提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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青葉、商店街へ行くの巻…ですが何やら不穏な様子…


第二百二十二話

「青葉のカメラ…青葉のカメラ」

 

「うーん、直るといいんだけどなぁ」

 

助手席で目の光を失い、レンズが大和や武蔵たち戦艦の砲撃を近くで撮影しようとしたら強烈な砲撃の衝撃で割れてしまったカメラを撫でながら壊れたレコードのように青葉のカメラ…と言っているのである。

 

カメラは青葉にとって命よりも大事な存在だ。真実を写し、時に暴走したものを写すものであるが、これによって救われた艦娘や親艦娘派からの信頼が厚い。一方で兵器派からは見せたくないものを写し、新聞にすることが鬱陶しいのか邪険にされている。

 

そのカメラはある写真が好きなもう退役してしまった自衛官にもらったものだ。

 

「俺の祖父も写真が好きでなぁ。古いけど、お前なら使えるだろう。祖父の形見だ。大切に使ってくれよ」

 

様々なカスタムが施され、100万円くらいはかけていると聞いた時は震えながら最初は写真を撮っていたものだ。慣れてくれば扱いやすく、美しく撮れるし、遠くのものもよく撮れる。だから遠くからちゃんと大和達の砲撃を撮っていればこうはならなかったのだが欲張ったが故の破損であった。このままでは頂いた方に申し訳が立たない。藁にもすがる思いで青葉は司令官が案内してくれると言うカメラ屋へ向かうのだった。

 

「でー、どうして漣チャンたちまで連れてこられたんでしょーかー?」

 

「私は…ちょうどお買い物がしたかったからよかったけどぉ…」

 

「司令の護衛はお任せください」

 

「司令官さん、私まで連れ出してどういうことでしょう?計算ができないのですが…」

 

後部座席には漣、潮、不知火、そして鳥海。不知火は玲司を護衛すると意気込んでいるし、潮は買い物に来たかったらしい、ちょうどよかった。漣はゲームを途中で切り上げさせられてちょっと不満げである。鳥海は事務仕事を切り上げてまで連れてこられたことに少し戸惑っているようだ。

 

「俺だけじゃ青葉が暴走したときに止められないからな。潮はパジャマがほしいって言っていたしな。漣たち仲良しトリオで連れてこないと特に漣がぴーぴー言うだろ?」

 

「ぴーぴーって何ですか!偏見ですよ!おにおこですよ!」

 

「どこで鬼怒の怒り方を聞いたんだよ…」

 

「そりゃあ大本営で…ってそうじゃないです!まるで漣チャンはついでじゃないですか!メシマズ!!!!」

 

「今日のルーチェはレアチーズケーキがうまいらしいぞ」

 

「わーい!いくいくー!メシウマですぞ!メシウマ!!!」

 

(……知らない人におやつもらったらついていかねえか心配だな…)

 

「ご主人様?今変なこと考えてませんでした?」

 

「いいや?何も」

 

「司令に近づく不届き者は容赦なく排除します。このデイパックには携帯型12.7単装砲を…」

 

「うおおい!?なんて物騒なもん持ってきてんだよ!?出すなよ!ぜっっっったい商店街で出すなよ!?」

 

「それって出していいってことですよネ」

 

「押すなよの理論じゃねえんだっつーの!!!俺が責任不行き届きで処罰食らうからな!?」

 

「………」

 

「なんか、不満そうだな…」

 

「不知火に落ち度でも?」

 

「いや、俺を守ってくれるのはありがてえんだけどさぁ…」

 

「では、武蔵さんに教わった八極拳で…」

 

「それも物騒だなおい!?」

 

「ええっと…パジャマとぉ…ああ、パンツもゴムが伸びちゃって…うう…ブラもどうしてすぐダメになるんだろう…」

 

「あのさ…男の俺がいるのに下着の独り言は…いいのか、潮?」

 

「ふぇっ…?…………きゃああああああああ!!!!」

 

「「ぎゃああああああ!!!!!耳があああああああああ!!!!」」

 

車内に高周波が響き渡る。そのあとは潮はトマトのように真っ赤になっていた。真横で聞いていた漣は涎を垂らして女の子が見せてはいけないような顔をして失神している。

 

「おほん…それで…司令官さん?この鳥海を連れ出した理由はお教え願えないのですか?」

 

「ああ、鳥海は大淀と一緒で青葉のブレーキ役。何かあればすぐさまそのスマホで大淀に電話してくれ。帰ったら青葉が龍驤姉ちゃんの『朱雀の型』の刑に処す準備をするから」

 

「ああ…そういうことですか…と言うか処すって物騒ですね…」

 

「青葉はな、すぐ暴走するんだ。だからすぐさま説教なり今なら龍驤姉ちゃんって言う青葉のトラウマがいるからな。こうしないとほんと懲りないから。ほんと、こいつだけはな…」

 

ぶつぶつと青葉のやらかしたことを愚痴る玲司。対して青葉は「そんなことばっかりじゃないですよぉ!?」「いや、いつもそうだったよな!」とまたケンカを始めた。それを聞いていると鳥海はちょっと青葉に嫉妬した。龍驤とのケンカにも嫉妬しているわけであるが。

なぜならこうしてあけっぴろげにケンカをしたり軽口を叩き合う、と言うことが司令官ともしてみたいと思っている。それと同時にそれを見ていると距離感を感じるのだ。なんと言うか…線を引かれていると言うか、モヤモヤするのだ。

 

「………バカ」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「何でもないです」

 

プイっとそっぽを向いてしまう鳥海。

 

「ご主人様は相変わらずニブチンですなー。そこがかわいいとこでもありますけど、ぷぷぷ」

 

「はあ?かわいいって…」

 

頭に???を浮かべながら商店街へ走るのであった。鳥海がなんで怒っているのか一生玲司にはわからないだろう。こういう時、鈍いのだから。

 

漣はニヤニヤしているし鳥海はそっぽ向いているし「なんなんだ…」と独り言ちながら運転を続けた。青葉はケンカが終わるとまた相変わらず「青葉のカメラ…アア…」と虚ろであるし、潮は顔を隠しているが耳まで真っ赤で「もうやだぁ…」と言っているなかなかカオスな車内だった。

 

………

 

「ほう…これはこれは…素晴らしいカメラですね。そして、大事に使われているのですね。なるほど…これでしたら…レンズを交換してみましょうか。何とかなると思いますよ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「少々お時間をください。なに、責任を持って直させてもらいますよ」

 

ルーチェのマスターとはまた違う紳士のような雰囲気をまとう穏やかな表情を浮かべた男性がカメラをさっそく修理に取り掛かっていた。邪魔をしてはいけないな…と心配しながらカメラをじっと食い入るように見ていた青葉を引きずるかのようにカメラ屋を出た。

 

「うーん、仕方がありませんがデジカメでこの商店街を取材していきますよぉ!」

 

「立ち直りが早えなおい」

 

「仕事は仕事です!カメラがこれ、と言うのは満足できませんが撮るべきものは撮らねばなりません!なぜならここは…艦娘と交流のある稀有な商店街と言う噂を聞いていますからね!」

 

インターネットで見たことがあるのだと言う。「艦娘がやってきて交流を図れる商店街」として有名なのだと言う。艦娘の写真などは写ってはいなかったがそういう噂があると言うことで、横須賀鎮守府の取材もしたいと言うくらいであった。

 

「ああ…そういえばなんか地方の新聞社が取材させてくれって電話来たな。批判的なこと書かれそうだから断ったけど」

 

「それは正解でしょうね。ネットの記事ものんきにそんなところで交流してていいのかーって内容でしたし」

 

「だろうなー」

 

新聞、メディアはこぞって艦娘に否定的だ。どのみち玲司が取材を受けたところで、艦娘達に不快な内容になるに決まっていると即拒否。しつこくアポを取ってきたが「批判的な内容を書かないと誓約書に一筆書いてくれるなら受けますよ」と言うとぱったり電話は途絶えた。やれやれだぜ…と玲司はため息を吐いたくらいだ。

 

「九重提督んとこもなんか市民団体が来て艦娘は出て行けだの提督は出て行けだのとうるさかったらしいな。ここもそんな噂が出てるなら来てるかもしれないな」

 

 

「ご主人様、どうしてそうやって漣チャンたち艦娘に否定的なんですかね?」

 

「戦争の道具だ。暴力装置だ。何だかんだと理由をつけてかつての軍国主義にしたいんだろとかわけのわからない理屈が多いのさ。艦娘がいるから平穏に過ごせて魚とか食えてるのにな」

 

「よくわっかんない人達なんですね!」

 

「つまり危ない人がここにもいるかもしれないと言うことですね」

 

「おい不知火、だからってデイパックのチャックを開けるのはやめろ、っておっも!?お前艤装つけてないのに何でこんなの持ち歩けるんだ!?」

 

「……ここに少しだけ「わあああああ!!!こらこんなとこで服をまくるんじゃない!」

 

「やん♪ご主人様ったらだーいたーん♪ロリコンですか?ふごっ!?」

 

漣は思いきりげんこつを食らった。うおおお…とうずくまって頭を抱える漣。

 

「こらこら、女の子に暴力はダメじゃないかい?」

 

「梅おばさん…いや、これにはいろいろとだな…」

 

「う、梅おばさーーん」

 

「おおよしよし、痛かったろうねぇ…漣ちゃん。あっはっは、ちゃんとワケは聞いてたけどね。嘘泣きならあたしには通じないよ」

 

「ぐ、ぐう…」

 

「漣ちゃんが来ると賑やかで嬉しいねぇ」

 

「竹おばさんもこんちわ、今日はちょっと商店街の取材をさせてもらいに来たよ」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「おや、見慣れない子だね?新しい子かい?けど、とんでもなく間の悪いタイミングで来たねぇ…」

 

「え?どういうことですか?」

 

「ほら、あれだよ…」

 

梅が指差す先には謎の集団とそれに対して何かを大声で抗議をしているのだろう源の姿があった。あー…と玲司は頭をかいた。

 

「司令官さん、あれは…何でしょう?」

 

「艦娘や提督。海軍をよく思っていない集団だな…ってか源さん、やばくねえかあれ?」

 

「艦娘との交流は戦争に加担するも同然だー!!!」

 

「「「同然だーーーーーー!!!!」」」

 

「うるっせえって言ってんだよ毎日毎日!お客さんらの迷惑になるからやめろって言ってんだろうが!!!!」

 

「戦争反対!戦争反対!!」

 

「「「はんたーーーーーい!!!!!」」」

 

「うるせえんだよ!!!!!!」

 

戦争、と彼らは謳っているが、人間たちは好んで戦争をしているわけではない。むしろ被害者に近いだろう。突然海から深海棲艦と後に名付けたモノが現れ、船や人々を襲い、果てには沿岸部にまで接近され、壊滅的な被害を出した街も少なくはない。天災のようなものである。

 

陸海空。全ての自衛隊があらゆる最先端の武器、兵器を用いたが傷一つ与えられず、日本を含め世界の首脳陣は頭を悩ませた。アメリカに至ってはとにかく核兵器を撃ち込めば滅ぶだろうと言いだしたが、それでは余計に世界の崩壊を早めるに過ぎないと全力で止めたものだ。

 

ではどうすれば良いのか…と思っていたところに現れた深海棲艦にダメージを与え、沈めるモノが現れた。艦娘だ。彼女たちは先の大戦で存在した艦の名を名乗った。こうして世界はやられるだけだっただけの存在から深海棲艦からの攻撃を抑止できる存在を手に入れた。

 

「で、そんなことは露知らずに艦娘は戦争の道具だ、暴力装置だなんて言い出した連中が現れたわけだよ。守ってもらっておいてギャーギャーとうるさい連中なんだよ」

 

「……」

 

「そこ、バックパックのファスナーを開けようとしない」

 

「……落ち度はありません」

 

「処す気だったよなぁ!?」

 

「困ったもんだよ。テレビで取り上げられてからこのザマさ。この間も警察じゃない何かに逮捕されてたんだけど、また別の連中がやってきてね…毎日これでお客さんの足は遠のくし、ゴミなんかは散らかしていくしあれだろう?松子も仕事の邪魔だってあやうく殴り合いのけんかになるところを助けられたんだよ」

 

「たぶん、憲兵じゃないかな。陸軍…元陸上自衛隊の艦娘の活動などを妨害する行為をする連中を取り締まる部隊だ。警察庁とは違う、陸自と検察が何か絡んでるらしいな。たしか…おっそろしい人らだって噂だ…」

 

「そうなんだよぉ…この間もさ…」

 

梅の話では先日もこうして拡声器を十数人で用いて艦娘反対、戦争反対だのと騒いでいた連中に対し、デッサンをしていて3日ほど徹夜していた松子がブチギレ。掴み合いの大ゲンカになり、ついに松子を殴ろうと男が手を振り上げた時だった。その振り上げた手を掴む男が立っていた。背が高く、鋭い目つきでうっすらと笑っている男。

 

「な、何だ貴様は!?」

 

「ここの住人がお前たちのせいで困っていると聞いてねぇ。挙句の果てに暴力まで振るおうなんざ、羨ましくないねぇ」

 

「何を訳の分からないことを!俺たちは自分たちの主張をしているだけだ!主張の自由がこの国にはあるだろう!」

 

「主張は自由だが、他人に迷惑をかけちゃいけないねぇ。お前ら、調べたところによると戦争反対と謳ってあちこちで騒ぎ倒し、それで報酬を政治家から得て海軍の邪魔をしているようだねぇ。許せないねぇ」

 

「な、何の話だ!?そんなのただの憶測だろう!?」

 

「いいや、証拠は集まっている。お前たちが今あにき…いや、上官殿が言っていることは事実だ。検察と協力を得てばっちりだぜ」

 

「ぐ、ぐぐぐ、うるせええええ!!!憲兵が怖くてやってられるか!!!!この国をあんな艦娘みたいなわけのわからん奴から守るんだああああ!!!!」

 

「言ってることがめちゃくちゃだなおい!?」

 

そうして長身の男の顔に拳を打ち込んだ。しかし、男はまるで動じていない。拳を受ける瞬間に首をひねってチカラを流したのだ。ニタァ…と男は笑った。

 

「おいおい、これは公務執行妨害だねぇ…嬉しいなぁ。これで公然と逮捕ができるねぇ!!」

 

「やかましい!!おい!こいつらはただの2人だ!やっちまえ!!!」

 

「おわあ!?」

 

数人がメガホンや何やらを持って襲い掛かってきた。しかし、憲兵は特殊警棒を手に取り、恐ろしいスピードでバットでボールを打つかのように振りかぶり…

 

「公務執行妨害と傷害だなぁ!羨ましくないねぇ!!!言い訳は詰め所で聞くわ!!!」

 

最初の男の腹に警棒が刺さる。そのまま憲兵が振りぬくと80キロはある男は吹っ飛んでいき、後ろの男たちも吹き飛ばされた。恐ろしい怪力だった。そして…奴らは近くに潜んでいた数人の憲兵に逮捕された。どうやら政治がらみの海軍を貶めるための集団だったようだ。

 

海軍…その上、つまり防衛省が今、華なのだ。艦娘を率いて海を守り、さらには死んでしまったシーラインを一宮グループと開拓し、取り戻した。故に今防衛省が光っている。だからこそ、それが気に入らない政治家がいるのだ。だからこそ、こうしてデモを行い共感を得て仲間を増やしてドンドンと防衛省の人気を落としてやろう、そういう企みであった。しかし、この発想を古井のおやっさんから聞いた時、頭を抱えながら「アホだ…」と漏らすくらいだった。

 

そう、こんなことで共感を得る者などいるはずがなく…逆に迷惑がられて白い目で見られる始末だった。さらには政治家もこれで…と無駄な皮算用をしているアホだった。

 

そうして今回もおそらくその政治家が送り込んだ集団なのだろう。テレビで艦娘と触れ合える街として紹介され、それが政治家の目に入り、この街のその人気を潰してやろうと画策したのだ。実際、人が遠のきだし、客足が遠のいていた。このままでは本当に商店街が潰されてしまう。

 

「仕方ない…俺が止めてくる。源さんが危ない」

 

「司令、不知火も参ります」

 

「お前は発砲しそうだからダメ」

 

「………」

 

「デイパックから手を放しなさい!」

 

「ぬいぬい!目がやばいって!さささ、じゃけんうっしーと松子おばさんのとこいきましょうねー」

 

「て、提督…」

 

「潮、漣、不知火を止めてくれなー」

 

「くっ、不知火は司令をお守りすると言う任務の下でここに来たと言うのに!」

 

「ややや、ぬいもお尻がおっきくなったのかパンツのサイズが合わないんうぶっ」

 

「セクハラ発言です。それ以上の発言は許しません。……ふふふ、司令に不知火の秘密をバラしましたね…不知火を怒らせたわね」

 

「むぐうううう!!!!」

 

「し、不知火ちゃぁん!ダメだってばー!」

 

「み、みんな、そう騒ぐと…」

 

「おい、あれを見ろ!艦娘だ!!!」

 

「ちっ…鳥海、漣たちを連れて松子おばさんのとこへ行け」

 

「で、ですが…」

 

「囲まれる前に早く行きな。あいつら、本当に囲んでくるよ」

 

そうこうしているうちに囲まれてしまった。老体の割には動きが素早い。

 

「貴様が提督だな!?そして艦娘か!戦争を起こしている張本人連中がのこのことやってくるって言うのは本当だったんだな!しかもこんな若造が!?」

 

「若造だろうと何だろうと横須賀鎮守府の提督です。私達を戦争を起こしていると仰っておりますが、そもそも先に仕掛けてきたのは深海棲艦でしょう?」

 

「そうでいそうでい!あいつらのせいでなぁぐぇっ!」

 

「あんたは黙ってな」

 

怒り任せに源もケンカに参加しようと思ったのだが、梅に首根っこを掴まれひっこめさせられた。ここは玲司に任せておけと言うことらしい。竹美はと言うと先ほどコロッケを揚げた熱々の油だろうか…が入った鍋を持って事の成り行きを見守っている。やんややんやと野次馬も集まり、何やら大変なことになっているな…と玲司は呑気に思っていた。ちなみに青葉は写真を撮っている。

 

「おいこらそこの艦娘!何撮ってやがる!!」

 

「そりゃあこんな集団でいち個人を袋叩きにするかもしれないような状況…何かあったら証拠提出のために撮影は必要でしょう?」

 

「この、そのカメラをよこせ!」

 

「おっと」

 

パシッと玲司が伸びてきた手を払いのけた。

 

「いてっ!?おい、今の見たか!?暴力だ!!一般市民に暴力を振るいやがったぞ!!!」

 

「見たわ!暴力よ!何て野蛮!やっぱり戦争に加担している人間だけあって暴力が大好きなのね提督って!」

 

「今のはこの子に暴力を振るおうとしたあんたが悪いんじゃないかい!?ふざけんじゃないわよ!竹!!こいつらにその油ぶっかけてやんな!」

 

「わー!!!!待て待て待て!!!」

 

もうめちゃくちゃである。不知火は戦艦を射殺さんばかりの目で集団を睨みつけている。それが気に入らないのか艦娘ごときが人間に何か言いたそうだな、ええ!?と言われ、デイパックにすぐ手をかけようとするのを漣が冷静に止める。

 

鳥海は大淀に電話をしようとしているがそんなことで電話をしたところで解決にはならない。冷静を装っているが取り乱している潮は涙目でおろおろしているだけ。青葉はまだ写真を撮っているし竹美は本当に油をぶっかけそうだ。徳三が必死に止めている。源は殴りかかろうとしているから玲司が止めている。茂はカボチャをぶん投げそうにしている。

 

「はい、はいはいはいはい、そこまでにしておきましょう」

 

「何だ貴様は!?」

 

「宗ちゃん?」

 

「熱くなってめちゃくちゃになっておりますのでここで一度クールダウンしましょう。艦娘と寄り添い、街を持ち上げようとする我らが商店街でここ数週間、非常にやかましく、迷惑を被っておるのです。憲兵に逮捕された事例もご存じでしょう?なぜそこまであなた方は野蛮な行為でもって提督、艦娘を排除しようとし、何の理由があって我々が食いっぱぐれてしまうかもしれない状況…つまり商店街を廃れさせようとするのか、お答え願いたい」

 

ルーチェのマスターはクールダウンせよと言うが怒り心頭なのだ。朝から晩までうるさいせいで常連客がのんびりできない。客足は遠のく。商店街を廃れさせようとしている彼らにはらわたが煮えくり返るほど本当は怒っている。こういう時こそ冷静に。それがマスターの信条であるが故に冷静を装っている。

 

「艦娘がいるから戦争が起こるのだ!だから艦娘は排除すべきだ!」

 

そうだそうだと言うがもはや意味がわからない。艦娘によって生かされている、となぜわからない?艦娘が居なかった時、我々はどうであった?蹂躙されるだけであっただろう?家族を、恋人を、友を奪われ、それでいて何一つできなかったあの頃。人は己の無力を呪うだけでしかなかったじゃないか。

 

「理由になっておりませんね。艦娘がいなければ我々は生きてはいけない…それでいながら艦娘を否定する。矛盾してはおりませんか?それにわざわざ深海棲艦から攻撃を受けるかもしれないこのような港町に来て?抗議をして?それは艦娘がいるから安全であるからこうして抗議をしに来ているのですよね?」

 

「な、な…」

 

彼らの目論見を簡単に看破する。そうなのだ。海に近いところは深海棲艦に襲われるリスクが高い。それで玲司の故郷は壊滅した。今は艦娘が大活躍し、沿岸から深海棲艦を遠ざけているからこそこうして平和に生活ができていることを理解しているからだ。

 

図星を突かれた集団はギクリとした表情を浮かべた。一方でマスターはニヤリ…と笑った。

 

「ほっほ。図星ですかな。我々は艦娘に守られ生きています。だからこそ艦娘に感謝していますし、彼女たちは女の子や女性と変わらない。おいしいものに舌鼓を打ち、かわいい服を見ては喜び…それを邪魔する権利はあなた方にはありませんよ」

 

「だ、黙れ黙れ黙れ!!!誰が何と言おうとみんなが艦娘は戦争兵器だと言っているんだ!!」

 

「ほう、ではここの人々が誰か一人でもそうおっしゃっていましたかね?皆さんはこう仰られておりましたよ。あなた方がうるさい。ただそれだけです」

 

「そうでい!おいらは艦娘は海の守り神だと思ってるんだよ!だから兵器とか暴力装置だぁ?笑わせるんじゃねえや!」

 

「あたしらはこの子たちを自分の娘や孫のように思ってんのさ!それを邪魔するんじゃないよ!」

 

今度はそうだそうだ!と集まって来ていた商店街のお店の人、通行人が言い出した。これは俺が出る幕じゃねえなぁ…でもこの子たちだけは守らねえとなぁ…と冷静でいた。しかし、商店街の人々のブーイングに怒りがヒートアップしたのか首謀者である老人がメンバーに声をかけた。

 

「ええい…黙ってればうるさい奴らだ!おい、みんなこいつらをやっちまうぞ!!!」

 

ええ…戦争反対って言っておきながら暴力で解決するんスか…と漣は啞然とした。不知火がいよいよ砲を取り出そうとしたときだった…

 

 

ぅぉぉぉおおおおおおわあああああああああ!!!!!!

 

 

叫び声が聞こえた。何事かと思っていると市民団体の背後から猛スピードで突っ込んでくる憲兵らしい服を着た自転車があった。そのスピードはもはやバイクのようで憲兵もただただハンドルに掴まっていることしかできない状態だった。そして団体も反応ができず…

 

グワッシャアアアアアアンン!!!!!!!

 

「あああああああぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁ!!!!」

 

憲兵は吹っ飛んで行った。集団はボーリングのピンよろしく吹き飛ばされた。いや、死亡事故になりそうだったんだけど…。

 

「おーい、生きてますかー?」

 

漣が吹っ飛んだ憲兵を指でツンツンと突ついている。

 

「じょ、じょうかんどのぉ…」

 

「あ、生きてますネ」

 

「すごいぞぉ、悪い奴らにストライクだぁ。また伝説を作ったなぁ、こいつぅ♪」

 

さらに現れた何だかぽやーっとした感じの憲兵が拍手をしながら歩いてきた。陸自…いや、陸軍の憲兵のようだが。

 

「ぐぐ、ぐぐぐ…お、お前は憲兵か…!一般市民に対してこのような…」

 

「え~?お前たちってぇ、この街の人たちに迷惑をかけてばっかりいる奴らだよねぇ?だから一般じゃなくてぇ…害虫だよねぇ?」

 

「な、何だと!?」

 

憲兵の顔を見て鳥海が怯えている。玲司のも少したじろいだ。笑っているようで恐ろしい殺気を放っている。目が笑っていない。まるで隙がない。スタスタと源の店に行くと刺身包丁を持ち出し…

 

「だからぁ、お前らみたいな奴は刺身になっちゃえ~♪」

 

「わああああああ!!!!」

 

「だあああああ!!!!人ん家の包丁を人殺しの道具に使うんじゃねえええ!!!」

 

「上官んんんんん!!!!それはやばいですってえええええ!!!」

 

吹っ飛んで伸びていた部下であろう憲兵が上官と呼ぶ憲兵を全力で止めた。

 

「え~?こいつらなんて害虫でしかないでしょ~?だったらバラバラにして魚の餌にしたほうがいいじゃ~ん」

 

「よくないですよ!俺たちの目的はこいつらの捕縛でしょ!?殺したら上官が捕まります!!」

 

「ん~、バレなければいいでしょぉ?」

 

「よくないです!!お、お前ら!お前らも検察からの情報で違法献金やら数々の暴行傷害なんかの罪状、わかってるんだからな!?おとなしくお縄につけぶべっ」

 

「うるせえ国家の犬!!お前らが怖くてこんなことができるかああああ!!!」

 

「…………おいお前…やっちゃったねぇ…ほんとに刺身になる?」

 

部下を殴った瞬間、さらに上官憲兵の雰囲気が変わった。それは不知火でさえたじろぐほど。マスターもおやおや…とニヤリ…と笑っていた。マスター、やっぱりただ者じゃないんじゃ…?と玲司は思った。

 

ポイっと刺身包丁を投げ捨てた。

 

「っておい!おいらの刺身包丁があああ!」

 

「しょうがない、ちょっと本気でやってあげる。死んでも知らないぞぉ」

 

「そこまでですよ。俺たちの目的はそいつらの捕縛です」

 

「………あー…来ちゃったんだぁ」

 

「そいつに呼ばれて。もうめちゃくちゃでどうしようもないことになったからって」

 

「ひっ!?お、お前は!?」

 

集団の男の眼の色が変わった。恐怖に歪んでいる。

 

「おいこらお前。憲兵に手を出したってことがどういうことかわかってるんだろうな。しかも…ケガまでさせておいて」

 

「じゃあさっさと捕まえちゃおうか~♪」

 

「お前らセンスがねえな!さっさと豚箱にぶちこんでやるぜ!!」

 

「外道共 お呼びでないから 牢屋行き」

 

そこからはあっと言う間の話だった。なす術もなく、街を騒がせていた市民団体は捕縛され、連れていかれた。一番の部下だろうなぜか「伝説の部下」と言う名で呼ばれた憲兵がお騒がせしてすいません、すいません!!と腰を90度何度も曲げながら頭を下げていた。筋骨隆々な九重提督のような喋り方をする男性?も「ごめんなさいねぇ、お騒がせして。けどもう大丈夫。ここにこの人たちが来ることはもう二度とないから」と言った。

 

……どういうことかわからないが…まあ難は去ったようだ。源は長年愛用していた刺身包丁が欠けてしまったことに泣いていた。

 

「ああ、そうだったぁ。ごめんねぇ、この刺身包丁あげるからぁ、泣かないで~」

 

「うおおお!?こ、こりゃ名だたる刀工の包丁!?あ、ありがとうごぜえやす!」

 

「ううん、迷惑をかけちゃったからお詫びだよぉ。じゃあ、ばいばーい」

 

「ねえ玲ちゃん…憲兵って…あんなのばっかりなのかい?」

 

……言いたくない。海軍憲兵も四宮さんたちの憲兵隊は真面目一辺倒なのだが、別の部隊はやばいのだ。陸軍の憲兵に関しては…よくはわからないが恐ろしい噂ばかり聞く。いや、いくら犯罪を犯しているからと言っても、暴力で何事も解決しようとする連中だと話に聞いた。

 

「ああいう人達ばっかりじゃないと信じてるけど…」

 

「そ、そうかい…」

 

「ふふ、昔から血の気が多いですからねぇ、陸の憲兵さんは」

 

「マスターの時代からそうだったんすね…」

 

「ええ。敵に回してはいけない。そう教わりましたよ」

 

「そ、そうっすか…関わらないようにしよ…」

 

それからこの異様な連中は「ここには地獄の鬼よりも怖い憲兵がいる」と言う噂が広まり、さらには艦娘と関わりたい人々が集まることから自然と淘汰されていった。

 

「やれやれ…憲兵には感謝…しとくか」

 

「司令、お怪我はありませんか」

 

「ああ、大丈夫。憲兵のおかげだな…警察じゃなく、憲兵が動いていると言うことは何かあるんだろうな…」

 

「そう、なのですか?」

 

「ああ。憲兵は特殊なことでない限り動かない。防衛省…いや、検察庁か。そっちが動いている。まあ、俺たちが知る由もないよ」

 

「は、はあ…」

 

「さて…って青葉?」

 

「すっごくいい写真が撮れました!!あー、憲兵さんの危ないシーンは撮影しておりませんが…艦娘を慕ってくださるこの商店街の人たちのあつーーーい思いが伝わりました!さあ司令官!もっとこの商店街を案内してください!きっといい写真に記事…うおおおおおお」

 

「いや、落ち着け、な?」

 

「今度こそ司令をお守り致します」

 

「ぬーいー。デイパックは車にぬいぬい…いや、ないないしましょうねー」

 

「な、なぜですか」

 

「そんな物騒な物持って歩いてたらさっきの憲兵さんが来るかもしれないよ?」

 

「………」

 

刺身にされてしまう。そう思った不知火はブルリと身震いをしたあと、素直に車にデイパックを置いて玲司達についていくことにした。

 

「さあ!青葉の新聞作成意欲が今まで以上に昂っていますよぉ!!!さあ、司令!余すことなく教えてくださいね!!」

 

「あー…わかったわかった…まず潮の下着類を買いに行くか」

 

「ひゃ、ひゃい!提督になら見られてもいいデス」

 

「は?」

 

「ちょっと玲ちゃん?どういうことだい?詳しく話を聞かせてもらおうかい?」

 

「そうさね。まさか…こんな子相手に…」

 

「ちょっと待って、マジで誤解だから」

 

「ご主人様はうっしーがどんなぱんちゅを履くのか見たい、と」

 

「おい漣ぃ!?」

 

「司令にでしたら不知火の下着もお見せすることも構いませんが」

 

「不知火!?」

 

「……おい、聞いたかよ徳…茂…玲ちゃんってあれか…?ロリコン?」

 

「ああ…そんな奴じゃねえって信じてたのになぁ…」

 

「鳥海さんの下着なら…ウッ」

 

「おおおい!!!誰か助けてくれーーーーー!!!」

 

「何してるんですか!何なら青葉のも見せてあげますから早く行きますよ!」

 

「話をややこしくすんじゃねえええええええ!!!!!」

 

今日は厄介なことしかない…そう思い叫ぶ玲司だった。

 




新年あけましておめでとうございます(激遅

さて、青葉や鳥海達との商店街取材…でしたが思わぬトラブルでしたね。ちょっと政治的な絡みも含んでしまいましたが、今の日本は防衛省が主軸で動いており、それをやっかむ連中が多いと言うことです。それをうまく動かしている豊田総理はよくやっているほうだと思います。

今回はゴタゴタしましたが次回もまた青葉となかよしトリオのおかげで大騒ぎになりそうな予感…次回をお待ちいただけましたら幸いです。

本年もどうぞよろしくお願い致します。

それでは、また。
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