提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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一宮提督の話を書くと言ったな。あれは嘘だ。

すみません、突如思いついたのでこちらの話を書こうと思います。
突然「提督やれ」と言われて殺された烏丸提督のリンガ泊地を引き継いだ熱血漢提督、五ヶ丘提督の話を書いていこうと思います。

いまだパニックが収まらないリンガ泊地ですが彼はうまく立て直せるのでしょうか…?


第二百二十四話

リンガ泊地。かつては大府提督と無理やり協力関係を組まされ、洗脳装置を開発させられ(自発的に自分も洗脳させておいた方が楽でやりやすいから作ったのだが、最後には罪悪感があったらしい)、最後は大府提督との関係を切ろうとしたことから烏丸提督は殺され、空席になってしまった。

 

しかし、艦娘はまだそこにいるし、ブルネイ泊地…そして大府提督がいるタウイタウイ泊地だけでは無理があると言うことで、妖精が見え、艦娘からも妙に慕われる男、五ヶ丘 二郎(いつつがおか じろう)が刈谷提督が信頼できる男としてリンガ泊地に着任させた。

 

洗脳装置を彼がスレッジハンマーと己のパワーのみで破壊し、洗脳を解いたわけなのだが…。

 

「あ、なあ、お前確か藤波…「ひ、ひいいいいい!!!!!!」」

 

「なあ、お前浜波「ぴ、ぴぃ!!」」

 

「はやな「きゃああああ!!!!」」

 

出くわす艦娘全て、彼が声をかけただけで怯えて逃げる有様。さすがにこれはショックを隠しえない。

 

「三条君の立て直しの話を刈谷先輩から話を聞いてたけど…さすがにそうはうまくいかねえよなぁ…俺コックでもないただの事務員だったわけでさぁ…」

 

「いや、コックは関係ねえと思いますですお、ご主人様」

 

「参ったねぇ~、これじゃあリンガ立て直しどころの話じゃないよ?どうすんのさ、提督?」

 

「俺が聞きてえよ…刈谷先輩も『知るかよ。テメエの所の事はテメエで面倒見てどうにかしろ』だってよ」

 

「それってひどくない?こっちゃあ真剣に困ってんのにさー」

 

「そう言う人なんだよ…悪い意味でじゃねえぞ。これを自分で解決させなきゃこの先やっていくなんざ無理だぞって言いてえんだろうさ」

 

「せめてヒントくらいくれてもいいじゃないっすか!ぷんぷん!」

 

「誰かは必ず味方になってくれる奴がいる。そいつがどうしても見つからなかったら連絡しろだとよ」

 

「全滅ッスねー」

 

「それを言うなよ漣…はぁああ…やべえよなぁ」

 

八方塞がり。声をかけた艦娘は戦艦から駆逐艦まで軒並み逃げられるか、それ以上近づくと容赦しないぞと言う威嚇の目で見られた。いや、艤装をつけていない艦娘に関しては殴り合いになっても勝てるだろうが、女の子を…ましてや外道でも何でもない娘を殴るなんてとんでもない。

 

「そりゃあ昔はクラスメイトの女子をいじめて自殺寸前まで追い込んだ女をぶん殴って顔を陥没させたことはあるけどな」

 

「………ご主人様の正義感ぶりはえげつないっていうかー…」

 

「外道はぶっ飛ばす。それだけだ」

 

「で、その女子生徒はどうなったのさ?」

 

「入院。手術までして一応何とかなったみたいだな。虐められてた方の娘とは今でも連絡を取り合ってるよ。リンガに行くってなった時、なんか目が怖かったけど」

 

「あちゃー、ヤンデレかぁ」

 

「何だよそれ…」

 

「あー、提督っていまいくつだっけ?」

 

「もうすぐ36になるな」

 

「帰ったら外堀埋められてそうだね」

 

「どういうことだ?」

 

「知らない方が身のためってこともあるんですヨ、ご主人様」

 

ポン…と肩を叩かれた。鈍感だなぁ…と隼鷹はため息をついている。加古はまったく興味ないのか大あくびをして寝ようとしていた。

 

「と、とにかくだ。艦娘に声をかけて仲間になってくれそうな娘を探さなきゃならねえ。協力してくれ…このままじゃ俺、刈谷さんに何されるかわからねえ」

 

街中でどんなチンピラや半グレに絡まれても怯えもしない彼が恐れる刈谷提督。本当に噂以上にこわーい人なんだろうなぁ…と漣たちは思った。

 

艦娘は沈めたりはしていないようで結構な数の艦娘が在籍している。特に夕雲型は顕現している艦娘全員がいるくらいである。大本営で「もーっと甘えてもいいんですよー?」と進んで仕事を自分のだけ手伝ってくれた夕雲も…ここでは怯えられて話にならない。それがちょっと寂しかった。

 

夕雲型は全滅だった。巡洋艦も空母も戦艦も潜水艦もダメ。おいおい、これもうどうしようもねえ状態じゃねえかよ…。

 

「司令官、お話をしてくださりそうな方がいらっしゃいました」

 

「はあ…白雪もダメだったか…ん?」

 

「いえ、ですから…お話をしてくださりそうな方がいらっしゃいましたよと」

 

「マジか!?で、それは誰なんだ!?」

 

「司令官、大声を出すと怯えてしまいます。冷静に、決して感情的にならないようにしてください。いいですか?」

 

「お、おう…」

 

漣曰く、頼れる委員長と言われる駆逐艦白雪。彼女も五ヶ丘提督と共に本土からついてきた艦娘だ。冷静沈着、頭脳明晰。この本土メンバーの中では一番頭がよく、冷静な判断ができる艦娘だ。

 

とりあえず彼はみんなに話をできそうな艦娘を手あたり次第いないか探してほしいと言われていた。しかし全滅。

 

五ヶ丘提督も当たってみたが心が折れそうになる対応ばかりだった。特に提督に関しては本当に悲鳴をあげられたりブルブル震えられたりと散々であった。

 

「で、その艦娘ってのは誰なんだ?」

 

「はい。どうぞ、衣笠さん」

 

執務室に入ってきたのは重巡衣笠。おそるおそる…し、失礼します…と明るい雰囲気は微塵もない。白雪の服の裾を掴んでいるくらい怯えている。

 

「や、やあ衣笠。来てくれてありがとう…ござ…あー…いや、ありがとう」

 

「ぶふっ…提督、そりゃかしこまりすぎだっつーの」

 

「ご主人様めっちゃ緊張してますねぇwwwww」

 

「まー提督はそういうとこ?結構ビビりだもんなぁ、えへっへっへ」

 

「隼鷹さん、加古さん、漣さん?」

 

「「「アッハイ」」」

 

ジロリと白雪が3人に非難の目を向けるとピキッと背筋を伸ばし、冷や汗を垂らしていた。白雪はこのメンバーのボス的存在である。なぜなら鬼怒も含めて白雪以外はヒャッハー勢と寝るだけのメンバーだからだ。私がしっかりまとめなければ司令官にご迷惑が…と胃薬がいりそうなくらいまとまりがないのだ。

 

「衣笠さん、まずは司令官にお話をしてくださると言うご協力、本当に感謝いたします。他の皆さんは絶対に嫌だ…何をされるかわからないとお断りされてしまって…」

 

白雪が進行を務めてくれる。ああ…白雪がいてくれなきゃマジで終わってた…と心の中で手を合わせて感謝した。

 

「う、ううん…私見てたんだ、提督があの機械を壊してるところ」

 

「あ」

 

「え?ってことはその時の記憶はあるのか?」

 

「は、はい…と言うか、あの人が洗脳?をしてから今までの記憶もずっと…あります」

 

「ほへ?どういうこと?漣ちゃんわかんない」

 

「あたしもさっぱりさねー…」

 

「Zzz…」

 

「おい、加古…寝るなら自分の部屋で寝ろ…」

 

「え、ええと…」

 

「ゴホン!おそらくですが、あの機械は完全に洗脳できていたわけではなく、体や思考などは操れても、記憶までは完全に掌握できていなかった、と言うことでしょう。ですから、衣笠さんが着任し、洗脳されてから今まで何をして何をされてきたか、と言うことは覚えていらっしゃると言うことです。お間違いないでしょうか?」

 

「そ、そう…そうなる、ね…」

 

「さ、さすが白雪…頼りになるな…」

 

「司令官たるもの、これくらいは把握していただかないと困ります」

 

提督にも怖じ気づくことなく物を言う白雪。いや、まあ彼女がいなければおそらくは刈谷提督に泣きつき、ボロクソに言われて心が折れるはめになっているのではないだろうか。

 

片や衣笠はおろおろとするばかり。しかし、前の提督の様な恐ろしい人ではなさそうだ。守ってあげたくなるような…頼りないような…そんな印象を受ける。

 

「あ、あの…お話しても…いい、ですか?」

 

「あ、も、申し訳ありません…よろしいですね、司令官?」

 

「お、おお。聞かせてくれ」

 

そうして語りだした烏丸提督の話。話では反省し、あの装置を破壊して1からやり直して艦隊運用をしていくと大高提督にも相談し、殺されなければ年が明けてからの出頭にも応じ、反省して心を入れ替えるので許してほしい、とまで言っていたようだが…。

 

「戦果が思うようにいかなければ暴力を振るうのは当たり前でした…特に夕雲型の子への当たりが強くて…よく、暴力を振るわれていました。外から来た…特に提督にひどく怯えるのは仕方がないかなって…」

 

その言葉を聞いていた五ヶ丘提督はブルブルと震えていた。そして…こめかみにものすごい青筋が浮いていた。

 

「あ、やっば。ご主人様、冷静に…冷静にですよ…」

 

「司令官、ダメですよ…」

 

何かまずいことを言ってしまったのだろうか…と衣笠は思った。どうみても怒っている。

 

………

 

なんでこないな簡単な任務もこなされへんのや!?ほんまに役立たずやなぁ!

 

ほんま、夕雲型はええ仕事しまんなぁ。アホちゃうのん?なんか言うてみいや!このボケェ!

 

クソッタレがァ!!お前らのせいでわいが怒られたやないか!!轟沈ゼロでやってるやないか!戦果がちょっと低いくらいで!わいのせいやない!お前らがやる気ないからや!!!!

 

………

 

聞いていた白雪たちは絶句。加古も半分寝ぼけていたが目が完全に覚めてしまったらしい。と、言うか提督の雰囲気のやばさに目が覚めたと言うか…。

 

「提督、ダメだかなんね!怒鳴ったら衣笠が……ちょ、提督!?」

 

提督のズボンが赤く染まっている。よく見ると拳を握りしめ、そこから血が垂れていたのだ。怒りをぶちまけるのを必死でこらえている。俯いた顔を覗き込んだ加古は提督が必死に歯を食いしばっているのを見た。その形相は鬼。

 

「………にが………やろ……………けんな」

 

「提督…」

 

「あ、あの…衣笠…何か提督にまずいこと…」

 

「違うよ。提督は今あんたが言ったことに対してめっちゃ怒ってるのさ」

 

「え、あう、ご、ごめんなさい…い、いえ…申し訳ありません」

 

「ちげーよ。烏丸提督。あんたの前の提督に腹を立ててると言うか…怒髪天を衝いてるって言うかだねぇ。あたしが要約してやんよ。何が反省して艦隊運用を1から見直してやり直すだ、ふざけんなって言ってんのさ」

 

「え?どういう…」

 

「前のここの人は提督とも言いたくないですなぁ。やり直したところでまーた結局暴力と暴言じゃないかなぁ?ブラックですネ、かーっ、メシマズ!いなくなってよかったんじゃないかにゃ?」

 

「言いすぎですよ、漣ちゃん…と言いたいところですが…これはあまりにも…」

 

「提督は正義感の塊だかんねぇ。艦娘にひどいことしてる人間に関しては容赦ないのさ。たぶん、今ここに烏丸提督がいたら、歯ぁ食いしばれって言ってフルスイングでぶん殴ってるだろうねー」

 

「え、えっと…私達がされてきたことに対して怒ってるってこと…?」

 

「そうそう。あ、ちょっと待ってね。提督、手、そろそろやばいから見せてくれる?うわー、めっちゃ切れてんじゃんか」

 

「救急箱、ありました。消毒してガーゼを当てて包帯を巻いておきましょう」

 

「さっすが白雪!頼りになるー!」

 

ずっと俯いたままだった五ヶ丘提督であったが加古と白雪の介抱が終わると衣笠に向かって土下座をした。

 

「衣笠!すまねえ!俺ら…俺ら人間のせいでお前らはいっつも苦労ばっかり…!!!本当にすまねえ!許せねえってんなら俺を気のすむまでここの泊地の艦娘全員で殴ってくれて構わねえ!!!さあ、やってくれ!」

 

「ええ!?ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!!!」

 

「提督さぁ、そんなんしたって解決になんねえってー…」

 

「おーい、提督ぅ!話を聞いてくれる娘連れて…って何してんの!?」

 

「ど、土下座…?」

 

鬼怒が駆逐艦、霞を連れてきたのだが、開けてびっくり…提督が衣笠に向けて土下座をしているではないか。霞もその行為に目をパチクリさせて何が何だかわからない…と言う状況で見ていた。

 

………

 

「はぁ…そりゃこのあたしもおにおこ!反省する気ないっしょ!」

 

「……今の話を聞いてたら…鬼怒さんの言う通りね。けどね、あたし達が司令官を気が済むまで殴ったところで、あたし達のされたことは戻らないのよ。それに、あんたが悪いわけじゃないでしょ。あたしはあいつの死体を運んだ役だったけど…正直今思い返しても気持ち悪いだけよ。あいつだけね。あと、あいつと一緒にあの変な機械を作ったここによくくるヤツもね」

 

「大府提督の事ですね。司令官、ここは烏丸提督の事を司令長官と刈谷司令官に報告すべきだと思います」

 

「…ああ」

 

「ちょっと!あんたが悪いわけじゃないんだからシャンとしなさいな!これからはあんたがここの司令官なんでしょ!?だったらビシッとしてもらわないと困るのよ!夕雲たちにはあたしから言っておいてあげるけど、信用を得るんだったらあんたの行動をしっかりと見てもらいなさい!そうしないと、ここの娘たちはいつまでもあんたに怯えたままよ!!」

 

へこんでいる五ヶ丘提督に対して臆することもなく物を言う霞。これこそ霞の強さだと思う。実力は改二になっているほど。夕雲たちも高い練度でいるが、烏丸提督がもらえる勲章が少なかったと言うこともあり、改二になったいる艦娘は少ない。

 

夕雲、巻雲、長波くらいだろうか。本当に自分のせいでチカラ不足である夕雲型を目の敵にしていたのだ。これまた許されることではない。しかし、これを怒ってもまた霞に怒られるだけだろう。

 

「……お、おお…そう、だな…なあ、霞」

 

「何よ?」

 

「一発引っぱたいてくれねえか?」

 

「はあ?また今までことを清算するため?情けないったら!そう言うのはもういいって言ってるでしょ!」

 

「違うんだ。霞の言う通り、うじうじしてられねえなって。だから気合いをお前に入れてほしくてな」

 

「は、はあ…?あんた…」

 

「頼む、それで切り替えれるから!」

 

「か、霞ちゃん…」

 

「ふん!そういうこと…いいわ、あんたに気合いを入れてあげる」

 

こういう時霞はやっぱり気が強く、物怖じしない。そして、少しだけ五ヶ丘提督を信頼した節がある。そうでなければ…

 

バッシーン!!!!

 

「いってえええ!!!!!」

 

本気で頬に紅葉ができるくらいのビンタなんてできないだろう。

 

「おっほー、いい音がしましたなぁwwwww」

 

「ひゃっはー!あたしも一発お見舞いだぁ!」

 

バッシーン!!!

 

「ぐえっ!?」

 

「隼鷹さん!?」

 

「……ググググ…霞のより…効いた…」

 

「あたしのはへなちょこって言いたいわけ!?もう一回頬出しなさい!もう一発打ってあげるわ!!」

 

「霞ちゃん落ち着いて―!!!!」

 

「漣ちゃんも!漣ちゃんもいきますよご主人様ー!」

 

「………」

 

「「「「ぴっ!?」」」」

 

「漣ちゃん?悪ノリはいけませんよ…?隼鷹さん…なんで打ったんですか?」

 

「しら、白雪…様…」

 

「何ですか?どうして司令官を隼鷹さんも打ったのか説明願えますか?」

 

「いや、あの、あのだなぁ…」

 

「あたしちょーっと席外すねー…漣ちゃん、隼鷹さん、ごゆっくりー!」

 

「あー…あたしもちょっと走り込みしてくっかなー。衣笠、霞、逃げた方がいいよー」

 

「え?え?か、霞ちゃん、いこっか…」

 

(……やばすぎて冷や汗が止まらないわ…)

 

「え、ええ…」

 

「さ、司令官はこちらへ。では、お話をお伺いできますか?」

 

「い、いやぁ、そのぉ…へへ、勢いっつーか…」

 

「そうなのですか。ふふふ、隼鷹さんはいつもそうですものね」

 

恐怖の白雪のお説教タイム。五ヶ丘提督の初期艦娘のヒエラルキーは駆逐艦でありながら白雪が頂点である。その次が働き者の鬼怒→寝てばかりいるけどやることはやる加古→|越えられない壁|→お調子者の漣=酒飲みで悪ノリが過ぎる隼鷹となっている。

 

この後懇々と怒られた漣と隼鷹であった。この時の白雪の笑顔は正直提督でもビビるほどのものであると言う。

 

………

 

それから数日、霞や衣笠の必死の説得によって執務室にやってきて挨拶をしてくれる艦娘が増えた。夕雲型、その中でも特に怖がりの高波や浜波、末妹と言うことで当たりがひどかった清霜など、まだまだ問題は山積みではあったが少しずつでもこのわだかまりが解けていくことを願うばかりだった。

 

そんな中で起きた最悪の出来事がある。もっとも、これがリンガの艦娘の信頼を大きく得ることになる出来事なのだが。

 

 

ある日、在籍している艦娘のリストを白雪と共にまとめていた五ヶ丘提督のもとに血相を変えて霞が飛んできたのだ。

 

「ど、どうしたんだよ霞。そんなに慌てて。深海棲艦でも攻めてきたのか?」

 

「違うわよ!あいつよ!!!あいつが来たの!!!!前のクズと一緒にあたし達を洗脳する機械を作ったあいつ!!!」

 

「……なんだって!?」

 

それは紛れもなく…大府提督。刈谷さんからくれぐれも気をつけろと言われている男だ。わざわざタウイタウイ泊地からやってきたのか…?何のためだ?

 

「霞、みんな自室に入るように指示を出せ!いいか、帰るまで絶対に外へ出ないように言ってくれ!」

 

「わ、わかったわ!あんたはどうするのよ…?」

 

「俺に話があんだろ。だったら話を聞くまでさ」

 

「ご主人様、漣たちはここに残りますよ」

 

「はい、司令官の身に何かあった方が問題ですので」

 

「…わかったよ」

 

「心配すんなって。あたしらが何があっても守るからさ」

 

「鬼怒、お前も行ってくれ」

 

「わかったよ!提督…気を付けてね…」

 

「おう。白雪、大府提督をここへ案内してくれ」

 

「その必要はありません」

 

「な、あ…」

 

開け放たれっぱなしのドアから気配もないまま、執務室に入室する大府提督。その姿を見た霞は腰を抜かした。強がってはいるが、彼女は烏丸提督の死体を見ているし、この男が遠洋へボートを曳航させ、深海棲艦に爆破させた張本人であることも知っている。

 

何よりも…その異様な雰囲気に恐怖で腰が抜けてしまった。

 

「大府提督、出迎えもできず申し訳ありません。突然すぎて何もできませんでした」

 

「ええ、結構ですよ。出迎えなど不要ですから。要件を済ませればさっさと帰ります。時間が惜しいものですから」

 

「そうですか」

 

俺たちには興味がないってか。霞や衣笠の話を聞いてこいつが烏丸提督を亡き者にし、烏丸提督と艦娘を洗脳して好き放題しやがったくせに偉そうに。少将に落ちたくせに。怒りで血管がブチ切れそうになりそうな怒りを抑えて冷静に答えた。

 

「それで、この泊地に御用があると言うことですが、そのご用件とは?」

 

(………?艦娘達の洗脳が解けている…一体なぜ?)

 

「ここには烏丸提督が作った洗脳装置がありますね?あなたは使用されますか?」

 

「見ての通り、俺には不要です」

 

「そうでしょうね。では、その機械を解体して持ち帰りたいのです。そのために明石も連れてきました。引き取らせていただいても?」

 

この野郎、自分の所の艦娘の洗脳をより強めてえってか…なめやがって…このクソ外道が…!!!けど、残念だったな…そいつはもう使えねえぜ…。

 

「破壊したので使えるかはわかりませんよ。完膚なきまでに破壊しましたので」

 

「……なんですって?」

 

あの無表情男の眉がピクリと僅かだけ動いた。この発言は効果があったらしい。

 

「破壊…?そのようなことできるはずがありません」

 

「いいや、破壊しました。そこにハンマーがあるでしょう?そいつでぶっ潰しました。なのでここの艦娘の洗脳は解けました。おかげで苦労していますよ」

 

「……信じられません。あれは人の手で壊せるほどやわにはできていないよう設計したはずです。嘘も大概にしてもらいたいものですね」

 

「信じられないと言うんなら、その目で確かめてみてはどうっすかね。正直、あんなもんに頼って艦隊運用なんざ外道のすることだと思うんでね」

 

「ほう…では私も外道と?」

 

「はっきり言って外道じゃないっすか。感情のある艦娘の感情を壊して、自分の言いなりにして何か利益あるんすか?」

 

「忠実に動けば痛みも恐怖も消え、ただただ突き進む体のいい駒になります。それは利益では?」

 

「何のために感情を持って生まれてきたのかそれじゃ意味がわからなくなりますね。いや、まああんたとこんな話したところで平行線になるって刈谷さんに言われてたんだった。見てきたらどうっすか。もうボッコボコにしてやったんで」

 

ふむ…と言うとスタスタと彼は場所を知っているのであろう。洗脳装置があった場所へと向かって行った。

 

「霞、大丈夫か?今だ、今のうちに部屋に戻れ」

 

「い、嫌よ…」

 

「お前あいつに心底怯えてんじゃねえか!早く行け!」

 

「嫌よ!あんたに何かあったら…次はどんな奴が来るかわからない…あいつが管理下に入ると思うと…そっちのが嫌よ」

 

「お前…」

 

「提督、あたしは皆に知らせてくるね!」

 

「鬼怒!すまねえ、頼む!!!」

 

「霞はあたしの後ろにいな。なに、この隼鷹さんをなめんじゃないよ。本気になった隼鷹さんはあんな奴には怯んだりしねえよ」

 

「あたしも同じだね。あー、眠気ぶっ飛んだ。さーて、どういう行動に出るかな…?」

 

「おとなしく帰ってほしいなー」

 

「無理でしょうね。気を付けてください。戻ってきたとき何をするかわかりません」

 

「刈谷さんに電話を入れる」

 

「待ってください司令官。今電話をしていて無防備を晒せば咄嗟の時に行動ができません」

 

「……くっ」

 

「全員、警戒を厳に。司令官をお守りしましょう」

 

「おうよ。いつでも来やがれ…」

 

「みんな、すまねえ…」

 

「提督がいなくなったら困るかんね。昼寝ものんびりできたもんじゃないよ」

 

「漣はご主人様以外ついて行く気はないですからね」

 

頼もしい限りだよ。そう思うと少しだけ笑顔を見せる五ヶ丘提督。さあ、どう出てきやがる…!いつでもどうでも動けるように身構えた。

 

………

 

洗脳装置はあられもない姿であった。本当に何かでボコボコにされ、原型を留めていない。

 

「明石。これは修理可能でしょうか?」

 

「はい、提督様。見る限り、破損が激しく、修復は不可能です。資料を見ても必要な部品ももう調達できません」

 

「そうですか。ではあなたはもう用がありませんね。明石は2人もいらない。あなたは泊地に戻り次第解体致します」

 

「かしこまりました」

 

刈谷提督や玲司が聞いたら激怒するであろう言葉を平然と言い放つ。これが大府提督なのだ。不要なものはすぐに見捨てる。見放す。この明石は洗脳装置の解体、組み立てのためにわざわざ邂逅した明石だったのだが…骨折り損であった。

 

よくもまあここまで破壊してくれたものだ。私の計画をまた邪魔する。また刈谷提督の邪魔か。あれは五ヶ丘二郎。刈谷提督の部下であり、信頼を置いていたはず。邪魔をしたのなら…消えてもらうまでだ。

 

明石と共に再度執務室へ戻る。その右手には黒光りする銃を握って。

 

………

 

「足音が聞こえてきた…気をつけな…」

 

「……!」

 

十分もしないうちに戻ってきたようだ。そしてどんな行動に出るか…五ヶ丘提督提督も…白雪たちも…固唾を飲んで執務室に入って来るのを待つ。

 

しかし、彼らに襲い掛かった事態は予想だにしないものだった。

 

ダンダンダンダンダン!!!!!

 

「ぐあっ!」

 

「きゃあ!!」

 

ドア越しに聞こえる何かが爆ぜる音と同時に五ヶ丘提督の左肩に衝撃が奔った。次にやってきたのは焼けるような痛み。銃か!野郎、ドア越しに銃を撃ちやがったな!!!

 

「ご主人様!!!」

 

ダンダンダンダンダン!!!

 

「漣!うおっ!?」

 

「ぐうう!!」

 

銃撃がさらに続く。提督を守るため、漣が五ヶ丘提督に覆いかぶさる。さらに隼鷹と加古がその前に立ち、銃弾を自分の体を張って提督に当たらないようにする。

 

「ぐっ!」

 

「うあ!」

 

「加古!隼鷹!!!大府、テメエ!!!!!」

 

白雪は電話をひったくり、緊急回線へ繋ごうとした。しかし、ダン!と一発の銃声と同時に白雪が「きゃあ!?」と悲鳴をあげ、受話器から手を放す。その白雪の掌には穴が。電話は撃ち抜かれていた。

 

「余計なことをしないでください。艦娘に守られるとは…そして当たり所が悪かったですね」

 

「テメエ…ふざけたことしてくれやがったな!この腐れ外道がよォ!!!!」

 

「上官に向かって口がなっていませんね。上官は敬え、敬語を使えと教わりませんでしたか?ああ、彼の部下なら大柄になっても仕方ありませんね。私への無礼はあなたの死をもって免じてあげましょう」

 

「て、提督に手出しさせねえぞ…」

 

「そうさ、提督を殺したいならあたしたちをどかしてから殺るんだね…!」

 

「そうですか、そうさせてもらいます」

 

マガジンを抜き、新しいマガジンを入れて弾を再装填する。本来は日本では持ってはいけない銃、45口径のオートマチック銃だ。それを大府提督は容赦なく五ヶ丘提督提督の前に立つ隼鷹と加古の足、肩に何発も撃った。

 

これしきの攻撃は本来艦娘には通用しない。しかし痛みはある。傷も負う。仮に心臓や頭を撃ったところでそれでは艦娘は死なないのだが。大事な部分は現代兵器では貫通しないのだ。しかし、足や腕などは人のそれと同じく、穴が空く。

 

「ぐあっ!」

 

「ぐううう!!!」

 

足、肩を正確に撃ち抜く。両肩両足。それにより隼鷹と加古は倒れる。漣も何発も背中に銃弾を受けた。撃ちきり、マガジンを引き抜こうとしたときに五ヶ丘提督が漣を悪いと思いながらも突き飛ばし、はじけ飛ぶように大府提督に机を飛び越えた勢いで銃を蹴り飛ばした。

 

「うおおおおおおおお!!!!!テメエエエエエエエエエ!!!!!!!」

 

銃を蹴飛ばし、そのまま掴みかかり、壁にたたきつけようとした…が…。

 

「うおおお!?」

 

投げ飛ばされ、自分だけが壁に思いきりたたきつけられた。その勢いで呼吸ができず、うずくまる。

 

「がぁっ!?」

 

うずくまっていたところを腹を思いきり蹴られた。猛烈な吐き気と痛みをこらえ、肩で息を切らしながら立ち上がる。

 

「…これで立ち上がるとは、どんな体をしているのですか?」

 

「うるせえ、俺の体はサイボーグなんだよ。これしきの痛みがなんぼのもんじゃ…!よくもみんなをやりやがったな……テメエだけは絶対に許さねえからな!!!」

 

「おとなしく死んでいた方が苦しまずに済んだものを。あれがないのならもうこの泊地もあなたも不要です。大高提督もいずれは死んでいただき、3つの泊地を私が掌握します」

 

「そんなこと…司令長官や副司令長官が許すわけねえだろうがよ」

 

「ええ。ですから消えて頂きますよ。消えたあとは私が用意した人々にその位置についてもらいます」

 

「テメエ、司令長官や副司令長官まで殺す気か!?」

 

「はい。邪魔ですので」

 

「なるほど…けどな…ここに来たのが運の尽きだったな…テメエはここで…とっ捕まえて憲兵に突き出してやるよ…歯ァ食いしばれ…でねえと…どうなっても知らねえぞ」

 

ギリリ…と右手を強く握り、大きく振りかぶった。

 

「うおおおおおらあああああああああ!!!!!!!!」

 

そして全体重を乗せたパンチを大府提督に向ける!しかし大振りすぎる!大府提督はスッとよけ、パンチは壁に穴を空けた。そこそこ分厚い壁を簡単にぶち抜いた。

 

「……どういうパンチ力をしているのか…興味はありますね」

 

「俺の本気のパンチは金剛石よりも硬ぇんじゃ!次は当ててやるよ…!」

 

「そのような大振りの攻撃、当たるとでも?」

 

「言うじゃねえか!行くぜオラアアアアア!!!!!!!」

 

さらに次の一撃。しかし次はその拳を軽くいなし、合気道の技の様な形で右腕をキメられてしまう。

 

「がああああああああああ!!!!!!?????」

 

「おとなしくしていないと腕が使い物にならなくなりますよ。骨、間接、筋、全てをぐしゃぐしゃにして差し上げましょう」

 

「ご、主人様!」

 

「動かないでください。動けば腕を破壊します」

 

「く、くそぉ!」

 

「てんめえ…!」

 

加古や隼鷹が睨みつけるがそんなものは意に介さない。白雪は震える霞を抱いたまま司令官を気にしていた。

 

「これくらいどうした…腕くらい…テメエにくれてやるから…一発殴らせろ…ぐあああああああ!!!!!!」

 

ミシミシ、ブチ…少し筋をやられたか。関節もまずいか。ひねりあげられ、激痛が五ヶ丘提督を襲う。

 

「さて、遊びはここまでです。腕を砕くだけではいけません。貴方には…死んでもらいますよ」

 

そう言うともう空いている手でポケットからナイフを取り出し、五ヶ丘提督の心臓を狙う。

 

「や、やめろおおおおおお!!!!」

 

「てめえ!提督殺したらあたしが殺してやるからな!!!!!!!」

 

「こ、このおおおおお!!!」

 

漣が勢いに任せて飛びかかった。しかし、漣は蹴り飛ばされてしまった。同時にゴキッと鈍い音が五ヶ丘提督の掴まれた右腕から鳴った。

 

「ぐああああああああああああ!!!!!」

 

「ああ、折れてしまいましたね。あなたのせいで折れてしまいましたよ」

 

「ぐ、ぐうううう…!ご、主人…ゴフッ、様!」

 

「さて、それではさようなら、いずれ刈谷君と一緒に地獄でお酒でもどうぞ」

 

「や、いやあああああ!!!!」

 

大府提督の持つナイフが五ヶ丘提督の心臓を狙う!!!

 

 

パシャリ

 

 

その時何か音がした。ピタリと大府提督はその音に反応し、ナイフを止めた。音の先には…カメラを携え…怯えた顔をしている…

 

「あ、あお…ば」

 

「……み、見ちゃいました…青葉…見ちゃい…ました」

 

写真を撮られた?それはまずい。とてもまずい。確実な証拠が残ってしまうではないか。消さなくてはならない。

 

ダンダンダン!!!

 

「ひい!」

 

「青葉!逃げろォ!!」

 

いつの間にか青葉がいた!逃がさなくては!!!使えるかどうかはわからないがこいつは超強力な証拠となる!

 

「明石、青葉を追いかけて捕まえなさい。連れ帰り、処分します」

 

「ま、待て!クソが、離しやがれ!!!ぐぅ!!」

 

青葉に気を取られた隙で腕固めが緩んだ一瞬で痛みをこらえて右腕を固めから逃がした。明石を追いかけようとしたが背を向けた瞬間に大府提督の銃で体中に風穴が空くだろう。クソが…と悪態を吐こうとした刹那、横を駆ける誰かがいた。

 

「霞ちゃん!!!」

 

白雪が叫んだ。青葉と明石を追いかけたのは霞だった。いや、霞以外動ける者が誰一人いなかった。

 

「霞ィ!!!無理すんな!!!!」

 

霞の足をめがけて大府提督が銃を撃つ。しかし、ジグザグに動いて照準を定めさせない。

 

「させるかオラァ!!!!!」

 

金剛石よりも固いと豪語する拳。それは右腕がダメになっても左腕がある。フルスイング。霞に目をやっていた大府提督は反応が遅れて頬を掠める。

 

「チィ!避けてんじゃねえ!!!手品師かテメエは!次から次へと武器を出しやがって!」

 

「それを食らえばこちらが大変ですので。念には念を。刈谷君の部下ならなおさら油断はできませんから」

 

(クソォ…!今度が俺が撃たれちまうか!?いや、この距離なら!)

 

「まあいいでしょう。これであなたは終わりです。さようなら」

 

そうして銃を構えたが、それよりも先に大府提督が吹き飛んだ。そして盛大に壁に激突した。鳩尾が何かが爆発したかのようだった。それは内臓にもダメージがいったのか、立ち上がることも体にチカラも入らない。

 

「………!!」

 

「今はあの監獄に行った人に教えておいてもらってよかったぜ…俺の必殺の1つ…ワンインチパンチだ!」

 

外道死すべき慈悲はない。そういつも言っていた職員がいた。彼は艦娘に重大な罪を犯した者、もしくは海軍の存在を脅かす可能性がある者をただの逮捕ではなく、隔離すべきだと提案した。それまでも彼は海軍憲兵として悪事を働いた者に容赦のない罰を与えてきた。

 

そうして提案したのが海軍のアルカトラズと呼ばれる瀬戸内海の島の1つに作った監獄だ。牢に入れ、後は何もしない。娯楽もない。散歩もできない。ただひたすらに1日窓の外を見つめることしかできないと言う拷問のような生活。即座に精神に異常を来し、自殺を行う者が後を絶たないと言う。

 

「まったく。外道は精神が脆い」

 

死した者へは弔いの言葉一つもなく、それだけを言い放って淡々と処理をする恐怖の男。そんな彼は武道の達人でもあった。彼に万が一何か強大な敵が現れた際の切り札として教わった必殺の一撃。昔からなぜかケンカが絶えない五ヶ丘提督のために教えたもの。それがここで威力を発揮した。

 

しかし、五ヶ丘提督達のダメージも甚大である。全員が銃で撃たれているし、五ヶ丘提督も銃で撃たれ、右腕は肘をやられてしまっている。しかし、五ヶ丘提督は怒りで痛みを忘れている。

 

「これでも…喰らっとけやあああああああ!!!!!」

 

とどめの左腕での渾身の一撃。しかし回避され、またしても壁が砕ける。大府提督は武器をすべて失っている。今のワンインチパンチのダメージもひどい。ましてや洗脳装置も破壊されている。ここにいる意味はない。

 

「ここであなたの相手をしている時間も惜しい」

 

「ぐぉあ!!!」

 

ゴキリ、と五ヶ丘提督の右腕を捻り上げる。肘の関節が外された。その隙に大府提督は部屋を後にする。

 

「オイ待て!逃げんなコラァ!!!!!」

 

「提督!動いちゃダメだ!血が出すぎてる!!!!」

 

「うるせえ!!!!霞と青葉を助けねえと!!!!」

 

「あたしらが行くっての!!っつぅ!これしきでうだうだしてられねえっつーの!!!」

 

「漣!白雪!提督を頼んだよ!!」

 

ヨロヨロとしてはいるが隼鷹と加古が大府提督の後を追う。

 

「司令官!司令官!しっかりしてください!」

 

「く、うおお…なん、だ…意識、が…」

 

「ご主人様!………ま!!!」

 

漣や白雪の叫ぶような呼び声も聞こえなくなり、意識はそこでぶつりと途切れた。

 

 

「………!」

 

「……………」

 

何か話声が聞こえる。ああ、そうだ。俺は今大府提督に襲われて…白雪や漣たちを…そうだ、青葉!青葉を助けないといけないんだった!!

 

「うおおおおおおおお!!!!!!大府ゥあああああああああああ!!!!!!!!」

 

「うわっひゃあああ!!!???」

 

「きゃっ!」

 

ガッターーーン!と誰かが転ぶ音がした。そして1人は飛びのいた。見覚えのない部屋…あれ?俺は…執務室で確か…。

 

「いってててて…ご主人様…寝起きから元気ですね…いったぁ…」

 

「も、もう、何よ!びっくりするじゃない!このクズ!」

 

「……?漣…?霞…?お、大府は?」

 

「大府提督ならもうとっくにタウイタウイ泊地じゃないですかね。なんせご主人様、3日寝てましたからネ」

 

「3日!?いてて!く、くそ、なんだこれ!」

 

「右ひじ靭帯損傷。関節脱臼。左肩と左わき腹に銃痕。よく生きてるな、って明石さんが言ってました。ご主人様、ほんとは未来から来たサイボーグとかじゃないですよね?」

 

「何言ってんだ、俺は人間だぞ」

 

「デスヨネー」

 

「で、お前ら、傷は…」

 

「そりゃあ加古さん、隼鷹さん、ゆっきーと揃ってドック入りですよ。漣ちゃん達は傷がちょっと残っちゃいました。見ますー?」

 

そう言って突如脱ぎだす漣。

 

「おいこら!脱ぐんじゃない!」

 

「ちょ、あんたねぇ!!」

 

「漣ちゃん?」

 

「ゲッ」

 

「ちょっとお部屋でお話しましょう。司令官、ご無事で何よりです。ご報告です。青葉さんは無事です。鬼怒さんが青葉さんをうまく逃がしてくれたみたいで。

それから、写真が出来上がっています。これを刈谷司令官にお送りいたしました。司令官は褒めておられましたがこれは切り札にさせてもらってまだ泳がせると言うことだそうです。

命を張りすぎるんじゃないぞ、とややお怒りのご様子でした。治りましたらお電話をしておいたほうが良いかと思います」

 

青葉は無事だったか…みんな無事だったか…それは何よりだった。体を張った甲斐があったもんだ、と大きく息を吐いた。

 

「あ、あのぉ…」

 

「では司令官、白雪は漣ちゃんとお話がありますのでこれで失礼いたします。霞ちゃんはいかがいたしますか?」

 

「……司令官が無理しないかどうか心配だから見ておいてあげるわ」

 

「ふふ、よろしくお願いします」

 

「ご主人様ー!ヘルプミー!!!」

 

「元気でな…」

 

「う、裏切者ー!」

 

「ちょっと!司令官は重傷人なのよ!静かにしなさい!」

 

「うー…」

 

いや、霞の声も響くんだけどな…と思ったが言わないようにしておいた。気を遣ってくれてるのだから。

 

「腹減ったなぁ」

 

「……間宮さんに言って作ってもらって来る」

 

「だ、大丈夫なのか?」

 

「青葉さんが司令官の事を広めてくれたのよ。それから、洗脳装置は本当にどうしようもないくらいあんたが壊したことも写真を通してみてもらったわ。夕雲型のみんなはまだ怪しいけど、風雲、長波や朝霜、秋霜なんかは信じてもいいんじゃないかって言ってるみたいね」

 

「そうか…」

 

「少しずつ信頼を得ていけばいいんじゃないの…あたしみたいに」

 

「ん?最後なんか言ったか?」

 

「な、何でもないわよこのクズゥ!」

 

「いてえええええ!!!!」

 

「なぁ!?し、しまっ、だ、大丈夫!?し、死んじゃダメよ!司令官」

 

「いでででで!!!揺するなぁ!!!!」

 

「なーにやってんだあれ?あほか?」

 

「ま、まあいいんじゃねえの…ま、霞があんだけ心配してんならあたいもちったぁ信じることにするよ」

 

「………」

 

「うお!?早霜!気配隠してあたいの後ろに立つんじゃねえよ!!!!」

 

「司令官…見ています…ずっと…見ています…ふふ」

 

「こわ!」

 

「あー、早霜も?ふーん、ま、いいんじゃねえの?」

 

「提督!大丈夫!?何か悲鳴が聞こえたけど!?」

 

「き、鬼怒か!!か、霞!霞を止めてくれえええええ!!!!!」

 

「わあああ!!傷が広がっちゃうってー!」

 

少しずつであるがリンガ泊地は五ヶ丘提督のおかげで良い場所になっていくのである。初期の5人とちょっと過保護気味の霞、長波たち。リンガはここから変わっていくのだ。初めの一歩をようやく踏み出せた。だが最初の一歩だ。まだまだ五ヶ丘提督の道のりは遠い。




予定を大きく変更して申し訳ありません。突然これがひらめいて話がスルスルと出てきてしまったので。そして長くなってしまいました。

五ヶ丘提督。正義に燃える熱い漢です。明かされたリンガの実態も出してみました。実際には彼はブラックな男でしたね。まだまだ時間はかかりますが、一宮提督や七原提督の様な優しくていい提督になっていきます。刈谷提督のバックアップもありますので心配はないでしょう。

大府提督は今回の失敗で刈谷提督に大きな利益となるものを与えてしまいました。これが後ほど、どう響いていくのか。それはもう少し先のお話で書いていこうかと思います。滅びに向かう大府提督です。

さて、次回は少し未定です。やはりこう書きますと言っておいてまったく違う話になってしまいましたので、予定は未定。と言うことでご容赦ください。

それでは、また。
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