今回は青葉たちもそうですが、珍しく連れてこられた不知火たちの行動も楽しんでいただければと思います。
「やれやれ…厄介者は連れていかれたけど…また来るんじゃないだろうねぇ…」
「大丈夫だと思う。陸軍の憲兵が来た場合はああいう一味は憲兵を恐れて来なくなるって噂だ。まあ…あんなんばっかりらしいし…」
「へ、へえ…」
迷惑していた市民団体。それらは全て狂犬のような危険人物とごくわずかなまともな陸軍憲兵のおかげで排除された。ちなみに「伝説の憲兵」と呼ばれていた憲兵はその後、道行く若い主婦の方々をナンパしようとしていたが、変わった髪型(と漣が言ったら「床屋代で2万円もすんだぞコラァ!」と怒られた)の憲兵に締め落とされるんじゃないかと言う勢いで引きずられて帰って行った。
彼らは狂犬部隊。特に艦娘を排除しようとしたり、日本が戦争をしていると言ったデモを行った連中には容赦がない。当たり前のことだが艦娘がいないともはや日本は内陸を除いて壊滅しているだろう。実際に湘南大襲撃、四国の襲撃など艦娘が存在しなかった時代は甚大な被害を出したのだから。
彼らは戦争反対とのたまっておきながら自分たちを排除しようとする一般の人々に暴力で対抗する。警察はこう言うことには強制的に排除ができず、それらを排除することができる特権を持った部隊を作った。それが陸軍…元陸上自衛隊の部隊だ。
民事不介入を一貫するしかない警察しかいなかった際はそれこそ暴力による死者も出したくらいであるし、警察も多くのけが人を出したくらいだ。それはまさに暴徒。
あまりに事態を重く見た政府は警察は犯罪者を。憲兵はこういった反艦娘を排除する抵抗措置として配置することにした。もちろん一部の政治家からは猛反発を受けたが、検察庁も一枚噛み、彼らが市民団体に資金援助していることもわかり、黙らせて(逮捕するなどして)強行的に法律を整備した。
ちなみに舞鶴や呉などにもしっかりと憲兵が配置されている。そこはなんと2人で20人近い暴徒の様な団体を…
「俺は幸せ者やぁ!こんな悪い連中をやっつけられる正義の味方になったんやからなぁ!成果はちゃんと出すでぇ!せいかっちゅうたら亀〇製菓の柿の種や!」
「上官殿が上へ登り詰めることができるんやったら俺も喜んでこいつらしばき倒しますわ。あと上官、そのシャレはないですわ」
「あかんかー」
「んなこと言いながらこいつらめっちゃつよ…ぎゃああああ!!!!!」
こんな憲兵もいるらしい。舞鶴の虎瀬のおじさんが言っていた。
「ま、まあ…暴力はよくないけど…ああやって迷惑なのを排除してくれるのはありがてえな…ほんと、毎日困ってたもんでよぉ」
「まあもう大丈夫さ。さて、これでゆっくりここを取材でき…ん?不知火はどこへ行った?」
車の中であれだあけ勝手な行動は慎めと言ったはずなんだが…不知火が見当たらない。周囲を見回していると鳥海が指を指す。
「司令官さん、あそこ!」
「ん?」
不知火は肉屋にいた。何かを物凄い勢いで見つめている。茂が怯えているくらいだ。ああ、やばい。たぶん「戦艦を射殺すような目」で見ているに違いない。
「な、ど、どうしたんだい…お、俺が何か悪いことでもしたか…?」
「…………すみません。これは…何という食べ物でしょうか」
「ひい!?」
「こら不知火、顔がやばいことになってるって!茂さん、すんません…」
「お、おお…(不知火ちゃん時々マジで怖えんだよな…)」
「不知火に落ち度はありません。ただこれが何かを聞いていただけです」
「ぬいぬい目つきがイッちゃってるってば。茂さんドンビキしてるってば。もー、ぬいは食べ物には見境がないんだからなぁ。間宮さんもいつも怖がってるっしょー?」
「この食べ物が」
「あーダメだこりゃ聞いてないや」
実を言うと不知火は神通並みに食べ物に目がない。武蔵や霧島、夕立なども食べ物のことになると暴走特急であるが、不知火と神通は「宵闇」川内のように食事の準備を始めているといつの間にか「居る」。玲司でさえびっくりしてフライパンをひっくり返しそうになったことが何回かある。
新しい料理を見るたびに恐ろしい目つきで「これは何ですか?」である。細かく説明し、納得するまではずっとこれである。ちなみにこの目つきは「味見」と称したつまみ食いをするまで直ることはない。
「外でそういうことしないでくれよマジで…」
「………申し訳ありません」
「あ、ああ…これか。これが気になってたのか。俺殺されるのかと思った…これは牛筋の煮込みだ」
「へー、白味噌で煮込むんですか。初めて見た」
「あー、そりゃあたしのおばあちゃんが得意だった料理でね。どっかのバカタレが牛筋を1キロ発注のところを10キロも発注しやがったもんだからね。おばあちゃんから教わったレシピで作ってみたのさ」
「赤味噌とは違うこの甘い香りが何とも言えないなぁ…」
「ほら不知火ちゃん、食べてみな」
「感謝します」
「みんなも食べてごらん。赤味噌とは違うから口に合うかはわからないよ」
そう言うと竹美が玲司たちのために鍋から取ってくれる。食べてみてわかることだがしっかりと煮込まれ、くにゅくにゅと口の中で溶けるほど柔らかく煮込まれた筋。それとは別に硬すぎずにこりこりとした食感が味わえる筋。そして…甘辛いまったりとした白味噌の味、香りが口から鼻へ…そして脳へ行き渡り、幸福感が包み込む。
「うっまあああああ!!!!!」
「おいひいれすぅ!」
漣が叫び、潮も歓喜の声をあげる。鳥海は目を大きく開いて口をおさえているがこれはあまりのおいしさに驚いているものだった。
「おいしいです!これは革命ですよぉ!?」
「うん、これは初めて食ったな…竹おばさん、これちょっとレシピ教えてくれないかな。あとその牛筋買うわ」
「………!!!!司令!!!!!」
「あ、今度は睨むじゃなくて目を大きく見開いてイッちゃった目してる」
「おお…渡りに船とはこう言うことか…玲ちゃん、安くしとくから持って行ってくれ…」
「よかったねぇ。これだけは売り切りたいね。まあ、あたしの腕次第さね」
「いや、これうまいよ。定期的に唐揚げやコロッケみたいに出してみたら?」
「んやー。これ仕込みがめんどくさくてねぇ…えらいことになったから仕方なく作ったけど…まあ、たまにはいいかもねぇ」
「俺もこれ最初は白味噌!?って思ったんだ。けど食ってみたらうめえのなんの。酒の肴にゃちょうどいいんだぜ。ビールが進まぁ!」
「しょうがない。あんたの分、今夜残しといてやるよ」
「やたー!!!!さーらっしゃいらっしゃい!!!今日は合い挽き肉がお買い得だよー!!!!」
「現金なもんだねぇ…ふふ」
「んっんっ、司令。今からこれを帰って「いや、時間めっちゃかかるから無理」
「………」ギリッ
「おい今ギリッつったな?我慢しろっての!今日は唐揚げだから」
「では我慢します」
「切り替わり早えなおい!」
「んっふふふふふ♪ぬいはほーんとご飯のことになるところころおもしろいなぁ」
「ふふふ、だね♪」
もっきゅもっきゅと牛筋を食べる不知火。かつては忠実な人形とまで言われていた不知火がこうもユニークなキャラになるとは思っていなかった。とにかく不知火は無表情のようで割ところころ表情は変わるし抜けている。
そして…「すみません、追加「売りもんだからダメだっつってんだろうが」」と食べ物に目がない。駆逐艦一の大食いである。
「好き嫌い…ですか?出されたものは全て頂きますが。え?ピーマンはどうかと?では肉詰めを…え、違う?好きか嫌いかを聞いただけ?………ギロリ」
これである。ひっと恐ろしい目つきになったため、間宮が恐れ、茉莉も震えるほど食べ物のことになると恐ろしい。
戦闘は極めて優秀。駆逐艦で現在、頂点に立っているであろう朝潮や雪風にも引けを取らない。以前の様な完全破壊をしようとするクセは抜けきっていないが、だいぶマシになったほうである。このマシになったことが仇となってしまった話になるのは後日の事である。
「唐揚げ…と言うことはポテトもつきますでしょうか」
「たぶん間宮が作ってくれてんだろ」
「………」
「あ、笑ってる。これはもう待ちきれない様子だね、不知火ちゃん」
「ぬいぬいはほーんと、食べることに関してはすごいからネ~」
「漣も人のこと言えねえだろうが、2本目に手を出さない」
「ちっ、バレたか…」
「漣ちゃん?」
「う、うっしー?あっはは、冗談だってばさーもう。あははは」
「笑ってごまかしてもダメだよ?売り物なんだから、ね?ね?」
「ねえ、何かどっかの軽巡の真似かな?怖いんですけどー、ガクブル」
「ふふふ、賑やかでいいことですね」
「鳥海、お前も知るといいよ…この3人と行動するとマジで疲れるから…」
「え、ええ…」
そう、鳥海は知らないのだ。いや、すでにもう片鱗を見せているがこの3人はある意味皐月や文月達と歩くよりも疲れる。いかに皐月や文月たちがいい子なのかが理解できるだろう。
「ちぃ、こっちも負けてられない…おーい、鳥海ちゃん、こっちで古都華って言うイチゴはいかがかなー?」
「いちごですか!いただきます!」
「ちょ、それあんた贈答用…」
「あー…買います…」
「このバカタレ!しょうもない見栄張ってんじゃないよ!!!あ、あー鳥海ちゃん、いいんだよ、これは…さ、お食べお食べ」
「ありがとうございます。いただき…「いただきます」」
「うお!?」
「ひえっ!?」
いつの間にか不知火がいた。今そこで牛筋を睨んでいたはずでは…?
「不知火ちゃーん」
潮の漣と不知火が震えあがる笑み。通称「アブソリュート・ゼロ」が発動。それにより、不知火は恐ろしい殺気を感じ、手を止め、シュバッと後ろへ下がる。この「アブソリュート・ゼロ」は暴走しやすい漣、不知火を止めるためにいつの間にか身につけたスキルである。その笑みは周りを絶対零度…いや、本来ならば限界である氷点、マイナス273.15度を超えるかのような冷気を放つ…らしい。ちなみにこれは漣と不知火にしか効果がない。
「う、うっしー…」
「ふふふふふ、迷惑かけちゃダメ、だよ?」
「あ、はい」
「はい」
それを見た玲司はクックックッと笑っていた。本当にいいトリオになったもんだ、と思う。そして、やっぱり潮を連れてきて正解だった…と安堵した。
「おいひいれふ!」
鳥海はイチゴが大好きだ。大体スイーツはイチゴ系を好む。ちなみに摩耶もイチゴが好きでよく鳥海と食べている。商店街で徳三の八百屋に来たときは大体2人でイチゴを指差し、キラキラした目で「買って」と言う無言の合図を送り、それに玲司が従う、という流れだ。
「こっちは淡雪って言う白いイチゴさね。奈良の有名なイチゴで特上品だよ。仕入れたはいいけど人足が遠のいて売れ残っちゃっててねぇ…」
「梅さん、その古都華と淡雪、買うよ。鳥海、摩耶にも食べさせあげよう」
「はい!きっと摩耶も喜びます!ふふふ、摩耶に紅茶も淹れてもらって食べようかしら♪」
「うわー、鳥海さんぎゃんかわ!青葉さん、あれ映えッスよ、映え!」
「はいいいい!シャッターチャンスいただきいい!」
普段冷静沈着な鳥海が満面の笑みでイチゴを頬張る姿は貴重だ。ちなみにこの写真はお礼として茂の店に郵送で届けられ、丁寧に額に飾られ、艦娘も喜ぶ果物、あります!という謎の売り文句とともに飾られ、その後鳥海が顔を真っ赤にして外してください!と冷静さを欠いたシーンが見れて梅や竹美はほっこりしたとか。
ちなみに大本営ではこの鳥海の笑顔にときめいた男性職員が尊すぎて「目がぁああああ!目があああああ!」と直視できなかったとか。
源はと言うと「うおおおお、この包丁しゅごいのおおおおお!」とさきほど憲兵からもらった包丁の切れ味に感激してキャラ崩壊し、無駄に刺身を作りすぎてしまったとか。結局玲司がお買い上げしたとか。
天然ぶりに不知火も大層満足されたようで。他にもヒラメにサーモン、イカなど調子に乗って切りすぎた刺身たち。全て艦娘の胃袋に消えた(青葉含む)。
「うーむ…人情あふれる温かな商店街…これを見出しに…新鮮なお野菜、色のきれいな果物…美しいお肉に…鮮度抜群のお魚…これはいいですね!」
何だかんだで潮も口にしていたが「これおいひいれふね!」と満足してもらえたようだ。
「ふふふ、取っといてあげるから他も行っといで。やっぱりルーチェは外せないだろう?」
「ああ、そうだな。あそこはやっぱり必須だよな」
「……タルトはあるでしょうか」
「まず昼飯だな。忙しくなければいいけど」
「ほっほ、今は暇をしておりますよ」
「「「「「うおおおおお!!!????」」」」
いつの間にかいたルーチェのマスター。不知火が「この不知火が気配を感じ取れなかった…?」と狼狽し、漣が「やっぱりマスターはアサシン説、あると思います」と言う。
「ははは、私はしがない喫茶とバーのオーナーですよ。そう言えば元暗殺者と言う噂のメロンパン屋さんがこの間出張で来ていましたねぇ…きれいな売り子さんもおられました」
「くぅ、それはまた商店街に人気が出そうなやつなのにぃ!」
「はいはーい!メロンパン屋さんをお呼びかーい?」
「「「うお!?」」」
「今からルーチェに行くならあたしたちのメロンパンは不要だじょ~」
「おおおおい!?売り上げに貢献しろってんだ!」
噂をすれば何とやら、最近この商店街に出張でよくやって来ると言うメロンパン屋が現れたではないか。
「1つください。司令、ご安心を。お小遣いからちゃんと出します」
「うん、そうだな。お金を払うのは大事なことだな」
「毎度あり~!」
「ルーチェのケーキのほうがおいしいじょ~」
「裏切者ぉ!」
何か主人と売り子の女性がケンカをしているが…そんなことは気にせず不知火はメロンパンを頬張った…。その瞬間、3回キラ付けを行ったかのように不知火が輝きだした。
「おいしい…おいしい!!」
口の周りをパンまみれにしながらむさぼるかのように食べる不知火。それを見ていた潮も漣も我慢ができず、自分のバッグからお財布を出して買って食べるのだった。
「うっまああああ!!!幸せの宝箱やあああああ!!!!」
「俺が師匠にとった時のリアクションまんまじゃねえか」
「おいしいですね!」
「よっしゃああ!俺のメロンパンは最強じゃあ!」
「普通だじょ~」
「お黙り!」
「ほっほ、運が良かったですな。私もメロンパン、メニューに加えてみましょうかな?」
「マスター、勘弁してくださいよ!」
「ははは、冗談ですよ」
飛び入りのメロンパン屋。これまた貴重なかわいい駆逐艦の姿が撮れた。かりもふする潮たちの姿は大変人気になったとか。
「ぬいぬいかわいいのおおおおお!!!!!」
「潮ちゃん…うっ…」
「漣ちゃん…ああ、養いてえ…」
「やだ…うちの職員たち、ロリコン…?」
「「「この子達は合法」」」
「駆逐艦に欲情する職員はどこのどいつじゃあああ!!!!許さんカンナアアアアアア!!!!」
「「「ぎゃあああああああ!!!!!!」」」
「隊長落ち着いてください!」
………
メロンパンを食べた駆逐艦3人、鳥海と共にルーチェに入り、昼食をとる。
「漣はナポリタン大盛だおー!」
「このカレーピラフを」
「私は…あっさりシーザーサラダとイチゴタルトで…」
「私もダージリンとイチゴのミルフィーユをお願いします」
「えー、うっしーに鳥海さん、それだけで足るの?漣は腹ペコであります!」
それに不知火もうんうん、とうなずいている。食い意地だけはすごいな…どこかの大食い空母を思い出すが…たぶん夕飯で後悔することになるだろうな、と玲司はとめるのはやめておいた。
玲司もサラダだけにしておいた。マスターも玲司、潮、鳥海の理由は理解していた。いろいろ食べているわけだし、軽めにしておきたいのだろう。夕飯を楽しみにしている感じなのだろう。はてさて…漣さんと不知火さんは大丈夫なのだろうか…と言いつつも多めに盛っているあたり、意地が悪いと言うかお茶目と言うか。
「はい、お待ちどうさまでした。ごゆっくりどうぞ」
「わっほい!いっただっきまーす!!」
「いただきます」
うまー!と言いつつガツガツたいらげていく。不知火も黙々と大盛のピラフを食べていく。牛筋のどて煮、イチゴ、メロンパン…結構食べているはずなのに…しかし玲司は黙っている。今日はもう1日青葉が泊まることは確定し、そのことは間宮に伝えてある。そして漣たちに黙っているが、たぶん霰や雪風、静かにだが響たちが今頃食堂でわくわくお手伝いでもしているのではないだろうか。あとそれを放っておけない北上。
玲司もいたずら心が働いているために、今日の晩ご飯の事は伝えていない。まあ、あれだけ衝突して大騒ぎになった漣と不知火がおいしそうに話をしながら食べているを見ると感慨もひとしおあるな、と思う。胃に穴が空くんじゃないかと言うくらい心配していた潮もそうだ。このなかよしトリオは本当によい雰囲気になったと思う。
「2人とも…すごいですね…ふむふむ、この商店街の癒しと格別のおいしい料理を提供するお店…これも新聞に載せちゃいましょう」
そうして豪快にラーメンをすするかのごとくパスタを食べる漣と頬をリスのように膨らませて食べる不知火、優雅にお茶を飲む鳥海の写真が撮られた。
「青葉さん、私までですか!?」
「優雅な姿は映えますよ!かわいい摩耶さんと対照的でとても優雅です!」
「あー、確かにな。高雄姉さんも優雅ってイメージだし。愛宕も普段はぱんぱかぱーんとか元気だったけど、お茶をたしなむときは優雅だったなぁ。いや、摩耶もだけどな?ま、あのアイスをほっぺにつけて食べたりするところがうちの摩耶のかわいいところだ」
「おおっと、これはメモです」
「やめろ、俺がそれを言ったって言ったら砲撃しに来るかもしれねえから」
「む、むう…」
「摩耶なら本当に体中真っ赤にして執務室に乱入してきそうですね…」
「結局怒られるの青葉だけになりません!?」
「安心しろ、骨は拾ってやるから」
「ひどい!青葉と司令の仲じゃないですか!」
「こういう仲だから骨は拾ってやるって言ってんの」
「青葉さん、生きてください…」
「鳥海さんまでー!?」
「んぐっ、青葉さんがんばえー」
「頑張ってください」
「いや、そんなもっしゃもっしゃ食べながらじゃ適当ですよね!?」
ツッコミを入れつつも撮影はやめないあたり、ジャーナリストを極めてるなと思う。鳥海の非難をまるで聞いちゃいねえ、と苦笑いした。
鳥海の優雅な姿は写真立てを買って仕事に疲れた時に見てやる気を出す男性職員が後を絶たなかったとか。
「私服の鳥海さん尊すぎだわ。地球は青かったわ」
「臨死体験してて草」
「ハムスターみたいな不知火…ハムぬい…やべえよやべえよ…」
「漣ちゃんはいつも通りだなぁ」
などなど好評だったとか。
「げふー、お腹一杯ですよー」
「はい、よく食べました」
「漣、お前も女の子なんだからそう言う行為はだな…」
「お?出ましたぞ、ご主人様のお前も女の子なんだからー。そうやって無意識に北上さんをオトしたの、そこにしびれる、あこがれるぅ!」
「何言ってんだお前」
「いやいやー、あの何しても動じない北上さんがご主人様の女の子なんだから―って言葉であーうー言いながら顔まーっかにして悶えてたんですよー。かわいかったな~、にひひひひ♪」
「北上に言ったら何されるかな、キヒヒ」
「んお、その笑い方、鹿屋のあの人の笑い方にそっくりですね」
グサッと刺さる言葉だった。うそ…だろ?俺が…あの人と…そっくり?
そう思っているとキヒヒヒヒとあの愉悦に浸っているであろう憎たらしい提督の顔が思い浮かんだ。腹が立ってきた。
「漣、お前ここの勘定、お前だけ自腹な」
「そういうところもそっくりですなぁ。んっふっふー♪」
「………マスター、お勘定…」
「玲司君、漣君は抜群に頭がキレます。こういう喧嘩では勝てませんよ…私も嫌というほど味わっておりますので」
「く、くそう…」
「にひひひ♪」
憎らし気に笑っている。だが今何かをやったり言ったりするとまた刺さる何かをやられそうだ。
「うっひゃあああ!?」
そう考えていると漣が奇声をあげた。
「うおお!?びっくりした!?何だよいきなり!」
「司令、漣さんの弱点は背筋です。こうして…」
つつーと背中をなでるとうっひゃあああああ!?とまた奇声をあげた。
「いや、それセクハラになるからな…?」
「あと弱点はふとももの内側をこうして」
「あひいいい!!」
「白昼堂々やめろっつーの!!!」
「あ、あと耳も弱いよね」
「うっしー!?裏切ったなぁ!?」
俺がやったら憲兵案件だ。内臓をスムージーにしまーすとか怖い憲兵が来そうでやばい。あとスリルスリルとか南無阿弥陀仏とか…うん、やめよう、忘れよう。四宮さんならまだしもあのやべー連中が来たら命がいくつあっても足りない気がする。
「俺がそれやったら憲兵に捕まるから…ってかなんでそんな弱点を知ってるんだ」
「そりゃあ3人でくんずほぐれぶべら!!!」
青葉が言いきる前に玲司の高速チョップが脳天に刺さった。
「お前ってやつはなぁ!!!公衆の面前でなぁ!!!!そういういかがわしいことをだなぁ!!!!!」
「痛い!痛いですぅ!痛いですぅ!!公衆の面前で女の子に暴力を振るうのはありなんですか!?」
「超法規的措置だ!バカめと言ってやる!!!!」
「高雄さんが伝染ってますよぉ!?」
「………ずるい」
「あいって!!!!なんだ鳥海!?無言で俺にチョップして何だ!?俺が何かしたか!?」
「何でも!ありません!この!バカめ!と!言って!さしあげます!!!」
「ぎゃああああああ!!!!頭蓋骨が陥没するうううう!!!」
「なーにやってんですか、ご主人様たちは…」
「ほっほっほっ、仲良きことは美しきことですな」
「ま、まとめていないで鳥海さんを止めてくださいいいいい!!」
最後の良心、潮が鳥海を止めるまでルーチェは修羅場だった。周りのお客さんはいつものことだね、と笑っていた。いや、いつものことじゃない。鳥海が大変なことになっているのに。頬をぷくーっと膨らませて割と本気めにチョップを見舞っている。鳥海のチョップで玲司がやばい。
………
「ひどいめにあった…」
「…ふん」
「珍しく鳥海さんが大変でしたぁ…提督、ごめんなさい…」
「い、いや、潮は悪くないよ…青葉は反省して、どうぞ」
「何で青葉が!?」
「不知火に落ち度はありません」
「あたしもでーす」
「お前らが原因だからな!?」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら最後のお決まり、松子の店へ寄ることになった。
「ちわー、松子さんいるー?潮が服欲しいって言うんだけどー」
「ナマステー。漣ちゃんたちもいるおー」
「なんでナマステなの…」
「おお!?ここが噂のザギンからもセレブがやってきて大ゲンカするブティックですね!?」
「何だそりゃ」
横須賀のひなびた商店街に流行に囚われず、その女性に合った最高の服や下着がいつでも用意されていると言う話が情報雑誌に載ったらしい。ああ、と玲司は思い出した。それで余計なことしやがって、と松子さん怒ってたっけ。
超高級な銀座通いのセレブもやってくるらしいのだが、松子が「あんたに着せる服はないね。服が泣くってもんだよ」と一刀両断。それがきっかけで店の中で怒鳴り合いのケンカになったらしい。二度と来ないしお友達にも紹介しませんわ!と言ったところ「おお、おお!二度と来んじゃないよ!!銀座のご立派なブティックの服でも着てやがれ!!!」と啖呵を切り、本当にセレブからはネットで散々こき下ろされたらしい。
しかし、それとは裏腹に地元の人やわざわざ少しでもおしゃれになりたいと地方から出てきた女の子に対してはとても真摯に下着から何から考えてコーディネートし「あんた、いい素材だね。言い方は悪いけど本当にそう思うよ。自分に自信を持ちな。そしたらもっと美人になれる。輝ける。またおいで」と言って帰したそうだ。そのことがまたネットで大きな話題となり「わだすももっときれいになれるだか!?」とさらに東北からやってくる女の子まで来たそうだ。胸とお尻をめちゃくちゃ触られるので気を付けてください!という所まできっちり書かれていたらしい。
「あれ?松子さん留守か?店開けっぱで…」
いや、絶対いる。玲司は気配を研ぎ澄ませ、彼女の居場所を突き止めようとした…。
「ひゃあああああ!!!」
刹那、青葉が叫んだ。
「ほうほう。活発そうな体をしているね。それに合わせてキュロットかい…いいセンスだね。うーん…足腰をよく鍛えているね。張りのあるいいケツだ。いい子供が産めるね。ああ、艦娘だったら無理かね。それよりかうひひひひえへあへあへへへ…鳥海ちゃんじゃないかぁ…今日はあたしが見繕ったセーターにミニスカート…ふひひ、このタイツがいいねぇ…ひひひ、さささ、もっと近くで見せて…」
「当て身」
そう言うと玲司が冷静に松子を沈めた。艦娘となると気配すら川内のようになるんだからなこの人は。起きてくれ、と言おうと思った時だった。
「おお、潮ちゃんか…相変わらずこの…こう、ヒヒヒ」
潮の胸を触っていた。鳥海と玲司と漣は脱兎のごとく店から逃げ出た。
「き…」
「う、潮さん!あわわわ、こ、これは憲兵を呼ぶべき…」
きゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
潮の必殺技の1つ。「アブソリュート・ゼロ」と並ぶ「バインドボイス」…松子の店のガラスにひびが入り、外へ出た玲司達でさえ耳をふさいでも鼓膜が破れるんじゃないかと思うほどの叫び。ちなみにこれを聞いた響は卒倒する。いや、響でなくとも間近で聞けば誰もが卒倒する。
………
「何の騒ぎかと思えばまたセクハラかい。松子さん、あんた本当に羨ましくないねぇ。いい加減逮捕すべきだねぇ」
「ま、待っとくれ…こ、これは、あ、あたしの…さ、最高の…寸法を測る…グフッ…方法で…」
「これは通報じゃないからカウントしないけど、17回の通報があったねぇ。そろそろいい加減にしてほしいねぇ」
「ぐぬぬ…」
「提督さんだね。艦娘を連れて来てくれるのは嬉しいし羨ましいねぇ。ただ、このセクハラ店主が艦娘が来ると頭がおかしくなると梅さんから聞いていてね。ほどほどにしてほしいねぇ」
「申し訳ありません…(なんで俺が…)」
「まあ、艦娘が来て交流を図ってくれることは嬉しいねぇ。今後とも一つよろしく頼むよ」
恐ろしい雰囲気を纏った憲兵がニタリと笑うと帰って行った。
「と、言うわけだ。マジで逮捕されても知らねえぞ。おーい、不知火、青葉、帰ってこーい」
「グスグス…ふぇええん…提督…怖かったですぅ…」
「よしよし、潮…すまんかった。俺がもっとしっかりしてればな…」
「し、下着…は…潮ちゃん…用は…これだ…持っていき…な…ぐふっ…」
そう言って松子は倒れた。血?でおっぱいと書いて気を失った。なんでおっぱいなんだよ。
「うしおっぱい…さい、こう…」
「よし、あたしがトドメを刺しておくから玲ちゃんは竹から牛筋受け取って帰んな…ったくこのバカはまた…あたた…耳が痛いよ…」
結局ゆっくり松子の店にいることはできず、竹美から牛筋を。徳三からイチゴの「古都華」、松子が迷惑をかけたからと「あすかルビー」と「淡雪」までもらって帰ることにした。と、その前にまだ寄る所がある。
「お待ちしてましたよ。レンズはちょうど合うものがありましたので直しておきました。あとところどころ使い込まれて傷んでいたところも修繕できるところはやっておきました」
「おおおおお!!青葉のマイキャーメラ!!!おかえり!!!ああ…おかえり!!」
新品のようにきれいになった青葉のカメラ。ようし、これでまた取材ができますよぉ!と意気込んでいた。何と言うか…この商店街はすさまじい職人が多いな…と舌を巻くものである。
いろいろあってドッと疲れた…早く帰ろう…バインドボイスで茫然としている不知火は車に乗っても車が揺れるたび、頭がガクガクと揺れ、失神したままであった。
………
「ただいまー。お、いい匂いがするなぁ」
「………」
「おかえりなさい提督…ほら、神通さん…油が跳ねて危ないですよ!もうできますから!」
「………」
「そんな悲しそうな目をしてもダメです!さ、離れてください!」
「………」
(´・ω・`)←こんな顔をして椅子に腰かける神通。
「きゃあ!し、不知火ちゃん!神通さんと一緒で向こうで座って待ってなさい!」
(´・ω・`)←不知火もこんな顔をして神通の隣に座って待つ。というかいつの間に目を覚ましたんだお前は。
………
「それじゃあ手を合わせて」
「いただきます(っぽい!)(なのです)!」
「わーい!!!唐揚げだー!これもーらい!」
「それは許せませんよ、姉さん」
「げっ、じ、神通!?」
「それは私が目をつけていた唐揚げです。奪うことは許しません」
「あ、はい」
「こらー、そこケンカすんなー」
「あれ?龍驤姉さん、お酒は飲まないの?」
「……うん」
「あー、兄さんの一件であれかー」
「じゃ、じゃかあしい!ちゃうわい!ふん!」
「あーあ、私もしーらないっと」
「おうっ!島風もよくわからないけどお兄ちゃんとケンカしたんだったらりゅーじょーお姉ちゃんが悪いに決まってるからしーらない!}
「島風ぇ!?」
「もー、けんかはめーっだよ!」
「か、霞ぃ…はいい…」
わいわいと始まる晩ご飯の団らん。
「ぐぐぐ…」
「………不知火は…これしきでは…」
「ほれ見ろ。昼間ガツガツ食うからだよ」
「ま、間宮さんの唐揚げがぁ…」
「どうしたんですか、不知火姉さん!食べないなら雪風が食べちゃいます!あむっ!」
「雪風!……許しませんよ」
「べーっ」
「ふふ…不知火を怒らせたわね…」
「うぐぐ…これ以上食べたら…出る…」
「あちゃー、それはざーんねん。んーっ!おーいしっ!」
「はぐっはぐっ!唐揚げは最高っぽいー!」
「うん、おいしいね、村雨、夕立」
「「ねーっ」」
「きー!こうなったら食べて…う、うっぷ…」
「おいいいいい!!!無茶すんな!」
「まったく、騒がしいわね…もうちょっと静かに食べれないのかしら…」
「満潮、それは6個目ですよ。荒潮の分がなくなります」
「あらあら、満潮姉さんったら欲張りねぇ」
「はっ!?」
「んー!おいひい!」
「大潮!食べながらしゃべらない!」
「んーーーー!!これは絶品ですねぇ!おっと、飯テロ用に一枚…これを…豊川さんに…ほいっと、んなぁ!?大吟醸飲んでる!く、くそー!」
「何を争ってんだよ青葉は…」
「聞いてくださいよ司令官!実はですね!」
こうして今日も横須賀の夕食は騒がしく…それでもにこやかに進むのであった。ちなみに龍驤はまだ玲司にごめんなさいが言えておらず、今日一日「うちはもうおしまいや…」とさめざめ泣いていたらしいが、明石に軽くスルーされ、余計に鬱になっているとか、いないとか。
(やっぱり、司令官の居る場所はこうでないといけませんね!)
青葉は甘えてきた雪風に唐揚げをあーんして食べさせてあげている所を写真に納めてにっこりと笑った。
わいわいとした横須賀の青葉の取材、2日目でした。
いろいろとはっちゃけすぎた気がしますがそれはそれでヨシ!(ぉぃ
残念ながら紫亜と茉莉を登場させることができませんでしたので近々また彼女たちのお話を書きたいですね。零を交えて。
次回はあまりスポットライトが当たっていない大湊警備府、一宮提督の日常生活をお送りしようかと思います。まだほんわか回です。
近々、提督達を震撼させる事件が起きる話を書く予定です。
次回もお待ちいただけますと幸いです。
それでは、また。