提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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横須賀鎮守府の資材事情

安久野が考案したシステム、資材に応じて艦娘への様々な行為を行うことができると言うあまりにもくだらない資材運用により、大量の資材を持ってはいたが現在は別のブラック鎮守府への賄賂として他の泊地等に渡ってしまいそう多くはない。多くはないが大型建造を二回行えるくらいには貯蔵されている。高速修復材についても艦娘にはろくに使わず、賄賂用として蓄えはあるため、こちらは潤沢。

大本営としても賄賂の行方を追ってはみたが、そのほとんどは未だ誰一人として建造することができていない戦艦「大和」と「武蔵」を建造しようと夢見た愚かな提督により、大型建造により消失、取り返すことは不可能と判断した。横須賀以外にもブラックがはびこってしまっている現状に古井総一郎が頭を悩ませている。


第十五話

海を一人走る少女、駆逐艦雪風。その足取りはおぼつかず、フラフラと夢遊病者のように虚ろな目をしてどこへ行くでもなく彷徨っていた。風の音に紛れて聞こえてくるは醜く濁った怨念めいた強い、仲間を求めて海の底から叫ぶ何かの声。

 

「うウ…雪かゼは…まだ…沈ま…ナイ。沈んデやるモンか…」

 

壊れていく心…。そして何より今懸命に彼女を繋ぎとめている北上。そして司令官、玲司の記憶が少しずつ薄れていくことが何よりの恐怖であった。もうどれくらい海を走っただろう。辺りは日が暮れ始めていた。海に沈みゆく希望の光、太陽。夜が来れば奴らの時間だ。

 

「しずマ…ナイ…しれえ…きたかみさん…帰り…たい、なぁ…」

 

本心が漏れる。帰りたい。帰って北上に抱きしめてもらいたい。司令官に頭を撫でてもらいたい。おいしいご飯が食べたい。けれどそれは叶わぬ夢。いつ深海棲艦と成り果てるかわからない自分があそこにいていい資格はない。司令官に、北上に。鎮守府のみんなに迷惑がかかる。迷惑をかけるくらいなら一人で逝く。最期まで…抗って見せる。

 

太陽が海の底に消えた。夜が、やってきた。満天の星空。銀色に輝く丸い月。それでも、その月の光を拒むかのように光を吸う闇の海。奴らの時間が来た。

 

雪風は首を強く振り、朦朧とした意識を無理やり覚醒させる。目の前に現れた6つの影。それと強く対峙するために。

 

「ホウ…ドウヤラ我々ノ仲間ニナルノガ来タカ…コレハコレハ強イ駆逐艦ニナッテクレソウダナ」

 

ニタリとソレが嗤う。重巡リ級だ。もう完全に雪風が仲間になると思い込んでいる。ギリッと歯を噛み締め強くリ級を睨みつける。

 

「だ、誰があなた達の仲間なんかに…仲間にナンカならなイ!!」

「無駄ダ…、モウオ前ハ限リナク我々ニ近イ。肌ハ見タカ?目ハドウダ?変化シテキテイルゾ?」

 

「負けなイ…あたしは深海棲艦になんかならない!あたしは陽炎型駆逐艦「雪風」!雪風として最後まで戦い、そして散ります!!!」

 

強い意志と共に白くなった肌。青い眼は消え、そこには宣言通り、雪風が立っていた。カチリ…と12.7cm砲をリ級に向ける。目は鋭く、ギラリと睨みつける。

 

「ククッ…バカナ奴ダ。オトナシク仲間ニ加ワッテオケバ痛イ目ニアワズニ済ンダモノヲ…。ナラバ、ココデオ前ヲ引キズリコンデヤロウ!!!」

 

ドォン!!とリ級が砲を撃つ。しかし、幸運にもそれは当たらずに雪風の横を過ぎていった。雪風は横須賀では屈指の歴戦の艦娘であり、戦闘経験は北上以上に過酷な戦いを生き抜いてきた。その経験は雪風をたとえ相手が6隻いようとも逃げ切れる自信を与えた。しかし、それは雪風が最高のコンディションで臨んでいればの場合の話であるが。

 

「ぐうっ…!」

 

駆逐イ級の砲撃が脇腹をかすめ、うめき声をあげる。雪風の意思と体がうまく掛け合わず、体を動かす反応が鈍い。肉体的疲労。精神的疲労。極度の睡眠不足。その全てが雪風の動きを狂わせる。イ級程度の砲撃などやすやすとかわせるはずが、今はもうそれすらも苦しい。

 

「このぉ!!!」

 

反撃を行う。振り向きざまにイ級めがけて砲を撃つ。イ級の口に命中。耳をつんざくような声をあげながら爆発を起こし、そのまま海へと消える。一隻撃沈。次から次へと飛んでくる砲撃を奇跡的に回避。さらには…

 

「わっ…ウプッ!」

 

転回しようとしたが勢いがありすぎて転んでしまった。するとヒュオン!!と空気を割いて何かが自分の上を通り過ぎた。リ級が放った砲弾を()()()()()()()回避した。幸運艦「呉の雪風」はまだ健在であった。慌てて立ち上がり、素早く動き回りながら砲撃を続ける。鬼気迫る攻撃と回避にイ級が攻撃に詰まる。

 

「チイ、何ヲヤッテイル!シッカリ狙ワナイカ!!」

 

リ級が苛立ちを見せ始めた。たかが駆逐艦一隻に攻撃が当たらず、格下の敵にジワジワとこちらの駆逐艦を倒されていくことに我慢がならなかった。こちらが狩る方なのだ。なぜ狩られる方にならなくてはならぬ!!だが、動けば動くほどあちらの燃料も弾薬も消耗していく。消耗しきったところを思いきり叩き潰してやる…。絶望に染まった顔を見、最後には自分の砲で海に引きずり込み、仲間にしてやろう。リ級はそこまで想像してニタリと笑い舌なめずりをした。実に愉快だと上機嫌に戻った。

 

………

 

イ級を何隻かは沈めたが、雪風の消耗自体も激しい。元々万全でない体調に加えての戦闘であり、朝から今まで補給を一つもせず走ってきたために燃料の消耗が気になった。…弾薬も怪しい。しかし、考えている間もなく、容赦ない攻撃が雪風に浴びせられる。イ級が放った砲撃をまたかわし、カウンターを叩き込み沈める。横から軽巡ホ級の砲撃が行われ、雪風の真横で炸裂。爆発に吹き飛ばされる。

 

「うあ!!」

 

海の上を転がる。損傷は小破程度…まだやれる!!ホ級は無視し、もう一隻のイ級を狙う。これも直撃。危機的状況を数多く生き抜いてきた雪風ならではの冷静な生存本能だった。そのまま雪風は鎮守府のある方角へ走り出した。

 

「コザカシイ…!!!ダガ、逃ガサナイ…ククク…。オ前ハ取リ囲マレテイルノダ…何トシテデモコチラヘ引キズリコンデヤルゾ…イイ素体ダカラナ…」

 

鎮守府近海まで逃げれば何とかなるかもしれない。誰かが気づいてくれるかもしれない。勝手にいなくなっておいて図々しいとは思うが玲司ならば助けてくれるかもしれない…。そう思い懸命に逃げるが…。

 

ドォン!!足元で何かが爆発した。宙に舞い、吹っ飛ばされる雪風。

 

「う…うう…。ぎょ、魚雷……!?あ、足が…」

 

辺りを見回すと、仮面のような何かをつけた深海棲艦。雷巡チ級が雪風を見つめてニタニタと笑っていた。雪風は至近距離で爆発した魚雷の影響で足を損傷してしまった。満足にスピードを出して逃げられない…。やがてリ級も追いつく。チ級と同じく、勝ち誇ったような顔で雪風を見下していた。

 

「トウトウ終ワリノ時ダ。イ級如キを数隻沈メタ程度デ随分トイイ気ニナッタモノダ。アンナ使イ捨テナドドウデモイイ…」

「使い捨て…同じ仲間じゃないんですか!?どうして…どうしてみんなそうやって使い捨てなどと言えるんですか!!!」

 

「イ級ナドスグニ生マレル。愚カナ人間共ガ簡単ニ駆逐艦ヲ沈メルからな。溢レカエッテイルノダカラ困ラン」

「駆逐艦だって…駆逐艦だって大切な仲間です!仲間なんです!!仲間が悲しむんです!それを…盾だの…使い捨てだのって…許さない!!!」

 

怒りを露にした雪風が手に持った砲を構え、引き金を引く。

 

カチン

 

弾は…出ない。驚きの表情で何度も引き金を引くが、そのたびに出る音はカチンカチンと言う弾切れの音だった。イ級への度重なる砲撃。他の深海棲艦への威嚇、カウンター。いつの間にか弾を切らしてしまっていた。

 

「なんで…なんで!!!」

「終ワッタナ…」

 

くっと言いながら走り出そうとするが、足をやられてしまっており思うように速度が出ない。逃げなきゃ…逃げなきゃ!!無情にも鈍足で、逃げられるはずもなく…。

 

ドン!!!

 

「かっ…はっ…!!!」

 

背中に砲弾が直撃してしまう。艤装はめちゃくちゃに破壊され、雪風自身も爆発で甚大なダメージを負った。激痛が体を駆け巡り呼吸さえままならない。さらにはリ級が雪風の腹に蹴りを思いきり叩き込んだ。

 

「ごはっ…あが…が…ガハッ」

 

内臓に損傷が出たのか盛大に吐血する。目の前が闇に染まりそうになる。けれど雪風は逃げることをあきらめなかった。海上を血を吐きながら這いずって逃げようとする。

 

――――死にたくない―――――帰りたい―――――あの温かな場所へ…

 

「ぐっ…ああ…帰り…たい…オウチヘ…しれエ…嫌だ……ナリタクナイ…北上さん…!」

「ソウダ…還ロウ。我々ト同ジ…深海棲艦ニナ!」

 

そう言って雪風にリ級が砲を構えた時だった。背後から物凄い衝撃が飛んできて、リ級は思いきり吹き飛ばされた。海の上を転がりまわり、何が起きたのかを把握する。そこには…金色の髪に紅い眼をした艦娘が立っていた。

 

 

一列に並び、海を駆ける瑞鶴達。その表情は鋭く雪風を救うことに全力を注ぎ、周囲を見回し、敵がいないか。そして雪風がいないかを注意深く見まわしていた。

 

「一体どこまで行っちゃったんだろう…」

「瑞鶴さん、このままじゃほんとに追いつけないっぽい」

 

「それはわかってるよ…けど、確証を掴むまでは単独行動は危険だよ」

「夕立。気持ちはわかるけど、僕たちは今6人でチームだ。一人でも欠けたら駄目だよ」

「…わかったっぽい…」

 

気持ちだけが先走りする夕立。雪風と長く居た北上。この二人が瑞鶴を悩ませた。事あるごとに先行しようとするため、そのために余計な神経を使う。旗艦とはなかなかに骨が折れる役目だ…。けれど泣き言を言っている暇はない。仲間が危機に瀕している。そして、いなくなってしまうことは何よりも避けなくてはならない。

 

「しっかし電探にも観測機にも反応なしだ。一体どこに行ったんだよ…」

「何回か艦載機を飛ばして遠くまで見回してみても、こっちも何の反応もない…ほんとにどこ行っちゃったんだろう…」

 

手ごたえのなさに諦めの表情を浮かべる瑞鶴と摩耶。母港を出てから数時間が経つが全く反応のなさに、瑞鶴と摩耶は最悪の結末を想定していた。

 

「まだ、生きてる…。雪風はそう簡単には死なない。瑞鶴や摩耶が帰るって言っても、あたしはあの子の姿か艤装を見ない限りは絶対帰らない」

 

北上の表情はかつて共に戦闘に出ていた時よりも遥かに厳しい顔をしていた。雪風は自分が横須賀で生まれた時からずっと共に戦ってきた。そして安久野のせいで自分たちが死神などと呼ばれていた時も寝食を共にし、共に励ましあってきた相棒なのだ。諦めたくない。けれど、もし…もし最期の時を見てしまったなら…せめて深海棲艦としてではなく、雪風として終わらせてあげたい…。覚悟は決めた。行くだけだ。

 

「もうすぐ日が暮れる…。こうなると瑞鶴さんの艦載機の捜索ができなくなっちゃうね…。雪風…どこに行っちゃったんだよ…」

「…信じれば救われる。そう強く願い続けることです。そうすれば、雪風さんはきっと見つかると思います…」

「って言ったってよぉ、神通。そう簡単にはいきそうもないぜ…どうだ、瑞鶴。もうお前の艦載機も帰還しなきゃダメだろ?」

 

「うん…これが最後のチャンス……」

「そうは言っても、そんなラッキーなことなんかさぁ」

「ま、待って!いた!いたよ!雪風!!」

 

「……!!!!どこ!?雪風はどこにいんの!?」

「早く教えるっぽいー!!!」

 

瑞鶴が雪風を発見したと言った刹那、夕立と北上が瑞鶴に詰めかかる。

 

「わ、わかったから!行くよ!提督さん!聞こえる!?雪風を見つけたよ!まずい、敵艦と交戦状態にあり!!」

 

『わかった。大至急向かってくれ。可能な限り雪風の救助を頼む』

「了解!行くよみんな!雪風はまだ生きてる!助けるよ!」

 

北上の顔つきがより険しくなる。夕立も早く着きたくて仕方がない。雪風とは友達なのだ。友達を見捨てるなんてことはありえない。敵を倒して、雪風を連れて帰って。みんなでおいしい提督さんのご飯を食べるんだ。

 

……

 

日は沈んでしまったが、場所はほぼ把握できたために瑞鶴は艦載機を着艦させ、あとは摩耶の電探を頼りに夜の海を進む。やがて、少しずつではあるが砲撃の音が響いた。

 

「音が聞こえたっぽい!雪風が心配…ああ、もう!近くまで来たなら雪風が心配っぽいから先に行くっぽい!」

「夕立、あたしも行く。ごめん、先に行く!」

 

「ああ、ちょっと!!って神通さんもー!」

 

夕立、北上、神通が飛び出してしまった。独断先行は危険だが確かに雪風の安否も気になる。砲の音が聞こえるならまだ生きているのだろうとは思うが…。

 

(軽い…体が軽いっぽい!)

 

夕立がすごいスピードで海を走る。徐々にスピードが上がり、北上や神通を引き離していく。早く雪風の下へ。速く、もっと速く!!

 

「夕立『改二』!!!」

 

一部の艦娘にのみ与えられ、なおかつ練度も十分でないとなれない改二。夕立自身は練度もポテンシャルも十分であったが、安久野の抑圧された運用では満足な力が発揮できず、中途半端な状態であったが玲司に全幅の信頼を置き、全力を尽くすことを誓った夕立は秘められた力が爆発。練習もなしに改二になりさらには艤装とのシンクロも完璧で。安久野の前では見せることがなかった戦う天才の芽が現れたのだ。

 

「えっ、夕立…改二なんて今までなれたことなかったのに…」

「どういうことだ!?あいつ、改二なんて…ってか、速え!!」

 

夕立が一瞬光ったかと思うと改二になった。北上はそれを見て笑っていた。夕立だって戦いに関しては修羅場を生き抜いてきた子だ。戦闘スタイルも申し分なかった。生きるため、そして時雨と村雨を守るためだけにやってきたのとは今回は訳が違う。仲間を守るため、ひどい命令の下でやる戦いじゃない。夕立の力、思いきり見せてやりな!と北上は思っていた。

 

「あたしもいくよ…北上『改二』」

 

北上もまた、今までの激しい戦いを生き抜いてきただけあって改二になる術は知っていたし、現地で戦いながらそのコツを掴んでどういうものかと言うものは十分に知っていた。腕に、足に。ぎっしりと存在を誇示する魚雷たち。それらは静かに…海の中を走り抜けていく。

 

「久々にキレたよ…。容赦はしない…」

 

夕立は全速力で音の下へと走った。目に入ったものは雪風がリ級に背中を撃ち抜かれた瞬間。そうして、血を吐きながら這いずって逃げようとする姿だった。頭に血が上った。艤装が頭に話しかけてくる気がした。

 

「もっともっと。もっと速く」

 

そのスピードにつんのめりそうになったが何とか体勢を立て直し、距離を詰める。雪風にリ級が砲を向け、撃とうとした瞬間、そのスピードに任せて思いきりリ級に飛び蹴りを食らわせた。リ級は物凄い勢いで吹き飛ばされ、もんどりうっていた。金色の髪に闇夜に光る紅き眼。後に「紅玉の女王」と呼ばれる白露型駆逐艦「夕立」がそこに居た…。

 

「雪風、無事っぽい?」

「は、は…イ」

 

「よかった…間に合ったっぽい。もう大丈夫。さあ、一緒におうちに帰るっぽい!」

「ゆ、雪風…ハ…もう、帰れマセン…。もう、雪風は深海棲艦にナッテしまイまス…」

 

「諦めたらダメっぽい!!帰るっぽい!提督さん!雪風はまだ無事っぽい!!でも、大破してて…危ないっぽい!」

『よくやった夕立。すまん、雪風に無線を繋いでくれないか』

 

「あ、ああ…しれえ…」

『心配したぞ雪風。夕立たちが来たんならもう大丈夫だ。帰ってこい。お前はまだそうやって俺を覚えているじゃないか。深海棲艦になんてならないよ。帰ってこい』

 

「雪風…は…。雪風は…帰っていい…ですか…?」

『何言ってんだ。ここがお前の帰る場所だ。飯食って、風呂入って、布団で寝て。みんなと一緒に遊ぶ場所だ。お前の帰る場所は海の底じゃない。横須賀鎮守府だ。帰ってこい雪風。雪風、お前の居たい場所は…どこだ?』

 

不快な目が消えていく。耳障りな声も遠くなる。夕立の金色の髪が。紅い目が見える。胸が熱い。

 

―――帰りたい…雪風は…みんながいる場所へ。北上さんがいて…しれえがいる。鎮守府に帰りたい…居たい。雪風はしれえやみんなと居たいです!!!

 

雪風は大きな声でそう叫んだ。夕立はにっこり雪風を見て笑っていた。優しく頭を撫でて。自分が玲司にやってくれたときのように。

 

「雪風。ちょっと待ってるっぽい。すぐに瑞鶴さんたちが来て連れて帰ってくれるっぽい」

「は、はい…帰れるん…ですね…」

 

「もちろんっぽい!提督さんは雪風をちゃーんと連れて帰るところまで作戦に入れてたっぽい!だから、ちょっと待ってるっぽい。あいつら、片付けちゃうから」

 

そう言って夕立は立ち上がり、眼前で邪魔が入り、憤怒に染まった顔つきをしたリ級とチ級を見据える。すぐに興味のない顔つきに戻り、無線で玲司に話しかける。

 

「提督さん。命令をちょうだいっぽい」

『命令?どうした?』

 

「提督さんの命令が欲しいっぽい。それで、雪風をいじめた奴に…同じ目にあわせてやるっぽい…!だから、命令。命令をちょうだい」

 

夕立が牙を向き、敵を睨みつけながら指示を待つ。これが夕立なりの玲司への忠誠の証だ。自分は完全に玲司に従うと。あいつの時とは違う。玲司の命令ならば完全に。完璧に遂行すると忠誠を誓うから。そのために玲司の命令が欲しかった。鎖を外してもらうのを待っている。

 

『あたしも同じ。玲司。ううん、提督。命令をちょうだい。完全に潰すから』

 

北上も怒気をはらんだ声で玲司に要求する。

 

『出撃している全艦娘に告ぐ。雪風の救助、及び保護。本当に感謝する。全ては自発的に救助に向かってくれたり、協力をしてくれたみんなのおかげだ。けどな…雪風を大破させやがった奴は絶対生かしておきたくない。許せない。だからお前らに命令を出す。眼前の敵を殲滅して、雪風とで7人!全員生きて帰って来い!沈むのは許可しない!繰り返す!敵を殲滅せよ!そして生きて帰れ!!』

 

玲司の命令に、夕立も、北上も。瑞鶴達も。全員が背筋を正して返す。

 

――了解!!!と

 

一方で深海棲艦達は邪魔をされたことがよほど腹が立ったのか、凄まじい形相で夕立を。北上を睨みつけていた。

 

「貴様ラ…私タチヲコケニシヤガッテ…許サナイ…オ前ラモ海ノ底ニ沈メテヤル!!!!」

「やってやろうじゃん。お前らこそ…雪風をよくもこんな目に…海の底に叩き返してあげるよ」

 

北上が凄まじい形相で深海棲艦に対峙する。夕立は紅い眼を光らせて笑っていた。鎖は解かれた。あとは命令通りに沈めれば終わりだった。グッ…と体を沈めて言う。

 

 

 

「さあ…最っ高に素敵なパーティ。始めましょう?」




戦闘シーンまで進められませんでした(汗。次回で雪風のお話は終わりになるかと思います。

夕立や北上の強さは如何ほどなのでしょうか?なるべくかっこよく書いていきたいですね。次回も読んでいただけましたら嬉しいです

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