提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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第百二十二話

「お願い!もう1回出撃させて!!」

 

帰ってきて入渠して、出てきたらすぐに執務室にやってきて頭を下げて手を合わせてお願いをする瑞鶴。勢いがすごい瑞鶴に、どう対応すれば良いものか、後頭部をポリポリとかく玲司。困ったときはいつも後頭部をポリポリする。

 

「瑞鶴、玲司さんが困っているわ」

「え?なんでわかんの?」

 

「え?ええ、ええと…それは、その…」

「あー、はいはい。わかったわかった」

 

「何がわかったの…」

「旦那さんの癖はバッチリ把握ってこと」

 

「だ、旦那様!?」

「お、おい…瑞鶴…」

 

「あーっと、それはさておき、敵は横須賀の加賀さんだった。自分からの意思で深海棲艦になったって言うけど、どうもおかしくって。何ていうか…嘘をついてるって言うか…」

 

瑞鶴は切羽詰まっていたり、追い詰められているような感じではない。むしろ落ち着いている。翔鶴をひやかすくらいには冷静であり、以前のようにカッとなってすぐ出撃させて!と言ったような感じではない。対する翔鶴はぽやーっとしながら「旦那様…私が…奥さん…」とうわの空になっている。いやまあ、これがいつもの翔鶴と瑞鶴と言えばそうだが…。

 

「そう言うように操られているとか?」

「ううん、そんなんじゃない。自分の意思で何もかもやってるって感じ。でも、私たち五航戦に固執してるのは確かだと思う。そうじゃなきゃ、五航戦なんて言葉は絶対出ないと思うから」

 

「ほなあれや。そう言うて、瑞鶴の感情を逆撫ようとしとる」

「ええ…他の瑞鶴は絶対意味わかんないと思いますけど」

 

「横須賀の加賀。でもって横須賀の瑞鶴。2人はお互いいがみ合いながらも阿吽の呼吸のように戦えとったんやろ?ちゅうことは、そうやって瑞鶴に何かメッセージを伝えたかったんちゃうの?」

 

「メッセージ…か」

 

龍驤の推理と助言は絶対に無駄なことではない。龍驤がこうと言うといつも重要なことがある。たしかに、あの加賀は間違いなく横須賀の加賀で、自分のことをよく知っていた。私でなければいろいろとわからないだろう。考えろ。考えるんだ。

 

深海棲艦になんて、死んでもなりたくないもの。

 

ハッと思い出した。加賀は何度もそう言っていた。長門と口を揃え、深海棲艦になることは恥だとも言っていた。だが、加賀は深海棲艦になってしまった…。あの人は馬鹿みたいにプライドが高い人だった。けど、かつての私のような安っぽいプライドじゃない。一航戦の誇り。それを大事にしていた。

 

「それにな。ほんまに憎うてたまらんのやったら、なんでみんなを逃したんや?刈谷のおっさんの球磨らの邪魔が入ったにしても、加賀の航空能力なら十分追いかけて全員沈めるくらい、簡単やったんちゃう?せやのに、逃した。他の五航戦は沈めた。それだけでも意味は大きいで」

 

「………加賀さん」

 

瑞鶴はギュッと目を閉じた。そうか、そうなんだね。私と翔鶴姉を逃したのは…うん。わかったよ、加賀さん。あなたのことは大っ嫌いだけど、でも、本当はそうじゃないんだよ。加賀さんがいたから、私は戦ってこれた。生きてこれた。うるさいから言うこと聞いてたけど、無視してたら真っ先に死んでそうだったね。あなたが引っ張ってくれなかったから沈んでたね。姉を思うなら死ぬな。そうも言われたね。

 

不器用にしか言えない人だったし、私や長門さんには絶対に本心を明かそうとしない人だったし。次会ったらバーカって言ってあげるね。あんたのそう言う隠した本心、今ならわかる気がするから。きっと、そう言うことだよね。

 

「……加賀さんを…倒す。それが、私たちを逃した意味だと思う。装備を整えて、自分を。深海棲艦になった情けない私を沈めてくれってことだと思う」

 

「な、情けないって…瑞鶴、それは加賀さんが…」

「あんだけ、富士山みたいにプライドの高い人だったんだよ?死んでも深海棲艦になんか一航戦の誇りに賭けてなりたくないって言ってたのにさ。深海棲艦になっちゃって、恥ずかしいから、でも自分では死ねないから…私たちを逃して、万全の装備で自分を殺して欲しい。そう言うことだと…思う」

 

「瑞鶴…いけるか?」

「やるっきゃない。響ちゃんのように、そうほいほい艦娘には戻れないだろうしね。あれは電ちゃんと2人の絆って言うか…私は…うん、加賀さんには戻ってきてほしい。でも、そう何回も奇跡って起きないと思うからさ……深海棲艦を倒して、みんなとまた毎日を過ごすんだ。私、商店街の夏祭り、ちょー楽しみにしてるんだから」

 

「ぶはっ」

 

りきんでいる様子でもない、冷静さを欠いてもいない。マイペースな瑞鶴に思わず笑ってしまった龍驤。そうだ。それこそが明日を生きるための術だ。りきめばいつも通りにいかない。冷静さを欠けば周囲が見えない。成長したなぁ…翔鶴も精神的に落ち着いて立っている。みんな成長した。動きや戦術だけじゃない。精神的にも、冬に自分が着任してからと言うもの、ガラリと変わった。慌てず、冷静に。落ち着いて戦場に立つ。

 

前の翔鶴、瑞鶴姉妹は精神が未熟だった。情緒不安定、すぐカッとなる。翔鶴には玲司が。瑞鶴はいろんな出来事を体験して、ようやくリーダーらしくなってきた。玲司が彼女たちを旗艦に任せてきた甲斐もあっただろう。安定した艦隊として今はやってこれた。これなら、大丈夫だろう。摩耶たちも複雑な艦載機の動きにもついてきて撃墜できるようになった。まあ、まだひよっこやけどな!と龍驤は譲らないが。

 

「よし、引き続き、瑞鶴旗艦で行くぞ。加賀に引導を渡してやろう。もう休ませてあげよう」

「うん!翔鶴姉、やるよ!」

 

「ええ。瑞鶴、サポートは任せてね」

「よっし!じゃあ、編成はどうしよっか?」

 

「私も行きたいです!加賀さんは、私をずっと慰めてくれました。励ましてくれました。ですから、お礼が言いたいんです。話が通じるなら…ですけど…」

 

大淀が挙手。大淀も奴の目から離れたところでは、言葉は少なかったが何度も慰めてくれた。そのお礼が言えるのなら、言っておきたい。

 

「現場での作戦指揮も、大淀にお任せください!」

「ん!採用!いいよね、提督さん?」

 

「おし、大淀、任せたぞ」

「はい!」

 

「私も行きます。私も加賀さんに謝りたいですから」

 

鳥海。摩耶がカッとなって部屋に閉じこもり、それに同調してしまって、加賀の言葉に自分も耳を貸さなかったこと、後悔していた。ずっと、長門さんと2人で支えてもらっていたのに…。だから謝りたかった。私も行く。

 

「おい、鳥海!提督!水臭えじゃねえか!あたしも行くぞ!空母が相手ならあたしの対空なしでなんかダメに決まってんだろ!」

 

摩耶。長門の墓標に激しく後悔をしていた。加賀にも謝りたい。自分のせいで。自分がもっとちゃんと出撃していれば。そんな後悔が胸を渦巻いていた。あたしだって、言いたいことはいっぱいある。

 

「ボクも!ボクも行く!」

 

最上。摩耶や鳥海と同じだ。当時の長門と加賀に次ぐ火力を持っていた重巡部隊がこぞって抜けてしまったことで戦力がごっそり抜けてしまったこと。ボク達のせいだ…と言う思いは強い。

 

「あたしも行くよ。沈めるのは瑞鶴の役目かもしれない。でも、あたしも加賀さんには言いたいことがあるんだ。任せたって言っておいて、深海棲艦になるのはちょっとひどくない?ああ、うん。冗談。やっぱさ、加賀さんには…いろいろとね…」

 

北上。長門と加賀に横須賀の未来を唯一託された子。そのプレッシャーが常に肩にのしかかっている。玲司がそれを少しでも軽くできるよう、努力を怠らないおかげで北上は毎日を楽しく生きているし、みんなとも楽しく生きていられる。長門には報告ができた。加賀には言えていない。だから、深海棲艦だったとしても、今、横須賀は楽しいよ。そう言いたいのだ。

 

「それに、ここを変えたこの子もねー」

「ふぇえ!?わ、私はそんなぁ…あのぉ…」

 

名取。横須賀を変えた功労者。命懸けで安久野の悪事を暴き、安久野を追い出し、今の環境へ至る状況を整えた。名取自身はあまり多くは語らないが、加賀と長門が望んだ未来を作り上げたこと。加賀が聞けば喜ぶのではないだろうか。親友のため、仲間のため、その勇気は真似できない。

 

「五十鈴も行くわ。名取が行って、五十鈴が行かないなんてそんなわけにいかないでしょ。瑞鶴もその…し、心配だし」

 

五十鈴。加賀に対潜のチカラを認められていたが、姉妹を多く失ったがために摩耶達と一緒に戦うことをやめた。自惚れではないが、潜水艦のことなら1番倒すチカラを持っていたのに。それを使うことをやめたせいでどれだけ艦娘を沈めてしまっただろう。ひどく後悔していた。もう逃げない。この目で潜水艦は絶対に倒す。

 

「あたしも行きまぁす!あたしも…加賀さんに謝らなきゃ!」

 

阿武隈。気が弱く、特に姉である由良と鬼怒、長良を一度に失ってからは怯えに怯え、加賀が何を言おうと耳を塞ぎ、目を閉じて聞こうとも見ようともしなかった。いざ現実を知った時は目の前が真っ暗になった。甘い言葉だけを聞いて逃げてしまった自分。もう逃げない。前を見て、しっかり全部聞いて頑張るから。見てほしい。強くなった阿武隈を。

 

「僕も行くよ。加賀さんには元気になった姿を見てほしいから」

 

時雨。加賀が憂鬱になった1人。不甲斐ない自分を許して…と長門と共にうなされていた時雨に謝ったことがある。どうすることもできず、ただ苦しみ、腐っていく部位を見て、嘆いた。でも、今はもう元気だよ。こうして出撃もできるし、遊ぶこともできる。もう心配しないで、と言いたい。

 

「はいはーい!村雨もいきまーす!」

 

村雨。彼女も時雨と同じだ。潰れて膿んだ目。時雨と同じく、無表情な加賀が感情こそは変わらないが涙を流した2人。でも、もう時雨と一緒で元気でやってます!そう伝えたいし、パートナーができました!と言うことも報告したい。あ、でもこれは何だか変な意味に取られちゃうかな?

 

「ぽい!夕立も行くっぽい!ずっと、時雨と村雨にごめんなさいって謝ってたこと、違うって言いたいっぽい。それから、夕立を守ってくれたこと、ありがとうって言いたいっぽい」

 

夕立。激戦を生き延び、加賀や長門に認められていたこと。危険を顧みずに突っ込んで怒られたこと。危ないからやめなさい、と怒られていた意味が今ではわかるようになった。だからそれを伝えたい。

 

「私も行こう。加賀さん、私は帰ってきたよって言いたいから」

 

響。泣きじゃくる電を励まし続け、響がいなければ電が…となんとかして響を出撃させず、電の側にいさせてあげたかった、と後悔ばかりしていたこと、電から聞いた。申し訳ない。けど、私は不死鳥の如く蘇り、帰ってきたよ。電と楽しくやってるよ。ごめんね、沈んでしまって、と謝りたい。

 

「電が行けば…加賀さんを助けられるかもなのです!電も行くのです!」

 

電。響を助けた奇跡の艦娘。あの蒼い眼。アテになるのかわからない。でも、1人でも1隻でも。できるなら助けたいのです。電の口癖。それを加賀にも実行したい。もう昔みたいな泣き虫じゃないのです。電の本気を見てもらいたいのです!

 

「しれえ。雪風も…雪風も行きます!加賀さんにはいっぱい謝りたいし、お礼が言いたいです。加賀さんが守ってくれたから、今の雪風がありますから。だから、たとえ深海棲艦でも!加賀さんは加賀さんだと思います!だから、行かせてください!」

 

雪風。長門と加賀が本当にこの子が無邪気に笑って過ごせることこそが、この鎮守府の真の幸せであると信じて疑わなかった幸運の女神。死神と蔑まれた彼女をそう言ってはいけないと何度も嗜めた。けど、新たに生まれた駆逐艦や仲間達は彼女をそう言っては避けた。雪風は絶望し、光を失った。けど、それが今や加賀たちが何より望んでいた屈託のない笑顔を見せる雪風。

 

安久野から生き残った艦娘たちはみんな、加賀に感謝していた。長門と、そして彼女が必死になって自分たちをまとめ、守ってくれたからこそ、今度は恩返しがしたい。お礼が言いたい。深海棲艦になってしまったのなら、沈めなければならない。沈めるなら、せめて最後に、守ってくれてありがとうとお礼が言いたい。彼女の胸にある恨みに縛られた心を解放したい。それくらいは、せめて自分たちで。

 

「よし。みんな、行け。行ってこい。そして必ず帰ってこい。絶対だぞ」

 

はい!と旧横須賀メンバーが一斉に返事した。あとは装備をしっかりと整えて向かうだけだ。そこはやっぱり、明石の出番になる。

 

 

「おー、瑞鶴さんが改二甲になったんだねー」

「改二コウ?」

 

「甲って書くんですよ。甲になった瑞鶴さんは数少ないんだ。翔鶴さんも甲になれるんだけど、やっぱり場数が違うからね。まあ、そのうちなれるっしょー」

「へー、甲になると何が違うの?」

 

「装甲空母になります。耐久性が向上、中破でも発艦ができる。どちらかと言えば攻撃性よりも継戦性の向上だね。ただ、搭載数は減るからやや攻撃力は落ちる。あとは、これを装備できることかな」

 

コト、と艦載機を机に置いた。見たことのない形をしている。

 

「できたのか、アレ」

「できたよー。妖精さんが頑張ってくれましたー」

 

「もはやおもいのこすことなし」

「すばらしい、さいこうけっさくができた」

 

「おい、しぼうふらぐをたてるのはやめろ」

 

妖精さんがわわーっと出てきては、明石が置いた艦載機を取り囲んでばんざいして飛び上がっている。艦載機の開発には妖精さんも関わり、そのおかげで完成した。

瑞鶴はマジマジとその艦載機を見る。普段使っている艦載機とは違い、プロペラがない。不思議だ。これで飛ばせるのか?

 

「ねえ、明石さん。これ、どうやって飛ばすの?」

「んー、そうですね。改二甲になったんなら、試してみましょう!」

 

そう言って演習場へ。玲司、龍驤、翔鶴、そして明石。使うは新たな艦載機。見たこともない構造の艦載機に瑞鶴の期待は高まるばかりだ。

 

「とんでもないよー、これは。さ、やっちゃって!」

「よーし、行くぞー!」

 

そう言って瑞鶴は矢を放つ。しばらく矢は一直線に水面を飛び、そして姿を変えた。

 

途端、瑞鶴がギッ!?と変な声をあげた。放った矢のスピードから、爆発的に加速し気を抜くとあさっての方向へ一瞬で消え去りそうだった。キーーーーーーン!!!と凄まじい爆音を響かせ、猛スピードで飛ぶ艦載機。紫電改二などとは比較にもならない。

 

「すごい…」

「すごいでしょー。ジェットエンジンを搭載した艦載機、その名も「橘花改」!これを扱える空母は装甲空母のみ。今は横須賀では瑞鶴さんだけの装備だね。ただ、あのスピードだから…扱うのはめっちゃくちゃ大変だよ」

 

瑞鶴は驚異の集中力でなんとか「橘花改」を制御する。彗星(明石改)以上に神経を使うしスピードレンジも違う。爆弾投下もタイミングが合わない。これは…難しい…でもおもしろい!!瑞鶴は夢中で楽しんで飛ばしている。汗をかき、時折頭痛が襲うのか辛そうな顔をするが、楽しそうに笑っていた。

 

「瑞鶴…やっぱり、瑞鶴はすごいわね」

「ん?」

 

「難しい艦載機を簡単に制御するし…以前は違うけど、今は必死で努力している…わたしには負けないから、と言っているけど、瑞鶴はわたしなんか軽く飛び越えていくわ。ううん、もう飛び越えて行ってる。だから、加賀さんと言う大きな壁も…飛び越えれるわ。瑞鶴は…わたしの妹は自慢の妹ですから」

 

嬉しそうに瑞鶴を眺め、瑞鶴を褒める翔鶴の頭に手を添える。甘えるように手に頭を乗せ、愛しそうに目を閉じる。安久野がいなくなってから、翔鶴はずっと瑞鶴を見てきた。途中は自分のための努力であったが、それでも鍛錬はずっと続けてきた。ある時、自分の壁にぶつかり、ヤケになった際は地に墜ちてもがいていたが、すぐに飛び立ち、その壁は超えた。

 

そこから瑞鶴は仲間のために強くなると言い、龍驤。そして「空の女王」赤城の指示のもと、より一層努力を続けた。その仲間を守るための強さは、やがて翔鶴はある人に似てきたと言う。加賀だ。どうすれば空からみんなを守れるか。そればかりを今は考えていた。そんな瑞鶴は、今は少しだけだが…加賀の面影に似てきた。性格とか見た目がではなく、気迫が。加賀の名前を出すと怒るだろうから、黙っていたが、

 

「最近、瑞鶴は加賀さんが持っていた気迫や雰囲気に似てきました。きっと、横須賀を支えてくれる空母の代表になってくれると思っています」

 

玲司にそう言った。玲司はそうか、と笑った。玲司は加賀のことは知らない。しかし、翔鶴や雪風から聞かされていた。厳しいけれど、優しく、誇り高く、強い人であったと。文句を言っているが、瑞鶴の目標だった。あの人のようにみんなを守れる空母になりたい。リーダーとかそんなのはどうでもいい。ただ、あの人のように強くなりたい。五航戦にだって誇りはある。一航戦の誇りとは違うかもしれない。誇り高き五航戦。そのチカラをあの一航戦に見せてやりたい。

 

数日後、瑞鶴は朝から晩まで橘花を飛ばし続けた成果が出て、制御ができるようになったし、爆撃のタイミングもほぼ完璧である。

 

「できた!できたよ!翔鶴姉!やった、できたー!!」

「すごいわ。さすが瑞鶴ね。本当に…すごい妹を持ったわね、わたしは…」

 

「何言ってんの!翔鶴姉が見守ってくれてたからなんだか落ち着いてできたし、応援もしてくれたし!ありがとう、翔鶴姉」

「ふふ…加賀さん、今の瑞鶴を見たらなんて言うかしらね」

 

「決まってんじゃん。まだまだよ。あれがダメこれがダメ。あーうるさいったらありゃしない」

「もう、またそんなこと言って…」

 

「冗談だよ……うん。少しは、認めてくれたら嬉しいかな。私の全力。こんな形で見せたくなかったけど…全力、見せてあげるから」

「……ええ。わたしも全力でサポートするからね」

 

「翔鶴姉。五航戦の誇りを見せてやろうよ」

「ええ」

 

瑞鶴の準備も整った。明石も整備を整えて、準備はできた。大和と山城、扶桑も出るらしい。ゴーヤとイムヤも出る。みんながいる。鎮守府を守る仲間もいる。私はみんなに支えられている。

 

食堂で夕飯を食べたあと。瑞鶴は「ちょっといい?」と立ち上がってみんなを傾注させた。何事だろう、とみんなは瑞鶴に注目する。すると瑞鶴は突然頭を下げた。

 

そして瑞鶴はみんなに「ありがとう」と言った。

 

「みんな、ありがとう。私、前までは自分一人で強くなって、みんなを守るんだって思い上がってた。結局そんなことできっこなくて、みんなに迷惑かけて、鎮守府飛び出して、マスターにも提督さんにも迷惑をかけた。本当に、ごめん」

 

あの時はみんな心配したものだ。摩耶が「あいつ、帰ってこなかったらどうしよう…」とか文月が「瑞鶴さん、文月達のこと嫌いになっちゃったのかなぁ…」と落ち込み、それに共感した皐月とワンワン泣いたり。みんな心配していたものだ。間宮と扶桑が「必ず帰ってきますよ」と言い、玲司は電話に出てすぐ飛び出して行ったりと大騒ぎだった。

 

「あれから毎日みんなと、鹿島さんが加わってきっついけどしっかり強くなってるってわかった。それと同時に、私はみんなに支えられているんだなって思った。戦いに出たら摩耶や吹雪ちゃんが対空で空を守って、私はすごくやりやすい。イムヤちゃんやゴーヤちゃんがしっかり水中からサポートしてくれたり、大淀さんの指示はわかりやすくてうまくいったときなんかすっごく気持ちいいよね」

 

みんな瑞鶴の話にうんうんと頷いている。摩耶は恥ずかしそうにプイッとそっぽを向いたが。

 

「疲れてクタクタになった時に、体力を早く回復できるようにっていろいろと工夫してくれる間宮さん。ずっと私を信じて支えてくれる翔鶴姉。私に旗艦を任せてくれる提督さん。私が今まで頑張ってこれたのはみんなのおかげ。だから提督さん、翔鶴姉、鹿島さん、龍驤さん、赤城さん、それに明石さん。ありがとう。みんなと一緒に…加賀さんと戦う。みんなで、帰ってこようね」

 

出撃メンバー全員が無言で頷く。玲司と翔鶴は目を合わせ、頷いた。龍驤は目をわしわしして、涙が出るのを我慢していた。

 

「瑞鶴。うん。やっと。やっとお前に総旗艦を任せられる」

「えっ?どう言うこと?」

 

「成長したなってこと。みんなで勝とう。みんなで帰ろう。それを瑞鶴が本心で言っているのはずっと聞いてきた。翔鶴と龍驤姉ちゃんと言ってたんだ。瑞鶴が本心で仲間と勝とう。帰ろうって言った時は、瑞鶴に空母のリーダーとも違う、本当の横須賀の艦娘の総大将を任せようって」

 

「瑞鶴の成長はうちが太鼓判押したるわ。そんくらい、危ないなってのがなくなった。まあ今回は70点ってとこやったけどな。球磨らがおらんかったらやばかったからな」

 

「うっ…ご、ごめんなさい…」

「ええんよ。それだけ因縁の相手やった。せやけど、素直に霧島に抱えられて逃げてきたんやったらええんよ。少し前までやったら、誰かが犠牲になるまで戦おうとしとったやろうから。すぐにでも飛び出そうともせん。入念に調整して仲間とも相談して、仲間と一緒に出る。それでええ」

 

「龍驤さん…私、龍驤さんがいなかったらって思うとゾッとするなぁ。練習は超厳しかったけど、龍驤さんの教えのおかげで、あの鉄仮面に1発かましてやれたもん!」

「もう、瑞鶴ったら」

 

クスッと翔鶴が笑う。鎮守府を飛び出した後、瑞鶴は変わった。どんな細かいことでも龍驤に聞いては教えを乞い、怒られながらも決して諦めなかった。やめなかった。どんな些細な疑問でも龍驤は嬉しそうに答えてくれた。それが嬉しくてまた聞く。龍驤も同じだった。そうして良い師弟関係になった。そして、その集大成のような「橘花改」の扱い。そしてマスター。龍驤は「橘花改」を操り、爆撃に成功して喜ぶ瑞鶴を見たとき、本当に涙が出そうだった。うちの弟子がこんなに成長したなぁ…って。

 

「ありがとう、龍驤さん。今まで教えてもらったこと、全部出し切って…私の最後の壁、越えて見せるから」

「……おう。…おう。行ってこい。行ってこいや」

 

瑞鶴の右肩をしっかりと握る。温かい。ちょっと痛い。でも、それだけ龍驤の思いが大きいのだ。

 

「行ってこい。うちのあんたへの思い、しっかりあんたに託したからな!うちとあんたと…魂の約束や!」

 

龍驤のチカラがさらに強くなる。痛い。でも…チカラがみなぎってくる!

 

「せやからしっかり勝って!壁を乗り越えて!いっちょまえになって帰ってこいや!!」

 

バシィ!とさらに背中を思い切り叩かれた。よろけた。いったぁ!と叫びたかったが我慢した。それは違う。だから食堂に響き渡るくらい大きな声で

 

「はい!!!」って。

 

玲司はその言葉を聞いて笑った。頼んだぜ、総大将!とそう優しく龍驤に叩かれた背中に手を添えてくれた。勇気が体の中に染み渡っていく。うん!と瑞鶴はチカラ強くうなずいた。

 

翌日、瑞鶴達は出撃した。因縁の対決。一航戦と言う大きな壁を、2羽の鶴が羽ばたいて越えるために。

 

待っててよ、加賀さん。必ず、勝ってみせるから!!玲司の期待を胸に。龍驤の思いを肩と背中に。瑞鶴は強い心で再び西方海域へと向かった。心強い仲間達と共に。




次回、旧横須賀艦隊vs加賀。全面激突。

それでは、また。
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