茶苦茶速いバイクを追って夜の摩天楼を遊覧飛行する。
「いざ自分の手で操縦すると難しいなぁ。あ、コツは掴めたかな?」
「安定していらっしゃいますね。流石経験者です。」
「着地もしっかりするのよ?完全オープン前にお初『WASTED』だけは勘弁してもらいたいわね。」
「大丈夫大丈夫!あ、信号弾撃ってくれた。あそこに着陸するんで、しっかり掴まっててください。」
クレハのバザードがクラブハウスの屋上に着陸して、梯子で降りてきた。
「さぁて。ようこそ、僕のモーターサイクルクラブへ。」