提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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今回はまたまたどたばたコメディチックになっております。
今回は翔鶴姉を主役にしていきます。

おや?翔鶴姉の様子が…?


第二百六話

七原提督の蒼龍の艤装の修復が完了。改二でも十分運用ができるように修復された。

 

「うわぁ、軽いし搭載数がいっぱいになったよ!これなら提督のお役にたてるよね!!」

 

「うっうっ…蒼龍ちゃん…よかったよぉ…」

 

「ねぇ、三条提督!演習場を借りていいかな!?あとちょっと艦載機も!」

 

「ああ。いいぜ。好きなように使ってくれ」」

 

そう言うとわーい!とまるで皐月か文月みたいにはしゃいで演習場へ走っていった。

 

「三条提督…明石さん、本当にありがとうございました!何て…何てお礼を言ったらいいのか…」

 

「蒼龍、嬉しそうデシタネー。ワタシも蒼龍が強くなってあんなに元気になったなら嬉しいデース!」

 

「いやいや、お礼なんていいですよ。今後も蒼龍や金剛…それからみんなで支え合って頑張っていきましょう。困った時はお互い様、ですよ」

 

「も、もし三条提督も困ったことが会ったら遠慮なく言ってくださいね!!!」

 

「ええ。それじゃあ蒼龍の様子を見に行きましょうか。翔鶴達も今は鍛錬中のはずだから…」

 

そうして演習場へ七原提督や金剛と行こうとしたとき、ドアをぶち破るかのような勢いで瑞鶴が飛び込んできた。

 

「提督さん!!!翔鶴姉!!!!翔鶴姉が!!!!!」

 

「瑞鶴?翔鶴がどうしたっていうんだ!?」

 

玲司の恋人である翔鶴の事となったら玲司はみるみると顔色を変えた。その顔は焦燥しきっている。

 

「わああ!ちょっと、掴みかからないでよ!そ、それが…お腹が痛いって言って…血を流して倒れちゃったんだよ!」

 

「血!?どこからだ!?何が起きた!?」

 

「そ、それは…それは…」

 

「どこなんだよ!?翔鶴の容態は!?」

 

「ず、瑞鶴の口からはそれは言いにくいなぁ…」

 

「そんなとぼけている場合じゃねえだろ!?どこがどうなったってんだよ!!!」

 

「今医務室に運ばれたから明石さんから聞いてよー!!!」

 

瑞鶴の口からは憚られると言う出血。そして倒れたと言うこと。一体翔鶴の身に何が!?玲司は神にも祈る気持ちで医務室へと走った。

 

………

 

「翔鶴!!!!!」

 

引き戸のガラスが割れそうな勢いでピッシャーン!!!とドアを開けて医務室に飛び込む玲司。その表情はかつてのショートランド海戦の時のような鬼のような形相であった。

 

「れいじ…さん」

 

「翔鶴!無事か!?」

 

「はいはい、医務室ではお静かに」

 

「明石…あ、えっと…すまん…え、えっと…翔鶴の様子は…」

 

「うーん、私にもよくわからないんだよねぇ…えっと…急にお腹がギュウウっと締め付けられるかのように痛くなって…その…血が…」

 

「血が出たって聞いたぞ?一体どこから?一体何が起きてるんだ!?」

 

「えー、あー…女の子の大事なところ…から…」

 

「あ…」

 

そこで明石も翔鶴も顔を真っ赤にしていた。そして玲司もそれを聞いて真っ赤になった。

 

「提督さんのヘンタイ」

 

「う、すまん…」

 

「艦娘の図解を見てもさーっぱりわかんないんだよねぇ。そんなレポートは一切ないわけだし。ぐぬぬ、蒼い眼になることと言い…女王化と言い、横須賀は未知なるレポートを書く羽目になることが多すぎる…」

 

「あの…少しいいですか?」

 

蒼龍も慌てて演習を中止し、一旦食堂で待機してもらっている。七原提督は艦娘の翔鶴が心配だとこちらの様子を見に来たのだ。

 

「はい?七原提督、何かご存じなんですか?」

 

「翔鶴ちゃん、翔鶴ちゃんがお腹が痛くなった時って、食べすぎたーとかの痛みじゃなくてこう、お腹がズーンと重くなるって言うか…腰までズンと重い痛みが来た?そのあとすっごく痛くなった?」

 

「あ、はい…その…ものすごくお腹の中だけを何かで締めあげられるかのような痛みで…その…血も…」

 

「そうなんだ…」

 

「何ですか、七原提督…わかったんですか?もったいぶらないで教えてくださいよぉ!」

 

「これ…三条提督の前で言ってもいいのかなぁ…」

 

「あー、玲司君…提督と翔鶴さんは恋人同士だしいいんじゃないですかね?」

 

「え、ええ!?三条提督、翔鶴ちゃんと!?はー、ぶったまげだ。そがぁまっすぐば言われっどこっちが緊張すっど…」

 

「テートク、言葉が素になってなってマース」

 

「はっ!?オ、オホン…え、ええっと…じゃ、じゃあ言っていいんだよね…」

 

「七原提督。お願いします」

 

「ふんふん」

 

玲司は食い入るように。明石も同じくメモ帳を片手に鼻息を荒くして七原提督が言おうとしていることを聞こうとしていた。

 

「えっと…たぶん、翔鶴ちゃん…生理…なんじゃないかな?」

 

「……?え?」

 

「はい?」

 

そこにいる七原提督と金剛以外の皆が硬直した。そして…。

 

「整理?」

 

「翔鶴さんの体の中で整理?」

 

「あ、えっと…こう書くんだけど…生理ね…わたしも重いから気持ちがわかるなぁ…ほんと…もう動きたくないし働きたくないんですよ」

 

「オーウ、その時のすみれはいつも寝てていいって言ってるのにー」

 

「で、でもそれくらいでお仕事を休むわけには…」

 

「でも痛くてたまらないんでショ?だったら休むべきデース。翔鶴みたいにするべきデース」

 

「う、ううう…いいのかなぁ…」

 

「いいんデース。人間の女の子の特権デース。ん?」

 

「金剛ちゃん、気づいた…?それが…」

 

「ホワアアアアアアアアアアアット!!!!!??????」

 

「うるっさ!?何だよもう!!!」

 

「んっと…今から説明しますけど…」

 

そうして七原提督が説明を始めて…説明を終えると。

 

 

えええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!??????

 

玲司と瑞鶴と明石の絶叫が鎮守府に響き渡った。

 

「あ、あか…あか…あか…ちゃん?」

 

「うん、そう…要は…人間の女の子が…ああ、ううんと…赤ちゃんを作れますよって言うこと…」

 

「うおおおお、こ、これは世紀の大発見ですよおおおおおお!!!!」

 

「あ、あかちゃん…翔鶴が…?」

 

七原提督曰く、翔鶴の症状は人間の女性がほぼ必ずなると言う現象…生理ではないかと言う。

 

「ですけど…本来艦娘ってそういう機能はないと聞いていますけど…」

 

「俺のせいかね…」

 

「あ、それ納得」

 

「間違いなく玲司君だねぇ」

 

「でも…どうして?どうして翔鶴ちゃんが?」

 

「あー。翔鶴さん、1つ聞きたいことがあるんだけど…」

 

「はい…何でしょう…」

 

「玲司くんと何したのか教えてください。教えろ下さい」

 

「ふぇええええ!?!?!?!?!」

 

「おい、明石、そういうプライバシーにかかわることはだな」

 

「翔鶴さんがこうなった理由を聞いておかないと他の子が起きる場合もあるんだよ!だから聞いておかないと!」

 

「う、ううう…そのぉ…」

 

「お、俺は退室する…聞いちゃいけない気がする…」

 

「わ、わたしは蒼龍ちゃんと艤装のチェックに言ってこようかなー」

 

「瑞鶴さんは残ってくださいねー」

 

「は、はあ!?」

 

「お姉さんの一大事なんですから!!!!」

 

「う、そう言われると…」

 

こうして玲司は医務室の外で待機することになった。

 

………数分後

 

中に入ると瑞鶴が顔を真っ赤にしてぷしゅーと頭から蒸気を出して座り込んでいた。明石は目をキラッキラ。三重キラづけしたかのように輝いてメモを取っていた。

 

「いやぁ、玲司君と翔鶴さんはほんっとラッブラブですねぇ。よっ、このこのー」

 

「うるせえなぁ。で、何なんだよ原因は」

 

「それはねぇ、玲司君が翔鶴さんとセッ「全機、目標明石さん、爆撃開始ぃ!!!」」

 

ゴスッと分厚い医学書で明石の頭を殴打する瑞鶴。それにより、明石は卒倒した。

 

「あ、明石ぃ!?お、おい、これじゃ原因がわかんねえだろうが!?」

 

「うるさい!!!事情は翔鶴姉から聞いて!!!このスケベ!ドスケベ!!!ラブラブなのはいいけど自重しろっての!!!!」

 

「は、はあ!?」

 

気絶して白目を剝いている明石を引きずって瑞鶴は去っていった。残るは寝込んだ翔鶴と…呆然とする玲司だけだった。

 

「いたたた…」

 

「お、おい…大丈夫か…?どこか痛むか?さすったりするくらいならできるぞ」

 

「あ、あの…ごめんなさい…腰を…さすってくれませんか…?」

 

「お、おう」

 

優しく、翔鶴の柔らかな肌を傷つけないように優しくさすった。服の上からでは…と言ったのは翔鶴のささやかなわがままだった。

 

「あ、少しだけ…マシになった気がします…」

 

「そ、そうか…」

 

「あの…私がこうなった理由は…その…玲司さんと…あの時からよく…体を…肌を重ねて…その…していることが…」

 

「マジ…?で、でもそれじゃあ…」

 

「はい…あの人たちにめちゃくちゃされていた時はなぜ始まらなかったのか…と聞いたんですけど…()()()()()()()()()()()()()()()()…だそうです」

 

「ああ…」

 

合点がいった。玲司は深海棲艦の血を引く特異な人間だ。そうして肌を重ね、言ってしまえば体液交換だって激しい。玲司と翔鶴は非常に情熱的であり、回数も多い。それだけ愛し合っているのだ。結果として、玲司のソレが彼女の「女性」としての器官を目覚めさせたのではないか、と言うのが明石の推測である。瑞鶴はマンガでは読んだことのある生々しい話を翔鶴から聞かされてオーバーヒートしたわけだ。

 

医務室で2人きりになる玲司と翔鶴。

 

「ふふ、うふふふ」

 

「ど、どうしたんだ…翔鶴?」

 

「いえ…赤ちゃん…かぁ、と思いまして…私と…玲司さんとの…赤ちゃん…」

 

「そ、そうだな…赤ちゃん…その気になれば作れる…んだよな」

 

「ええ…私は早く作りたいなと思います…けど…この鎮守府のことを考えると…空母が足りていない現状ですから…」

 

「そうだな…そうすぐに…とはいかないなぁ」

 

「でも…早く会ってみたいですね、私と玲司さんの赤ちゃん」

 

「翔鶴は…やっぱりほしい?」

 

「はい。子は2人の愛の結晶と言いますから…それに、商店街で見た赤ちゃん、とてもかわいかったですし。私達の子なら…もっとかわいいかなって…えへへ」

 

「そうだな、きっと翔鶴みたいな美男美女になるだろうさ」

 

「いいえ、玲司さんのような」

 

「いやいや翔鶴みたいな…ははは」

 

「うふふふふ!いたたた…」

 

「お、おいおい…大丈夫か?すまんすまん」

 

「い、いえ…でも…この痛みも…赤ちゃんの事を考えると…ふふ、幸せな痛みなのかなって」

 

「そ、そうか…あ、あー…その、痛みとかが引いたら…ちょっと言いたいことがあるんだ。今この場ではちょっと…言えないかな。雰囲気ってのもあるし」

 

「えっ!?」

 

翔鶴はもう察してしまったらしい。勘がいいから仕方のないことなのだが…。翔鶴は布団で目元まで隠してしまい、消え入りそうな声で「は、はい…」と言った。照れくさそうにぽりぽりと後頭部をかく玲司。玲司ももう覚悟は決まったのだ。そう言うことなら…いや、こうならずとも言うつもりだった。タイミングが良かったと言うか何というか…。玲司は思う。ここで言えない意気地なしだな…とも。でも言う時はしっかりと言っておきたい。だから…覚悟を決める時間も欲しい。ああこの意気地なし。

 

「すみません玲司さん…あの…は、恥ずかしいのと…少しお休みしたいので…」

 

「お、おお、そっか。わかった。お休み。俺は執務に戻るよ」

 

「はい…痛み止めが効いてきたみたいで…ふわぁ…」

 

「ん、おやすみ」

 

玲司が退室したあと、もぞもぞと布団から顔を出す。周りに誰もいないことを確認し、えへ、えへへへへと顔をほにゃっとしながら笑う。赤ちゃん。商店街で見た時、私にも玲司さんとの赤ちゃんがいたらこんな感じなんだろうかと想像したことがある。そして瑞鶴が隣にいるにも関わらず、顔をおさえてもじもじしていたことがある。瑞鶴は「まーた始まった…」と呆れていたが。

 

それともう1つ思うことは…あの男たちにされていたときにこんなことが起きなくてよかった。と思う。望まぬ命など赤ちゃんにとっては悲劇である。ましてやあの汚い男。本当にそれで身ごもってしまったのならおそらくは申し訳ないが子と共に海に散ろう。そう思うほど。しかし、実際には艦娘が子を身ごもるには退役して人間になるしかないと言う。

 

今回の「艦娘でありながら子を産むことができる」と言うのはやはりこの特殊な事例が多い玲司がいる横須賀ならでは。そして玲司と翔鶴の絆の深さであろう。

 

いつか。いつかはきっと…玲司さんとの子を…その時は商店街で見た人たちをも超える、誰よりもかわいいママになろう。あ、お母さんって呼ばせようかな。どうしようかな…えへへ…と笑っているとグワン…と世界が回りだした。明石の薬が効いてきたのだろう…。

 

目を閉じるとストンと眠りに落ちた。その時、翔鶴は夢を見た。自分の髪と同じ色をし、玲司のような蒼い目をした小さな女の子が庭の大きな桜の木の下。その隣で少し大きくなっているみんなで植えた桜の木。その下で楽しそうに走り回る女の子。

 

「おかーたん!」

 

「こっちよ〇〇!」

 

「おかーたん!おとーたん!」

 

「ふふふ。さあ、そろそろお父さんがご飯を作ってくれるわよ」

 

「わーい!おむらいしゅー!」

 

「まーたオムライスかー。わかった、おいしいのを作るからな!」

 

「もう、あなたったら…」

 

そう言って3人で笑いあう夢。それは…そう遠くない未来の話…なのだろう。

 

 

「あ、きた!変態提督さん!」

 

「誰が変態だ」

 

食堂に来た途端に瑞鶴にジト目で見られることになった。なんで変態呼ばわりされなきゃならないんだ。

 

「今日は七原提督と金剛のためにオムライスを作ろうと思ったんだけど瑞鶴はメザシでいいな」

 

「なんでよー!?」

 

「開口一番ヘンタイなんて言うやつに振る舞うオムライスはなし!」

 

「ごめんってー、提督さーん!」

 

「あ、三条提督。翔鶴ちゃんは?」

 

「明石が調剤した痛み止めと睡眠薬で眠ったと思います。ゆっくりさせてあげたほうがいいでしょう」

 

「そうですね。ほえー、でも艦娘ちゃんがそんなことになるなんて…何だかすごいですねぇ」

 

「まあ…俺が特殊ですからね…」

 

「あ、そういえば深海棲艦の…」

 

「そういうことです。何が起きても不思議ではないってことですね。ただ、こうなった以上責任はちゃんと取りますし…翔鶴は俺の大事な恋人ですから。その…」

 

「ふふふ♪仲が良くていいですね♪でも、赤ちゃんを作ると言うこと。お腹の中で赤ちゃんを育てること、それから産まれてからも子育てと言うのは大変なんですからね。三条提督はないと思いますけど、もし、自分勝手無責任なことを翔鶴ちゃんに強いた時は…」

 

「強いた時は…?」

 

「わたしが首ばすっ飛ばすんど。首、置いてけ」

 

「アッハイ」

 

その時の殺気はちょうどいた扶桑でさえゾクリと感じるものであり、霞が「おねえちゃんがこわいのぉ!」と泣き出し、それをあやすのに七原提督が必死になるほどであった。

 

そう、無責任に子どもを作ったところで翔鶴にも負担がかかるし子供も不幸になる可能性が高くなってしまう。父が言っていた。

 

「いいか。漢ってのはな、女房…奥さん…あー、うーん、父さんが旦那、母さんが奥さんって覚えるんだ。でな?いずれお前も結婚するだろう。そんな時はちゃんと、幸せにして笑顔でいさせてあげるのが旦那の務めだ。女を不幸せにして泣かす奴なんか漢じゃねえ。お前も素敵な奥さんを見つけて、その奥さんを幸せにしてやるんだぞ。漢の約束だ!」

 

父さん。俺、見つけたよ。大切な…幸せにしたい素敵な奥さん。なってくれるかはこれから言うんだけど…でももしなってくれたら…絶対幸せにするから。漢の約束。ちゃんと守るからな。

 

「翔鶴なら玲司の赤ちゃん喜んで産みそうだよねー」

 

「あ、わかるー。翔鶴さん提督にラブラブだもんねー。提督と翔鶴の赤ちゃんかー。きっとかわいいんだろうなー。男の子かな、女の子かな?」

 

「まだ作ったわけじゃねえだろ?」

 

「でも気になりますわ。かわいい女の子がいいですわね♪」

 

重巡たちや北上が想像をこらす。商店街で思い出す。手を振ってくれる小さな女の子。きっと翔鶴に似て髪の毛は銀色かな?目は提督に似て蒼い眼かな?提督似?翔鶴似?どっちでもかわいいな。そしてそんな子が「おねーたん」と言いながら抱っこしてもらおうと手を伸ばして走って来るんだ。そんなの…うひひひひ…。あ、まよおねーたんじゃなくてまやおねーたんって呼ぶんだぞ。

 

「まよおねえちゃん…まよおねえちゃん…」

 

「おい最上ぃ…」

 

「あ、やっばー、にっげろー」

 

「おいこらてめえ!!」

 

「まよお姉ちゃん、だっこしてー」

 

「え?あ、ああ、霞!だっこだなー!よーしよし!まよお姉ちゃんがだっこしてあげるからなー!」

 

「えへへー♪だっこだっこ♪」

 

「とほほ…あたしゃいつまでまよお姉ちゃんなんだよぉ…」

 

「なーにやってんだか…」

 

「摩耶の思いは伝わらないってか…さて、俺は飯の準備しよ。久しぶりに」

 

「ねえ、ちょっと、冷蔵庫からメザシを取り出すのやめてよ!!!」

 

「知りません」

 

「はいはい、提督…いじわるはそれくらいにして…」

 

「お米…研げました…」

 

「あら茉莉ちゃん、ありがとう♪」

 

七原提督は叫ぼうにも叫べなかった状況。そう、深海棲艦の港湾棲姫や戦艦棲姫がいたこと。玲司がうっかり隠れさせることを忘れてしまったがためにバレてしまった。事情を全て説明すると涙ながらに「だいへんだっだねぇ!」となぜか紫亜と茉莉を抱きしめてしまい、皐月と文月をえらいえらいと褒めたくらいでいとも簡単に受け入れた。金剛も山風も受け入れざるを得ない。

 

山風はと言うと皐月や文月達駆逐艦と遊戯室でゲームをしている。思いきりこの鎮守府になじんでしまっている。玲司達が出す料理もいたく気にいり、お姉ちゃん、これ作って…とキラキラした眼差しでお願いされ、かぁいいモードが発動し、作ってあげることを誓うのである。

 

「赤ちゃん…かぁ」

 

「玲司君…いえ…三条提督のせいでまた書くべきレポートが増えた…」

 

「何かいろいろあるんだねぇ…」

 

「読みます?横須賀からは持ち出し禁止ですけど…」

 

「おもしろそう!読みたいな!」

 

読めば読むほど横須賀が異常な鎮守府であり、これなら三条提督が中将になるのもうなずけるなと言う内容ばかりであった。蒼い眼、女王。大淀がまとめた戦闘詳報。どれもとても興味深かった。南方海域の戦艦レ級のレポート。こちらは恐怖を感じざるを得ない。いずれは…私達もと考える。

 

「七原提督は赤ちゃんとか考えないんですか?」

 

「んー。わたしは恋人が山風ちゃんや涼風ちゃんや金剛ちゃんだからねぇ。男の人はいじめられた経験や本当にひどい目にあいそうになって怖いから…三条提督や一宮提督は大丈夫だから安心して」

 

「イエース!!すみれとは山風や涼風、ワタシとあつーいよぶべらっ!!!!」

 

「やだもー!そういうことは内緒にしておいてよぉもぉ!!そ、そりゃ金剛ちゃんは情熱的だし涼風ちゃんはいぢめたくなりし山風ちゃんはやさしーくやさしーくしてるけど、それをここで言われたらわたしはずかしくて死んじゃうから金剛ちゃんおねがーい!!」

 

「うごごごごご!すみ…れ、すと、すとっぷ」

 

「わあああ!!金剛さんが壁でもみじおろしになっちゃいますよぉ!!!」

 

「騒がしいもんだなぁ。山風、いつの間にかここにいるけど、向こうでもこんな感じ?」

 

「うん」

 

「七原提督らしいや」

 

「でも…お姉ちゃんは…好き」

 

「そっかそっか、山風、今日は何が食べたい?」

 

「……サバの味噌煮」

 

「しぶっ!いい趣味してるなぁ。よし、サバはあったはずだから…それにけってーい」

 

「わーい」

 

「そ、それ喜んでるんでしょうか…」

 

いつもより騒がしい横須賀鎮守府。平和な日常プラスアルファ。そんな日も悪くはないな。玲司はサバを切りながら思う。山風や金剛、七原提督は玲司の振る舞う料理に舌鼓を打ち、絶賛していた。

 

………

 

「あの、あの!また駅まで送っていただいてありがとうございました!!」

 

「センキュー!三条テートク!!妹の榛名と霧島をよろしくデース!」

 

「…ありがとう」

 

「また会いましょう。いつでも遊びに来てくださいね。あの…松子さんが何かわけのわからないメールを送ってきたら…その時は連絡ください。えっと…梅さんとかに言いますから…」

 

「はい…その…気をつけます…その時はよろしくお願いします…」

 

「ええ。あの人、マジで何するかわかんないんで」

 

「は、はい!」

 

そうして、金剛が駅に響き渡るほどの声でシーーーユーーーー!!!と言って電車で帰っていった。

 

「よし、翔鶴。もう大丈夫なのか?出歩いて」

 

そう、七原提督の見送りに翔鶴がついてきたのだが、まだ少し痛むが問題はなく、いろいろと教えてくれた七原提督にお礼を言いたくて着いてきたのだと言う。

 

「はい。少しまだお腹が重い感じですが、心配はありません」

 

「そうか。ならよかった。んじゃあちょっと車で遠出するけど…大丈夫か?」

 

「え?あ、はい…いいですよ」

 

「うっしゃ。んじゃあドライブデートと行きますか」

 

「デ、デート…は、はい…」

 

そういえば2人きりで出かけるのは横浜へ出かけてきりだったか。デート、と言う言葉にポッと赤く顔を染める翔鶴。車に乗り込む。車は横須賀の駅を離れ、高速道路と言うものに乗り、すごい勢いで景色が流れていく。

 

「あの、れ、玲司さん…どこへいくのですか?」

 

「ん、ちょっと連れて行きたいところがあってなー」

 

そう言って少し笑みを浮かべながら車を走らせる玲司。しばらくして高速道路を降り、一般道路を走る。海岸線を走る車。しかし、その景色は横須賀の海岸線とは違い、寂しい。ボロボロになった民家、荒れ果てた道路。ガタガタとした悪路を走る。

 

「あの…ここは…」

 

「この辺りは俺の生まれ育ったところだ。深海棲艦に攻撃を受けて…ボロボロのまま…なんだよな」

 

かつては観光地として人気があり、人の往来も多かったのだがこの十数年、ここは荒れたままだ。ここだけ徹底して深海棲艦の攻撃を受けたため、復興が遅く…と言うか放置されている。ショートランドのように。

 

「玲司さんの…育ったところ…」

 

ここは昔パン屋さんでおいしかったんだぜ、とかここん家の爺さん、怒ったら怖くてさなどと語ってくれた。そして…ボロボロの駐車場に着いて車を停めた。

 

「ここは…あ、これ…お墓…?」

 

「墓地ってな。たくさんの人のお墓を集めたところだ。ここに…母さんと妹が眠っている」

 

『三条家乃墓』と書かれた石。鎮守府の慰霊碑のようだ。横には三条雪丸、三条恭子、三条雪乃と名が掘られている。〇〇年〇月×日没と書かれている。つまりこれは…。

 

「親戚が一応ってことで建ててくれたみたいでな。ただ、見ての通り誰も管理はしてくれない。ボロボロなんだ。まあ、ショートランドにいた時は絶対にいけなかったから…コックになってからちょいちょい手入れしてたんんだけど…」

 

水道は生きているらしく、積んできたバケツに水を入れ…慰霊碑や長門達のお墓のように静かにひしゃくで水をかける。お花を供える。手を合わせる。翔鶴もそれに合わせて手を合わせる。

 

「お母さんと妹さんは眠っておられるのですね。お父さんは…」

 

「父さんは遺体さえ見つからなかったから。お骨は母さんと雪乃しか入れられていない…らしい」

 

「そんな…」

 

「それでも一応ここが父さんの眠ってる場所…と思いたい。で…ここへ連れてきた理由なんだけどさ…ちょっとみんなに報告しようと思って…」

 

「ほ、報告…ですか…?」

 

「ああ」

 

 

翔鶴、君と結婚するから見守っててくれって。

 

 

「えっ!?」

 

「翔鶴…こんな墓場で言うことじゃない。けど、俺は…翔鶴を…大本営で言っているケッコンカッコカリなんて言う能力アップのためだけの絆を結ぶ意味じゃない。本当に…俺の父さんと母さんのように…生涯側にいてほしい。それに…その…赤ちゃんが産める体になったって言うんなら…俺は…翔鶴を妻にしたい。そして…子を育んでいきたい」

 

それはプロポーズ…と本で読んだことがある。俺と結婚してくれ…?私が…奥さんに…なる?

 

「玲司さん…私は艦娘です。私は人間では…ないんですよ」

 

「なら俺も人間じゃない。人間じゃない同士…になっちまうけど…俺は前も言ったと思うけど…俺はずっと君と一緒にいたい。だから…これを…」

 

ポケットから取り出した小箱。それを開くときらめく指輪。それは、大本営から支給されたケッコンカッコカリのシルバーの指輪ではない。

 

プラチナ。いわゆる給料3か月分…いや、玲司はそれ以上の指輪を用意したのだ。宝石などはない。シンプルなプラチナの指輪。指輪のサイズは横浜でデートしたときに知っていた。2か月ほど前には作っていたのだが…タイミングが分からず、自分の部屋の机の引き出しに仕舞いっぱなしだった。だが…タイミングがいいのか悪いのか…翔鶴が子供を産むことができるとわかり、それならば…もう父と母のように…子を成し、共に夫婦として歩んでいきたい。

 

「俺はおそらく人以上に長生きするだろうし…この戦いもいつ終わるかわからない。翔鶴、戦が終われば退役して人になればいい。それまでは…艦娘でありながら…妻でいてほしい。わがままかもしれないが…翔鶴はそのままでいてほしい」

 

「……私はもう過去のことは気にしません。玲司さんが生まれ変わらせてくれました。私の体は…魂は…玲司さんただ1人のもの…私もあなたと生涯を共にしたい。そして…私とあなたの愛の結晶である赤ちゃん…今はまだ無理ですけどほしい。あなたとの赤ちゃん」

 

「俺も…翔鶴との赤ちゃんが欲しいな。いつかきっと」

 

「はい。あの…謹んで、お受けいたします…私を貴方の妻にしてください」

 

「翔鶴!!」

 

玲司はその言葉を聞いて翔鶴を抱きしめていた。

 

「……左の薬指を出して」

 

「はい…」

 

指輪はするりと翔鶴の薬指に通り、そしてしっかりとはまった。

 

「玲司さんも…」

 

小箱の中にあるもう1つの大きめの指輪を翔鶴が取り、玲司の薬指に同じようにはめた。

 

「これで…私達は…夫婦…なんですよね?」

 

「ああ…」

 

その返事にきゅっと少し強く玲司を抱きしめた。

 

「玲司さん…私達…ずっと一緒に…」

 

「ああ…翔鶴。君をずっと離さない」

 

玲司も強く翔鶴を抱きしめ…そして。

 

(父さん、母さん…そして雪乃…俺、幸せになるよ。だから、見守っていてくれ)

 

そうして墓前で夫婦になったことを誓い、見守ってくれるように祈った。

 

………

 

「ただいまー」

 

「ただいま戻りました」

 

「お、帰ってきた!翔鶴姉、デートは楽しめた?」

 

「ええ、瑞鶴。楽しめたわ」

 

「えっ!?あ、あー、あー…そ、そう」

 

冷やかしたつもりだった瑞鶴だったがにこりと笑顔で楽しめたと言われ、逆に戸惑う。しかし…見逃さなかった。

 

「おお?翔鶴姉、その指輪…」

 

「きれいな指輪なのです!」

 

「ああ、これ?うふふ…瑞鶴…私と玲司さんとでお揃いの指輪なの。私達…夫婦になったの。結婚することにしたの」

 

「へえ。そうなんだ。おめでとう…ってえええええええええ!?」

 

「は、はあ!?」

 

「ハラショー。けっこんと言うのはよくわからないけど、おめでたいことなんだね」

 

「あら、それじゃあ披露宴をしたほうがいいんじゃないの?」

 

「五十鈴姉…漫画の読みすぎだよぉ…」

 

「んー、まあ入籍って言って本当に夫婦になりましたとかみたいなことはできないからな。翔鶴は退役するわけじゃないし、かといって艦娘だからな。いいのさ。夫婦になりましたって事実だけあればな」

 

「なんか…めんどくさいのね、結婚って」

 

「で、でも…ふふふ、しあわせな気持ちになれますよ」

 

「あーはいはい。お熱いことで」

 

「い、五十鈴姉…」

 

「で、も!!無責任にポコポコ子供作るんじゃないわよ!」

 

「そりゃもちろん。翔鶴にそんな負担かけさせられねえよ」

 

「でもすることはするんでしょ?」

 

「ブーーーーー!!!!」

 

「五十鈴ー。五十鈴もだいぶマンガで頭ピンクになってんねー」

 

「北上!?それどういうことよ!!!」

 

「玲司はちゃんと節度を守って翔鶴とえっちしてるよね?」

 

「あー、あー…」

 

「あ、お猿さんかー」

 

「北上ィ!!」

 

「わー玲司が怒ったー」

 

みんな五十鈴のマンガに毒されているようである。ちなみに、またこの発言が原因で後日鳥海のガサ入れが五十鈴の部屋に入り、えっちなマンガは全て没収(表紙を普通のマンガに偽装していたものまで計算ずくで没収され、庭の焼却炉で燃やされた)。

 

………

 

「で、翔鶴姉は提督さんのお部屋でこれからは生活した方がいいわよね?」

 

「え?でも瑞鶴が…」

 

「あのさあ…夫婦って言ったら一生の生活を共にするんだよ?まーた瑞鶴病?」

 

「い、いえ…そういうわけじゃ…」

 

「だったら提督さんのお部屋で生活すべきでしょ。まあ最近はほとんど提督さんのお部屋でラブラブしてたくせに」

 

「う…」

 

「そういうことだから、提督さんにも話をして、ずっと一緒に生活することをオススメします!!妹としては結婚してるのにこっちで生活されたら早くも離婚の危機!?とか思うわけよ」

 

「り、離婚…」

 

「あー、この世の終わりのような顔しないの。提督さんが翔鶴姉を捨てるなんて地球がひっくり返ってもありえないって」

 

「そ、そうよね…そうよね瑞鶴!」

 

「そういうわけだから!早くお引越しの準備を進めてよね!」

 

「わ、わかったわ…」

 

「あー、でも服とか歯ブラシとか下着とかいろいろともうあっちにいっぱいあるんだっけ?ベッドも大きめで2人で寝れるのに変えたって聞いたし」

 

「そ、そんな情報どこから流れてくるの…?」

 

「え?妖精さん。お風呂もまた拡張したって」

 

「ねえ、瑞鶴。私や玲司さんのプライバシーって…」

 

「金平糖3個で駄々洩れよ?あ、さすがに部屋でなにしてるのかーとかはわからないって。そこはプライバシーを尊重してるみたいね」

 

自分達の今後の新たな家の情報は僅か金平糖3個で漏れてしまうほどゆるいプライバシーなのか…と頭を抱える翔鶴。その話を聞いた玲司は今後そんな情報を漏らしたら金平糖は100均の安物にすると言ったらピタッと止まった。五十鈴や最上、摩耶が金平糖で釣っても、玲司から与えられる最高級金平糖には敵わないので徹底無視されるそうな。

 

「ま、翔鶴姉が幸せになったのなら瑞鶴も安心できるわ。提督さんとお幸せにね。あ、ケンカしてここに家出しましたとかやめてよね」

 

「わかってる。ううん…玲司さんだから…きっとケンカもないかしら」

 

「うわー、あまあま。あるんだってこれが。夫婦ってのはそんなもんなんだと思うよ。ま、提督さんが翔鶴姉を泣かせたりしたら爆撃してやるから安心して」

 

「ダメよ瑞鶴!」

 

「冗談だってば…」

 

「もう…じゃあ、私は玲司さんのお部屋に行くわね」

 

「はーいはい。いきなり赤ちゃん作りましたとかやめてよね」

 

「瑞鶴?」

 

「うぇっ!すみませんでしたー!」

 

まったくもう…と言いながら部屋を出た翔鶴。その姉の背中を少し寂しそうに見守る瑞鶴。しかし、姉は散々ひどい目にあい、不幸に見舞われてきた。幸せそうな顔。今までもそうだったがより幸せそうな顔をしていた。あれならもう大丈夫だろう。ようやく心配事が1つ減った。

 

「翔鶴姉…よかったね。お幸せにね…」

 

少し寂しいけど、別に鎮守府を離れ離れになったわけじゃない。毎日会えるわけだからそう寂しくもないか。切り替えが妙に早い瑞鶴。でも少し部屋が広く感じるかな。そう思う。

 

「ああ、いけない…ここに櫛を忘れていたわ…」

 

しんみりしていたところに翔鶴が戻ってくるものだからずっこける瑞鶴だった。

 

………

 

改めて玲司の部屋に行き、そして再び抱き合う玲司と翔鶴。その2人の薬指にはプラチナの指輪が輝く。

 

「不束者ですが…末永くよろしくお願いします」

 

「こちらこそ。よろしく。愛してる、翔鶴」

 

「私も愛しています。玲司さん」

 

唇を長く重ね合い、これからの生活に期待を胸に…頑張ろう…。そう2人は思うのだった。

 

「しれぇかぁん!ご飯の準備始まってるよぉ~」

 

「司令官!ボクお腹ペコペコだよぉ!早くご飯作ってよぉ!わあ、司令官と翔鶴さんちゅーしてるー!ねーねーみんなー!!」

 

「わぁ、だいたぁん!みんなー!しれーかんと翔鶴さんがねー!」

 

「わあああああ!!!!おい皐月、文月待ってくれえええええええ!!!!!」

 

慌てて口止めに走る玲司。走り去る皐月と文月。やっぱり夜じゃないとゆっくりした時間は無理ね…とクスクス笑う翔鶴であった。新しい生活になってもいつもと変わらないドタバタな生活。そんな生活も悪くはないものである。




翔鶴姉と玲司、ついにゴールイン。
ですがまだまだ始まったばかりです。今後のお2人にご期待ください。

今年も後わずかですね。本年の小説アップは大晦日をもって最後になります。
さて、どんな話になるかは次回をお楽しみください。

皆様、メリークリスマス。

それでは、また。
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