今回はちょっと血生臭い感じのお話になりそうです。
「ああ、うん。急遽
『洗脳装置はどうなったんだ?』
「ああ…彼が嬉々としてスレッジハンマーで数回ぶん殴ったら壊れました!と電話をかけてきたよ…」
『…まあチカラこそ全てと言った感じのガタイしてやがるし…頭筋肉でできてんのかってくらいな奴だからな。いや、まあ艦隊運用できるくらいに頭はいいんだけどな』
「ハハハ…刈谷君のお墨付きなら大丈夫だろう。それからブルネイの大高提督がしっかりと面倒を見てくれる。彼ならば信頼できるだろう」
『役に立つのかよ。まあ、大府がしゃしゃってこねえだけマシだな』
古井司令長官は司令長官室で刈谷提督と電話で話をしている。数日前に殉職…いや、変死したリンガ泊地の
問題は大府提督の邪魔が入るかどうかが気になったが、ブルネイ泊地の大高提督が誠実な提督で対応をし、面倒を見てくれると言う。タウイタウイが隣であるブルネイの提督が死んだ、ではなくてよかった、とホッと安心する古井司令長官であった。さらに清州副司令長官も古井司令長官の意見に賛成。その裏には刈谷提督が一枚噛んでいるからだと思われた。なぜか刈谷提督は上層部や堀内提督、虎瀬提督などからの信頼は厚い。
さて、件の五ヶ丘提督だが割と直情的な性格をしている。情に厚く、悪は許さない。それでいてまっすぐすぎる性格で…洗脳装置を見るや否や「こんなもんで艦娘を操るなんざお天道様も俺も許さねえ!!!」と、スレッジハンマーで思いきりぶん殴ったら壊れるだろうと叩き壊したわけである。それも25kgの特注ハンマーを日本から持っていったそうだ。そして…破壊した。その後の艦娘は精神が錯乱状態にあるといい、そのケアをしなければならないのだが、そこが彼の弱点であった。そこは彼と一緒に行ったかつて常勝無敗の演習艦と呼ばれた艦娘達がケアに走り回っていると言う。
『まあ、艦娘のケアは壊滅的だが…何とかなるだろ』
「む、むう…そこが心配ではあるが…大高君がなんとかしてくれるだろう」
『ああ。で。わりい、大府がやったって証拠はまるで出なかった』
「そうかね…まあ仕方のないことだ。あまりに謎が多すぎるがね」
『金剛を沈めたことでいろいろと壊れぶりに磨きがかかってんな。金剛を建造したはいいが…洗脳するだけじゃ意味がないとわかったか…烏丸のバカは必要なくなったみてえだな』
「おっと、そこまで話しては…」
『心配いらねえ、こっちゃ盗聴に関することは完璧に排除できてる。司令長官室だって同じだろ?『原初』の高雄がいるんだしよ』
「む、まあそうだね…れい…三条提督には内密にバレないようにしておいたが」
『それでいい。大府と絡むとろくなことがねえからな。引き続き、リンガの動きはこっちでも注視してる。正月前だっつうのに申し訳ねえことをさせたな』
「うむ…まあ喜んで行ったからいいと思うがね…」
『そうかい。ああ、清州のおっさんに大府に殺されねえように気をつけろよって言っておいてくれ。次はそっちに行くぞ』
「清州に…かい?」
『邪魔になる者は排除する。烏丸を殺した。これはもう烏丸が必要なくなったからだ。本土への異動を拒み続けている。さらに前の殊勲賞の際に大府の降格を決めさせたのも清州のおっさんだろ?だったら大本営…いや、防衛庁のトップになってこの海軍を掌握するにはまず邪魔になる。消しに来るぞ。報復にな』
「……わかった。しっかり伝えておくとしよう」
『頼んだぜ、じゃあな』
えらく長話になってしまった。しかし、彼は本当に頼りになる。そして忠告。暗に彼は自分も気をつけろ、と言っているような気がした。たしか、元幕僚長…祖父を手にかけたのではないか、とも刈谷提督は言っていた。奴ならやりかねないと。
「大府…か。彼を追い出すことは今となっては…無理な話だね…重大な何かをやらかさなければ…」
海軍の厄介者となってしまった彼をどうにか海軍から追い出せないかと考えを巡らせるが…当然解決するわけがなかった。
/数日前 リンガ泊地
烏丸提督はいつものように洗脳を施した艦娘に事務を任せ、決済の判だけはつく何気ない毎日を送っていた。
「もうすぐ日本は正月どすか。1年経つんは早いもんどすなぁ。せやけど…本土にここを留守にして帰られへんし、何かあるわけちゃうし…たはは、毎年言うてまんなぁ、この話」
誰もその独り言に反応する者はいない。なぜならここにいる艦娘は全て彼の忠実な人形だからだ。
「せやけど、年明け早々大本営に出頭しなはれ…ってか。ついにこの洗脳装置の件ちゃうやろかなぁ。里帰りが出頭って言うのんは…ちぃとシャレになってまへんけど…まあ、あの装置は言われたら廃棄したらええだけや。大府はんには悪いけど、わいかてこれ以上危ない橋は渡れませんわ…」
「提督…お客様です」
「噂をすれば…でっか。通しておくんなはれ」
「かしこまりました」
噂をすればなんとやら…件の洗脳装置を開発してほしいと依頼してきた大府提督がやってきた。こんな年の瀬…いや、まあこの地やタウイタウイではあまり関係のないことか。
相変わらず、無機質で何を考えているかわからない大府提督が入室してきた。
「やあやあおこしやす大府はん。こないな年の瀬にお忙しい人やなぁ」
「ええ。貴方に用があって参りました」
「まあ、あんさんがわいに用があるっちゅうとアレのメンテに来てくれーとかそう言うことでっしゃろ?」
「ええ。金剛が轟沈したのですが…私の撤退の命令を聞かずに進撃してしまいましてね。機械の故障ではないかと思いまして」
「あんさんとこの機械はわいのとこよりも念入りに整備してるんでっせ?」
「ですが言うことを聞きませんでした。問題が発生したのではないのですか?」
「そないなこと言われましてもなぁ…」
「見て頂けないのですか?」
この目だ。爬虫類の様な無機質な目で見られると寒気がする。烏丸提督は南方海域での失態以降、彼との付き合いも疎遠にしていこうと考えていた。中将だから仕方なく付き合っていたが、今は同じ少将。そして大本営からのおそらく洗脳装置に関する警告だろうと思われる呼び出し。
上官でもないこの注文の多い厄介な男とはもう付き合う義務もない。さっさと縁を切って自適に安定した提督生活を送ろうと考えていたところだ。
「大府はん、堪忍やで?わいも見たいのはやまやまどすが…大本営から洗脳装置の件で呼びだしを食ろてまいましたんや。もちろん、大府はんのとこにあるモノについても問いただされますやろうし、その際はしっかり、大府はんのとこのこともきっちり説明いたしますわ。ま、わいはどうなるか知りまへんけど」
「大府はんとは…?」
「あんさんのことでおます。あんさんとわいは少将同士。もうあんさんは上官やおまへん。あんさんのご機嫌を伺うことももうあらへんのですわ。前から注文が多すぎて辟易しとったとこどす。あんさんが少将に降格したのがちょうどええ機会どすわ。これからはあんさんとは縁を切ろうと思いましてな」
「そう…ですか」
感情のない目で睨みつけるかのように烏丸提督を見た。その目は見る者に悪寒を与え、嫌悪感さえ与える。だが、もう烏丸提督は上下関係は消えたのだ。この目で見られたところでどうと言うことはない。
「まあ最近は洗脳しとると練度がなかなか上がらん…そう気づきましてなぁ。そのおかげか戦果が低いて怒られましたさかい…うちはそろそろこいつを解体しようと思うとったとこなんどすわ」
大府提督の祖父から授かった「零式洗脳装置」…これを作り上げるのは元々設計士兼メカニックをやっていた烏丸提督が作り上げたものだった。出来上がりは完璧なものだった。数年、のらりくらりとこの装置を使って艦隊の運用を行ってきた。なぜなら艦娘からの反発などめんどくさいことこの上なかったから。
傀儡にしてしまえば自分は楽できてそれなりに戦果もあげられる。仕事は艦娘に任せておけばいい。疲労が溜まれば目に見えてわかるのでドックに適当に入れ、近隣の潜水艦を撃破させておけばいいし、大規模作戦も丙作戦などを選んでのらりくらりとやってきたのだった。
ところがここ最近は潜水艦も弱い「ヨ級」ではなく、より強力な「ソ級」が近海に表れたり、恐ろしい雷撃能力を持った小さな子供の様な見た目とは裏腹な「潜水新棲姫」と呼ばれる深海棲艦が現れ、甚大な被害を被ったこともある。結果として、戦果が満足に稼げなくなってきている。ここは1つ、洗脳を解き、ブルネイの大高提督に今一度艦隊運用を教わり、戦力の強化を図ろうとしていたところだった。
結局そう考えていた前に…洗脳装置についての問い詰めだろう。呼び出しがかかってしまった。これについてはきっちりと釈明し、二度と使わないことを誓い、しっかりと艦隊運用を行っていこうと言う弁明を考えていたところであった。
「あなたのところの洗脳装置の方が出来は良いでしょう。これを移設することは叶いませんか?」
「大府はん、わいはこれをもう解体すると言うたんどす。大府はんも…これを使い続けたせいで南方海域の攻略、刈谷の大将と三条はんに取られたんちゃいますか?」
刈谷…と名を聞いた瞬間、大府提督の眉が動いた。彼に刈谷提督の名は禁句である。しかし、もう烏丸提督にとっては彼は厄介な相手でしかない。ここで縁を切り、いい加減真っ当な艦隊運用を行っていきたいと思っていたところだ。大高提督に説明をしたところ、ため息を吐かれたが「わかった」とだけ短く答えてくれた。
「連携を取らねば厄介な深海棲艦が増えてきた。お前のことは…一応信頼するとしよう。まずは大本営でしっかりと今までの行為を反省し、心を入れ替えろ。そうすれば…艦隊運用のいろはを教えなおしてやろう」
「えろうすんまへん…大高提督。感謝しますわ…」
「まったく…ようやくそう考えなおしてくれたか…大府に比べれば…お前はまだ取り返しがつくと思っていたからな」
「さようでおますか…」
「あんなものに頼って練度向上などあるはずがない。大府もそれで失敗したのだろう。それを使っていてはこの先、お前にも未来はないぞ」
「心得ました。ほな…よろしゅう頼んます…」
………
「ほないなわけで、わいは大高提督に指南を仰いできっちりと1から提督をやり直します。刈谷大将にも言われたんどすわ。これ以上そう言うことをしているとどうなっても知らへんでってね」
「………」
「そういうわけですわ。大府提督。ここらでお人形さん遊びはお終いにしましょうや。これ以上はお人形さんごっこしてたらもちまへんえ」
「そうですか。では、私とは手を切ると言うことですね?」
「せやからなんべんも言うてまっしゃろ。これ以上はわいの首が飛ぶ可能性がありますんや。わいは二度と使わへん。これは解体して大府はんとこの装置のことにも関与はしまへん。あんさんとこの明石が直してはるんでっしゃろ?ほなわいはもう無関係や。あんさんと危ない橋渡るんはこれでおしまい。な?お互いこれで不干渉といきまひょ?」
艦隊の運用が変わってきた。昔のように作れ突れ、戦果をあげろ。沈めてでも勝利を勝ち取って来いと言う戦い方から、ここ最近の若手の提督、特に三条提督や一宮提督、それから刈谷提督と言った「艦娘を沈めず、それでいて高い練度を以って戦果を得よ」と言う流れに変わってきた。
それが今回の呼び出しだ。そのことについてはもう釈明の準備はできている。そして、ようやく何だかんだと要求がうるさい…改良を施せ、洗脳がうまくいかないなどでたびたびタウイタウイに呼びだされ、深海棲艦に襲われるリスク…これにも手を施しているとわかればこちらの立場も危うい。大府の装置には今後一切手を触れず、大府とも手を切ることを約束することもきっちり説明する。これで終わりだ。
このような無表情で無機質な気持ち悪い男との関係は…終わりだ。危ない橋渡りも終わり。真っ当な提督生活を…少しうらやんでいたのだ。特に一宮提督の大湊警備府の取材プロモーションビデオを見てから。楽しそうである。自分は艦娘に何てことをしてしまったんだろう、と言う罪悪感が湧きだした。
だからこそ、もう洗脳装置の解体。艦娘と1から一宮提督のような若手提督のように仲良くやっていこう。そして危険な思想だとわかった大府提督とは縁を切ろう。そう、そうやって1から…そう思っていると「パン!」と乾いた音がしたと同時に肩に衝撃が奔る。そのあとに火箸でも押し入れられたかのような灼熱感と痛みが襲ってきた。烏丸提督はすぐに、冷静に拳銃で撃たれたのだろう、と理解した。なぜなら大府と言う男はそう言う男だからだ。
「うっぐ!!さ、さすがは大府はん…不要となるとほんま容赦がありまへん…なぁ…一発で殺さへんかったんは…脅しでっしゃろか…?」
「タウイタウイの洗脳装置の修理をして頂けるのであれば銃は収めましょう。それで?早急に返事を頂きたいのですが」
「クク、あっはっはっは!!これが…わいの答えどす!!」
ダンダン!!大府提督が撃ったものより少し重い銃声がし、大府提督が吹き飛ばされる。彼が撃ったのは45口径銃。大府提督が撃ったものは38口径銃。威力としてはこちらのほうが上である。特殊な弾でも使われていないのであれば。だが、ダメージ的に相手は普通の弾丸であろう。こちらは正確に胸を撃った。殺られる前に殺る。この男にとっては鉄則だ。人を撃ったことに手が震える。人を殺してしまった。その恐怖が烏丸提督を支配する。
「せ、せや…けど…こないなとこで…殺されて…たまるかい!」
痛む肩を押さえて立ち上がる。艦娘を呼んで…手当をしてもらわなければ。誰か、と呼ぼうと思った刹那、再度「パン」と言う音。そして…なぜか彼の視線は低く…床に叩きつけられるような感触がした…ような気がした。
「ぐっ…ゴフッ…!」
寒い。さっきまでの肩の焼けるような痛みはどこへ行った?何も感じない。そして…それよりも寒い。何とか目を動かすと、胸を撃ったはずの大府提督が…立ち上がってこちらへ銃を向けていた。胸に手をやる。ヌルリとした感触と同時に血がべったりと着いていた。ああ、胸を撃たれた。正確に心臓へか。こりゃもう助かりまへんなぁ…そう思った。
「防弾…チョッキ…どすか。ハナっから…こうなると…予測してはったんどす…なぁ…」
「8割方こうなるであろうと予測しておりました。最近のあなたの電話での態度からも、私と縁を切りたがっているような声色でしたので」
「で…もう不要やから…殺す…と…さすが…ゴホッゴホッ…どす」
「やはりこうなってしまったので。もはやあなたは不要です。私に不要なものは消えて頂きます。それが私のやり方ですので」
「はは…は…やっぱ…刈谷はんと…手ぇ組む…べきでしたなぁ…最初…から…ははは…はははは…大府はん…あんたは…刈谷はんには…絶対勝てまへん…わ。天地がひっくりかえっても…あんさんは…かて」
まへん、と言い終える前に大府提督は延髄に2発、銃弾を叩き込んだ。無表情に。何の躊躇いも感情もなく。正確に。
「誰か、艦娘はいませんか?」
しばらくすると烏丸提督の艦娘がやってきた。
「お呼びでしょうか」
「あなたの提督が死亡しました。これから当面、私がこの泊地の提督です。さっそくですが命令を下します」
「承知いたしました。大府提督様、提督様の命令に従います。ご命令は何でしょうか?」
「そこの死体を外にある小型ボートに乗せ、近海に曳航、そしてそのままボートを死体ごと放置しなさい。その後、ブルネイの大高提督に烏丸提督が戦闘に着いて行ったが魚雷を受けて死亡しましたと伝えなさい。以上です。そこまでで、私はあなた方の提督ではなくなります。その後着任する提督に従いなさい」
「かしこまりました」
「ああ、それと、この血をきれいに拭きとっておいてくださいね」
「かしこまりました」
無表情な提督と無表情な艦娘。その異様な光景は…誰がどう見ても異常だろう。だが大府提督にはこれが普通なのだ。もっとも、烏丸提督は表情はあれど艦娘は無表情であったが。
実は烏丸提督はこの時まだ意識があった。大府提督が言っていた言葉、艦娘の言葉も聞いていた。しかし、もう何も見えないし体は動かない。彼は最期に思った。
こんな男に付き合うたんがわいの人生最大の失敗であり、汚点どすわ…。
そうして彼の意識は途絶えた。つまり…死亡した。
大府提督はその後、何もなかったかのように部屋の外に待たせていた秘書艦の金剛と共にリンガ泊地を後にした。
(私が刈谷君に勝てない…?ありえない。最後に彼に勝つのは…私です。全てに勝利し、全てを手にするのですよ、烏丸提督。私が…刈谷君に…負けるはずがない)
「哀れだな、テメエは」
あの傲慢そうな見下したかのような笑顔でそう言われたような気がし、すこし心がざわついた。すぐに平静を取り戻したが…未だに刈谷提督に執着する大府提督。
(ですが次は…清州副司令長官ですね。彼にも…もう消えてもらいましょうか)
次の考えを逡巡する大府提督であった。
/それから数日後。
「司令官、こちらから血液反応が出ました」
「こっちは特にひっでえなぁ。べったり出てきたぜ。きれいに拭きとったようでも…なぁ」
「やっぱり、烏丸提督は誰かにここで殺された、か。刈谷先輩が言うには大府提督らしいけど、証拠がねえから何ともな…」
リンガ泊地に「お前、リンガ見ろ」とだけ言われて「はい喜んで!!!」と返した五ヶ丘提督が顎に手をやりながら答えた。絨毯や壁に特殊な薬液を吹きかけ、特殊なライトを照らしているのは彼についてきた白雪と隼鷹だ。
「硝煙反応は…もうないっすねー、まあしょうがなしっと。けど、完璧に殺されたと言っても言いきれないっすねー」
同じく同行した漣がいろいろと執務室内を調べていたが、特に何も凶器の残滓がないことにガックリしていた。そう言ったものを見つけて名探偵のようになりたかったのだが…ダメだった。ワクテカ!と言いながら探偵帽まで用意したと言うのに。
「殺された…か。クソッ、証拠は掴めずか」
「まー仕方ないねぇ。大府提督なんだろ?周到な人らしいから、そりゃあ証拠なんざ残さないっしょ。なー漣ー」
「ちぇー。これで犯人はあなたですー!なんて言えりゃ完璧だったし、ご主人様が刈谷提督に褒めてもらえるでしょ?」
「それはそうだけど…解決できるとは思っていませんよ」
「白雪までそう言うかー。たはー…漣ちゃんがっくり」
「あとは鬼怒と加古が洗脳装置を見つけて…どうするか…」
五ヶ丘提督のリンガでの目的は2つ。烏丸提督の死因がわかるのであれば調査と洗脳装置の破壊をし、リンガ泊地にて提督としてそのまま着任せよと言うことである。五ヶ丘提督は隼鷹、白雪、漣と共に執務室の調査。鬼怒と加古は洗脳装置の場所を捜索してもらっている。
辿り着いてから今まで、リンガの艦娘はピクリとも誰も動かず、座っていたり立ち尽くしている。本当に人形のようだ。一刻も早く彼女たちを何とかしてあげなくてはならない…。食事も満足に取っていないだろうし、今のままでは何より艦娘がかわいそうである。こちらが話しかけても、提督だと言っても聞かない。
大府提督の時は洗脳装置で洗脳された艦娘の扱いがわかるため、動かせたが五ヶ丘提督はそうではない。だからこそ、何を言っても反応しない。
「おーい提督―!見つけたよー!」
「んあー…泊地内探すのめんどくさかったー…あたしもう寝ていい?」
「加古…もうちょい我慢してくんねえかなぁ…洗脳装置を破壊してここの艦娘をまず助け出さないといけねえからよぉ…」
「えー…あたしがんばったじゃん…あふぅ…もう…限界ぃ…」
「おーい!!!!加古!!!寝るな!!!!!寝たらややこしいんだから!!!」
「あ、鹿島教官」
「ひぇっ!?ね、寝てません!寝てませんよ!!!って…あれ?」
「ここに鹿島教官がいるわけないじゃんwwwww」
「さ、漣ーー!!!!」
「ちょ、か、加古さん!」
「あははは!!それは騙される加古が悪いねぇ!」
「いや、お前らな…いいや、ほっとこ…鬼怒、場所はどこだ?」
「工廠の隠し部屋を見つけたよ!なんか加古が適当にいじくりまわしてたら隠し扉が開いてね…あたしは役に立たなかったよ…」
「いや、よく協力して探してくれたよ。よし、案内してくれ。その洗脳装置をぶっ壊してやる」
「え…てか提督…破壊って…どうすんの?」
「え?ああ、それならほれ。これ」
よっこいしょ、と言いながら持ち上げたのは巨大なハンマーだった。
「めっちゃパナイチカラ業じゃん!!それで破壊すんの!?」
「おう。これしか俺には思いつかなかった。特注品の25kgのスレッジハンマーだ。こいつで打っ叩けば潰れるだろ」
「え、ええ…」
そんなわけで行くぞーとハンマーを担いで鬼怒に案内されるまま秘密部屋へと案内された。加古は半分寝ていたため、隼鷹が揺さぶりながら歩かせていた。
工廠の隠し棚の裏に隠し階段があった。その降りた先にあったものこそが、洗脳装置であろう機械だった。
「これが…ここの艦娘を洗脳していると言う…」
「あたしおにおこだよ!!!艦娘を人形遊びのようにして、こんな…こんな扱い!!許せないよ!」
「司令官。白雪も許すことができません…一刻も早くここの皆さんを助け出しましょう!」
「ああ、こんな装置は俺も、お天道様も許さねえ!!!俺がぶっ壊してやらあ!!うらああああああ!!!!!!!!」
そう言って思いきりスレッジハンマーを振りかぶり、叩きつけた!ドッゴォオオオン!!!と凄まじい音がし、洗脳装置は思いきりへこんだ。
「オラァ!!!とっとと潰れんかい!!!」
何度も何度も強力な一撃で洗脳装置を殴る五ヶ丘提督。何度か殴っていると振り下ろし、直撃した瞬間バチィ!!!とスパークが走り、そのまま五ヶ丘提督に襲い掛かった。
「あばばばばばばばば!!!!!」
「ご、ご主人様!!やば!今助けまあばばばばばばば」
「漣まで感電してどうすんだよぉ!!!」
「「あばばばばばばば」」
「くっ、司令官、すみません!!」
ダン!と白雪が踏み込むとそのまま勢いよく提督と漣を弾き飛ばした。いわゆる鉄山靠の要領で弾き飛ばした。
「う、ごほっ…」
漣が口から黒い煙を吐いた。
「あばばば…し、死ぬかと思った…」
「提督…無茶しすぎだってば…提督に何かあったらあたし達…泣くどころじゃすまないよ?」
「お、おう…だ、だけどだな……これしか思いつかなくてなあ…」
「まあ提督らしいけどよぉ…それでくたばっちまったら話にならねえぜ?」
「こ、これからは気を付けるよ…」
「ま、もともと提督はそういうまっすぐだけどまっすぐすぎてやばいよね…刈谷提督に怒られそう…」
「うっ…刈谷先輩に怒られるのはマジやべえ…」
恐怖の刈谷提督。後輩思いではあるが、いささかやり方がむちゃくちゃだったりする。そのシゴキに耐えてきた猛者の1人である五ヶ丘提督。
「お前はまっすぐすぎんだよ。正義感が強いのはいいけど真正面から真正直にぶつかりすぎだ。スグ足元を掬われないようにな」
「はい!」
「いや、だからそれがまっすぐすぎだっつってんだよ」
苦笑されたものだ。ま、それがテメエのいいところだな…とも言われたが。
………
「あ、はい。スレッジハンマーでぶん殴って破壊しました。いま白雪や鬼怒たちがリンガの艦娘の様子を見て回っています。だいぶ錯乱している様子で…ええ、オレにはちょっと…白雪たちに、え?オレがやれ?マ、マジですか?」
『私は洗脳装置の破壊、烏丸提督が殺害されたのか否かの調査。それからリンガ泊地に着任し、おそらくはパニックになるであろう艦娘達のケアを頼むよ、と説明したはずだがね…」
「え、洗脳装置を破壊しろとだけしか…聞いてなかったような…」
『いいや?しっかり説明したうえでオレにお任せください!と意気揚々と飛び出していったではないかね。そこはしっかり聞いていなかったと?」
「ウ、ウス…」
『はあ…まあ君らしいがね…困ったらブルネイ泊地の大高提督が手を貸してくれるだろう。しっかり頑張ってくれたまえ。では、頼んだよ。ああ、それから刈谷君がくれぐれも頑張れだそうだ。じゃあね』
「ま、待ってください!刈谷先輩のくれぐれもはやばいんですって!もしもし!もしもし!!ああ、クソ!!!切られた!!!」
古井司令長官へ烏丸提督は間違いなく殺されたであろうということ。そして洗脳装置は感電死しそうになりがらも破壊したこと。それを伝えてあとはお役御免…と思ったら「そこでずっと面倒見ろ」と来たものだからさあ困った。演習で白雪たちに指揮を出し、戦わせたことはあるが…提督として着任したのはこれが初である。
さらにさらに錯乱状態のリンガの艦娘達をどうすればいいのか…白雪たちでさえ困っているのだが…。
「ああちくしょう…オレがこんなんじゃ白雪たちはもっと困るよな…!うっし!俺が何とかしなけりゃな!」
バシッと両頬を叩いて気合いを入れると椅子から立ち上がり、白雪たちに協力しねえとな…と困惑している白雪たちの所へ行ったが…結局「あ、あう」だの「その」だのしか言えず、白雪に「こちらが新しく着任される司令官です。司令官、とりあえずご命令は待機でよろしいですか?」と聞かれ「お、おう」としか言えない情けない様を見せることとなったのであった。
リンガ泊地の新規気鋭。五ヶ丘提督。彼の戦いはまず、泊地内の艦娘を何とかするところから…おろおろと頼りない様ではあるが…始まったのであった。
血生臭いお話になりました。大府提督のトップに立つ、と言う目的はもはや形骸化しているように感じますがどうなんでしょうか。ただの殺人鬼になっていくような気がします。
そして新たに着任した五ヶ丘提督。あまり登場シーンはないと思いますが、少しだけだけでも彼を応援してあげてくださいね。
このあとの予定は未定です。思い付きで何を書くかお楽しみください(苦笑)
それでは、また。