死んだクソガキTS転生して死神になる   作:小豆団子

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主人公の性別が周りからの勘違いされているのが分かりやすい様に、前話に主人公の袴が青い事を等を追記しました。


八話 さんぽ

 

 

「くそっあの野郎、どさくさに紛れて尻撫ようとしやがって!」

 

休日にも浮竹とあの野郎、京楽春水との修行は行っている。

 

あれから時々、京楽が顔を出す様になった。

二回目に会った時に一応、一応、自己紹介は済ませたのだがアイツは浮竹と同期の六回生、つまり最終学年らしい。

 

そして、多分アイツは俺が女なのだと気付いてる。

 

最初に会った日の後、浮竹が気を失っている俺を寮へと運び、身体を拭いたり着替えさせたりしたのだと聞いてドン引きした表情をしていた。その後、俺に目配せしてきたしな……まぁ無視したが。

こんなヤツでもそんな分かりやすい表情をするんだな、と妙に印象深かった。

 

「大丈夫、褌とかは脱がせてないし男同士なんだ、恥ずかしがることじゃないさ」じゃねぇんだよなぁ……。

 

まぁ男子寮とはいえ俺は一人部屋(という名の隔離部屋)だし他の奴等に見られてはいないだろう。それに浮竹に身体をどうこうされるのなんて今更だ。

 

 

 

そしやはりだが京楽は強かった。初日でも解っていたが一度整理した事でその強さが際立った。

 

浮竹は基礎基本を極めた様なヤツだったが、アイツはなんと言えば良いのだろう? 全く掴み所の無い陽炎みたいなヤツだった。

 

浮竹は基本に忠実な戦い方をしていて且つ応用もできる万能型だ。

ただただ型をなぞるだけのヤツならいくらでも倒してきたが、浮竹相手だとこちらの崩しがまるで通じない。

呼吸を乱そうとしてもまるで不動。

その基礎の厚みでもってこちらの綺麗とは言えないダーティーな攻めすら簡単に跳ね返してくる。

 

一方京楽だが、性格と同じ様な掴み所の無い戦い方だ。

相手の呼吸を乱し自分のペースに誘い込んでわけもわからぬ内に負けている。どちらかと言えば俺はこちらに近いのかも知れないがやはり練度は桁違いだ。

その剣舞は華麗で、枚散る花吹雪の如し。その不規則に舞う花弁を苦労してつかまえても実は霞でできた幻だったと言わんばかりの変幻自在さだ。

やっとの思いで弱点を見極め仕掛けてみたら実は得意な太刀筋でしたってか? 絶対アイツ性格悪いわー。

 

 

お互い気は合うみたいだが対極にある様な性格と戦い方だ。それだけに得られるものは多いはずだ。

こんなチャンスは滅多に無いのだ。二人の強みを学んで絶対ものにしてやる。

 

 

 

 

 

 

所変わって潤林安、俺と浮竹が初めて出会った場所だ。

午前中に浮竹と京楽とやり合ってそのままの流れで瀞霊廷外へと飯に出たのだ。家族に会いに行くとかそういう理由でもなくただ飯に行くって理由なのに取れるもんなんだな、通行許可証。流石は優等生。

 

物珍しさに適当に歩いてきたのだが……。

 

「つーか……何処だここ?」

 

当然帰り道がわからないわけでは無い。遠目に瀞霊廷が見えるので方角は問題ない。

問題は通行許可証だ。昼食を奢らせたあと浮竹は寒気がすると言って帰ってしまったのだ。もう一人の監督役として京楽もいたのだが別れてしまった。

 

「あー……早まったか?」

 

だがあれはアイツが悪いのだ。

浮竹と別れた後に「良いものあげるよ」などと言われ甘味かと思って付いていったら女向けの小物屋さんだった。

しかも俺の髪にいきなり櫛を挿してきやがったから反射でぶん殴って飛び出してきてしまったのだ。

今回といい修行の時といいまさかロリコンかアイツ?

いやまぁ、多分それは無いか……普段声をかけているのは京楽に近い年頃の女ばかりみたいだしな。なんというかこちらの反応を面白がってる節がある。

それはいいとして――。

 

「どうすっかな……」

 

門の前で待ってればそのうち会えるだろうか?

それはそれでつまらなさそうだが……。

 

「おい、おぬし」

 

―――ッ!

 

いきなり真後ろに現れた気配に咄嗟に裏拳を放つ――避けられた!?

 

くそっ、距離が近い! こうも完璧に紙一重で避けられるだなんて!

 

相手を飛び退かせるために放った攻撃が裏目に出た。防御体勢はとれそうもない――なら!

あれから何とか発動させれるようになった瞬歩で無理やり距離をとり構える。

 

「随分な挨拶じゃのう。親切で声をかけてやったというに」

 

そいつは褐色の肌と漆黒の髪に黄金の瞳をもった女のガキだった。見た目だけの歳ならば俺より二つ三つ上だろうか?十五は越えていないだろう。

 

「はっ! 気配を消して真後ろに立つヤツが言えたことかよ!」

「いやすまぬな、あの程度の隠行を察知出来ぬとは思わなんだ」

「てめっ……!」

 

こちらが構えを取っているにも関わらずガキは自然体のままだ。

 

くそっ……男なら兎も角、やる気の無い女相手に喧嘩を売る趣味はねぇんだよ。

向こうから話しかけて来たのだ、何か用があるのだろう。構えを解いて相手を窺う。

 

「……で?」

「で?」

 

しびれを切らしたこちらの問いに綺麗な金の目をパチクリとさせて心底不思議そうにしている。

 

コイツ……!

 

「いやそっちから話しかけて来たんだろうが! 用は何だって聞いてるんだよ!?」

「ああ! そうじゃったそうじゃった!」

 

「成る程!」と言わんばかりの顔に力が抜ける……よく変わる表情だな……。

 

「いやなに、辺りをキョロキョロと見渡していたものだから迷子かと思うてな 」

「……迷子じゃねぇよ、知り合いがはぐれただけだ」

「やはり迷子じゃったか!」

「迷子じゃねぇ!!」

 

 

 

 

 

あれから俺は何故かそのガキ、夜一と並んで街を歩いている。

 

「ところで真よ……ぅぐ……その服、真央霊術院のものであろう?…………何故外におるんじゃ?」

「ナチュラル呼び捨てかよ……別に、知り合いと飯に来ただけだよ」

 

夜一は串団子を頬張りながら話しかけてくる。

 

「というかはしたないぞお前」

「ん、おぬしそういうのが気になる感じかの?」

「いや……ただ、所作が綺麗なくせに行動が伴ってないから違和感あんだよ」

 

多分夜一は貴族なのだろう。動作が洗練されているし服も地味ながらかなり良い生地を使っている。言葉もここらで滅多に聞くことのない古風なものだ。

 

「ふむ、おぬしも食うか?」

「いら――ぉぐっ!」

 

こいつ、いきなり団子突っ込んできやがって! 串が刺さったらどうするつもりだよ!?

 

「つべこべ言わず食え」

「ちっ、貰ってやるよ」

 

「最初からそう言えばいいんじゃ」

「…………」

 

……自由奔放すぎだろコイツ。

その整った横顔を眺めていると夜一の視線が急に団子から周囲に向けられた。

 

「むっ、もう見つかってしまったか」

 

なんだ?

 

「逃げるぞ真」

「あん?」

 

夜一に腕をとられる。

何なのだと思い周りを注意してみると周囲に隠れてこちらを窺っている視線を感じる。

 

ただの日常の中でこれに気が付くとはすげぇなオイ?

 

「儂に合わせよ」

「ちょっ、待てや……!」

 

おいそれ瞬歩だろ!合わせろったってどうやればっ――。

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

「体力無いのぉ……おぬし」

 

オカシイのてめぇだろうが!

瞬歩は足裏から霊圧を炸裂・放出させている関係上、身体の内部で霊圧を巡らせて強化する通常戦闘術とは消耗の度合いが桁違いなのだ。普通は疲れる。

 

それに合わせろと言ってはいたが、どちらかといえば俺の拙い瞬歩に夜一の方が合わせていた。

逃げる方向を指示しては、どれだけ跳ぶかもわからない俺の瞬歩に一瞬で合わせ続けていたのだ。控えめに言って天才だろう。

しかも途中で足捌きや瞬歩についてアドバイスをする余裕まであるとか化け物かよ。

 

「そろそろ息は整ったかのう?」

「当たり、前だろう、が……ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで? アイツら何なの?」

「うちの家の者じゃのう。黙って抜け出して来たから探しにきたんじゃろう」

 

あーはいはい、家臣ね流石はお貴族様だわ。

確かに追っては来たけど殺気立ってはいなかった……必死そうだったけど。

つーかコイツ明かに逃げなれているな。逃亡ルートは的確で視線を切って相手の速度を上げさせないようにしていたし常習犯かよ。

 

「家の者、ね……貴族でそこまで動けるのなら死神にはならねぇのか? その服装は死神のものでも霊術院のものでもないだろう?」

「ふむ、その疑問ももっともじゃの。一応霊術院に席は置いてあるぞ? ただ家で学ぶ事の方が多いだけじゃ。卒業後の配属先も既に決まっておるから霊術院で成績を残す意味も無いしのう」

 

思った以上に貴族っぽい回答だったわ。

 

瀞霊廷にだいぶ近いところまでたどり着いてしまったが夜一とこれっきりというのは惜しいな。

コイツの歩法には眼を見張るものがある、学べる事も多いだろう。それに足捌きや体捌きからいって近接戦闘術、白打もかなりのものだろう。

総合力で言えば解らないが、歩法と白打に関してはもしかすると浮竹や京楽を超えるかもしれない。白打主体の俺としては是非参考にしたいのだ。

 

「あー、なんだ……また、会えるか?」

「…………」

 

「何だよ呆けた顔して……」

「いやぁ? おぬしも可愛いところがあるんじゃなぁと」

 

「かわいいだあっ!?」

 

ニヤついた顔でこちらを見てくる。ぶん殴りてぇ!

ふざけんな! 俺はお前の戦闘技術についてだな……!?

 

「まぁそうじゃな……頻繁にとなると家に監禁されかねないが、たまになら大丈夫じゃろう」

「そうか! ……それならいつも知り合いとやりあってる場所があるんだが――」

 

「―――、―――?」

「―――?―――っ!」

 

 

 

 

そのままアレコレと話し込み、気付けば瀞霊廷の門前までたどり着いていた。

 

「そろそろお暇するかの、面倒そうなのもいるみたいじゃしな」

「そうか、じゃあな夜一」

「おぬしも達者でな、真」

 

そう言った夜一は門とは別の方向へ駆けていった。追っ手を迎えに行ったのだろうか?

 

「つか結局道案内してるんじゃねぇか……」

 

 

 

 

 

 

「おやぁ? 探したよ真ちゃん」

「ちゃん付けはやめろ」

 

夜一と別れて直ぐに京楽が合流してきた。

 

「勝手にいなくなって心配したよ、迷子になってるんじゃないかって」

「なってねぇ!」

 

何てこと言い出すんだこの野郎。俺が迷子になるはずがないだろう。

 

「そもそも監督者のくせしててめぇが付いて来れなかったのが悪いんじゃねぇか、遅いんだよ」

「うーん、それを言われると弱いねぇ……そうだ、お詫びと言っちゃなんだけどこれ受け取ってよ」

 

洒落た小包を開けると中から櫛が出てきた。

 

「……おい」

「いやー、店を騒がせてしまったお詫びにね? 僕は使わないし君にあげるよ」

 

俺へのお詫びじゃなくて店へのお詫びじゃねーか。

はね除けたいが、どうせ断ってもしつこく勧めてくるのだろう。もう面倒だし受け取っておくか。

 

「まぁいい、寄越せ」

「挿してあげよっか?」

「てめぇに刺すぞ」

「おお、怖い怖い」

 

おどけて見せる京楽。本当面倒くさいなコイツ……。

 

 

「じゃあ帰ろっか?」

「……そうだな、今日は少し疲れたわ」

 

 

 

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