年が明けてしばらくが経った頃、大本営ではある新聞が大きな話題になった。元ショートランド泊地の生き残り、「英傑の艦娘」とまで呼ばれている重巡青葉が不定期で作る鎮守府、泊地、基地などの提督、艦娘の活躍や出来事などを戦闘詳報などを頼りに作成した「青葉見ちゃいました!」と呼ばれる新聞だ。
青葉は出撃が不可能なため、古井司令長官が海軍の広報をするように命じたのだった。その新聞は現在の海軍、ひいては日本の現状、艦娘の活躍などを詳細に報じるため、大本営の職員の一喜一憂を垣間見ることができる。
その中で最近職員に人気なのが、若手提督によって艦娘がより良い環境で生活している様、それぞれの提督の個性が出ている「青葉の突撃!今日の司令官!」である。
若手提督、一宮提督、九重提督、七原提督の基地や泊地。そこを訪れて実際にどんな指揮をしているのか、艦娘の生活は?本来ならば軍事機密なのであるが、同じ海軍の中なので問題にはなっていない。ただし、門外不出であるが、外部への持ち出しが発覚した場合は逮捕される。
この新聞の発行目的はブラック泊地、基地と化していないかどうかを抜き打ちで訪問して取材すると言うものである。親艦娘派の心配性な職員たちがかつての横須賀や宿毛湾の様なひどい扱いを受けていないか…?と心配しているの聞いた古井司令長官が「では見せてあげなさい」と言うことで青葉に取材を昨年から行ってきたのだった。
これが親艦娘派や一般の事務職員などから好評。それぞれの個性が出た泊地、基地。そして艦娘がのびのびと過ごしている姿などがみっちり写真付きで取材されている。これにより、親艦娘派は安堵。艦娘兵器派からは「兵器ごときがこのような贅沢を」などと文句が噴出したが、艦娘の士気は日本を守る士気に繋がる。これくらい当然だろうと言う親艦娘派、そして一般職員から白い目で見られて肩身が狭い。
大府元幕僚長。つまり今の大府提督の祖父が亡くなって以降、艦娘兵器派は急速に勢いを失った。彼こそが艦娘を兵器呼ばわりし、酷使して使いつぶせとまで言った張本人であり、大府提督にも同じようなことを吹き込んだ。それに乗じていきすぎた行為を行っていたのが安久野や宿毛湾泊地の提督であった。大府幕僚長が死した今、艦娘兵器派の老人たちは首の皮一枚で在籍しているようなものだ。窓際族どころの話ではない。
さて、この突撃訪問を一刻も早く行ってほしいと言う声が大多数、親艦娘派や一般職員が心待ちにしている場所があった。それこそが、安久野のせいでめちゃくちゃにいなってしまいながらも、北方海域、キス島での活躍。西方海域での未知の空母の深海棲艦の撃破、そしてあの『暴虐の姫君』と呼ばれる戦艦レ級を退けた、今、波に乗っている横須賀鎮守府であった。
「まあ私は玲司からの詳細をいろいろ聞いているらねぇ…私は別に気にしなくてよいのだけれど…どうしても過保護なお年寄り連中が多くてねぇ…しかし私もどんなにきれいな場所になったのか、実際に写真などは見てみたいね。視察もしたかったのだが…うるさい連中も多くてね。何せ私が息子のように育ててきた玲司が提督だからね、依怙贔屓しているだろうとね。だからすまないが青葉君、頼んだよ。君も楽しみにしていたようだしね」
「はい!お任せください!やっと横須賀鎮守府の取材ができますよ!待ちわびていました!」
「ははは、君も久しぶりに玲司に会えるのが楽しみなのだろう?せっかくだ。一泊でも二泊でもいいからゆっくりしてきなさい。玲司には、一宮君たちのように押しかけではなく、行くからね、と声はかけてある。では、任務を頼んだよ」
「はい!青葉、取材!いえ、出撃しまーす!!」
こうして、驚きしかない型破りの鎮守府と化した横須賀鎮守府へと青葉は取材へ突撃することになった。
そして今、この横須賀鎮守府の取材を行った新聞は再発行が必要なくらい人気の記事となっている。では、その取材の様子を振り返ってみるとしよう
………
どうも、恐縮です!青葉です!!一言お願いします!って誰もいませんね!まあ、まだ9時ですしね!出撃や遠征の準備中でしょうし、無理もありません。
はい、青葉は今、破竹の勢いで戦果をあげている横須賀鎮守府へやって参りました!
………司令官、またお会いできるんですね。噂はいっぱい聞いています。きっと…何の心配もいらないくらい艦娘達は笑顔でやっているんだろうなと思っています。
以前安久野が逮捕された時に憲兵さんと一緒に来たときは門も錆びてガタガタだったのに…きれいになっていますね。それでは失礼しまーす。
おお!!!すんなりと開きました!音もそんなにしませんでしたし、手入れが行き届いていますよ!入口から寂れていては…いけませんものね。
さてさて、あちこちを撮影しながら司令官に…って、何かきれいすぎません?鎮守府自体が何だかいわゆる「キラ付け」をしたみたいにきれいになっていますし、安久野がいた時は草もボーボー、落ち葉だらけで荒れていた庭もきれいになっていますし、ベンチなんかも備えられています。花壇もありますね!きれいな牡丹が咲いています!艦娘の皆さんが育てているのでしょうか…?
うーん、ショートランドの時も整備や掃除は行き届いていましたが…ここも…司令官の妖精さんがしゃかりきに働いているようですね!うーん、春だったらいい景色が撮れるのでしょうけど、真冬ですからちょっと寂しいですねぇ…。
パシャパシャ…写真をいーっぱい撮っちゃいますよぉ?庭だけでもいっぱい写真を撮っていますが、フィルムは山ほど持ってきました!このかばんの中には着替えよりもフィルムの方が多いのでは?と言うくらい持ってきました!デジカメ?邪道ですよそんなもの!
そうして写真を撮っていると、ファインダー越しに…人の姿が…。あ、あれぇ?何だかすごい剣幕の朝潮さんと…響さんと…電さんでしょうか。響さんのつめたーい目が…ちょっと怖い…。
………
「ここで何をしているのですか!」
「はい!横須賀鎮守府の取材をしています!」
「取材…?何ですかそれは!い、いえ、ここは一般の方は立入禁止です!ま、まさか…この鎮守府を乗っ取ろうとする悪い人間の…!」
「は、はい!?」
「前の司令官…いや、司令官と呼びたくもないけどあの人のような人を着任させるための調査かな?いや、もしかすると女の人と油断させてどこからか男の人を呼びつけて私たちにひどいことをするテレビで見たへんたいふしんしゃと言うやつかな?」
「へ、へんたいふしんしゃ!?ち、違いますよぉ!?わ、私は重巡青葉!三条司令官のもとで一緒に戦ったこともあるんですよ!?」
「……」
「う、うわぁ…めっちゃ疑いの目じゃないです…か?」
そうして狼狽えていると背後に気配、そして首筋には…クナイ。
「動かないでください。侵入者の気配を察知しましたので参りました」
「神通さん、さすがだね。このへんたいふしんしゃを司令官のもとへ連れて行こう」
「この朝潮もお供いたします!」
「行こう電。司令官の所へ。そして頭を撫でてもらおうじゃないか」
「はわぁ…こ、怖かったのです…あれ?」
じーっとへんたいふしんしゃを見つめる電。その目を見ていると何だか…司令官と同じ気配を感じたのであった。そこから電はこのへんたいふしんしゃさんはへんたいふしんしゃさんではないのではないか?と思うようになっていた。
………
「司令官!鎮守府正門にて不審者を発見いたしました!」
「カメラを持っていて中を盗み撮ろうとしていたみたいだ。へんたいふしんしゃだね」
「あ、あのぉ…話を聞いていただけないでしょうか…?」
「提督、その不審人物を連行して参りました」
「いや、お前ら落ち着け。俺が昨夜話をしただろうが」
「し、しれいかぁん…」
「え?えっと…」
「今日、ここを取材、撮影をして回る重巡青葉だよ。今は大本営の広報の。そして、俺の大事な戦友、ショートランドの生き残りだよ」
その言葉を聞いた瞬間に神通はサーッと顔色が青くなった。話に聞いていた伝説の「英傑」である。その人物を…。
「あ、も、ももももも申し訳ございません!!!!!」
慌てて拘束を解く。神通は相変わらず真面目でいいことなんだけどなぁ…写真、見せたはずなんだけどなぁ…と空はあんなにも青いのに…と窓から冬の曇天で灰色の空を遠い目で見つめていた。
「司令官、へんたいふしんしゃを捕縛したんだ。最初に見つけたのは私と朝潮と電だ。ご褒美として頭なでなでを希望するね」
「いやだから変態不審者じゃねえっての」
「い、電は何だか司令官さんのふいんきがするって思ってたのです…」
「ふんいきな、いや、そりゃどうでもいいか…」
「な、ね、寝返るのですか電さん!?」
「なんてことだ。電がこのへんたいふしんしゃにかいじゅうされてしまっている」
「響、お前それ懐柔。懐柔の意味、ちゃんと知って言ってるんだろうな?」
「がおーと襲ってくるそれじゃないのかい?」
「違うわ!!その怪獣と違うわ!」
盛大にずっこける青葉。何度も90°に頭をさげる神通。意味がわからない朝潮。ジーっと青葉を見つめ続ける電。頭を抱える大淀と苦笑する鳥海。青葉を見てどこか懐かしさを覚える霧島。執務室は今日も騒がしい。
………
「いや、すまん…本当に神通や響にはよく言い聞かせておくから…」
「あはは…でも司令官のところの艦娘らしくていいですね。それに、それだけ皆さんの不審人物、外部からの警戒意識が高い証拠です。七原提督のところの艦娘はなーんにも気にせず青葉を執務室に招き入れて、試しに青葉が司令官の命を頂戴に来ましたー!って言ったら…その…」
「なあ、もう嫌な予感しかしねえんだけどさ」
「や、山風さんがおもらししたり…涼風さんが泣きながら提督早く逃げろーって…最後には七原提督の背後にあった刀で七原提督に首、置いてけと言われてあわや…」
「お前なぁ…その変ないたずらとかをやめとかないと本当に命を陸で落とす羽目になるぞ?昔っから何回それでお前、俺や霧島、榛名に正座させられて説教された?最長は8時間の榛名の説教だったよな!」
「ううう…つい、うっかり…」
「そのうっかりで首もがれそうになってたら命がいくらあっても足りねえっつーの!!!うっかりいたずらで羽黒の着替えシーン撮って足柄に大破で轟沈寸前まで実弾演習で砲撃されたよな!?霧島や榛名も『やっちゃってください』って言われてな!!」
「も、もうしませんからぁ!」
「言っても聞かねえよなァ!?うちの大和泣かせたこともあったなァ!!」
「あ、あれはちゃんと大和さんから許してもらえたじゃないですかぁ!!」
「俺は許した覚えはねえぞ?」
「そ、そんなぁ!!し、司令官、なにとぞお許しを~!」
騒がしいものである。彼女こそがあのショートランドへ1000隻の深海棲艦を率いた戦艦水鬼にとどめを刺したと言う「英傑」青葉か。大淀はその詳報は読ませてもらった。最後のほう、戦艦水鬼にとどめを刺した辺りは提督も記憶が一部欠落していたらしいので青葉が補完させたと聞く。青葉の事は以前話をしたことがあるので知っていたが、本当はここまで子供っぽい性格をしていたのかと驚いた。
これがショートランドでの日常だったのだろう。賑やかさは今の横須賀鎮守府と変わらないような気がする。例えば龍驤さんとケンカをしているときのように…そして最後は…。
「うるさーーーーーーーーーい!!!!!!!ケンカをするなら表でやってきてください!!仕事の邪魔です!!!!」
霧島が怒るのである。青葉は「はいい!すみませんすみません!!」と霧島に謝っていた。ショートランドでは日常の一コマである。
「…最後は霧島に怒られて終わる…何だか懐かしいもんだな…」
「は、はい…ここの霧島さんも…ショートランドの霧島さんに似ていますね…」
「ああ、怒らせるとやばい。気をつけろ…」
「何か言いましたか?」
「「いいえなにもございません」」
ギラリとメガネを光らせて睨みつける霧島と、それに直立不動で返す玲司と青葉。ふふふ、と大淀は笑った。ショートランドも楽しいところだったんだろうな…あの大戦がなければ。
だが、と大淀は思う。こうして三条提督が来てくれたことは不謹慎ではあるがショートランドが壊滅してしまわなければ…と。いや、何を考えているのだ。そんな不謹慎なことを考えてどうする。
「ふふ、横須賀も賑やかでいいですねぇ。さっそくですが、取材の方を始めさせていただきますよ!大本営の艦娘擁護の皆さんが過保護でして。安久野の時のようになっていないか?ご飯は食べさせてもらっているだろうか?お風呂は入れさせてもらえてるのか?睡眠は?自由時間は?監禁なんてされてないか?と…」
「過保護全開じゃねえか。と言うか、北方、西方、南方海域の詳報なんかを上げてるんだからどういう指揮で動いているかとか、知ってるんじゃねえのかよ」
「いやぁ…まだ信じられていないようでして…司令長官が業を煮やしてだったら現実を見せつけてあげなさいと…」
「ほんっと、大本営の人間はめんどくせえと言うか…」
「はい…」
「わかった。だけど、お前1人で取材させると何されるかわからねえ。摩耶とかの着替えなんかを隠し撮りとかしたらやべえだろうし、龍驤姉ちゃんが黙ってねえだろうなぁ。川内もか」
「う。うぐ…その人たちを怒らせたら…」
「『四神の型・朱雀』とかを食らっても知らねえぞー」
「ひいい!!!」
「と、言うわけで案内役と一緒に回ってくれ。頼むぞ、大淀」
「はい、この大淀にお任せください」
キラリとメガネを光らせる大淀。その目はやる気に満ち溢れている。
「お、大淀が案内役…ですか」
たらりと汗を一筋流す青葉。そう、青葉は知っている。この大淀が、ほかの場所の大淀など比較にならないくらいの抜け目がなく、しっかり者であるということを。
実際には寝坊多数。その際に玲司にサービスショット(笑)を披露している。キャミソールさえ着忘れてブラで出てきたり、スカートを履いていなかったり。さすがにどちらかをつけ忘れてと言うことはないが、それでも朝から妖精さんの起床ラッパの代わりに大淀の悲鳴が起床の合図になることもある「ぽんこつ」でもあるのだが、青葉はその実態を知らない。
「おう。大淀の目は厳しいぞ。お前がたとえばだけど風呂に入っている艦娘を盗撮しようとか、着替えを隠し撮りして俺に強請をかけようとか、そんなことは一切させないためのお目付役だ。妙なことをしたら即このトランシーバーで報告が来る。ダメと判断した場合は龍驤姉ちゃんのおもちゃになってもらう」
「な、な…なんです…って…」
キヒヒヒヒ…と悪魔の牙を生やし、翼を生やした「原初の艦娘」…「炎の女王」龍驤の姿が思い浮かんだ。その笑顔はまさに悪魔であった。
「おう青葉。お前うちのかわいい明石の胸チラ写真撮ったんやってなぁ?そんカメラのフィルムごとオドレも
「ぎいいいやああああああ!!!!」
大本営でもショートランドと変わらないことをした結果、龍驤や陸奥にどえらい目に遭わされたものであった。
「青葉ー?あなたも触れてみる?
「やめてくださいしんでしまいます」
コックの時にも青葉のパパラッチ…とくに「原初の艦娘」相手にパパラッチすることは自殺行為と何度も吹き込んだはずなのだが懲りずに行い、その度に痛い目に遭っているのだが…。今回は大淀の厳しい目。そして青葉にトラウマを植え付けた龍驤にも話を通してある。大淀を撒いたところで神通のどこに隠れているか、鎮守府内ならどこに隠れても探しあてる「目」がある。好き勝手はできない。まじめに取材すればいいだけなのだが…それが青葉にはできないのだ…。七原提督に首を飛ばされそうになっても。一宮提督のところで罰として瑞雲のことを懇々と日向に数時間語られる羽目になろうが…。九重提督のところでパンケーキ地獄、かつゴスロリ服を無理矢理着せられ、逆に余計なことを今度したらこれを大本営にばら撒くからと、死ぬほど恥ずかしい写真を撮られても。
この青葉の暴走は釘を打っておかねばならない。ショートランド時代は何かあれば霧島のアイアンクローと食堂前で「私はパパラッチをして仲間に迷惑をかけました」と正座させられてご飯抜きになったりと、枚挙にあげればキリがない。だが取材や撮影はやめられない。筋金入りのフォトジャーナリスト(自称)である。横須賀ではただのへんたいふしんしゃ扱いを今は受けているわけだが。
「と、言うわけだ。大淀。何かしそうにしてたら迷わず、ためらわずにトランシーバーに話してくれ。トランシーバーはもう一個、龍驤姉ちゃんが持ってる。正確な居場所、何をしでかしたか、しでかそうとしているか細かく報告するんだ。あー、でもあれだ。龍驤姉ちゃん、彩雲を飛ばすって言ってたから悪さできねえなぁ…キヒヒヒ」
「し、失礼な!もう青葉はあの時の青葉じゃないんです!しっかりと横須賀鎮守府の今を伝える義務があるのです!ですからそんなエッチなー!とかお宝ー!とか、そんなの撮るわけが「おっ!?鳥海、スカートがめくれてパンツ丸見えやで!?」
「えっ!?」
「うひょー!お宝チャーンス!!」
「うっそー♪」
「はっ、り、りりりり龍驤さん!?」
「どこが!そんなん!撮るわけがない!やねん!!おお!?」
「ぎゃああああああ!!式神に炎を纏わないでくださいーーー!」
青葉にとってのトラウマ、悪魔降臨。ズザザザザと後ずさりしている。
「ひひひひ、ええんやでぇ?うちのかわいい弟子らのパンチラやら着替えを撮っても。そんかわり…うちの式神が黙ってへんでぇ?彩雲がそこかしこに飛んどる。ま、うちを出し抜けるもんなら…やってみ?」
「ぐううううう」
「いや、その顔、マジでそういうお宝写真撮るつもりだったのかよ」
「い、いえ、そそそそそういうわけでは…あっつぁあああ!!!!龍驤さん!まだ何もしていませんよ!?」
「いや、邪悪な感情を感知した式神が勝手に反応しただけや」
「くううう…」
「うう…と、とりあえずは司令官の写真を…撮らせてください」
「え、俺?」
不意打ちでいきなり自分が撮られるなんて露とも思っていなかった玲司が鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
「何で俺まで?」
「それはもちろん、横須賀鎮守府の最高権力者。提督ですよ?司令官の紹介もしっかりしなきゃいけませんので撮るのは当たり前では?」
「履歴書かなんかの写真適当に貼っときゃいいんじゃね?」
「何言ってるんですか!今、ここで、俺が着任しているんだー!って言う写真を撮らなきゃ本当に三条司令官が着任しているかどうかわからないじゃないですか!艦娘兵器派の中には三条が指揮していなくて別のベテラン司令官が指揮していて大きな戦果を取ったんじゃないかって言う輩もいるんですからね!?」
どれだけ信頼されてないんだ俺は…と少しだけイラっとした。
「司令官の作戦だから、全部できたのよ?他の司令官さんではあれらの作戦を成功させることができた可能性は…私の計算ではゼロです」
ピシャリと鳥海が言いきった。その言葉に大淀と霧島がうんうん、となんかすごいどや顔で頷いていた。いや、大淀や鳥海、霧島もいてくれたおかげだからな?と玲司が付け足すと恥ずかしそうにちょっと頬を染めてえへへ…と笑う。
青葉はこれを見ただけでやっぱり艦娘との連携がしっかりとれていて、絆がショートランドのときと同じく深いのだろう。そうでなければあれほどの大きな戦果を出すことなんてできるはずがない。そして、このこれから鎮守府を案内してくれる大淀。
話では「未来視」の高雄に匹敵する智将であると言う話だ。それに引っ張られて鳥海も、霧島も。この3人のブレインのレベルがどこの提督の所のブレインよりも高い。戦闘詳報を読ませてもらったことがあるがかなりレベルが高い。
「未来視」の高雄が南方海域の詳細を読んだ時には「は、は?」と理解できないものがあったとか。
「レ、レ級を…殴り飛ばした…?私の頭では…理解できない…」
そんなこともある。いや、それはこのブレインは関係なく、武蔵が勝手にやったことであるから理解できるはずもない。
「おーい青葉。取材しなくていいのかー?」
「あ!?し、しまった!つい…ボーっと…さ、さあ、司令官!一枚パシャっといかせていただきますよぉ!」
「……写真撮られんの嫌いなんだよな…」
「そう言いながら翔鶴さんとデートした時はお写真をバンバン撮られていますよね」
「大淀!何でそれを!!!」
「ふふふ、この大淀に隠し事など無理な話ですよ」
「どういう理屈だ!!」
実際には翔鶴が嬉しそうに「これが横須賀へ行ったとき…これが…」と食堂で写真を玲司が知らない間に広げて談話をしているからである。摩耶や山城曰く「緑茶が砂糖特盛のグリーンティーを飲んでいた」くらいあまーい空間が広がるんだとか。
「さあ、秘書艦3人と共に司令官がどっしりと椅子に座ってもらってー」
「「「は???」」」
その言葉に大淀、鳥海、霧島も青葉を睨むように見た。まるで深海棲艦でも相手にしているような目だった。
「ちょ、ちょ…なんでそう睨むんですか…」
「私達もなんて聞いてないわ…計算外よ」
「いや、七原司令官や九重司令官たちも司令官に座ってもらって秘書艦と一緒に写ってもらいましたよ。そうでないとまず誰が指揮して、秘書艦もちゃんと入れておかないとどうなっているかわからないじゃないですか。他のところの皆さんはこころよーく撮影させてくださりましたよ」
玲司は昔からカメラに写ることが嫌いだ。嫌いと言うか苦手だ。ショートランド泊地の全員集合写真を撮るのも一苦労であった。みんなでとにかく押しに弱いと言うことを知っているが故に説得に説得を重ね、何とか撮ったものだった。笑顔で写っていたが、最初はと言うとひきつった笑顔だったり笑ってなかったりで青葉が大変だった。
「と言うか、自分は写真を撮るのが好きなのに自分が写るのは嫌って言うワガママは治っていないんですね…」
「う、うるせえ…」
確かに自分の机のマットの下には文月と皐月が満面の笑顔で中庭で写した写真、ちょっと際どいが最上がMVPを獲って喜んでいる写真(なお中破していて服がボロボロでやや胸の下半分が見えそうになっている)などがある。最上が北方棲姫を一撃で撃破して獲ったMVPで嬉しくて嬉しくてたまらなかったんだとか。
その他にも夕立、時雨、村雨の三姉妹の写真や凛とした佇まいの扶桑と死ぬほど嫌そうな顔をしている山城、ピースして笑顔な最上。恥ずかしそうな時雨、そっぽを向いている満潮。どや顔の朝雲。何だかわからなさそうな顔をしている山雲…西村艦隊が集結した最近の写真。その他にもアルバムにいっぱい写真が収められている。その中には玲司が写っているものが一枚もないのだ。
なお翔鶴とのツーショット写真は別のアルバムに入れ、みなに見られないように鍵のかかった引き出しにしまっている。大体全部翔鶴がノロケで食堂で披露してしまっているので意味がないのだが。
「ど、どうしても撮らないと…ダメか?」
「当然です!新進気鋭の若手司令官の中でリーダー格!大本営のほとんどの人が注目している今超ホットな司令官なんですよ!!!」
「司令の事は私達は誇らしく思っているんですよ。いいじゃないですか。これが私たちの司令なんですと自慢できるのは、我々としても鼻が高いものです。さあ、男ならうだうだ言っていないで早く座って撮られてください!!!」
「そうですね。司令官さんのおかげで私達はこうしていられるわけですし…私たちの司令官さんのすばらしさをわかってもらいたいですね」
「む、むう…」
「さ、提督。そういうことですから着席をお願いします」
3人の威圧がすごい。青葉もカメラを構えて早く!と促す。いやー…だとかうーん…だとかもじもじしていると…
「あーーーー!!まだるっこしいなぁ!お前玉ぁついとるんか!?うじうじうじうじ!撮らなあかんねんから腹ぁさっさと括って黙って撮らぇ!!!!お前も朱雀ぶちかましたろか!?」
優柔不断な態度の玲司に龍驤がなぜかキレた。これまた昔からうじうじしているとせっかちな龍驤はキレるのだった。
「青葉の取材の時間は限られとんねん!!!大淀も仕事クソ忙しい中時間割いて青葉を鎮守府内案内するっちゅーてんねん!!!お前がうだうだしてる間に見てみい!!!15分すぎたわ!!!!はよせな玉焼くぞ!!」
「姉ちゃん下品!!!!わーかった!!!あーわかりました!!!!」
「ほなはよせえアホ!!!!」
この龍驤と玲司の兄妹ゲンカもいつものことだ。ふう…と秘書艦3人がため息を吐いた。
………
「はい。そうですね。大淀が司令の後ろ。サイドに鳥海さんと霧島さんで…うーん、いいですねー。はい、撮りますよー!せーの、はいっ!」
パシャッ
「あー、うーん…司令官の笑顔が硬いですね…もう1枚!」
「は、はあ!?い、今のでダメなのか!?」
「だーめーでーすー。はい、もう1枚撮りますよー。フィルムはたーんまりありますからいくらでも撮り直しがききますので!
「く、くそう…」
それから5回くらいリテイクしてようやくちゃんとした写真が撮れた、と青葉は満面の笑みだった。実際には2枚目くらいでもう十分だったのだが、やっぱり司令官の写真を多く残しておきたかったのでわざと撮り直しをしまくったのだった。
「あ、最後にこの鎮守府の艦娘全員で写真を撮りますので司令官、準備しておいてくださいねー」
「ま、まだ撮るのか……」
「そりゃあ今の艦娘がどれだけいるかもちゃんと把握しておかないと、悪い提督が来て連れ去るかもしれないんですよ?」
「……はい」
玲司は諦めたのかがっくりしながら素直に返事をした。
「さーて!それじゃあお楽しみ、待ちに待った横須賀鎮守府の全貌を撮って撮って撮りまくりますよーー!!!」
「青葉ー。わかっとるやろうけど、うちトランシーバー持っとるからなー。大淀ー、すぐ言うんやでー。すぐさま朱雀の型飛ばしたるで」
「そんな理不尽な!!!???」
「お前がいらんことせえへんかったらええだけやないか!」
「わかりましたよぉ…」
「さ、行きましょうか青葉。まずは…食堂から行きましょうか」
「はーい!青葉、取材開始ですよー!!」
こうして、やたらと時間はかかったが…青葉の横須賀鎮守府の取材が始まった。
度肝を抜かれること間違いなしの横須賀鎮守府取材。そのあまりの変貌ぶりに青葉は開いた口がふさがらなくなることが何度あっただろうか忘れるくらいのものであった。
大変遅くなりました。
今回から横須賀鎮守府の全貌取材編、始まります。ボロボロの横須賀鎮守府を見ている青葉が現在の横須賀鎮守府を見たらどんなリアクションをしていくのかは次回から書いていきます。
妖精さんが好き放題やった鎮守府。今もなお好き放題やっていますのできっと青葉のリアクションは凄まじいものでしょうね(適当)
次回も横須賀のたくさんの艦娘も登場させてはちゃめちゃな取材の様子をお送りしようかと思います。
私事で恐縮ですが、早いものでこの作品を書き出してもう4年も経ちました。ひとえに誤字報告をしてくださる読者様、感想をくださる読者様、そしてこんな大長編になるとは思っていなかった作品を読んでくださっている皆様のおかげです。
感謝してもし足りません。今後もややペースが落ちてしまいますが失踪だけはせず、最後まで書ききりたい所存です。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、また。