提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

221 / 291
青葉の取材は続くよどこまでも。
英国艦の在り方に思いきり不安を抱いているようですが…


第二百二十一話

かわいくておいしそうなスイーツタワー。素晴らしき香りの紅茶。マカロンをひとかじりし…その甘味を上品な紅茶でリセット…それが英国のティータイムのひととき…。

 

そんなものはなかった。

 

浴衣にどてら、こたつにミカン。嗅ぎなれたお茶。京都の山城茶だと言う。ジェーナスと言う駆逐艦は「ずぃーうーんずぃーうーん♪」とよくわからない歌をルンルンと謳いながらお茶を持ってくる。

軽巡のシェフィールドと言う艦娘は手が黄色くなるまでミカンの皮をムシムシとむいて食べている。

 

戦艦ネルソンと言えば飲んだくれでは有名だがいつもラム酒を所望し、飲んでいるようだが…ここのネルソンは日本酒…まあそこそこ高い兵庫のお酒「路上有花(ろじょうはなあり) 葵」と言うお酒を飲んでいる。

 

「ははは!この冷酒と言うものはうまいのものだな!」

 

「Nelson?いい加減にしないと怒るわよ」

 

「ぬ、レ、レディ…そう怒るな…む、仕方あるまい。Janus…ティーを…って何だこれは!?グリーンじゃないか!?」

 

「だから言ったじゃない、グリーンティーよって。ネームはぁ…ずぃーうんよ!」

 

「ぬ、ぬ…せめてアールグレイかディンブラを…マ、マヤを呼んでくれ…私はティーが…」

 

「これもティーじゃない!!おいしいのに!!」

 

「シェフィ…あなたは何個ミカンを食すのだ…」

 

「…手が止まらないの」

 

「………」

 

「アーク!なんで隠すの!?」

 

「食べすぎだと言っているんだ!」

 

「スヤァ…」

 

「Jarvis、寝てはダメよ。風邪をひいてしまうわ」

 

ああ…確かに英国の気品は少しだけ垣間見える…ネルソンは昼間っから飲んでいる親父で、それをウォースパイトと言う戦艦に怒られている。ウォースパイトはジャービスにブランケットをかけてあげたりと母親のようだ。

ミカンの食べすぎでミカンを取り上げたアークロイヤルとそれを取り返そうと怒っているシェフィールド。コタツで眠るジャービス。瑞雲と言う茶葉の緑茶を飲み、間宮羊羹をパクパク食べているジェーナスと言う駆逐艦。

 

「じ、自由すぎませんか…と、言うかフローリングの洋室と聞いていたのになんか…和室みたいですね…」

 

「ああ…オオヨド。Sorry…騒がしくて…」

 

「い、いえ…お気になさらず。すっかり日本になじんでおられますね…どっぷりと…」

 

「ええ、Admiralがタコーヤキやオコノミヤーキと言うものを作ってくれたり、彼も…グリーンティーが好きでしたから…彼はヤマーシロと言うリーフが好きよ」

 

京都の山城茶のことか。横須賀の艦娘は静岡だの宇治だの西尾だのと茶葉でよくケンカをしていると聞かされた。ちなみに瑞雲は宇治の煎茶だ。ジェーナス曰く、しっかりとした渋みとその中にちょっとだけ感じる甘味が素敵なのよ!と語ってくれた。

 

「く、詳しいんですね…」

 

「ええ、ジャパンのティーのことは研究しているもの!次はギョクロのリーフが飲んでみたいわ!」

 

「Janusの…ティー…そーていすてぃー…むにゃー」

 

「Jarvis…、こぼすわよ」

 

「Jarvis!寝ながら飲んでたら味が楽しめないわよ!」

 

「………」

 

「Nelson?What's wrong?」

 

「……苦い…!」

 

「もー、Nelsonはおこちゃまねぇ。この渋みがおいしいと思えないなんて!」

 

「W…Warspite…ディ、ディンブラを…ディンブラを淹れてくれ…!」

 

「Hey!私のTeaが飲めないって言うの!?」

 

何か…さっきから横須賀鎮守府の様子を見るに…戦艦や空母より駆逐艦の方が大人びていないか?いや、まあ皐月や文月は見た目そのままだが…白露型や吹雪…雪風…そちらのほうが大人びて見える。五十鈴や隣の大淀はいけない本のことで何やらダメな協定を結んでいたし…摩耶はほっぺにアイスをつけて食べているような感じだし…古鷹も…大淀達に巻き込まれているようだし…。

 

大和は以前会った時は子供の用に大泣きしていたし…うーん…。

 

「あ、あの…皆さんコタツに入っていますが…その、足は疲れたりしないのですか?」

 

「Yes。ほら、足をこのようにできる掘りコターツと言うものなの。コターツを使わないときは…この板をかぶせれば…ほら、フローリングとして使えるわ」

 

ただし、ここに重いものを置いたり飛び跳ねたりしないでくださいね、と妖精さんに注意を受けているらしい。いや、それはわかったのだが、フローリングの洋室だがこれでは和室のようにしか見えない。

せっかく洋室の風景を撮りたかったのに…。

 

「ああ、それでしたら私の部屋を撮影しますか?」

 

「…レディの部屋は部屋でまるで王室のようだがな…」

 

「あら、そうかしら?」

 

ここは英国艦の談話室らしい。よく他の日本の艦娘も加わってミカンを食べて居たりするそうだが…英国艦だけではなく、ちゃんと日本艦とも仲良く交流はしているようだ。大淀はそのあたりを気にしていたが杞憂だった。

 

ちなみにコタツを入れてほしいと言ったのはジャービス。時雨たち白露型の部屋にあったものに入ったらとても暖かく、気持ちがよくて秒で寝てしまった。これは絶対にほしいと玲司に頼み込み、妖精さんが正座やあぐらでは辛いだろうと掘り炬燵にしたのだった。

 

緑茶に関しては神通が飲んでいる緑茶をジェーナスが飲ませてもらったところ、その渋み、その中にほんのりと味わえる甘味。そして思わずうっとりするほどの素晴らしい香りに感銘を受け、緑茶にハマってしまったことが原因で、他の英国艦に勧めてみたところ、ネルソン以外はやっぱり感銘を受けて緑茶を飲むことが増えたと言う。ちなみにネルソンはこの緑茶の苦みが苦手なため、仕方なく彼女用の紅茶の葉が用意されている。なお、英国艦は誰も紅茶をおいしく淹れられない。唯一ネルソンが摩耶に教えてもらってそれなりに淹れられる。

 

原因はアーサー提督。彼がいつも最高においしい紅茶を淹れていたため、彼女らは作らなかったこと。日本に来たら来たでジェーナスが緑茶を淹れているためである。ジェーナスはお茶に詳しく、食と緑茶の相性を常に研究していると言う神通に師事し、おいしい緑茶の淹れ方を教わったそうだ

 

ネルソンは摩耶が紅茶を淹れることに詳しいと知り、摩耶に教えてもらって多少おいしい紅茶を淹れられるようになった。なお、ネルソンが紅茶を皆に振る舞おうとしても「緑茶がいい」と言われてしまい、1人で飲んでいる。

 

もっとも、ネルソンは大体龍驤に勧められて飲んだ日本酒のおいしさにハマり、そっちを飲むことが多いのだが。そして、ウォースパイトに調子に乗って飲みすぎて怒られている。

 

軽巡「シェフィールド」は突然「この子の面倒も見たってーな!!!」と送って来られた艦娘である。ある日突然顕現したりドロップしたり。こちらもアーサーが独断で、上層部にブチギレながら日本に行かせるように手はずを整えて来させた艦娘だ。

 

すっかり日本にハマってしまった英国艦のせいで彼女もしっかりと洗脳されたかのように日本の文化に馴染んでしまっている。その他、顕現してすぐに日本に送られたことも原因か。彼女はなぜかミカンをいたく気に入り、玲司に2ケースほど用意してほしいといきなり言うほどである。

 

「いや、腐るからだめ」

 

そう言われた時は普段はクールな彼女が目に涙を浮かべて「…そう、か…」としょんぼりしていた。結局その涙に折れた玲司が、蒲郡みかんや有田みかんなど、どうせ他の艦娘も食べるだろうと大量に茂のところで発注をしてどっさりと仕入れたのである。なお、その半分以上はシェフィールドの胃袋に消えている。

 

……個性的すぎる…一宮提督のアメリカ艦娘や九重提督のイタリア艦娘も個性的…七原提督のドイツなどの欧州艦…みな個性的であったがここまで濃くはなかった。

 

「さあ、ここが私のベッドルームよ」

 

お邪魔します、と入ったらそこはどこかの宮殿ですか?と言うくらい豪華だった。石壁?一応ウレタンらしい。防寒、遮熱はしっかりしていると言う。夏は涼しく、冬は寒さを受け付けない。

フローリングらしいのだがそれは全て赤い絨毯が敷かれているため、見えないが洋室らしい木の香りが漂う。

 

カーテンは白いレース。細やかな装飾で高級感がおそろしいほど漂っている。何よりも目が行ってしまうのは天蓋付きのベッド。本当にどこかの王宮のお姫様が眠っているかのようなベッド。

 

「ななななななななんじゃこりゃあああああああ!!!!!!」

 

青葉の叫びが横須賀鎮守府中に響き渡った。

 

「ふふ、素敵なベッドでしょう?一応私を含め、2、3人が眠れるからJarvisやJanusと一緒に寝たり、フミツキやサツキが来たりするのよ。毎日寂しくなくて安心して眠れるの」

 

ベッドを触らせてもらったが高級シルクのような手触りのシーツ。ハンガーに吊るされた寝間着も高級シルクらしい。これらすべては妖精さんが作ったり仕入れてきたものであり、どこから手に入れてきたのかは企業秘密ですと言われ、決して教えてもらえなかった。

 

王宮を思わせるタペストリー…赤い絨毯…まるで女王様かお姫様ですね、と言うと

 

「Non…私はFleetGirl…Queenと呼ばれるのは本国の陛下に恐れ多いわ」

 

そう謙虚に…照れくさそうにはにかんで語った。おお、これぞまさに英国淑女。ウォースパイトさんは英国艦の残された良心…か…と写真を撮った。

 

……

 

なおこの写真を見た大本営の面々は…

 

「何たる自堕落な!」

 

「艦娘がこのようなふざけたことを…!」

 

「海に出て戦わんか!」

 

「儂が提督ならこんなことさせずに戦闘に駆り出してやると言うのに!!」

 

そのような批判が出た。中には沈むまで戦わせろ!と言う元提督もいた。しかし…

 

「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…有口無行…貴様らの行いで海軍がどれほどの損害を被ったと思っている…怒髪衝天…貴様の様な外道はダルマになるか?それとも輪切りのイカ飯になりたいか?」

 

「ひ、ひい!?」

 

このように脅されて縮み上がる。

 

一方では。

 

「イギリスの艦娘か…良いのう…俺が提督に戻って彼女たちを…ぐふふふ…国際交流ができるなぁ…グヒヒヒヒ」

 

「スリルスリル!!!今日の星占いは8位!艦娘を性的に見る奴を殺せば運気アップ!!!!!」

 

「あにき…いや、上官殿、殺害はご法度ですよ」

 

「ひいいい!?」

 

「私が深海棲艦です…本物です。噛むタイプの深海棲艦です!!!」

 

「だからダメですってばああああ!!!!!」

 

彼らは海軍憲兵第2部隊。第1憲兵隊の次に活躍をする憲兵隊なのだが武闘派集団すぎて鎖で繋ぐのに必死である。四宮氏がだいぶ苦労しているようである。第二憲兵隊は主に提督から左遷された元提督や大本営の人間の不正、セクハラ、その他犯罪に繋がりそうなものを取り締まっている。ただし、何事もほぼほぼ暴力や脅しなどで解決しようとするため、ストップがかかることも多い。

しかし、泣く子は黙るか震えあがる恐ろしい兄貴たちのおかげか…一定の抑制にはなっているようである。アイスピックを持ち歩いていたり、日本刀を持ち歩いていたり、チタンの犬歯を作ったり、アーミーナイフですぐ「内臓をスムージーにしまーす!」と言って見せたり…狂犬憲兵隊と言われている。だが、四宮氏達第一部隊とはうまくやっている様子である。

ちなみに四宮第一部隊もそうであるが、海軍憲兵と陸軍憲兵は爆裂仲が悪い。特に第二部隊との仲は本当に最悪で、抗争にでもなるんじゃないかと言われている。

 

話が逸れてしまったが結局、洋室については古鷹の部屋が極々普通の洋室だったのでそれを許諾を得て撮らせてもらった。おそろしく遠回りな洋室の撮影だった。英国艦…そのクセはおそろしく強かった。

 

青葉曰く、「もうよその海外艦もクセが強すぎてやばいです…」とのことだった。横須賀の英国艦ほどではないが…。

 

「これで鎮守府は全部案内したわね。……クンクン…ご飯を作る匂いがします。そろそろそんな時間ですか」

 

大淀の鼻は犬か。青葉にはわからなかった。青葉も匂いに集中してみていたとき、バァン!とドアが開かれる。誰かがすごい勢いで駆けていく。あれは…神通か。

 

「神通さん!どこへ行かれるのですか?そんなに急いで」

 

「提督が厨房に立っておられます。そして…この匂い。これは提督がオムライスを作っているものです。急いで行かないといけません」

 

「まだできていないんじゃ…」

 

「……ゴクリ」

 

「生唾を飲みこまれても…」

 

司令官のオムライスか。それは確かにショートランドでも誰かがすぐさま飛んでいく香りだった。特に霧島の反応が凄まじかった。執務をペンを投げ出してまで食堂へ駆け込んでいくくらいだった。

 

「は、離してください!お姉様!!!オムライスが!オムライスがこの霧島を呼んでいるんですよおおおお!!!」

 

「霧島ストオオオオオオップ!!!!!な、なんてチカラネー!?は、榛名、手伝ってほしいデーーース!!」

 

「き、霧島!落ち着いて!?って、お姉様と榛名が引っ張っているのに…!?」

 

「ぬおおおおおおお!!!!この霧島を止められるものかあああああ!!!!!」

 

「ひ、ひええええええ!!!!」

 

………

 

懐かしいものだ。そう思っていると青葉も大淀や神通が感じたであろう匂いが鼻腔をくすぐる。ああ、懐かしい。これは食堂でも感じた香りだ。いや…違う。これは本当に…ショートランドだけで感じた香りだ。

 

「…私達も行きましょうか。気が付けばもう夕飯が近いようです。どうですか?提督がお食事を作られているところを撮影しなくてよいのですか?」

 

「はっ!こ、これは絶対に撮ると決めていたんです!!行きましょう大淀!!!」

 

やれやれ…忙しいですね…と大淀は駆けだした青葉を追いかけた。青葉はそれを撮るとは言いながらも、鎮守府の風景を撮ることは忘れない。さすがはプロだな…と大淀は思った。

 

………

 

ジュウウウウと言う耳に残る心地いい音。久しぶりに聞く音。そして…胃袋と脳を刺激する暴力的なケチャップやタマネギの匂い。そこにベーコンの匂いがより胃を刺激する。グウウウ…とお腹の虫がなった。そう言えば昼も食べずに取材に夢中になっていてお腹が空いていた。大淀は昼食をとらずに執務、と言う日が多いために慣れているが、青葉はそうではない。毎日きっちり食堂で昼食をとる。

 

司令官オススメのチーフの八宝菜定食や諸々。司令官がいた時はしょっちゅうオムライスを頼んでいたな。ああ…1年ぶり…いや、数年間聞いていなかったこの匂い。食堂ではいろんな匂いが混ざって消えてしまっていた匂い。

 

………

 

「司令官!今日はオムライスですか!?やったあああ!!!」

 

「おいおい、オムライスなんか作ってるとこ撮ってどうすんだよー」

 

「司令官がフライパンを振るう姿はかっこいいんです!だからこれは撮るしかないのです!」

 

「あっそう…まあ好きにして…」

 

「オーーーームーーーーーラーーーーーイーーーーースーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

 

「うおお!?何だ!?金剛に比叡に榛名を引きずって!?霧島!?」

 

「うおおおおおおおお!!!オムライスを出せえええええええ!!!!!!」

 

「あわわわわ、大魔神がきたーーーー!!??」

 

「おい落ち着け霧島ああああ!?」

 

………

 

食堂に来たときまたショートランドの記憶が蘇る。ああ、平和だったなぁ…と涙が少しこみあげてくる。

 

「よう青葉。今日は青葉のために特別にオムライスを作ったぜ。長いこと食ってなかったろ」

 

「ぽいー!青葉さんが来てくれたおかげでオムライスが食べられるっぽいー!青葉さんに感謝っぽい!」

 

「………」

 

「神通~、そんなフライパンに穴が空きそうなくらい見つめたってまだできねえっつーの」

 

青葉のために作ってくれると言うのか。司令官が大本営から去って1年。そういえば長らく食べていないな。食堂でもオムライスを頼むことは司令官がいなくなってからなくなったな。一度食べてみたが申し訳ない、司令官のオムライスを食べてしまったならあれはもうオムライスと呼べない。職員の人たちもそれぞれだが、やっぱり頼む人は減ったらしい。

 

「むーーーさーーーーしーーーーーー!!!!!!落ち着きなさい!!!!わ、私まで引っ張られるなんて…!!!」

 

「は、榛名、止められません!」

 

廊下が騒がしい。ああ、これはきっとあれだ。霧島さんと同じような…バターン!!!とドアがまた破壊されるのではないかと言う勢いで開かれる。あ、蝶番が壊れた。秒で妖精さんが直しているけど。

 

「提督よ!!この匂いはあれだな!!!!赤いご飯で黄色いふわっとしたものが乗ったあれだな!?早くしてくれ!!!!特盛だ!!!!」

 

「司令!!私の計算ではあと1時間はかかりますね!巻きでお願いします!!!」

 

武蔵が大和に。榛名が霧島に引きずられてやってきた。オムライスとなると戦艦のパワーを存分に発揮し、戦艦でさえ止められない暴走戦艦になる2人だ。

 

「巻きで作ってもいいけど味の保証はしねえぞー」

 

「なっ!?く、くう…」

 

「霧島よ、お前が言えば早くなるのではなかったのか?」

 

「私の計算ミス…ですね」

 

「くぅ…由々しき事態だな」

 

「おとなしく待っていなさいってこと!!!もう!お客様が来ているのにお姉ちゃんに恥ずかしいところを見せないで!」

 

「しかしだな姉さんよ…提督のオムライスだぞ?早く食べたいだろう?大和も」

 

「………」

 

「よだれが出ていますよ」

 

「ふぁああ!?そ、しょんなことで大和は騙されませんからね!?」

 

「よだれを垂らして言っても説得力がないですねぇ…」

 

「ふぇえ…」

 

「ああ、ちょっ、おい!それくらいで泣くな!な、な!?」

 

「うわあああああああん!!!!むざじがいぢめるーーーーーー!!!!」

 

「私のせいか!?とどめは青葉じゃなかったか!?」

 

「あーもーうるさいなー。静かにできるの待てないのが多いよねー、ほんと」

 

「おわあ!?北上さん、いつの間に!?」

 

「ふふん、ここはオムライスの匂いとなると大勢がすぐさま飛んでくるのさ。あたしもその一人だよー。ハイパー北上さんのハイパー嗅覚さ」

 

ショートランドの時もそうだったけど、やっぱり…司令官のオムライスはみんなを虜にするんですねぇ…。目を輝かせてオムライスの完成を待ちわびる艦娘達の様子をパシャリ。大和の大泣き姿は女性職員の母性を指をしゃぶっている霞ばりにくすぐったようで。

 

「お姉ちゃんになってあげたい…」

 

「養ってあげたい…くう、わたしに提督の資質があれば…」

 

「かわいすぎて気が付いたらきれいなお花畑にいて死んだはずのおじいちゃんに帰れって言われたわ」

 

こんな声があがったとか。

 

それから待つことしばらく、ようやくオムライスができあがった。昔と変わっていない。ケチャップライスにふわとろ卵。そしてケチャップ。卵のふわとろ具合が進化している気がする。

 

「俺も腕をあげたぜ?そりゃこれだけの人数の飯作ってんだからな」

 

オムライスにサラダ。コーンクリームスープ。今回はシンプルだ。カニクリームコロッケはないのー?とかいろいろと意見があったが「青葉にオムライスだけを堪能してほしい」と言うことで今日はこれだけだ。

 

「しかし…武蔵や霧島のおかげでほんと…フライパンを振るった後は手首が…」

 

オムライス大和型盛。なぜか霧島もこれである。武蔵はご飯一升はあるんじゃないか?と言う量だ。本土でなければ米がすぐ尽きるだろうなぁ…ショートランドでは均一だったけども。仕方がない。本土から遠いし送ってもらうにも時間がかかるから。今回は青葉もやや多めに入れてもらっている。

 

「さーて、青葉がひょっとしたら写真を撮るかもしれないけど、日常風景だからそのまま食ってくれなー」

 

「おい!あたしのはもう撮るなよな!」

 

「撮っても消しますよぉ…」

 

「ええい摩耶、早くしてくれ!!!」

 

「…ったく武蔵はー…じゃあ、手を合わせて!」

 

「いただきます(なのです!)(っぽい!!)!!」

 

そうして賑やかな夕食が始まった。懐かしい。久しぶりにこれを食べることができるんだ…そう感慨深くスプーンで掬ったオムライスを口に運んだ。

 

その瞬間、涙が出た。

 

「青葉…?」

 

「これだぁ…この味だぁ…」

 

ボロボロと涙が溢れて止まらない。そう、その味は…ショートランドにいた時に食べていたオムライスの味であった。大本営の食堂で食べた時とは違う…何が違うのかはわからない。けどこれだ、この味だ!!!あのみんなで食卓を囲んで食べていたあのオムライスの味だ!!!!」

 

「大本営の時とは違うからなぁ。言い方は悪いけど、適当と言うか…何と言うか…まあ業務用って感じだな。ショートランドでも、ここでも。これは『家庭の味』にこだわっているからな。俺は母親じゃないけど…おふくろの味って言うか」

 

かきこむ。夢中でかきこむ。涙をボロボロ流して。

 

「おいおい、そんなんじゃ味、わかんねえだろー」

 

司令官が頭を撫でてくれる。ああ、青葉はやっぱり…こんな体じゃなかったら…戦える身体だったら…司令官のお側にいたい…。司令官が助けてくれたのは嬉しい…けど…けどやっぱり、ショートランドの最期の時にも言った、もう一度司令官と立て直しを一緒にやりたかった!!!!

 

「ま、食いたくなったら取材と称して食べに来いよ。また作るからさ」

 

「…はい」

 

「青葉…今からでもうちでやっていくか?おやっさんには話をつけて…「いえ…青葉は…青葉は司令官を影から支える存在でありたいんです。ですから…青葉は大本営で横須賀の活躍を新聞にし続けます。そして、取材も」」

 

そうして司令官を守る戦いを繰り広げているのだ。よからぬ者たちに司令官を壊されないように。艦娘を横取りされたりしないように。こうして戦うと司令長官に誓ったから。自分で決意したから。

 

「じゃあ、また食べに来い。青葉ならいつでも歓迎だよ」

 

「はい!!」

 

空になったお皿。しっかりと食べたあと、青葉は司令官と食堂で話をし、そして強く頷いたのだった。

 

/翌日

 

摩耶や最上に連れ(拉致)られ、司令官の秘密なんかを根掘り葉掘り聞かれそうになった。これは青葉だけのトップシークレットなんですよーと言うと摩耶に首を絞められかけるわ、最上にはくすぐり地獄を味合わされた。何で青葉がこんな目に…と思うも、ジャーナリストの秘匿義務だけは守り抜いた。まあ、そう大したトップシークレットもないわけだけども。

 

帰る前に練習巡洋艦「鹿島」指示のもとで行われる訓練を撮影することにした。しかし、それはまた青葉の度肝を抜くような訓練風景であった。

 

「朝潮姉さん!次!100パーセントでいって!」

 

「わかったわ!朝潮、行きます!はあああ!!!」

 

ドッバーン!!!とすごい水柱をあげて一気に駆けだす朝潮。あんないきなりトップスピードで!?

 

「だああああああ!!!!」

 

急ブレーキ。あんなことしたら足の艤装と骨が砕けないだろうか…いやいやいや、何ですかあの蹴り!?水が刃になって飛んで行ってますけど!!!標的が粉々になったんですけど!?ひとまず写真には収めたが…これ、記事にできるのか?

 

「冬月ィ!!この間はようもたかが軽空母みたいに言うてくれたなぁ!!!せやったらこれを全部落としてみぃ!!!」

 

「やっべえ!吹雪逃げるぞ!!!」

 

「ええ!?あ、はい!」

 

「ふん、いつでも来るがいい!」

 

「お、お冬さん!」

 

「いくでえええええ!!!!四神『朱雀』の型!!」

 

げえっ!?あれは龍驤さんの必殺技じゃないですか?!燃え盛る艦載機が連なり、その姿は中国の四神、伝説の不死鳥朱雀のように見えるからそう呼ばれているものだ。

 

「なっ!?」

 

「な、なんですか…あ、あれ…?」

 

「オラァ!ボサッとしとったら爆撃来るでぇ!はよ落とさんかい!」

 

「く、くぅ!!!涼!撃ち方用意!!!」

 

「は、はい!!!!」

 

機銃に対空砲を撃つもその「朱雀」はまるで生きているかのようにその弾の雨を避ける。

 

「な、なぜだ…!なぜ当たらん…!なぜだあああ!!!なめるなあああ!!!!」

 

「お、お冬さん!!!こ、これは!!!!」

 

「お前も感じたやろう。不死鳥(朱雀)生命(いぶき)を…」

 

大爆発。朱雀はそのままチカラ強く羽ばたいていき、最後には火も消えて艦載機へと戻った。

 

「すずつきさん、ふゆつきさん、たいは、ごうちんはんてい。ぼうくうえんしゅう…しっぱいです…」

 

「う、うう…ふぇえ…」

 

「こら龍驤姉ちゃん!!!あれほど朱雀を使うなっつったろうが!!!!!」

 

「じゃかあしい!!うちをたかがって言うた奴は例外なくブチ殺しとるんや!!!!」

 

「だからってトラウマを植え付けんじゃねえっつーの!!!!見ろ!冬月も涼月も怯えて泣いてんじゃねえか!!!!やりすぎだっつってんの!!!!おやっさんの説教、まるで効いてねえな!!!」

 

「せやったらなんじゃい!鳳翔でも呼ぶんか!!!こんなんも撃ち落とせん奴が防空隊なんかになれるかい!!!!!」

 

「いや、あたしや吹雪や皐月たちも無理なんだけどよぉ…」

 

「は、はい…」

 

「龍驤先生がこわいよぉ…」

 

「ぐすっ…」

 

司令官と龍驤さんは大ゲンカしているし…冬月さんたち…大丈夫でしょうか…。摩耶さんは呆れているし…なんか…こういう風景もよくあったなぁ…。主に霧島さんと大ゲンカしているシーンだったけど…。

 

「ああ冬月、涼月…怖い目にあわせたな…おーい!時雨!この子達をドックへ連れて行ってあげてくれー!」

 

「うん、わかった!」

 

「ふ、文月たちも行くよぉ!」

 

「うん、ボクも行く!」

 

「霰も…行きます」

 

「うん、ありがとう。今日はお休みでいいからな」

 

「ぐすっ…は、はい…生意気を言って…すみませんでした…」

 

「申し訳ございません…お冬さんには言い聞かせておきますので…大変なご無礼を…」

 

「ふ、ふん…!はよ行けっちゅうねん!」

 

「姉ちゃん……もう知らね、おーい鹿島ー!何人か駆逐艦抜けるからなー」

 

「かしこまりました!」

 

「おい、れい…「摩耶ー!摩耶は古鷹たちと合流!吹雪は雪風達と砲撃練習の方へ!」

 

「あ、あいよ」

 

「わ、わかりました!」

 

ああ。司令官がマジギレしています。怒っていないようでこれはブチギレているんです。霧島さんともよくあったことですね…。青葉、戦艦の砲撃は見なくていいのか?と完全に龍驤さんを見ないようにしています。

 

「あーあ、兄さんマジギレしちゃった。あたししーらない」

 

「川内!お前までうちを裏切るんか!?」

 

「大本営で『朱雀』だけはやめろって言われてなかった?それやっちゃって反省もしていないならまあそうなるよね」

 

「う、ううう…し、知るかい!!今日と言う今日はもう知らんわ!!!!ふん!!!!」

 

「はあ…ダメだこりゃ…ああ、青葉、気にしないでね。夜には姉さんから兄さんに泣きついていくからさ」

 

「は、はい…」

 

事実、べそをかきながら「ごめんなさい」と謝りにきたことで手打ちに。引っ込みがつかなくなり、かっかしやすい。それでも最後には玲司に見捨てられたらと思うと不安になり、大泣きをした後、涙目で謝りに行くのが龍驤が玲司と喧嘩した時のパターン。玲司は玲司で怒ると陸奥であれ冷たくなり「もう知らね」と言う。その言葉を聞いたら陸奥も、龍驤も、島風は喧嘩したことはないがその言葉を聞くと不安になり、なぜか泣いてごめんなさいと謝るほどである。玲司の「もう知らね」は「原初の艦娘」の中では最終兵器と呼ばれている。

 

横須賀の霞の「くちゃい」程度の破壊力を有している(原初の艦娘に限る)。

 

………

 

距離3000!風速…微速!各艦、上2!右1!そこ!!!ってーーーーーー!!」

 

衝撃でカメラのレンズが壊れないか心配になるほどの戦艦の砲撃。特に、大和や武蔵の砲撃は本当にレンズが壊れそうだ。

 

「はいはーい!全弾命中ですね!武蔵さん、精度をあげましたねー!」

 

「大和がうるさいからな。殴り合いがしたかったのだが…」

 

「武蔵?」

 

「ほらこれだ。だから最近は砲撃をネルソンとやっているよ」

 

「あー!ネルソンタッチ!」

 

「フフン、余のネルソンタッチはここのFleetとは相性が最高だな!!」

 

「慢心しないの。さあ、ムラサメ。もう1度お願いします」

 

「はーい!」

 

噂の砲撃を百発百中させる駆逐艦村雨か。砲撃訓練を見ていたが最初は村雨が指示。そのあとは各自が得意な距離で撃つ。村雨もかなり遠くの標的を狙って当てまくっている。山城は遥か先だ。4000…5000!?これは素晴らしい。凛々しい戦艦の顔。ド迫力の戦艦の砲撃。

 

「ネルソンタッチ!ヤマート!ムサーシ!いくぞ!!」

 

「応!」

 

「はい!参ります!!」

 

凄まじい衝撃。パキリと何か妙な音が聞こえたが思わず見とれてしまった。これを写真に撮ろうとしたが…。

 

「ああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「うるさ!!!何ですか!もう!」

 

「あ、青葉…青葉のカメ…カメ、ラ…」

 

「ぬ?なんだ、レンズが割れたのか。まあ仕方あるまい。運が悪かったな、ハハハハハ!!!!!」

 

「あ、ああ…」

 

先ほどのパキリと言う音は砲撃の衝撃で青葉の大事なカメラのレンズが割れてしまった音だった。命より大切なカメラ。それが…これでは写真は撮れない。お、終わった。青葉のジャーナリスト生活は…申し訳ありません…司令長官…ボートで近づき、間近でド迫力の写真なんて撮らなければ…とボート上でガックリ膝から崩れ落ちた。

 

「お、おい…大丈夫か?」

 

「ああ…」

 

青葉はその後は何を言っても上の空だった。

 

………

 

「あっちゃー、やっちまったなぁ」

 

司令官に報告をする。妖精さんに直せるか?と聞いてもその手の職人はいない、と言う運の悪いことになった。

 

「うーん、そういえば古いカメラを扱っているカメラ屋が商店街にあったな…そこに行ってみるか。大淀、鳥海、悪いけど頼めるか?」

 

「お任せください。青葉にとってそれは命なのでしょうから」

 

「はい、お気をつけて行ってきてください」

 

「ありがと。ほら、青葉行くぞ。ひょっとしたら直せるかもしれないからさ」

 

「はい…」

 

青葉は玲司と共に商店街へと一路向かうのだった。ああ、神様…お願いです。私のカメラがすぐ直りますように、と『邪道』と罵り使わなかった予備のカメラ、デジカメも持って。

 

「そこはさすがと言うか…だな…」

 

「撮ることが私の生きがいですので…」

 

「ふふ、そうだったな。よっしゃ、行くか!」

 

車のエンジンをかけ、玲司と青葉は商店街へと向かうのであった。




終わりそうで終わらない。そんな青葉取材編。

久しぶりに商店街の面々が登場します。艦娘といえば…そう、あの暴走特急がいますね…(笑)
さて、次回…青葉の壊れてしまったカメラは直るのでしょうか?もう少しだけ青葉の取材編、続きます。次回くらいで終わりにしたいですね。

2022年も拙作をお読みくださり、ありがとうございました。
来年も間が空いたりすることもあるとは思いますがぼちぼちと書いて参ります。来年もどうぞよろしくお願い致します。

それでは、また。

よいお年をお迎えください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。