「し、知りませんわよ、そんな車を買っただなんて…え?経費で落ちるわけがない?あああああ!!!間違えてそっちに送っちゃったの!?ち、違うわよ!!わざとじゃない!間違えて…あー!!!うるさいわね!!あ、しまっ…あ、あ、ちが!」
提督がうっかりとこの間買った車の領収書を癖で大本営に提出してしまったようです。私はちゃんと私費の領収書ファイルに綴じてくださいね…と散々浦波ちゃんと言っていて、わかったわかったと言っていたのに…結局大本営送りの箱に入れて気づかずに送ってしまってまた豊川さんに怒られています。
あ、こんにちは。私は幌筵…えっと、幌筵から異動した今は宿毛湾泊地の九重提督の秘書艦、磯波と申します。私ももっとしっかり確認すればよかったですね…数百万もする車のお金を経費でなんて…しかも「ドライブに行きましょうね!」と個人で楽しむためのものですから…経費で通るわけがありません。うっかりにせよ、提督の落ち度です。
「だからね?あのぉ…間違えただけなの。決して経費で通してやろうかだなんて…え?使用用途?間宮や伊良湖の食材が配給が切らした時の買い物への利用とか…決してドライブとかに使うとかでは…は?いや、8人乗りのミニバンで…」
何やら使用目的を問い詰められているようです。提督は嘘がヘタなのでしっかり遊び目的で使うようなことを言っています。ああ、豊川さんの怒りのお声がこちらにまで聞こえます。
「と、とにかくその領収書は送り返して頂戴!!お詫びに今度アイシャドウを…え?そんなもので懐柔する気かって?違うったら!!!」
ああ、藪蛇です…そこはおとなしく謝っておけば…。
「い、磯波…!助け…助けて!」
そう言って何やら怒鳴り声が聞こえている受話器を私に差し出してきました。私ははう…と困った顔をしているだろうな…と自分で思いながら受話器を受け取りました。浦波ちゃんは笑っています。
「あ、あの…磯波です。この度は提督がご迷惑を…はい、はい。この件に関しては私もちゃんと言っておきますので…お怒りはごもっともです…はい。はい、今度は私もしっかり確認してお送りいたしますので…」
こういう時、私が電話に出れば豊川さんの怒りが収まるだろうと言うのを提督は知っておられるのです。ですが、今回ばかりは…無駄遣いなんかして!とお怒りのご様子で、また電話を提督に代わってほしいと言われ…無言で私は提督に受話器を差し出しました。
提督は指でバッテンを作っていましたが、もう一度ズイッと受話器を差し出すと渋々受け取って…「はい…はい…すみません」とまた怒られていました。提督は確かに私たちを楽しませてくださるよう、車を買っていたのですが…今回ばかりは送った相手が悪かったですね…。
「姉さん、豊川さん…何だって…?」
「無駄遣いってレベルじゃない散財をして艦娘ちゃんに迷惑をかけてるんじゃないかって…」
「豊川さん、お金には厳しいもんね…提督は私たちのために買ってくれたんだけど…」
「金額が金額だから…」
「だよね…あー、しまったなぁ…私が見た時でもこれ、大丈夫なんですかーって思ったのに…だからしっかり私費のファイルに入れてくださいねって何度もお願いしたのにぃ…」
「提督、そういう所で変に豊川さんのお怒りを買うから…」
「ふふっ、でも提督らしいね」
「ま、まあ…そうね…」
私が仕えていた前の提督は高い車を買った際、車代ではなく、艦娘への家財道具と名を変えて領収書を送らせました。この際、家財道具の一新ならば事前に相談をまずすることと釘を刺されただけで通ってしまい、高級車を乗り回しては町の人にご迷惑をお掛けしていたようです。
そう、ここは私や浦波ちゃんが生まれた場所。そして、嫌なことしか思い出がない場所…。
………
私は生まれてすぐにひどいことを言われました。
「なんだこの芋くせえ女。艦娘ってのはこんなクソ田舎の芋くせえ娘みてえなのばっかりかよ?ちっ、美人が多くて言うこと聞くって聞いたから、きれいな女とできると思ってたのによ。初期艦だったか?あれも芋くせえし、マジでふざけんなよ」
初期艦…吹雪姉さん。悪い人の護衛に出され、叢雲姉さんや初雪姉さんと共に出撃し、沈んだと聞かされていました。実際には、横須賀鎮守府の提督に保護され、今は一生懸命頑張っていると聞きました。防空駆逐艦。私たちのお仲間、初月さんにも負けないくらいのすごい防空駆逐艦になっているらしいです。
吹雪姉さん…会いたいな。吹雪姉さんはずっとひどい目に遭っていました。私は吹雪姉さんの補佐をしていましたから見ていましたが…体中は傷だらけで…煮えたぎったお湯をかけられたり…私は泣きながら止めることもできず。
私も浦波ちゃんも…吹雪姉さんも…芋だの不細工だのと…暴力の捌け口にもなりました。女としての魅力はないな、と言うことです。沈んだ叢雲姉さんは気が強いのを屈服させたいがために…「女」としての使われ方もされていました。初雪姉さんは芋が沈もうが別にと言う理由でした。
酒匂さんは乳臭いガキみてえだと。高雄さんもあわや…と言うところでした。そして…鈴谷さん。あの人があの提督をどうにかしてくれたようですが、建造されたと思ったらすぐどこかへ売りに出しました。鈴谷さんがどうやって提督を逮捕させるに至ったのかわかりませんが、とにかく怖い提督はいなくなりました。
薄暗いし、廊下は傷んで歩きにくいし…壁は血の跡がついていたりして怖かったです。
正直ここに異動が決まった時は躊躇いました。けど…今は違います。来てみると…何だかとてもきれいになっているし…お部屋も別の泊地のようでした。何でも、流れの妖精さんが艦娘に優しい提督が来るから、と言う理由で大改造をしたと言うことです。横須賀鎮守府から「あたらしいていとくがきて、かんむすをはっぴーにしてくれるときいて」と多くの妖精さんがここにやってきたようです。
浦波ちゃんも酒匂さんも高雄さんも…開いた口がふさがらない状態でした。
「いいしごとをしました。おふろはよこすかをみならってだいよくじょうをもうけました」
傷の回復はできませんが、大きなお風呂で疲れだけは取れます。建物を基礎から作るって…どんな妖精さんの技術なんでしょう…。厨房は提督の舌を悦ばせるためだけの場所でしたが…間宮さんと伊良湖さんが…
「これなら和洋中、何でも作れるわ!見て!鉄鍋もあるわ!え、妖精さんが作ったの?」
「はい。いちまいのてつをたたいてたたいてたたきまくってつくりました。あぶらがなじめばどんなりょうりもおいしくつくれます。あいえいち?じゃどうです!!!」
「よこすかをみならってごはんはこのかまどでたくとふっくらしあがります。おみずはそこにいどをほったので、しゃふつしてからつかうとさいこうにおいしいごはんがつくれるはずです」
塩分を多く含むお水が出るようでしたが、謎のろ過技術を用いて塩分を取り除き、真水にしたようです。ミネラルが豊富でご飯がおいしくなるそうです。横須賀鎮守府って…一体どんなところになっているのでしょうか…。
九重提督もあんぐりするほど、泊地は改造されていました。見取り図と全然違う…そんな泊地に変わっていました。
「あ、ていとくせんようのおふろがありましたがあくしゅみでしたのでそうひのきのおふろにかえました。よこすかのていとくもおおよろこびでかんむすとはいっています」
その言葉に飲んでいたお茶を提督が噴き出していました。
「さ、三条クン…あの子…見かけによらず…え、ええ?でも一歩間違えば憲兵案件じゃない…?」
「くちくかんとはときどき。しょうかくさんとはよくはいっています」
「しょ、翔鶴…あの子、奥ゆかしそうに見えてしたたかね…」
三条提督…横須賀の提督の生活の一部が暴露されていましたが…大丈夫なのでしょうか…。
「こら、よそのていとくのしせいかつをあばくとはぷらいばしーのしんがい。あのひとはただくちくかんといっしょにせなかをあらいっこしていたり、いっしょにねていたりしているだけです」
「あの子って…ロ、ロリコン…じゃないわよ…ね?」
「たんにおしかけられるだけです。れいじさんはしょうかくさんいのちなので」
「翔鶴とデキてるの!?」
ああ、横須賀鎮守府の提督の情報が駄々洩れです…。提督はいいネタができたわね…とちょっと悪い顔をしています…。
………
私と浦波ちゃんのお部屋は2人で1部屋。隣には叢雲姉さんが個室…初期艦権限よ!と言う謎の理論で個室でした。ただ、よくサメの抱き枕を抱えては一緒に寝てあげるわ、と私たちのお部屋へやって来て一緒に寝ます。
叢雲姉さん。宿毛湾の提督が建造した叢雲姉さんは…もう帰ってきません。ですが、今はこうしてツンツンしているようで甘いものが大好きで、ちょっと寂しがり屋で。でも素直じゃなくてちょっとかわいいね、と浦波ちゃんと言っている叢雲姉さんがいます。これは艦娘にとっては仕方のないことです。それでも、吹雪型の姉妹として一緒にいられるのは嬉しいことです。
たまに敷波ちゃんも来ます。い、一緒に寝てあげても、いいわよ。と言っていますが、提督お手製のネグリジェ。枕を抱えていては説得力がありません。そこがかわいらしいね、と言うと「あ、あたしなんかかわいくないったら!」と顔を真っ赤にして枕に顔を埋めてうーうー言っています。そこがかわいいですね。
……
「ぴゃん!忙しいのに手伝ってくれてありがとう!」
「いえ。整理整頓は私や浦波ちゃんの得意分野ですので」
宿毛湾に来て数日たってもお片付けが苦手な酒匂さんのお部屋の整理を私たちが任されたのでお手伝いしました。酒匂さんも最初は躊躇っていましたが、提督が「あたしが昔の事なんて忘れさせてあげるわ!」と言うすごい自信満々で言うものですから、それを信じてついてきました。高雄さんも同じです。
高雄さんは私たちより要領よく提督にも収納ボックスなんかをお願いして自分なりにお部屋をまとめたようですが、酒匂さんはどうすればいいかわからず、困っていた様子でした。
「ぴゃー…お部屋がね。うまく片付けられないの…」
そんな寂しがっている子犬のようなお顔をされたら手伝わないわけにはいきません。ここは私たちの腕の見せ所です!
ただ酒匂さんはどこにこれをしまいましょう?と聞くと「ぴゃー…わかんないっぴゃ…」とか「これはそこのほうが…」などなど大変です。浦波ちゃんが収納上手なので「ここに下着!ここに寝間着!ここにタオル!紙に書いて貼っておきますね!」なんてうまく酒匂さんを納得させて収納していきます。酒匂さん…意外にお荷物が多くて結構大変…提督がまた買ってきてくださった収納ボックスが役に立ちます。ホームセンター?と言う所で透明な大きな箱を何個も買ってきてくれました。
「酒匂、あんたに作ってあげたお洋服は多いからねぇ。これを使うといいわ。ってかすごいわねここ、ウォークインクローゼット完備って…」
「あい。ていとくさんはおようふくをつくるのがとくいとききました。ですのできっと、たたんだりしわになるとこまるふくもおおいだろうとおもいまして」
「ナイスだわ!!!と、言うかあんたたちどこから来たの…?」
「われわれはよこすかからながれてきました。あたらしいそうさくいよくのわくはくちがあるといううわさをかぜにききまして」
「どこからそんな情報が流れてくるのよ…」
「ぴゃー、妖精さんのおかげでお部屋が快適だよー!ここね、昔の司令官の時、酒匂のお部屋だったんだ。何にもなくて何にも入れたらいけないって…でも、今は気にしなくていいんだよね!ぴゃ!」
「酒匂にはクラシカルメイド服を作ったり…チャイナ服も作ったわね…しゅっとしたスタイルが映えるのよね…」
「ふふふ、司令官からもらった服は大切にするよ!」
「ちょっとー!なんで私の部屋は天蓋つきのベッドなわけ!?洋室は希望したけどあんなの希望してないわよ!!!」
「むらくもさんはおひめさまみたいなふんいきでしたのであそびごころです」
「は?」
「おきにめしていただけたらなによりのよろこびです。いいえほうしゅうはいっさいいただきません。おーっほっほっほっほ」
「ちょっと整理しましょう。ここに来る前からすごいいろいろと改造が施されていたけど…どういうこと?」
「あい。しれいちょうかんからのみっしょんは、ここにいたひどいめにあったかんむすさんたちがここがかつていたばしょであることをわすれさせるようなかいぞうをしてほしいといわれたのです」
………
(※本来ならば全てひらがなで書きたいのですが読みにくいので通常通りで妖精さんが語ります)
悪い提督さんがいたと言うメンテナンスの行き届いていないボロい泊地…血と、涙と、暴力で支配された泊地。そこに帰ってくる艦娘さんたちが抱える心のトラウマを解決したい…そんな望みを叶えるため、匠たちが立ち上がった!!!
「いや、何よそのBGMは」
「ふいんきはだいじです」
「ふんいきね」
「そうともいいます」
テーマはトラウマを吹き飛ばす泊地。その為に匠の技術をふんだんに使って生まれ変わった宿毛湾泊地をご覧ください。
♪~(大改造〇的ビフォー〇フターのBGM)
手入れが届いておらず、錆や汚れが浮き出た外壁。陰鬱な雰囲気をなくすため、妖精さんが総出で真っ白に全て塗装を施し、きれいに生まれ変わった外観。また、真っ白なだけでは味気がないので絵心のある匠が中央に薔薇の騎士達と言う意味合いを込めた真っ赤な薔薇と剣を取って戦えと言う意味で剣を描きました。
整備が行き届かず、荒れ放題だった中庭。そこには薔薇の苗木を植え、来年には色とりどりの薔薇が咲くことでしょう。咲いた薔薇はコロンや消臭剤、体を洗えばいい香りのするボディーソープや花びらをお風呂に入れることで薔薇のお風呂ができるようにと丹精を込めて妖精さんが育てます。他にも談話ができるベンチやバスケットゴールを置いてみたりしました。
中も荒れ放題で板が浮いていたり割れていた汚い廊下。傷みにくい木材を用いてきれいに修理しました。壁のひびも補修。妖精さんが丁寧に丁寧にかんなで削って調整したり穴を埋めたりしました。
味気ない薄暗い蛍光灯で寒々しいロビーに匠がフランスから取り寄せたシャンデリアを豪勢に3つも用意。来客を高級感いっぱいのシャンデリアと赤じゅうたんでお・も・て・な・し。蛍光灯は温かみのあるLEDに全て換装。明るく、長寿命のLEDにすることで提督さんのお手間を取らせません。
質素どころか何もなさすぎる艦娘達のお部屋。和室に洋室どちらも選べます。畳は本物の畳。洋室のフローリングは温かみのある本当の木を使っており、畳の香り、木の香りが戦闘、遠征から疲れて帰ってきた艦娘さんのストレスを癒します。
収納にウォークインクローゼットを追加し、お気に入りのお洋服をシワもなく収納することが可能になりました。
和室のお布団は敷布団は高級な綿を使った敷布団。掛け布団は高級水鳥の羽毛布団です。洋室のベッドもこれまたフランスから取り寄せた高級ベッドに羽毛布団。毎日快眠をお約束します。
匠の粋な計らいで枕は幌筵の妖精さんから聞いた艦娘1人1人の寝相をくまなくチェック。それにより、それぞれの艦娘さんが一番リラックスできる位置に頭が来るように設計した専用枕を用意し、特にトラウマによって悪夢なんか見させてたまるかと言う匠の心意気が感じられます。
叢雲さんはかつて幌筵で天蓋付きのお姫様みたいなベッドがほしいわと仰られておりましたので特別にこしらえました。
「どこでそんなこと聞いてたの!?」
「ようせいさんのみみにききもらしはないのですよ」
「プライバシーがないに等しいわね」
「つぎいきますよー」
ドックしかなく、狭くて疲れの取りにくいドックが何と言うことでしょう。壁をくりぬき、増設し、横須賀鎮守府と同じく大浴場を作りました。これで多くの艦娘が疲れを癒し、体をきれいにすることができます。
「ちょっと待って、どうやってこんな大きさのお風呂を作れたわけ…?」
「ようせいさんにふかのうはありません」
「ちーとですちーと」
「何よチートって…」
悪趣味だった提督用のお風呂は総ヒノキのお風呂に大変身。大きさも2人が余裕で入れる大きさなので、ドックの小さなお風呂を清掃中の看板を出して艦娘を入れないようにしていた提督と天龍ちゃんの愛し合う時間も確保できるようになりました。
「にゃあああああああ!?」
「ちょっと!ストップストップ!!本当にプライバシーのないところね、ここ!!!」
「だいじょうぶだ、もんだいない。ていとくさんとてんりゅうちゃんのあいしあうじかんのさいはわれわれはおやすみちゅうですので」
「じゃあ何で知ってるのよ!?」
「てんりゅうちゃんのこえがおおきいので」
「プシュー!!」
「あー!天龍ちゃん!しっかり!!!」
前の提督がサボってばかりで収納スペースがなかった執務室。収納スペースを大きく増やし、また悪趣味だった提督の肖像画は、ほっぺをリスのようにしてあんみつを食べる満面の笑顔の叢雲さんにすり替えておいたのさ!
「何よこれ!?何でこんな!外しなさい!外して!!!!」
「そんな…これはさいこうのちんじゅふにはながさくえがおだとおもうのに…」
「私が恥ずかしいのよ!!!!!」
「じゃあ、おにくをまんめんのえみでたべるはつつきさんでいいですか」
「初月が発狂しそうだけど…」
「じゃあむらくもさんで」
「何でよ!?」
「かわいいからにきまってんだろぉ?」
今回の改装にかかった費用は以下の通りです。
「聞きなさいよ!!」
宿毛湾泊地改装費用
予算???円
工事費:Priceless
材料費:Priceless
家具・照明費:Priceless
------------
合計: Priceless!!!
「ちょっと待って?プライスレスって何よ!?これだけの大改造よ!?どれだけの費用が…ああああああ豊川さんの逆鱗にまた触れちゃうじゃないのよー!!!」
「もんだいありません。なぜならこれはよこすかちんじゅふからもってきたおほしさま1000こでかいけつしました」
「は?お星さま?」
「これです」
………
妖精さんが小さなてのひらにコロンと1つ乗せているのはピンクのお星さまのような何か…。私は見たことがありません。
「金平糖?」
「はい。れいじさん…ていとくさんがこれをくれるです。これはようせいさんのあいだではおかねになるのです。これはさいこうきゅうのおほしさまです。どのようせいさんものどからてがでるほどほしがるものです」
「この金平糖がねぇ…聞いたことがあるわ。確か、京都の金平糖専門店の高級金平糖をあげると能率がとんでもなく上がるとか…で、妖精さんの間ではこれが通貨になるのね?」
「あい。そのへんのおほしさまではわれえわれのねんりょうていどにしかなりませんが…これは10こもあげればさいこうきゅうのひのきをふんだんにくれるくらいのかちになります」
「10、10個で!?あー、ちょっと待って…これならどう?」
そう言うと提督は箱を取り出し、開けました。そこには金平糖と言うのがたくさん入っています。ソーダ味…いちご味…なんだかおいしそうです。
「磯波、浦波、食べてみる?これ、おいしいのよ、試しに買ってみたんだけど」
3粒…頂きましたので食べてみました。甘すぎず…お口の中でじゅわぁ…と溶けていくなんとも言えない味…甘さ…おいしいです。
「おいしい…です」
「おいしい!」
「そ、それをどうしてこんなにたくさん!」
「あんた達が宿毛湾の修理補修を終えたらあげようと思っていたのよ。でもまあ…予想以上のお仕事をしてくれたから…これ全部あげるわ」
「ぜんぶ!?な、なんという…かみのようなおひとだ…」
「こ、これがあればかんむすのさいこうきゅうのぬのがちょうたつもできます…」
「あら、それはあんた達が食べる用よ。通貨にしないで頂戴。あんた達の頑張りにあたしからのプレゼントよ」
「か、かみだ…」
「泣かないでよ…」
金平糖をたくさん頂いたことで涙を流して喜ぶ妖精さん達。でも、おかげで本当に宿毛湾に帰って来てしまった…と言う思いは吹き飛ぶほどの素敵な泊地になりました。
………
お風呂は広くて温かくて、寒くなってきたので体がしっかり温まりました。みんなではしゃぎながら体を洗ったり、お風呂に浸かったり…パジャマも新調されており、もこもこして温かく、お風呂上りには熱いくらいでした。
お部屋にはいつの間にかこたつと言うものが用意されており、寒くなったらつけてくださいと電源を入れると中が暖かい…。こんな便利な器具があったんですね…。
これが、宿毛湾泊地の大改装の全貌でした。それからは叢雲姉さんや敷波さんと一緒に寝たり、時々酒匂さんが加わったりと昔を思い出さない楽しい毎日が始まりました。
………
ある日、新しい艦娘がやってきました。小さい小柄な艦娘…1人は半分寝ているような…1人は…何と言うか…その…胸が天龍さんくらいあるのでは…と言う方でした。
「チャオ!ここがスクモ…ワン?で合ってるかしら?提督に会いたいのだけど、どこにいるかわかる?」
わあ、気の強そうな駆逐艦の子ですね。リベッチオちゃんの妹さん…お姉さん?
「なんじゃ、ワシのことをじろじろと見て…」
「あ、いえ、失礼しました。イタリアの方ですか?ではお連れします」
執務室に案内するとやっぱり半分寝ている子…それと小さいけど大きい…子に提督が笑顔でお出迎えをします。
「あら、イタリアから来たのね。あら?おかしいわね。あんた、駆逐艦…?聞いていたのと違うわね」
「だ、誰が駆逐艦よ!?ワシは
「あ、あらあら…ずいぶんかわいらしい戦艦ね…うーん、創作意欲がはかどるわぁ。いいスタイルだし…ふふふ…」
「な。何よその怪しげな笑みは…」
「何でもないわよ。で、そっちの半分寝ているのは…駆逐艦…リベと同じ服を着てるから…ああ、シロッコね」
「ふぁああ…あたし、マエストラーレ級駆逐艦、そう、末っ子です。名前は、シロッコ。うん、よろしくちゃ~お?」
「はいはい、ちゃーお。あとはマエストラーレとグレカーレだっけ?カブールだっけ。あんたが来るのは予想外だったけど、うん、いい感じね。イタリアを呼んでくれる?この子達を案内させるわ」
「はーい」
浦波ちゃんがイタリアさんを呼びに行きました。しばらくするとほわほわとしたイタリアさんがやってきました。
「イタリア?この子達を寮に連れて行ってあげて。まあ、あってないようなもんだけどさ。駆逐寮だったり戦艦寮だったりに案内してあげて。頼んだわよ」
「わかりました。さあ、お2人ともついてきてくださいね~」
「はーい…ふぁあ…」
「ええっと…寝ちゃだめよ?あなたもはぐれたらダメですからね」
「こら!ワシを駆逐艦扱いするな!!!こら!!話を聞けー!!」
新たにイタリアから送られてきたと言う駆逐艦のような小ささの戦艦、カブールさんと起きているのか寝ているのかわからない駆逐艦シロッコちゃん。近々マエストラーレちゃんやグレカーレちゃんと言うリベッチオちゃんの姉妹がやってくるそうです。
イタリアからの艦娘。期待は高まります。新しい艦娘に新しい泊地。それももう怖いものなんて提督と妖精さんが吹き飛ばしてくれました。
「ねえ司令官!!叢雲さんだけあんなベッドずるい!暁もお姫様みたいなベッドがほしいわ!」
「それは構わないけど大きいから1人部屋になるわよ?」
「えっ?そ、それは…雷が夜怖いから一緒に寝てって言うから仕方なく寝てあげてるから…それは困るわね…」
「何言ってるの!暁がオバケが怖いから寝てあげてもいいわよって言ってるんでしょ?」
「はわああ!い、雷いたの!?れでぃの秘密をばらすなんてレディの風上にも置けないわ!」
「事実じゃない。実際ちょっとミシッて音がしたらぴゃああ!って叫ぶくせに」
「わあああ!嘘よ!雷の言っていることは嘘なんだから!」
「じゃあ明日から1人部屋で寝るのね!雷は1人でもへっちゃらよ!」
「うわあああん!!!雷ぃ!1人はやだぁ!」
「はいはい、もっと甘えてもいいのよ」
「じゃあ天蓋ベッドは却下ね。あれは…「私のを使っていいから普通のにしてよ!」
「だーめー」
「何でよ!!!」
今日も執務室は賑やかですね。お仕事もこの賑やかな方がよくはかどるんです。
「ねえ、あの小さい戦艦が猫のパジャマを気に入らないと言うんだけど。と、言うか駆逐艦のパジャマじゃ胸がきつくて入らないそうよ」
「浦風か浜風のなら入らない?」
「ダメね。それよりも大きいのだけれど、私や姉さんのではだぼだぼなのよ」
「仕方ない、作るしかないわね。カブールを連れてきて頂戴」
「ていとくー!!シロッコがお腹空いたってー!ほっとけーきー!!!」
「あんたが食べたいだけでしょ!?シロッコ!!!立ちながら寝ない!!!」
「ふぁあ…おなかすいたー」
「あああああ!!!!もういろいろと忙しいわね!ゲッ、電話!?はい、幌筵…じゃなかった宿毛湾…あら、豊川さん…おほほほ、何でもないのよ」
「ねーねー!ほっとけーきーーーー!!!」
「うるさーーーーーい!!!!今電話中なのよ!あら、ごめんなさい。あ、え?このホットケーキミックスで10万円近くしてるレシートを経費で…?あーーーー!違うのよ、それは私費だから!はい、2回目ですね…はい。車の件と言い…はい…すみません。はい。申し訳ございません」
「てーーーとーーーーくーーーーー!!!!!」
「提督!この弩級戦艦のワシになんじゃあのにゃんこのパジャマは!おまけにパツパツで入らなかったわよ!!もっとこう、大人びた寝間着はないの!?」
「ちょ、ちょちょちょ…あ、はい。ナンデモナイデス」
今日も騒がしい執務室。幌筵から宿毛湾に変わっても…これだけは変わりません。それが私たちにとっては、宿毛湾に帰ってきたとしても、あんなことを乗り越えられる場所になりそうです。
「姉さん、領収書のファイル、ほら、また…」
「……提督にはちょっとあとでお話をしましょう」
「姉さん、顔が怖い…」
「うふふふふ、何でもないわよ。うふふふふふ。あれほど領収書や書類はちゃんと整理してくださいと言っておいたのですが…浦波ちゃん、天龍さんも呼んできてくれる?お話がありますって。ふふふふふ」
「は、はい。直ちに」
ホットケーキ、カブールさんのパジャマ。そして天龍さんと揃っての私のお説教。提督は今日も執務以外で忙しい毎日になりそうなのでした。
後日、さらにとんでもない重巡であるポーラさんのせいでまた豊川さんに怒られて平謝りする提督と、浦波ちゃんの怒りとザラさんの怒りが炸裂し、小さくなるポーラさんの姿がありました。
「ああああああもうやだああああああああ!!!!!」
今日も提督の叫びが執務室に響き渡ります。怖い怒鳴り声ではなく…心からの叫び…提督の苦労はまだ終わりそうにありませんが、私たちは黙々と書類を片付けていく毎日。
「ちょっと!アタシを無視して仕事しないでくれる!?」
「いつも通りじゃないですか。と、言うか領収書や決済書類はここに入れてください。また豊川さんの電話が来ますよ」
「ア、ハイ」
「ふふふ。提督。大変とは思いますがこれからもよろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします!」
「はいはい…あんた達は名誉秘書艦なわけだし、いてもらわないと困るけど…無理だけはしないのよ」
「はい!じゃあ、ベリータルトが食べたいです!」
「ベリータルトですって!?」
「ローマ!ドアを壊す気!?ってか超反応すぎよ!冷蔵庫に入ってるから食べてきなさい!」
「こうしてはいられないわ!!」
「姉さん、私たちも行こっか」
「そうね。では提督、休憩を頂きますね」
「はーい…ああ、カブールのパジャマはまだかってうるさいし…あの子何なのよ…」
提督はカブールさんのパジャマ作り。執務どころではありません。凄まじい剣幕で早く作れと言われているのです。でも、少しだけ反抗心を入れてねこさんの肉球パジャマですが。
これからもきっと楽しい毎日。私と浦波ちゃんはここに来られて幸せです。ありがとうございます、提督!
宿毛湾泊地の劇的大改造(ryでした。
私の小説は朝潮や神通のようなチート?みたいなキャラもいますが、一番のチートキャラは鎮守府を好き放題大改造してしまう妖精さんでしょう。
温泉、地下水をどこでも掘る。建物をあっという間に改造する。どこからともなく衣料やら食材やら何でも持ってくる。そんなチートキャラなのです。
さて、次回は場所がまた変わり、岩川基地の七原提督と、彼女を慕う山風や金剛のお話を書いていこうかと思います。そして、彼女たちが集まる理由とは?
次回をお待ちくださいませ。
それでは、また。