最強と噂される横須賀。そして頼りになる先輩の艦隊。この艦隊が居るから…。信じて待ちます。
電話は繋がらない。漣や助っ人に来てくれた横須賀や鹿屋の艦隊とも通信も繋がらない。あまりの不安に心臓の動悸が収まらない。時間はなぜか1時間が1分のように早く過ぎていく。
白雪も横須賀や鹿屋への電話、漣たちへの通信を試みるが全く繋がらないので焦燥しきっている。飲まず食わずで一夜を明かした五ヶ丘提督。そして白雪。彼女たちの安否が気になって仕方がない。
「………」
そこにさらに陸奥がドアの近くで立って壁にもたれて立っている。その様が白雪にとっては余計に苛立ちを増幅させるものであった。五ヶ丘提督は陸奥の存在はなきものにしている。
「電話もダメ。通信もダメ。一体どうなってやがんだ…」
「ですが司令官。鹿屋基地で長門さんよりも恐れられている球磨さん達が行かれましたし、それに横須賀の大淀さんは素晴らしい軍師であると聞いております。きっと大丈夫です」
「待つしかできねえのがもどかしい…クソッ」
ピッピー…ガガ…マ。………ら……マ。…………クマ?
クマ?突然通信機がノイズだけでなく何か声を発した。それに飛びつくかのように白雪が反応した。
「こちらリンガ泊地、白雪です!応答願います!こちら白雪!!どなたでも構いません!応答してください!!!お願いします!お願い…します!!!」
涙を流している場合ではない。しかしそれくらい白雪は切羽詰まっていた。いつもなかよしでわいわいやってきたあの4人の安否が早く聞きたい。いいや、無事を確認したかった。
ボツッ!!!!ガーーーーーーーピーーーーーーーーーー!!!!!
「きゃ!!」
「うお!?」
頭が痛くなりそうな強烈なノイズ。無線はやはり壊れてしまっているのか…?
『あーあー。聞こえるクマー?ったく、このクソ無線…壊れてんじゃねえクマ?』
『だからと言って私の艤装の無線を破壊する勢いで殴らないでください!』
『ポンコツはこれに限るクマ』
『人のぎ、艤装をあろうことかポ、ポンコツゥ!?』
『繋がらねえ無線なんざポンコツにゃ。ちゃんと整備してもらえにゃ』
『失礼ですね!横須賀にはあの『原初の艦娘』の明石がいるんです!完璧に整備してもらっています!』
『じゃあ明石に言っとけクマ。もっときちんと整備しろって』
『だからやってますってば!!!ああ、私の艤装に凹みがぁ…』
ノイズの後に聞こえてきたのは何とも緊張感のない無線。大淀と球磨と多摩はもめているのだろう。こっちは報告を今か今かと待ちわびて胃が痛くて胃を吐きそうになっていたと言うのに。ミシリ…とヘッドホンを握りつぶしかねない勢いで白雪は怒っている。
「あの、よろしいですか?私の声は聞こえていますか?」
『お、繋がったクマ。球磨ちゃんパンチは故障もしっかりなおーす』
『はぁ…はい、失礼しました。こちらリンガ艦隊救助隊、大淀です』
落ち着き払っている。五ヶ丘提督はこの時点で判断した。この緊張感のなさならきっとあいつらは無事だろうと。
「報告をお願いします。ケンカしている暇があるのなら。早く。速やかに。可及的速やかにお願いします」
『は、はい…失礼いたしました…漣さん達は予測通り交戦状態にあり、ほぼ壊滅状態にありました』
壊滅と言う言葉にすぐさま五ヶ丘提督も白雪も息を飲む。心臓を鷲掴みにされたような緊張感が再度漂う。陸奥は表情も一切変えない。
『ですが、救助隊の夕立、神通、北上がいち早く駆け付け、これを排除。なお、追いついた部隊も敵を排除。球磨さん達が退路を設けてくださったおかげで轟沈艦はありません。漣さん達はひどく大破しておりますが命に別状はありません。ドックへの入渠準備を願います。可能であれば高速修復材の使用もご許可願います、五ヶ丘提督』
「お、おお。すぐさま準備させる。大淀」
『はい、何でしょうか?』
「漣たちを助けてくれて…ありがとう。感謝する…」
『いいえ。私達は当然のことをしたまでです。困った仲間が、艦娘がいたら真っ先に助けろ。これが我が提督からの命令ですので』
『かっこつけてどや顔してんじゃねえクマ』
『はあ!?私は別にそんな顔などしておりませんが!?』
『メガネをくいくいさせてドヤァって笑ってたじゃねえか』
『にゃ。多摩もそう思うにゃ』
『にゃあああ!?』
『あーもう馬鹿ばっかり!うるさいのよ!漣たちの傷に響くでしょう!?』
『『『はい、申し訳ありません』』』
今のは誰だろうか。わからないがまたケンカしているところを仲裁してくれたようだ。
『オホン…戦闘海域からは離脱しておりますのでもう大丈夫かと思います。遊撃の潜水艦隊などに気を付けつつ、現在リンガ泊地へ戻っております。もうしばらくお待ちください』
『あー、あと帰ったら大事な話があるクマ。まだしばらく時間がかかるから五ヶ丘提督は寝といたほうがいいクマ。超重要な話クマ。聞き漏らしたり寝たりしたら刈谷提督の前に球磨ちゃんがぶっころーすから寝て頭をスッキリさせてから話を聞けクマ』
何やら物騒すぎることを言ってのける球磨。重要…そこまで重要な話なのか。一体何だ。とても気になるが…。
「わかりました。司令官と私、白雪は就寝させていただきます」
『お?一緒の布団で寝るクマか?おーおーおー、白雪も見かけによらずやるクマねー』
「う、うるひゃい!!!ばか!!!!!」
一緒に寝る?そんなことをしたら漣さん達に恐ろしい目にあうに決まっている。いや、しかし、司令官に抱かれ、司令官の匂いに包まれて眠るなどなんて贅沢…至高、至福。ああ、できるなら服など着ずに直接司令官の温もりを感じ、司令官の匂いを皮膚から、鼻腔から取り込み…ああ、そんなことをしたら白雪は…イッ…。
「おい、白雪。大丈夫か?」
「ふぁああ!?な、何でもありません!し、白雪は自室にて就寝致します!」
「なんだあいつ。ひょこひょこと変な歩き方をして…まあ、そういうわけだ。陸奥。退室してくれ。ここは鍵をかける」
「…わかったわ」
「お前らの目論見通りにはならなかった。それだけだ」
「そうね」
陸奥はそっけなく出て行ったが妙に顔色が青かったような気がする。何かを隠しているようなそんな感じがするが、今はそれどころではない。確かに…漣たちが無事と聞いて気が抜けた。ドッと疲れた…とりあえずは重要な話もあるらしいし、寝るとするか…。
「おい提督!漣達は!?霞は!?衣笠さんはどうなったんだよ!!!執務室から出て大丈夫なのかよ!?」
しかし途中で長波たちに捕まり、その説明をするのに時間を要し…睡眠時間を削られてしまったのだった。
………
五ヶ丘提督は結局2時間ほどしか眠れず白雪に起こされるのだった。寝ないよりはマシか…とフラフラと母港へ向かう。
ふぁああ…と大あくびをする。
「はあ…緊張感がねえなぁ…しゃきっとしろよ!漣たちが帰ってくるんだぜ!?」
「そうだな…あふ…」
「よっし、あたいが一発蹴りくれてやっからそこに尻出せ。いっくぜー!!」
すっぱーーーん!!!と朝霜が悪びれることもなく蹴りをフルスイング。いってえええええ!!!!と叫ぶ提督。
「朝霜さん…あとで、お話があります。ふふふ、さすがに…許しませんよ…」
「早霜?こ、怖えって。なんか井戸から出てくるオバケの女みてえに…こわ!!!ひいいい!!!」
漣たちが無事と分かっていたからか、朝霜や長波たちもあまり緊張感がない。それよりも司令官に蹴りを放った朝霜さんを許すことはできませんね…と目を大きく開き、ハイライトのない目で朝霜を見ているのだった。
「あっ、見えたよ!おーい!おーーーーい!!!」
秋霜が大きく手を振っていた。それに対して夕立が手を大きく振り返していた。摩耶や球磨もそれに続いた。
それを見た五ヶ丘提督はホッと胸をなでおろしたが…近づくにつれ、見えてくる漣たちの現状に息を詰まらせた。
「さ、さざな「はいはいどいたどいたー。見ての通り超重傷だクマ。礼なら夕立と北上、朝潮に言っとけクマ。あと5秒遅かったらみんな死んでたってよ」
「というわけにゃ。どけどけにゃ」
うっぷ…と秋霜がえずいていた。あまりにも傷が大きすぎる。腕や足がちぎれているわけではないが血が乾いて黒ずんだ服。ボロボロの艤装。死の気配さえ感じるほど皆グッタリしていた。
漣、霞、衣笠が特にひどく…すぐさまドックへ連れていかれた。気をずっと失ったままだそうだ。
「いやぁ…マジで死ぬかと思った…本当に間一髪だったぜ…」
「そうだね…鬼怒も…疲れたぁ…あー、加古ちゃんまだ寝るには早いよぉ…ドックに入ってから寝てくれるぅ?おっも…ねー、マジで寝ないでってー!」
「んおー…まじでしぬ…眠い…もう寝る…」
「…迅鯨、手を貸してやってくれ…」
「はい、提督(提督が私を頼ってくれるなんて…やはりこのお方は運命の人…絶対ここから逃がさないわ…)」
「長鯨も頼む」
「わかりました!(姉さん共々私も頼りにしてくれるなんて…これはもう一蓮托生…運命共同…ええ…謹んでお受けいたします)」
何だか迅鯨と長鯨から嫌な雰囲気を感じたがそれどころではない。漣たちがあそこまで大破するとは…どれほど過酷な任務だったんだ…。これは…オレらの艦隊が出ていい任務じゃねえだろ…大府の野郎。一体何してくれやがった。
五ヶ丘提督は大府提督への怒りをふつふつと煮やしていた。
………
/執務室
「で、重要な話ってのはなんだ?」
「まーそう慌てるなクマ。どうせ漣たちは治ったらすぐ目ぇ覚ましておめーんとこ飛んでくるだろ。おめーが連れてきた艦娘が来たら話してやるクマ」
「それまでは私、大淀が状況をご説明させていただきます」
まずは大淀が漣たちを救出し、脱出した経緯を説明した。夕立、神通、北上が先陣を切って突撃。日没前に潜水艦を片付け、一気に引っ張り出して球磨達が作った脱出口から脱出。本当にあと少し遅ければ確実に仕留められて終わっていただろう。ほう…と五ヶ丘提督はストン…と脱力したかのように椅子に座りこんだ。
「本当に助かったよ…みんなが来てくれなければオレたちの艦隊は…」
「いえ、お礼でしたら刈谷提督に言ってください。突然私達にリンガに行って補給をさせてもらって情報共有をしろ。最悪五ヶ丘提督の艦隊が出撃している可能性がある、と」
あの人はどうやってオレたちが出撃していることに勘づいたんだろう。盗聴器などでも仕掛けられているのだろうか?いや、そんなことはないと信じているが…。
「私達も詳しくは知らされていません。大急ぎで向かえと指示が来ただけでして」
「そうなのか…一体どうなってやがる…?」
「それは…」
「球磨たちも知らされてないクマ。とにかく行ってこいの一点張りだったクマ」
「は、は?」
球磨たちも知らされていない?一体どうなっている。それでも刈谷提督。三条提督の参戦がなければやばかった。何をどう読んでここまでこの艦隊を動かしたのか。不思議でならない。
「んー、電話繋がらねえクマ?提督に電話すれば全部タネ明かししてくれるクマよ」
「それが、全然繋がらなくてよ…」
「大府の悪さかにゃ。相変わらず姑息にゃ。腹が立つにゃ」
「…ちぃ」
電話をかけてみるがやはり繋がらないらしい。ガチャンと乱暴に受話器を叩きつけるかのようにい置いた。イライラを隠し切れないところに霞と衣笠が入室してきた。
「霞!衣笠!」
「………」
衣笠は怯えている。霞は怒りを隠し切れない表情である。霞が怒鳴り始める。
「ほんとに…どんな采配してんのよ!作戦の思案も満足にできないの!?何が水雷戦隊の掃討よ!?わけのわからない姫!?それに戦艦や重巡までうようよいたし潜水艦まで!!!!あんた、あたしたちを殺そうとしたわけ!?あんたも…あんたも前のクズと…一緒なの!?」
ハラハラと涙を流し始めた。無理もない。指示に出されたことが全然違ったのだから。そして絶対に死なせないと言っていたはずなのに。あわや漣たちも巻き込んで壊滅させようとしていたのだから。
「ふざけないでよこのクズ!!!あんたのせいで…あんたのせいで!!!!」
胸倉を掴んで泣きながら睨みつける。衣笠が「霞ちゃん、お、落ち着いて…」と言うも、霞は止まらない。
「クズよ!やっぱり…あんたもクズよ!!!人間なんて…やっぱりクズなんだわ!!!!!何とか言いなさいよ!!このクズ!!!!!!」
「……すまねえ」
「すまないで済ませる気!?ふざけないでよ!!!こんのぉ!!!!」
ガッとグーで顔を殴られた。そう痛くはないが…五ヶ丘提督の心はひどく痛んだ。そうだ、オレのせいだ。オレのせいで霞や衣笠もそうだし…今までやってきた漣たちまで…。
「なんでよぉ…なんで…あたし達…そんなに…嫌なの…?」
ぽふ…ぽふ…と提督の胸を弱く泣きながら叩く霞。この人なら信じてついて行けると思ったのに…。この人も裏切るのか。
「霞さん。私達もこんなことになるとは思っていませんでした。私達は大府司令官たちに罠に嵌められたのだと推測しています。事情はわかりませんが…この作戦は本来、刈谷司令官と三条司令官のみで作戦を遂行する予定だったと伺っております」
「…え?」
「クマ。確かにそうだクマ。五ヶ丘提督が参加させられている可能性がある。すぐリンガへ行けだったクマ。正直球磨ちゃんも眉唾だったクマ」
呆然。霞は胸倉から手を放してポカーンとしている。
シーン…と静まり返る執務室。漣たちはまだ来ないらしいし…どうすればいいんだ。このまま待つか…。陸奥や加賀もいる。長波たちも信じられないと言う顔で…「やっぱり…裏切んのかよ…」と言っているし、五ヶ丘提督の立場は非常に危ういものとなっていた。
「ほら、どけどけ」
何か男の声が聞こえる。ヒッと加賀が声をあげた。巻雲も何やら怯えている様子。
「むふぅ…」
「……おい、ここは関係者立入禁止だぞ」
「む?そいつは駆逐艦『霞』か。いいなぁ、そんなに寄り添って。僕もやってほしいなぁ…ふひっ。まあ、すぐそうなるんだけどね。ぶひっ」
「話を聞けよテメエ。誰だテメエ」
「僕はここの提督になる者だよ。さあ、もう君は用なしだ。出て行ってもらおうか。君こそもう部外者だよ?」
「はあ?」
何だこの男?たしかに提督の服を着ているが…ミッチミチになっているほどデブであり、神も脂ぎっているし…何より…臭え!!風呂入ってんのかこいつ!?
白雪も霞もその凄まじい臭さに顔をしかめている。長波や朝霜は「くっせぇ!」と言い出す始末。
「だ・か・ら。僕が、ここの新しい提督になるんだよ。聞いていないのかい?ダメだよぉ、ちゃんと言わなきゃあ。ねえ加賀?おしおきが必要だねぇ?」
「ひぃっ!?い、いや!」
「おいテメエ、加賀に…いや、ここにいる艦娘に手出しすんじゃねえぞ」
「くっせーーーーー!!!こいつはくせーーーーー!!ゲロ以下の臭いがぷんぷんするクマ!?」
「…おめえどんくらい風呂入ってねえにゃ?」
「おお?多摩に球磨、大淀?こんな娘がいるのは知らなかったなぁ…お楽しみが増えたね…ブヒッ」
臭いに顔をしかめながら大淀は寒気が奔る。この男は似ている。あの男。あの最低の男に。喋り方、雰囲気、見た目、匂い。全てがだ。過去のトラウマが蘇る。
「あ、あく、安久野?」
「おお?大淀、君は僕の名前を知っているのか。そうだよ。僕は安久野と言うんだ」
「安久野!?」
安久野。安久野葛男。横須賀鎮守府を地獄にした最低最悪の提督。なぜこいつの名が出てきた?
「僕は死んだパパの息子さ。と言っても結婚もしてないけど。金にモノを言わせて無理やり襲った女が産んだんだよ。養育費として生活には困らなかったねぇ」
生い立ちが最悪じゃねえか。強姦まがいなことをして産ませたんだろう。金だけは持っていたと聞く。生活に困らない程度にはやっていたんじゃないだろうか。ひどく金にがめつい男な割に、子供は大事にしていたのか。
「パパは息子である僕をかわいがって育ててくれたよ。ああ、死んでからはお金の供給も止まっちゃってね。ママは自殺しちゃったけど。まあそんなことはいいんだ。僕もパパから聞いていた艦娘を好き放題していいってある人から言われているからね」
「で、ここに着任だ?ここはオレが任されている泊地だ。テメエに権限はねえよ」
「名前は出せないけどどうせ君は作戦を失敗するだろうから追放して僕が面倒を見るように言われたんだよ?」
「失敗だ?オレは失敗なんぞしてねえぞ」
「んん?出撃させた艦隊轟沈させて全滅させたんじゃないの?ねえ陸奥?」
「そ、それが…」
「陸奥?」
「え、ええ…そう、です」
この野郎。陸奥を脅していやがる。加賀は腰を抜かして怯えているし、こいつに何かされたのか?オレが着任する前に。
「作戦は失敗などしておりません。刈谷司令官や三条司令官の艦隊の皆様のおかげで全員生還しております。それに、これは作戦としては成立しておりません。ですので追放はありえません」
「はあああああ!??!?!?!敵を壊滅させずに帰って来たんでしょう!?だったら失敗だろう!??!?!?」
「いいや?主力の重巡棲姫もぶっ潰したから作戦は成功クマ。ソロモンの艦隊は壊滅。作戦は成功。文句ねえだろ?」
「ちーーーがーーーうーーーー!!!僕が言ってるのは!!!!!!この彼の艦隊が主力を潰していないから失敗だって言ってるの!!!!!!」
「いや、おめえさっき艦隊壊滅させて失敗したから出て行けって言ったんだにゃ。話が全然違うにゃ。怪誕不経(かいたんふけい)…おめえの言ってることはむちゃくちゃ怪しすぎる」
「うるさい!!!僕がここの提督なんだ!ここの艦娘は全員僕のものなんだ!!!よそ者の艦娘か!?なら出ていけ!!!!僕は今からここの艦娘に僕が提督なんだって教え込んでやるんだ!!!」
「うるせえし臭えし…何なんだクマ…」
「お前の言い分は理解ができねえ上にめちゃくちゃだ。お前を提督に任命したのは誰だ?」
「そんなものは関係ない!!!!僕が提督なんだ!!!!!」
ああ、本当に息子だなと大淀は思う。話が通じない。自分の思った通りに進まなければこのように火が着いたように…駄々っ子のように喚きたてるだけ。これで全てを通してきた。ああ…何てこと。この男が提督になってしまったのなら…いや…きっとこれは何か裏がある。
「ご主人様!!!」
「おい提督!何の騒ぎだ!?うわ、くっせ!?何だこれ!?」
「漣、隼鷹!」
「加古と鬼怒はまだドックだ。それよりなんだ?どうなってんだこの状況?」
「ぶひー!これまたいい娘がいるねぇ!調教のしがいがありそうだねぇ!!!!」
「うわ!キッモー!!!!!」
「それ鈴谷じゃねえか!ってか何だこいつ!?くせーしマジ何なんだよ!!」
「僕がここの新しい提督だ!君たち、提督への態度がなっていないね?お仕置きが必要だね!?」
「おしおき、いやぁ…ひいいい…」
「加賀!!!テメエ!!!!」
「うるさい!!!!!お前はもう邪魔なんだ!!!!さっさと出て行け!!!」
「うるせえ!!!!テメエこそ部外者だろうが!!!!出て行きやがれ!!!!」
このままでは埒が明かない。一体どうすれば…そう大淀が思っていると電話が鳴った。電話…?今まで電話がつながらなかったはずなのに…いきなりどうして?白雪は恐る恐る電話を取った。
「はい…リンガ泊地…えっ、刈谷司令官!?」
その名は救いの男の名に聞こえた。白雪はとにかくはい…はい…と言っているだけである。
「えっ?スピーカーに?か、かしこまりました」
受話器を置いてスピーカーモードに切り替えた。
『よお。やっと繋がったな。五ヶ丘、聞こえるか』
「は、はい。聞こえます…」
『それならいい。どっかの馬鹿がテメエんとこの回線に何かしでかしたらしくてな。ようやく繋がったぜ』
落ち着き払っている声。それが五ヶ丘提督をどこか安心させた。
『で、そこに安久野のクソの倅はいるか?いるんだろオイ?自分が新しい提督だってな』
「そうだよ。君は誰だい?偉そうに」
『刈谷副司令長官だ馬鹿。今白雪が俺の名前言ってただろうがよ。テメエ耳糞がつまりすぎて難聴になってんのか?馬鹿がよ』
「誰が馬鹿だ!偉そうに!!!!」
『だから副司令長官っつってんじゃねえか。頭に脂肪詰まってんのか?ああ、死んだあいつと一緒で性欲しかねえか。いや、あいつといいテメエと言い股間に脳みそついてんだから、人間の言葉は理解できねえか、ククッ!!』
「な、なんだと!?」
わかる。五ヶ丘提督にはわかる。刈谷提督が物凄い嫌味ったらしい顔で笑っているんだろう。しかし、まるですべてを見透かしたかのようなタイミングでの電話。本当にこの人は未来が見えているんじゃないか…。
「刈谷さん…こ、こいつは一体何者なんですか…」
『ああ?リンガの艦娘レイプして自分が提督になったつもりでいる脳金だよ。金玉に脳がついてるから脳金な』
そんな言葉を聞いて白雪や衣笠、霞は赤面していた。そして陸奥と加賀は青ざめていた。チラチラとのぞき見している巻雲も顔を真っ青にしている。
「は、は?レ、レイ…プ…だ?」
『ああ。そいつが金で雇おうとした憲兵もどきの馬鹿探し当てて全部ゲロさせたよ。そこに陸奥いるか?ああ、たぶんテメエ嫌悪していねえか?加賀と。テメエを追い出そうと躍起になってたんじゃねえか?』
「いや、います…追い出そうとはされました」
『だろうな。そこの豚にレイプされて自分が今度新しくなる提督だ。仮で来る提督を追い出すために協力しろ。じゃねえとまたレイプすんぞって脅されたんだろ』
「な…ん…だ…と…?」
ピキリ、と空気にひびが入ったかのような音がした気がした。漣も隼鷹も白雪も刈谷提督の言葉に引きもしたが、五ヶ丘提督の雰囲気に恐怖した。これは…本気で怒る手前の雰囲気だ。
『どうなんだ陸奥。答えろ。テメエらがそこの豚を提督として認めて一緒にやっていくなら好きにしろ。五ヶ丘とそいつについていくって答える艦娘は日本の鹿屋に置く。嫌なら洗いざらい全部吐け』
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
「加賀…さん」
横で頭を抱えうずくまる加賀を見る。そして…罪悪感がある。こいつがしようとしていることを繰り返された大井。この男に巻き添えを食った夕雲、巻雲も同じ目に…。嫌だ。前の提督も反吐が出るが…こんな奴にも奴隷のような扱いを受けて生活をしていくなど…絶対に嫌だ。
………
五ヶ丘提督がやってくる少し前にこの安久野はリンガ泊地にやってきていた。
「ここが僕が着任する泊地かぁ。クヒヒヒ、小さいけれど艦娘はいっぱいいると聞いたから…クヒヒヒヒ!!!ブヒッ!」
(何なのこの男。この男が新しい提督…?前の提督もゲスだったけど…この男も…ゲスな空気しかしないわ…くさ…体を洗っていないの?不潔すぎる…)
「おやおやおや。君は…陸奥かな?僕が今度新しい提督になる予定の安久野だよ」
(おかしい。私が聞いて…写真を見た提督はもっと筋肉質で優しそうな提督だったはず…)
「ああ、思っていた提督と違うと思っているみたいだね。そうだよ。彼は仮の提督だ。僕は少し忙しくてねぇ。けど準備が整い次第僕が着任する決まりだから。よろしくねぇ」
ニチャァ…と気持ち悪い笑みを浮かべた。陸奥はもう生理的に受け付けなかった。後ろからゾロゾロとガラの悪そうな男たちもいた。
「さあ、執務室へ案内しておくれよ。ブヒッ」
「は、はい…」
連れて行った執務室には加賀もいた。執務を手伝っている夕雲や巻雲もいた。それを見た安久野はさらに気持ち悪い笑みを浮かべて舌なめずりした。
「おいお前ら!やっちゃおう」
「「へーい…へへへへへへ」」
「は?な、なにをするの!?い、いやああああ!!!」
そこから先のことは思い出したくもない。いろんな男に嬲られた。夕雲や巻雲の悲鳴が。泣き声が耳から離れない。加賀が暴力を振るわれ、あの冷静かつ表情を崩さない加賀も泣き叫ぶほど。そして安久野を見たり大きな声を聞いたとたんすくみ上るトラウマを持ってしまった。
「いいかい?これから来る提督は脅したり嫌がらせをして追い出すようにするんだよ?まあ、そうでなくてもあのお人が絶対に叩き出せるようにするだろうけど…殺しても構わないよ?どうにかして追い出すんだ。いいな?でないと…わかっているよね?」
「ひ、ひいい!!わ、わかりました…!」
「……わかり、ました」
「ブヒヒヒヒ!!!これから楽しみだなぁ!じゃあ陸奥、加賀。また…しようね?」
「ひっ!」
「クッ…!」
………
「以上よ…」
それを聞いた白雪たちは顔面蒼白。いや、追い出されたのなら司令官についていくつもりなので問題はないが…それを嫌がる艦娘には地獄以上の辛い仕打ちが待っているじゃないか。
「提督ー。こいつグリンしていいクマ?クソ腹立つんだけど」
「悪逆非道。こんなこと許せるわけねえにゃ」
『いや、テメエらが手出しする必要はねえ」
「なんで!?こんな奴生かしておくだけ毒にしかならねえクマ!!!」
「提督。殺らせろにゃ。怒髪衝天。生かしておけねえ」
「ふ、ふふふ、ふざけるな!!!僕はここの提督だ!艦娘に何をしようが僕の勝手だろう!?」
『テメエ日本語通じねえのか?俺は6か国喋れるんだけどよ、どの国の言葉だったら通じるよ?宇宙人の言葉なら知らねえぞ』
「今実際に日本語でしゃべってるじゃないか!!」
『なら言ってんだろ。テメエは提督になる資格もねえし、俺がさせねえ。大府が提督に任命したみてえだな。ならその話は白紙だ。人事権は俺と堀内しか持っていねえ。大府にはそんな権限はねえ。だからテメエは単なる不法侵入者であり、犯罪者だ。艦娘をレイプしたって言うな』
「えっ…?お、大府さんは僕を提督に任命すると…」
『効果はねえ。それにあのクソ犯罪者の息子だ。なおさら提督にするわけねえだろ。大府にはそんな権限はねえ。越権行為だ。そもそも今回のソロモン出撃に関しても、越権行為と犯罪行為が山ほどある。その辺、わかって言ってんだろうな?』
「ぐ、ぐううう!!」
顔を真っ赤にして怒っている安久野の息子であるが、全て図星だ。そして知らなかった。僕は提督になれない?この最高の性玩具たちを…手に入れられない?
『テメエに待っているのは…二度と出れねえ牢獄だ。宿毛湾の馬鹿は1年持たずに自死しちまったらしいが、テメエは何か月…いや、何週間もつかな?』
「ふざけるなあああ!僕が牢屋になんてありえない!!!!!」
『入るんだよ。そこで死ね』
「嫌だああああ!!!僕はここで提督になって陸奥や加賀や駆逐艦たちをいーっぱいかわいがってハーレムになるんだああああ!!!!そうだよなぁ陸奥!!!!加賀ぁ!!!!あんなにいっぱいかわいがってあげたよねええええ!!!!!????」
「ひっ…や、やめ…も、もう…やめ…」
「あ、う…あ」
陸奥も狂気の目に腰を抜かした。球磨や多摩は今にも飛びかかりそうだ。白雪たちもこの狂気の男を前にどうしたらいいかわからない。五ケ丘提督は…動かない。
『テメエの生みの親は最後まで、あんな奴の子、金に無心して産むんじゃなかったって言ってたぜ。蛙の子は蛙。親が親ならテメエもクズだな。ぜってえ許さねえ。テメエだけはぜってえに』
「ふ、ふざ…ふざ…ふざけ…」
『もうすぐ憲兵も駆け付けるだろうさ。ああ、テメエの仲間の憲兵ならすでにいねえぜ?たぶんタウイタウイの海の魚の餌にでもなってんだろうさ』
「は?」
『テメエを最初から提督にする気なんてねえよ。テメエが提督になったらテメエをぶっ殺してリンガを掌握し、2つの泊地の提督になるつもりなんだからよ。そのための当て馬でしかねえ。艦娘をおもちゃにして遊ぶだぁ?なめてんじゃねえぞテメエ』
「うがああああ!!!!僕は…そんな簡単に殺されないぞ!!!!そして…僕がここの艦娘にいろいろするんだああああ!!!!」
巻雲が失禁した。もう恐怖で動けない。
「おい巻雲!大丈夫か!?おい朝霜、手伝って「うおおおおおおおおおおおおああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
それは獣の咆哮のようだった。咆哮の主は…五ヶ丘提督だった。
「あ、あわ…あわわわ…」
朝霜や廊下にいた巻波、朝霜、早霜までもが腰を抜かしていた。大井も驚き固まっている。
部屋の中にいた艦娘はもう凍っているかのようだった。
「ブヒィ!?」
「許さねえ…テメエだけは…絶対に…許せねえ」
漣は思った。怒りでオールバックの髪の毛が逆立っている。あれだ。アニメでみた「オラは怒ったぞ!」って黒髪が金色の髪になるような。そんな感じだった。何か…髪の毛も紅くなっているような…。
隼鷹達初期メンバーもここまで提督が怒り狂ったところを見たことがないため、どうしようもないでいた。むしろその気迫に圧倒され、動けない。陸奥も腰を抜かしているし、加賀まで失禁してしまっている。
「艦娘を…性のオモチャだ…?都合のいいように…レイプしただ…?俺を追い出そうと嫌がらせをさせて…失敗したらまた犯すつもりだっただ…?」
『あーあ、俺知らねえぞ。そこまで切れた五ヶ丘、やべえぞ。死んでも知らねえ。まあ死んでもいいんじゃねえか?そんなゲス』
『あらぁ。それだとあの人が残念がるわよぉ?』
『あー、それもそうか。おい五ヶ丘。殺さねえ程度にやれ。俺が責任取る』
「ひっ、ひい!?ま、待て…待って!!そんなことしないから…あ、そうだ…お金…お金ならいっぱいあげるから、ね、ね?」
「歯ぁ食いしばれ…じゃねえと…死ぬ」
ギリリ…と右拳を握りしめる。血管がビキビキと浮き上がり、筋肉も恐ろしい程隆起する。その一撃は、一式徹甲弾とも言われるほどの拳。
「ゆるちてええええ!!!ぼくがわるかったからああああああ!!!!」
「艦娘を犯して、穢しておいて何が許してだ!!!!テメエは海までぶっ飛んで鮫の餌にでもなっとけやああああああああ!!!!!!!!顔面陥没しとけえええええええええ!!!!!!!!!」
「ぶるっふぁああああああ!?!?!?!?!」
顔面真正面にもろに拳が入った。そして一気に振り抜く。冷静にこれは外の駆逐艦の子達には見せられないなと加古が閉めたドアがぶっ飛んだ安久野のせいで壊れ、そのまま壁に背中から激突した。
「ひいいいい!」と言う声が聞こえたがこれは朝霜や秋霜の声だ。
「おー、すっげ。あれ生きてるクマ?」
「にゃ、ピクピクしてるから生きてるにゃ」
「あれだな。前が見えねえみてえになってるクマ。ちょっとおもしろいなあれ」
「獅子搏兎(ししはくと)…ド外道にはあれくらいで十分にゃ」
「ぱ、ぱない…」
哀れ安久野は顔面陥没、歯が全部折れ、おそらく顎の骨や頬骨が複雑骨折しているだろう。親子そろって救いようのない男たち。この男も、正義の裁きを食らって今半死半生の状態であった。
懐かしきクソタヌキの息子、安久野の息子です。下の名前はめんどくさいので割愛。
次回はこの安久野がやってきた真相を刈谷提督を交えて全て明かしていきます。
ですので次回も五ケ丘提督編です。たぶん次回で一旦横須賀に話を戻します。
次回もお待ちいただけますと嬉しいです。
それでは、また。