「早速だが、作戦を指示していくぞ」
オンラインカメラとモニターを使い、遠く離れていてもリアルタイムで図を見たりして作戦を練れるのはありがたいことだ。作戦室にはこうしてカメラなどを用いてリアルタイムで合同作戦を練っていくことができるようになっている。セキュリティなどはもちろん万全の上で。
「作戦を始める前に、明石にきっちり敷地内を調べてもらったか?」
「ええ。動力が停止している謎のサーバー群を見つけました。調べてみましたけど、どうやらどこかに横須賀のデータを送信していたようです。基盤が抜けていたり、破損していたりで復旧は不可能です」
「へえ。『未来視』の高雄が言うなら間違いねえな。何でいるかは知らねえが」
「明石に頼まれてサーバー群の解析を行っておりましたので。他にはめぼしいものはございません。取り付けた時期は、おそらく2年ほど前でしょう」
「ふん。三条が来る前か。大方、安久野を切る前提で保守機器と称して付けたんだろうな。おそらくは、司令長官が手塩にかけて育てた誰かをはなから着任させるだろうと予測してな。まあ、俺たちの作戦はどっかの誰かに漏れる心配はほぼないと言えるな」
(まるで何もかもお見通しのような口振りね。『未来視』はこの方が名乗った方がいいんじゃないでしょうか。刈谷提督、底が見えない)
椅子に深く腰掛け、不敵な笑みを浮かべる刈谷提督。彼は以前と性格が180°変わったかのようになってから、何か本当に未来を見透かしているかのようにズバズバと物事を予想し、難事を解決していく。虎瀬提督が裏で1枚噛んでいることは知っているが、頭の回転が並外れてよく、彼に口で勝てる者はほぼいない。最強の頭脳を持つと言う大府提督でさえ、論破する時もある。普段は大府提督に言い負かされているが、全ては「フリ」ではないだろうか?と高雄は予測する。
「じゃあ始めんぞ。ついてこいよ」
そう言って刈谷提督と玲司の作戦会議が始まった。高雄がここに陸奥とは別に留まっているのはもう1つ、親友と信じて疑わない横須賀の頭脳、大淀の作戦の指示を見るためである。横須賀から初めて『女王』の名を持つ艦娘が現れた。原初の艦娘が予想だにしなかったことだ。
この初めての快挙に原初の艦娘の期待は一層高まった。できれば、親友と信じて疑わない大淀にも、何かニノ名を送りたいところである…。そう思っていた。それとは別に、やはり提督の作戦を左右するかもしれない補佐をする秘書艦というものが、自分以外にはどんな事をしているのか気になった。キス島で名采配をした報告書を読んだ高雄は、この目で見てみたいと思った。
………
西方海域作戦。目標は西方海域のカレー洋リランカ島沖に巣食う深海棲艦の「姫」を撃沈すること。姫は島に陣を構えていると言う。この「姫」、港湾棲姫を撃退すると同時に「未知なる空母型の深海棲艦」の発見、撃沈が目標となる。最悪、未知なる空母型は手に負えないなら港湾棲姫だけでも撃沈させよと言う。
刈谷提督の艦隊を主力とし、玲司達は刈谷提督の補佐に回る。時に刈谷艦隊が先陣を切ることもあれば、三条艦隊が先陣で出撃することもあるとのことだ。
「今回の総指揮は俺。総旗艦はこいつだ」
「クマー。総旗艦の球磨だクマー。よろしく頼むクマー」
「えっ、龍田さんじゃないのですか?」
高雄が驚きの声をあげた。刈谷提督の龍田と言えば、その実力は凄まじいものだ。深海棲艦が震え上がるほどであると言うが、今回は違うのか。
「ずいぶんと失礼なヤツクマ。クマの活躍を見て慌てふためくなクマよ」
「うふふ、私はぁ、球磨ちゃんの補佐よ〜。高雄ちゃん、球磨ちゃんの活躍、見てあげてね〜」
「ま、お手柔らかに頼むわ。で、さっそくだが1週間後、出撃する。お前らが先陣。俺らが後追いだ。ジャム島は俺らだけで壊滅させておいた。カレー洋から攻めていく。空母機動部隊を編成しろ。しっかり海図見て、作戦練っとけよ。じゃあな。ああ、高雄。お前は口出しすんなよ」
「わかりました」
言うことだけを言ってプツンと画像は切れて真っ暗になるモニター。きっと何か企みがあるのね…と高雄は小さくため息をついた。おそらく玲司達を試しているのだろう。大まかな作戦は伝えられたが細かい指示は与えられていない。海図を見つつ、大淀、鳥海、霧島が考える。
「どうも刈谷提督の作戦には意図があるようですね」
「はい。私もそう思いました。けれど、深読みしすぎるとルートから逸れそうですね」
霧島と鳥海が何かに感付いていた。その頭の回転の速さと着眼点は優秀だ。深読みしすぎて空回りするのでは、とも思ったがそうでもないらしい。
「深読みをしすぎてもいけません。ですが、空母機動部隊と言うのがどうも…セオリーであれば翔鶴さん、瑞鶴さんを出すところですが、それでは編成も重い気がします。どちらか1名と祥鳳さんを…ううん、やはり空母のゆとりがないのは困りますね」
「じゃあ最上を出すのはどうだ?」
「いえ、最上さんは貴重です。航空巡洋艦は最上さんだけです。早々と切っても良いものかと考えます」
「火力をだすために戦艦はいかがでしょう?」
「後のカスガダマとリランカ島沖、港湾棲姫を討つのに必要です。特に、カスガダマは純粋な火力勝負になるでしょう。霧島さんの高火力は有利です。扶桑さんもですし、切り札の大和さん…3人か…ううん、戦艦も足りない…」
「潜水艦対策はどうしますか?」
「対潜が得意な五十鈴さん、時雨さんはリランカ島に多く蔓延る潜水艦隊に貴重です。どちらかと言えば水上艦隊、かつ火力が欲しいです。駆逐艦と言えど。あと、防空にチカラを注ぎたい。吹雪さんの投入を考えます」
「いや、皐月と文月を入れよう。防空に長けている。吹雪の防空能力は大きい。ここは皐月と文月で押し切れるだろう。摩耶もいるしな。カスガダマのほうは空母が少ないだろうからな。火力は難があるが、そこを鳥海の火力と翔鶴の艦攻隊で蹴散らす。名取も入れよう。火力は名取もあるぞ。阿武隈は改二なっての甲標的がでかい。阿武隈はカスガダマだろうな」
執務室で4人のディスカッション。それはなかなかに洗練されたものである。必要以上に慎重ではないだろうかとも思うが、人数が少ないだけに選別にも気を遣う。特に空母の数が圧倒的に少ないのだ。空母の制空権争いは必須だ。高雄は私ならば…こうするんだけどな…と思うことが1つ思いついたのだが、黙っておくことにした。
「そうだ!いるじゃないですか!空母が!!」
「……そうじゃないですか。いるじゃないですか!」
大淀と霧島が気がついた。鳥海もああ!と思いつく。
「「「龍驤さんと赤城さん!!!」」」
「そうじゃないか。何でもっと早く気がつかなったんだ俺も…ええい、これじゃああの2人に失礼すぎる」
そうして、玲司が龍驤と赤城を呼んだ。そうして、出撃の旨を正直に伝えると龍驤は膨れっ面を見せる。
「おう、やっとうちらご指名か。横須賀に着任して、空母が足らん空母が足らんってな。うちらは除けモンなんやぁ…って毎日枕を濡らしとったんやで…」
「本当はやけ酒して翔鶴さんや間宮さんを困らせてただけですけど」
「そう言うてアンタかてバクバクおつまみおかわりしまくって間宮を困らせとったやろが!」
「あれぇ?」
「とぼけんな!」
「ねえ、お兄ちゃん、島風の出撃はない!?」
「あー、あたしも参加したーい!夜戦!夜戦したいよぉ!」
「わーった!わーったから!島風と川内も加えるから!」
玲司が承諾をしたら、やったー!と大はしゃぎ。「原初の艦娘」が横須賀から出撃することとなった。猫の手も借りたい。横須賀の一員になったのだから、教官としてだけでなく、出撃だってさせてもいいじゃないか。大淀達の閃きがなければ思いつかなかった。みんな、ナイス!と間宮アイス券を1人ずつ進呈。
「よし、これなら何とかなるか。しかしまあ、課題がずっと前から持ち越しになってるのは何とかしたいな…」
「まあまあ、とりあえずはうちらに任せとき!ここの子らとの連携は、割とできてるんやからな」
「おうっ!島風も艦隊演習やってるんだよ!」
「ま、こう言うこともあろうかと思ってね。へへーん、兄さん、見ててよね!」
原初の艦娘を加えて食堂で全体ミーティング。艦隊編成も兼ねて。龍驤と一緒の艦隊になった摩耶は妙にテンションが高いし、赤城と組む吹雪は緊張しているし。島風と川内はマイペースだし。出撃しても「原初の艦娘」がいるから、と慢心はしない。逆にそれで慢心した日には龍驤の恐ろしいしごきが待っていることを摩耶達は知っている。いや、それはわかっているが別に気負うことはないのだ。だって、もう龍驤達だっていろいろと教えてくれるが、もう横須賀の一員なのだから。
/
出撃の編成オーダーを読みながら、刈谷提督は楽しそうにしていた。
「へえ、『原初の艦娘』を出すのは上出来だな。いるのに使わねえ手はない。艦娘自体が根本的に足りていねえのに、出し惜しみなんざしてたらバカの極みだ」
「それは無計画よね〜。三条提督がそんなことするはずはないと思うけど〜。カレー洋海域は龍驤さんを出したみたいねぇ」
「それでいいさ。適材適所。龍驤だってそう思ってるはずだ。さーて、見せてもらうぜ
………
「よっしゃあ!久しぶりに行ったれや!」
「敵機確認!対空砲火、一斉射撃だ!行けぇ!!」
摩耶の対空砲火が吼え、敵の艦載機が墜ちる。龍驤の火の塊となった艦爆隊が急降下を始める。今までにない新鮮な戦いだった。
「摩耶さんに続くよ!いっけー!」
皐月も負けじと倉庫になぜか眠っていた25mm三連装機銃(集中配備)を空へ向けて撃つ。皐月も少しテンションが高いくらいで、舞い上がって変なことをしたりはしない。自分に与えられた仕事を確実にこなせ。それが仕事だ。教官に舞い上がって大破なんてしたら行先は海の底だ。
「慢心、ダメ絶対」
これをスローガンにした横須賀に死角はない。
「全機発艦!お願いね!」
翔鶴の艦攻隊が魚雷を敵艦隊に投下し、まさに落雷でもあったかのような轟音を響かせて敵を屠る。
「ちっ、敵が多いで!気をつけや!次、来るで!」
「ウイッス!!」
西方海域は現在、港湾棲姫と未知の空母による影響か、深海棲艦がひっきりなしに出没する。どこからやってくるのか、誰が引き連れているのか、わからない。冷静、かつ慎重に敵を倒していく。
(ちぃ!刈谷のおっさん、何しとんねんな!?合流して親玉倒すんちゃうんかいな!?…まさか!)
打ち合わせとは違う。カレー洋海域は敵の数が多すぎるのでまず龍驤達が道を作り、半ばほどで刈谷提督の艦隊と合流。そうして、敵を蹴散らしていくはずではなかったか?一向にやってこない艦隊に、摩耶が焦り始める。
「おい、提督!どうなってんだ!?刈谷提督の艦隊、全然来ねえじゃねえか!皐月や文月の弾薬が怪しくなってきたぞ!」
「ま、まだいけるよぉ!」
「うん!ボクもまだまだ!」
「わかった、いいぜ!けど、無闇に撃つんじゃねえぞ!」
『刈谷提督の艦隊の位置、確認できました!すでにカレー洋海域の主力艦隊に予定の反対方向から接近中!現在、主力ではありませんが、手薄になった敵艦隊と交戦中!すごい速さで敵を殲滅していきます!』
「はあ!?」
「……やっぱやりおったか……!」
「え、ど、どう言うことですか?」
「ええか、名取。これはあのおっさんがようやる手口や。うちらに真正面から攻めさせて、こっちに敵の目を向けさせて…自分らは艦隊の少ない方から攻め入って主力を叩き潰す。こうやって手柄を取るっちゅうか…」
「話が違うじゃねえか!手柄を自分たちだけのもんにする気かよ!?」
「せやけど、最も自分たちは損害の少ない、最大効率で主力を潰せる」
『主力艦隊に接近!交戦を開始!』
『摩耶、撤退しよう。敵は隙を突かれた。すぐ終わる。これ以上余計な戦闘で消耗することもない』
提督の静かな雰囲気に、摩耶は一旦怒りを落ち着かせた。主力艦隊が居る場所までは、摩耶達のいる所からでは時間がかかる。敵も多く、着く頃には消耗も大きいし主力もいないだろう。いろいろと無駄が生じる。そう考えると「アホくさ」と言う言葉が思い浮かび、いろいろと冷めてしまった。
「了解。何か、文句言う気も失せた。提督、帰ったら何か作ってくんないか?何かこう、ドバーッと汗の吹き出るようなかっらいの」
『わかったよ。それで摩耶の気が収まるなら…』
「おう。あたしゃそれで我慢する。んで、新しく風呂にできたさうなってやつでまたヒーコラ言うほど汗かいて寝る!」
「あー、ええなぁ。うちもそうしよかな…」
普段血気盛んな龍驤でさえ、不完全燃焼と言う感じで怒る気も失せている。それほどまでに、刈谷提督のやり方は…何というか、素早いというか、あっさりしていた。
「えー、もうボクの出番終わり?なんかスッキリしないよー!」
「文月もまだいけるのにぃ…」
「そう言うなよ。2人も頑張った。名取もうまくやってくれたし、翔鶴さんと龍驤さんの攻撃もすごかった。よく思い返せよ。あたしら、めっちゃ敵倒したんだからな?いつもよりいーっぱい!」
「おお!それもそうだね!」
「わー!あたし達、頑張ったんだね〜♪」
はぁ…と皐月達にわからないように溜め息を吐いた。不完全燃焼ではあるが、近海での出撃よりも遥かに多くの敵を気付かないうちに倒しているが、体力は有り余っているし、小破はしたが大きな損傷もない。それだけ成長していると言うことがわかると、不満そうだった皐月も文月もすごいねー!と喜びに変わった。うまくいったかな…と摩耶は思った。
(ほっほーん?摩耶もええお姉ちゃんになったもんやなぁ。前やったら怒り狂って皐月達を煽ってたやろうに。摩耶はほんま、みんなをまとめるんがうまなった。皐月と文月はすぐバテとったのに、今はまだピンピンしとる)
「名取、助かったぜ。文月と皐月とかわりばんこで対空砲火もアシスト、すっげえやりやすかった!」
「えへへ、私にできるのはこれくらいだから」
「そんなことないって!敵もちゃっかり倒してるし、すげえよ!」
「ま、摩耶ちゃん、恥ずかしいよぉ…」
もじもじと恥ずかしがっているが、名取の敵の注意を引く、摩耶達のアシストをする。敵を倒す。的確に対空砲火を繰り出そうとする敵を狙い、照準を絞らせない。名取の仕事は決して派手な動きではないが、北上のサポートをしているうちに戦場全体を見渡し、今自分ができるなかで最高の効率を導き出す行動を取ることに長けた。「影の立役者」、「縁の下の力持ち」と言う言葉がふさわしいが、謙遜しすぎる名取はそんな自分を褒められると、潜水艦にでもなりたいくらいに恥ずかしがる。
「うう…」
「お、おい…そんなに恥ずかしがらなくても…」
「ふふ、お見事でした。さ、戻りましょうか」
「おーし、帰ろ帰ろ!帰って辛いもん食べる!」
そう言って手を頭の後ろに組んで、もやもやしながらも勝利を得られたのなら、と思って帰投した。
(刈谷のおっさんのほう、何の音沙汰もないんがえらい気持ち悪いな…何か企んどるんか…?)
龍驤は妙に指示の少ない刈谷提督の行動に後ろ髪を引かれる思いだった。同様に玲司も思ったようで、大淀と2人で首を傾げるのであった。
/
一方で刈谷提督の方はと言うと、なかなかの激戦だったようで、実際にはかなり手こずった感じであった。旗艦能代、提督に怯えたように無線を繋ぐ。
「提督…主力艦隊の討伐、終了しました。申し訳ありません、能代、中破。以下那智、敵戦艦により大破。葛城も大破、千代田、小破…あと、その…」
『もういい。さっさと帰投しろ。大破して航行できねえ奴は引きずってでも連れて帰れ。意気込んで艦隊に加えろと言っといて、いいザマだな、葛城』
「お、お言葉ですが提督、葛城さんの機転がなければ全員が危なかったんです…ですので…」
『言い訳はどうでもいいクマ。本来なら旗艦であり、軽巡のお前が潜水艦をいち早く発見するべきだった。葛城が気付いてなかったら今頃は全員海の底だったクマ。言い訳してるヒマがあったら帰って反省しろ。テメエいつから言い訳なんざみみっちいこと言う旗艦になったクマ?』
「……っ、す、すみません!!」
鹿屋基地所属、軽巡「能代」。そして、今無線で冷たい言葉を放っているのは軽巡「球磨」。能代はこの球磨が提督、龍田の次に恐ろしい人であった。戦闘に関しては妥協が一切ない。普段はクマクマ言って緊張感のかけらもなく、一日中寝てたり、尻をボリボリかきながら「羽黒はいいケツしてるクマねぇ」とセクハラ発言をかましたりしているが、戦闘になれば凄まじい実力を持つ。
「龍田は触れるな。球磨は怒らせるな」
これが鹿屋の決まり事だった。葛城はまったく気にしていないが、ほかの艦娘はこれが染み渡っている。龍田は関われば消される。そんな噂が広まっている。これはまあ、関わらなければいいことだし、戦場に出ることもほぼないので問題は無い。問題は球磨だ。戦闘にはあまり出ない教官のような存在。出撃の際には必ずレポートに目を通す。不甲斐ない戦いをした際にはクマと言う語尾も忘れ、めちゃくちゃに怒る。今回のように。そうして決まって立てなくなるくらいしごかれる。
「よかったクマ。これが実戦だったら10回は沈んでたクマ。応急修理が無駄になる。2度とふざけたことしてんじゃねえ」
泣く子が泣き止み縮み上がる球磨。実はその実力は鹿屋で1、2を争うのだ。帰りたくないが帰らないといけない。ああ…終わった…。そう能代は胃がフラフープのようにグルグルして吐きそうだった。いや、胃に穴が空きそうだった。
………
「手柄は三条に持ってかれちまったな」
「向こうは主力を倒したのはこっちだと思ってるクマ。なら実質球磨達の勝ちクマ」
「つまんねえ勝ち負けで競うんじゃねえ。胸糞悪い」
「へいへい…」
「こっちは初戦から葛城ちゃんが能代ちゃんを庇って中破…戦力の大幅低下だものねぇ」
「挙句に戦艦ル級と余計に戦うハメになって那智が大破クマ。那智のやつ、すげえクマ。カウンターキメてル級を大破に追いやったのは見事クマよ。えむぶいぴーとか言うのは那智でいいんじゃないクマか?」
「いいわねぇ。あの子はウイスキーがお好きよ〜。じゃあこの12年もののウイスキーを進呈よ〜♪いいわよねぇ、提督?」
「好きにしろ。ふん、やるじゃねえか、三条。甘く見てたぜ」
「け・ど。主力艦隊と交戦中にどこからともなくやってきた艦載機、ねぇ」
葛城が潜水艦の攻撃から能代を庇って中破以外はとりあえず問題はなかった。刈谷提督が即座に陣形や行動を偏向する指示を出し、そこからは無傷で進めたのだ。主力艦隊も、最初のうちは那智のル級へのカウンターなどで有利に進んでいたのだが、突如として別の方角からやってきた敵艦載機によって隊列を乱され、軽空母「千代田航改二」が空中戦を開始。しかし、正規空母並みの艦載機の数に押し負け、小破。防空駆逐艦「秋月」も応戦したが敵わず中破と戦列を大きく崩されてしまったのだ。
「敵味方関係なく爆撃に雷撃。本当に敵空母クマか?」
「知るかよ。詳細はわからねえんだ。けどよ、1つだけ言えることは、横槍を入れてくれやがったことを後悔させてやるだけだ」
「おう。そいつは球磨も許せねえクマ。誰か知らねえけど横槍を入れやがったことだけは許せねえクマ」
「うふふふふ。怖いもの知らずも度がすぎるとねぇ」
「カスガダマか…それとも港湾棲姫のとこにいやがんのか…会った時は殺す。必ず殺す」
「あらぁ、提督が本気になっちゃったわぁ」
「球磨。龍田。カスガダマに出ろ。今回の主眼はこの謎の空母を引っ張り出すことだ。徹底的に潰せ。出てくるとは限らねえが、俺らを馬鹿にしやがった奴等は全部潰せ。いいな」
「………久しぶりに暴れてやるかー」
「ふふふふふ♪楽しみねぇ♪」
おそらく、ここに能代がいたら胃が秒で溶けてなくなるくらいの空気が流れていた。やる気ではなく殺る気。3人の凍りつく空気が執務室を支配した。
/
「んおおおお!かっら…!!!提督、やるじゃねえか!」
「えふっえふっ!く、くう…効くわこれぇ!」
「姉ちゃん無理すんなよ…涙目じゃねえか…」
「や、やはまひい!うひは食べれるんや!」
蒸し暑い7月に、熱々の激辛麻辣麺と山椒がガツンと効いた激辛麻婆豆腐。額に首、胸の谷間。汗をだらだら流しているが、摩耶はもりもりズルズル…。辛さを物ともせずにその舌が痺れるかのような激辛料理を食している。
一方で龍驤は一口食べては悶え苦しむかのようにジタバタしては水で流し込む。ラーメンも麻婆豆腐もかなり辛いぞ、と釘は刺したが、摩耶への負けん気が働いたのか、対抗して食べる。食べては…
「んあああああああ!!!!」
「姉ちゃん、もうやめろっての!」
「ん〜!おいひい〜!」
「ですよね!」
赤城は汗すらかかずにスルスルと食べていた。余計に龍驤が悔しがり、食べるものの食べられない。ついにはお腹が限界を超えて何処かへ走って行った。
多くの深海棲艦の艦隊を潰した三条艦隊。そして、それの主力艦隊を潰した刈谷提督に、多くの提督から注目を浴びているなんて露とも知らなかったのであった。
久しぶりに刈谷提督が登場。鹿屋基地もいろいろと悩みがあるようです。
次回は刈谷提督を主眼にした話を進めていこうと思います。今回の作戦に何か色々と考えがあるようです。
それでは、また。