そんなこんなで約一世紀、俺は未だに現世に滞在していた。
そんな俺だが、多少面倒くさい事態に陥っていた。
……ある時期から、パッタリと伝令が届かなくなったのだ。それこそ俺の存在が忘れさられたかの如く。
一応は問題が起きない程度に仕事はしているのだが……如何せん飽きてきた。
最近では相手になる兵の霊も減り、平和な時代が続いているせいか虚の質も落ちてきている。
これだけ長い時間世話していれば流石にこの世界にも愛着が湧いてくる。だが、一番の目標である最高の喧嘩をするための道筋としては、少々寄り道している感が否めない。
平和なのは悪い事じゃないが、修行には向かないな……。
そんな事を悩んでいた折り、ほぼ100年振りくらいに伝令が届いたのだ。
――それは、帰還命令であった。
「刳屋敷隊長が死んだだと!?」
久しぶりに故郷の土を踏んでみれば、俺を待っていたのは刳屋敷隊長の訃報だった。
といってもそれ自体はかなり前の事らしい。
……なんでも十一番隊の隊長職を懸けた試合で敗北したとの事だ。
――あの隊長が、負けただと……?
……隊長が負けるだなんて、にわかに信じ難かった。
俺にとって隊長は、ある意味で絶対の存在だったのだ。
自分にとって身近な強さの指標であった浮竹や京楽、その二人を超える強大さを身を以て知っている。
それは経験が伴っていた分、総隊長に対して感じているものよりも上だったのだ。
「ありえないだろ……」
「……そう感じたのはボクらだって同じさ――あの刳屋敷が……ってね」
「ああ、俺もそう思ったよ……」
「京楽、浮竹……」
「久しぶりに会えたのにこんな話からですまなかったね」
「いや、いい……」
死は身近にあったが、自分に近しい人間が死んだのは初めての経験かもしれない。
今の俺には、その感情の呑み下し方がわからなかった……。
今思えば、伝令が届かなくなった時期と隊長の死はちょうど一致している。
隊士の誰かが書類仕事をサボったのだろう。そしてそれが発覚する前に隊長の交代があり、その中で有耶無耶になってしまったと……。
今回呼び戻されたのも、任務期間が流石に長過ぎるという浮竹と京楽の進言があっての事らしい。
それが無ければ、発覚するまでどれだけの時間がかかったのだろうか?
……アイツらには感謝しないとな。
十一番隊の隊舎、その寮に戻ってきたが落ち着かない。今の十一番隊には俺が知っている奴は誰一人として残っていなかった。誰も彼もが俺を胡乱げな眼で見てくる「このガキは誰なんだ?」と。
いつもであれは叩きのめしているのだが、今はそんな気にもなれなかった……。
無自覚だったが、どうやら俺は刳屋敷隊長のいた十一番隊に愛着を持っていたらしい。
思い返しても喧嘩ばかりの毎日だ……だが、そんな馬鹿みたいな日常が結構楽しかったのだ。
アイツらどうしてんだろうな……。
刳屋敷隊長を慕っていた奴等は隊長が変わった時に出ていってしまったのかもしれない。もしくは戦いの中で……。
……斑目のヤツもそうだ。
特に隊長を慕ってたヤツだ、多分、野に下ってしまったのだろう。
斑目は副隊長以外で唯一、俺と最後までタメ張れた相手なのだ。思い返せばアイツから学んだ事も多い……それに隊長や副隊長からもだ。
戻らない過去の記憶に身を沈め、俺は一人眠りにつくのだった……。
次の日、そのまま休暇となった俺は一人、ぶらぶらと歩いていた。
「この辺りも結構変わったんだな……」
瀞霊廷、潤林安、どこも知っているのに、どこか知らない雰囲気が漂わせていた。
「一世紀も経てばそりゃそうか……」
自分がいなかった時間の流れを少し寂しいと思いながらも、俺は目的無く彷徨い続ける。
だが、そんな俺の前に躍り出たヤツがいた。
「こんなところにおったのか真よ! 浮竹と京楽のヤツから帰ってきたと聞いて見に来てやったぞ!」
夜一だ。
「夜一……」
「んん? なんじゃお主、腑抜けおってからに」
「すまねぇな……」
「此奴が謝ったじゃと……!? これは、重症じゃ……!」
うるせぇほっとけ……誰だってそんな気分の時があるだろうが。
……まぁコイツに言ってもしょうがないか。
久しぶりだしよく見てみれば、夜一は前とは違って白い羽織りを身に纏っていた。それに背も伸びている様に思える。
「お前、少し変わったな……」
「そういうお主は変わらんな! 小さいままじゃ!」
「あ゛ぁ゛!?」
それでも変わらないその騒々しさだけは、少し懐かしかった……。
多分過去の私も肉付けが足りないと思って投稿しなかったのだろうと思いますが、この際なので投稿しちゃいました。
書き上がっていたのはとりあえずここまでです。これ以降の話を書いていけるかは未定です。すみません。