提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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真の屑、安久野の息子が登場したわけですが五ヶ丘提督の必殺顔面陥没パンチでノックアウトしました。

陸奥や加賀が提督を追い出そうとした真相。そして今回の全ての真相を明かしていきます。


第二百三十九話

「グ、グブフッ」

 

ドアを破壊し、壁にまでめり込むくらいの顔面陥没パンチを食らった安久野の息子は一応生きているようである。

 

「殺さねえようにはしといてやった。本当なら頭を弾くくらいで殴りたかったぜ!」

 

『それをやっちまったらお終いだからな。手加減したならまあいい。これから先は痛くはねえが死にたくなるくらいの苦痛を味あわてせてやるよ』

 

見ていた加賀は気を失い、巻雲は失禁。長波や朝霜も腰を抜かしていた。

 

「ご主人様…こりゃえげつなさすぎますぜ…」

 

「いや、頭弾くくらいっつってんだから加減したんだろ…てーか提督のパンチって本気出したらどんなことにって…あー、壁ぶち抜いてたな…」

 

オレの拳は金剛石。コンクリをもぶち抜くと言っていたパンチはダテではない。こんなもの人が喰らったらタダで済まないが…そこはまあ…気にしてはいけないのだろう。

 

「ちょっと漣ちゃん、履き替えてきます…ちびった…」

 

「またかよ!?」

 

「だぁってご主人様がここまで怒ったの初めてですも!!怖すぎてちびるに決まってるでしょ!?」

 

「わかったら早く履き替えてきなってー。漣、最近チビり癖ついてないか?」

 

「チビり娘ってなーwwwww」

 

「隼鷹さんのばかーーーー!!!」

 

『ククク、おもしれえところだな。まあ、詳しい話は落ち着いてからしてやる。いったん切るぞ』

 

「あ、はい」

 

刈谷提督は状況を落ち着かせるためにいったん電話を切った。しばらくして、本当に第一憲兵隊がやってきて安久野の息子は連れていかれた。

 

「おい、これ死んでないよな?」

 

「いや、息はある。あのお方は直接島へ連れてこいと言っておられたが…治療はしなくても大丈夫なのか?頬骨に顎の骨、砕けてるが…」

 

「外道に何があろうと治療はいらん。こちらでするから心配はいらない…だそうだ。しかしまあ…応急手当くらいはしておこう」

 

「承知しました」

 

「では五ヶ丘殿、これにて撤収いたします。しかし…あわや殺人になるかもしれない行為はお控えください…」

 

「申し訳ないっす…」

 

「ま、まあ捕縛がとてもスムーズに行えましたのでご協力感謝いたします。それでは!」

 

安久野の息子騒動はこれにて片が付いた。しかし、大府がここまでしてリンガを乗っ取りたいと思っていたのか。本当になりふり構わない奴だ…。五ヶ丘提督は呆れるほかなかった。

 

しかし危なかった。刈谷提督との連絡がついていなければ今頃本当にオレは追い出されていたかもしれないし、霞が絶縁を叩きつけていただろう。陸奥や加賀の行動も危うかった。ちくしょう、マジで大府の野郎だけは許せねえ。安久野の息子みてえにしてやりてえ。

 

「し、司令官…」

 

「霞?」

 

「ごめんなさい!!」

 

霞は涙を目に溜めながら深々と頭を下げた。

 

「おい、どうしたんだよ」

 

「あたし…あたし…あんたが今回の作戦を立案して…戦果を稼いでと思って…早とちりして…本当に…本当にごめんなさい!!!」

 

「いいや、大府の野郎の作戦指示を疑いはしたものの出撃させなければお前は提督をやめてもらうって言葉をそのまま信じて…出撃させた俺に非がある。怖かったよな…ごめんな…」

 

「司令官は悪くないんでしょ!!!なのに…あたしは司令官を疑って…怒鳴って…」

 

「霞はみんなを思って怒ったんだ。だから悪くねえ。隼鷹や加古たちもすまなかった」

 

「いやー?あたし達はこうじゃねえかなーって思ってたわけよ。ま、マジで死にそうだったけどよ」

 

「………すまん」

 

「提督のせいじゃねえんだ。悪いのはあの大府だろ?それにあの安久野ってやつも何か関わってたんだ。提督は命令に従うしかなかった。通信もできねえようだったしな」

 

隼鷹のフォローが入る。あらかた予測はしていたようだ。提督がこんな無茶な出撃をさせるわけがない。ましてや新米。あんな甲作戦のような戦場、提督に命令が出るはずがない。

 

「でもさ、そろそろ種明かしが欲しいよねー。で、漣ちゃんはまだ帰ってこないんだけどー…替えのパンツなくなった?」

 

「ちびって気持ち悪かったからお風呂に行ってたんですヨ」

 

ああなるほど、と入って来た漣に鬼怒はそう思った。シャンプーの匂いもするし…しっかり入浴してたわけね…。

 

「漣、お前はまーた髪の毛べちゃべちゃじゃねえか。ほらこっち来い。風邪ひくって言ってんだろ」

 

「艦娘は風邪なんてひきませーんよー」

 

「馬鹿は風邪ひかねえの間違いじゃね?」

 

「隼鷹さんひどすぎません?」

 

「はいはい…」

 

髪の毛をタオルで乾かし…なぜかあるドライヤーで髪の毛を乾かし…しっかりと髪を櫛で梳かしていつもの髪型にしてあげる。強面の顔をして器用に漣のいつものおさげを作る。それもきっちりと両方ともきれいにゴムで纏めて…。

 

「強面なのに父親みたいなんだよなぁ」

 

「強面オトン提督ってなんか聞いたことない?」

 

「おい、それはまずい」

 

そうして漣は髪を整えてもらってご機嫌だった。霞はそれを見てうらやましいと思った。

 

「あ、あたしもお風呂入ってくる!!べ、別に髪の毛を乾かしてもらったりとか、セットしてもらおうとか思ってないんだから!!!ちょっとさっきの一件で汗をかいたから…何よ漣!?」

 

「いやいやー?なーんもないですよー?ごゆっくりどうぞー。ご主人様のヘアーセットは気持ちよすぎてクセになりますぞー」

 

「はあああああ!?!?!?!?だから言ってるでしょ!?ちょっとお風呂に行って来るだけだって!!!!ばーか!ばかばかばーーーーか!!!!」

 

「もう霞の常套句みてえだなwwww」

 

「はあ…まあ髪の毛乾かして梳かすくらいならいいよ」

 

「にゃっ!?」

 

「行っておいで。疲れたろ?ゆっくり風呂入って疲れを取っておいで」

 

「う、うん…」

 

「おとんだわー」

 

「おとんですねぇ」

 

(白雪もいってこようかしら…司令官のお膝の上で髪を…ゾクゾク)

 

「おーい、ゆっきー帰っておいでー。妄想してイッちゃだめよー」

 

ガシッ

 

「漣さん?」

 

「ア、スミマセン」

 

何だかんだで日常。しかし、本土からやって来た組だけのようであるが。リンガの艦娘はいろいろと大騒ぎだ。

 

長波たちも事情がわからないがとにかくあの変な奴がどっか行ってくれてよかったと思っているし、衣笠もドッと疲れが出たが…真相が知りたいから眠気をこらえて話を待っている。

 

「しっかし…あの提督のパンチは…すげえな」

 

「深海棲艦でもぶっ飛ばせそうだよな…あたいも司令怒らせるのはやめとこ…てかやべえよぉ…あたい司令の尻蹴っ飛ばしちゃってるから…ひいい…」

 

「いやー、それくらいじゃお咎めなしっしょー。気合い入れてくれーって言っただけなんだし」

 

「長波姉…どうするの…?これからも提督についていくの?」

 

「当たり前だろ?あのくっせえヤツの話聞いてただろ?何かあたしも覚えあんだよな…夕雲姉と巻雲姉に何かしてたの…うっすらとだけどよ…」

 

「はい。早霜も…見ています」

 

「やっぱりだよな…だから提督に極端に怯えてんだよなぁ…」

 

「司令と和解できんのかなー。高波は司令のあれでまーた怯えちまってるし…」

 

「風雲姉や沖波姉は考えを改めだしったっぽいよ?まあ夕雲姉たちは…」

 

「んー…」

 

夕雲に巻雲。彼女たちは安久野の息子、さらには烏丸のおもちゃにもされている。人間に対して恐怖心が勝るのは仕方がないだろう。怒りがこみ上げる長波。

 

「あたしと朝霜で提督ともう1人電話の先の提督との話を聞くけど、いいか?」

 

「まーその方が話は早いよねー」

 

「早霜は…ドアから…見ています…」

 

「いや、だったら来てくれよ…あたいらだけじゃ整理が追いつかねえかもだろ?」

 

「ふふ…司令官のお側に…ふふふふふ」

 

「こわ!」

 

………

 

「では私が話を伺うで構わんのだな、足柄?」

 

「ええ。その辺は那智姉さんの方が理解が早そうだし」

 

「お前も頭の回転は早いだろう…」

 

「私は戦闘以外からっきしよ?」

 

「むぅ…まあ衣笠もいるし問題はなかろう」

 

「よろしくね!あ、絶対に提督に掴みかかったりとかしたらダメよ?」

 

「私を直情的な何かと思っておらんか?」

 

「え?違うの?」

 

「違うわ!馬鹿者!!!!」

 

………

 

「さて、お話をお伺いに…ああ、この上着をお返ししないと…匂いが消えてしまったわ…新しい上着を借りにいきましょうか…そうだ、薄着にすれば…」

 

………

 

「行くわよ、加賀さん」

 

「え、ええ…」

 

「心配はないわ。もう不安要素はなくなった。きっと事情も打ち明けてもらえるわ。それでいて信頼に足る提督なら良いのだけれど…」

 

「そう、ですね」

 

………

 

「コソコソ…ゆ、夕雲姉さんをお守りするために…巻雲はあえて敵地に侵入するのです…」

 

………

 

ゾロゾロと執務室に那智や衣笠、大井に陸奥、加賀。長波に朝霜、ドアからじーっと見つめている早霜と巻雲。部屋に入ってくればいいのに…と言っても聞かない。

 

それよりも気になるのが…。

 

「ふわぁ…」

 

ドライヤーで髪を乾かしつつ、髪を櫛で梳いてもらって蕩けている霞の姿だった。白雪もなんだかつやつやしているし…一体何だこれは?

 

「ああ、もうちょっとしたら刈谷さんから電話かかってくるんだけど、それまでに霞の髪の毛を乾かしてセットしとこうと思って。ほら、ヘアゴムあるか?よし…えーと確か霞は…右側にこう…ん、きれいな銀髪だよなぁ。ちょっと髪質が悪いな…シャンプーとトリートメント。何か横須賀からきた妖精さんが持ってけって言ってあったな。あれに換えるか」

 

「えー!?ご主人様、いいシャンプーとかあるなら言ってくださいよー!」

 

「すまん…忘れてた…」

 

「ぷんぷん!髪は乙女の命なんですぞ!!!!てかかすみんだけ髪の色褒めてもらってずるい!ご主人様!今度髪を洗ってくださいよ!?」

 

「わかったよ…そのきれいな桃色の髪が台無しになるもんな」

 

「ちょっと!今はあたしが手入れしてもらってるのよ!?」

 

「かすみんの嫉妬かーわーいーいー!」

 

「うるちゃいわねこのクズ!!」

 

「顔真っ赤じゃねえかwwwww」

 

「うるちゃい!!!!!」

 

「よし、できたぞ。明日からはちゃんといいシャンプーとコンディショナー、トリートメント置いとくから使ってくれな。漣、使い方を教えてあげてくれ」

 

「え!?洗ってくれないんですか!?」

 

「はあ!?」

 

「また今度な」

 

「ご主人様のまた今度は半年とか1年かかります!!!今すぐ!ハリー!」

 

「うるさいなぁ…」

 

「て、てか司令も漣たちと風呂に入んのか?」

 

「あー違う。ちゃんと水着で頭だけな…」

 

「うっへー…それも大胆っつーか」

 

「あ、水着ない!忘れた…」

 

「じゃあなしな、漣」

 

「しょぼーん…」

 

何だこのやかましさは。それに霞があれだけ心を開いているとは…那智や陸奥達は驚きであった。早霜や朝霜はあたいたちもやってもらうかーと言っているし。

 

「ほい、霞。できたぞ。ん、きれいだな」

 

「ほ、褒めても何も…み、見るなぁ!」

 

「駆逐艦、霞だよー!用があるなら目を見て話しなさいな、と言うのはどこのどいつだーい?あたしだよ!」

 

「うるさいわねこのクズ駆逐艦!」

 

「アアアアアアアアアア!!!」

 

「ぶっはははははははは!!!!!!」

 

騒がしい。いや、しかし悪い気はしない。和気あいあい。これこそが…信頼できるかもしれんと言うものだ。うむ…私も酔いつぶれて提督の肩に嘔吐してしまったらしいが…お咎めはなしだったな。飲みすぎには気を付けろよとだけ言われてしまったが。

 

「長波姉もやってもらうか?あたいらと一緒に」

 

「うわああ!?や、やらねえよバカ!!!」

 

「うらやましそう…でした、ね」

 

「うるさいなぁ!!」

 

なるほど、ある程度駆逐艦とは信頼を築いているのか。巻雲は信用しておらず、おそるおそる覗き込んでいるようであるが。

 

2000。電話が鳴った。なるほど、こういう打合せであったか。さて。では聞かせてもらおうか。

 

「…もしもし」

 

『よお、ちゃんと出たな。出なかったら本土でかわいがってやろうと思ってたぜ。まあそんなことはいい。そこに艦娘はいるか?』

 

「はい。白雪たち含めリンガの艦娘も大勢」

 

『それなら話は早え。話を始めるぞ。今回の一件は率直に言えば全て大府の差し金だ』

 

大府。あの機械…前の提督とつるんでいた男か。

 

「全て、ですか!?」

 

『そうだ。全てはお前を失脚させるため、リンガを手に入れるため、そこの艦娘を全員、白雪たちも含めて掌握するためだ。安久野の馬鹿はそのための噛ませだ』

 

………

 

『今回の一件は全て大府。大府の馬鹿親、海軍、陸軍が絡んでいる』

 

「絡みすぎじゃないっスか…?」

 

『大府の馬鹿に馬鹿親が指示されて動いてたんじゃねえかな。コネだけはそこそこ広いのがあの親だ。ま、あの会社は癒着だけで大きくなった会社だ。一宮には敵わねえけどな』

 

そこまでふんだんにコネを使って何をしようとしていたんだ?

 

「大府を…大本営に異動でもさせたかったんスか…?」

 

『半分正解だ。ただ、今のあいつは少将だ。三条は過去の実績から准将でも横須賀を任せることになったわけだがあれは古井司令長官が無理くそねじ込んだからな。清州のおっさんはかなり心配してたけどな。大府はタウイタウイ、リンガ、ブルネイの三泊地を掌握したかったのさ。手始めにお前をそこから追い出す。その作戦だった』

 

3つの泊地を掌握したところで何ができる?そんなことできるわけがない。

 

『3つの泊地を掌握して自分の管理能力、戦果を誇示したかったんじゃね?知らねえけどよ。んなことさせるわけねえだろ。で、手に入れた情報ではブルネイの豊川のおっさんも消すつもりだった』

 

「全部消して消して…あのクソ野郎…!!!」

 

『それしかできねえかわいそうな奴なんだ。で、お前に出された作戦は俺と三条で片づけると言ったよな?』

 

「はい」

 

『これは完全に大府に漏れないように機密にしたはずだった。けどまあ内通者がいたようだな。それとご丁寧に海軍から漏れ出たことにならねえように陸軍がこれをハッキングして大府に流した。えらく遠回りなことをしてまでこの作戦を手に入れたかった』

 

「はあ?オレをそこまでしてここから追い出したかった…と?」

 

愕然とすると言うか呆れた。隼鷹なんかはあからさまに呆れている。白雪は怒っているのか無表情。

 

『それと同時に噛ませを置いて、しばらく泳がせ、性暴力などを働いていると暴露してアレを逮捕し、空いたところをかっさらう。そうしてリンガを頂きだ』

 

「馬鹿じゃねえの?」

 

思わず本音が出ていた。何と言うか…稚拙すぎないか?

 

『馬鹿なんだよ。あの馬鹿、勉強はできるがその辺が壊滅的に馬鹿なんだよ。世の中そんな甘くねえのにな』

 

フン、と鼻で笑う刈谷提督。

 

『で、だ。そこに陸奥と加賀いんだろ。お前が着任すると知って慌てて豚を送ったわけだが、陸奥、加賀、夕雲、巻雲に性的暴行を働いて屈服させた。そんでこういったんだ。『自分の前に仮の提督が来る。けど、そいつを早急に追い出せ。さもないと他の艦娘も。夕雲と巻雲にはテメエの妹全員ももっとひでえ暴行を働いてやる』とな』

 

な、あ…と長波や朝霜は絶句。陸奥も加賀も顔を真っ青にしているし、巻雲はドアの隙間から「ひぅ!」と妙な声を出していた。早霜も無表情。一気に頭に血が上る五ヶ丘提督。やっぱり殺しておけばよかったか。刈谷提督もどうだ、殺したくなるだろと笑っているようだった。

 

『が、もうその心配はねえ。内通者とハッキングした陸軍、それから今回の作戦を大府に漏らした馬鹿は全員始末した』

 

「始末した!?」

 

『殺しちゃいねえよ。大事な証人だ。殺しても利益になんざなりゃしねえ。殺してアスファルトにでも化けててほしいもんだがな』

 

刈谷提督のコネは恐ろしい…絶対に敵に回してはならない。

 

………

 

「ふふふ…これで俺も大府さんのおかげで昇進できる…」

 

「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…おい、貴様」

 

「ひっ!?け、憲兵!?し、しかもお前は!?」

 

「貴様に昇進はない。あるのは無間地獄への転落しかない…」

 

「ひ、ひいいいいいい!?」

 

「貴様のような海軍の恥晒しはエビになっとけえええええ!!!!!」

 

「ギャアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

一瞬の早業で手と足に手錠をはめ、逆エビ反りにされる海軍憲兵の1人。本当なら日本刀で輪切りにしたかったとか。

 

………

 

ドゴォ!!!

 

ドアが蹴破られ、鉄の棒を持った男がニヤリと笑いながら入って来た。

 

「地獄からの直行便だねぇ!お前のやったことは陸軍の恥晒しだねぇ!今すぐ死ぬべきだねぇ!!!」

 

「ひいいい!?な。何のことだ!!!」

 

「しらばっくれるか。証拠はあがってるんだよ。お前が海軍の機密作戦をハッキングして大府の坊主に流したって話。ここにハッキングの履歴、そこのパソコンのID。全部駄々洩れだねぇ」

 

「な、く、くそおおおお!!!」

 

大汗をかいているハッキングをした男は慌てて銃を取りだし、撃つがかすりもしない。

 

「そんな弾当たらないねぇ。それよりこれは正当防衛だねぇ!お前は死ぬべきだねぇ!!!!」

 

「ゴフッ…ゴボァ!!!」

 

長い鉄の棒で肝臓を突かれる。肋骨の折れる鈍い音がしたが刺さらないように調整してある。

 

「すぐに死なないようにしてやった。お前のしでかしたことは許せないねぇ。ゆっくり死ぬといいねぇ」

 

彼のチカラならば風穴を空けることさえ可能であるが、絶対逮捕を条件にしているので殺すのは免れた…が、この先死よりも恐ろしいことが待ち受けているのだ。

 

………

 

「あ、あかん…あいつと連絡がつかへん…このままじゃ大府さんに殺される…」

 

「その前に俺が殺したるわ」

 

「き、城戸上官!?」

 

「お前、大府の父親と繋がって安久野とか言うクソの息子を探し出して大府に引き渡したらしいなぁ?あんなんただの犯罪者やんけ。おどれ、ええ度胸やんけ。俺らの管轄でそんなことして生きてられると思うとるんか?」

 

「ぐ、くう!!」

 

「おとなしく投降したら命だけは助けたる。ああ、他の憲兵は全員麻倉が殺ってもうたわ。全員加担してるって知っとるからな。抵抗したから正当防衛や。で、お前は?」

 

「ほならお前を殺して逃げて大府さんにええポジションもろて大金で海外で逃げて暮らすんじゃああああ!!!」

 

パン!!!

 

「殺せるもんなら殺してみい。そのとろくさいチャカ抜きで何ができんねん」

 

「上官、終わりましたわ。てか、俺誰も殺してませんて。そっちも終わりはりました?」

 

「尾張名古屋は城でもつぎゃあ」

 

「意味わかりません。あー、終わったんですね。ほな報告に帰りましょか」

 

「あーちょっと待って。タコ焼き食って帰ろ。それくらいしてもええて言われてるから」

 

「俺ら犯人護送の任務もあるんです。そんなん食うてられません」

 

「……なんでやねーん…このボケがぁ!!俺は何て不幸なんやー…」

 

「いや、蹴り入れたらあきませんて」

 

…………

 

関わったものは全員逮捕された。いや、ここまで派手にやっているのだが全てなかったことになっている。大本営、陸軍ではこれに関し、震えあがる人間が多数いたらしい。どうも多数の人間に声をかけていたようだが、金や地位に目が眩んだ人間は少なかったようである。しかし、加担していたら…行方不明扱いになっている連中のようになっていたのだろう。

 

『ま、数はそんなにいねえようだな。あいつらは大府だから動いたんじゃねえ、金で動いた。それだけだ』

 

「大府の威光は…」

 

『ねえよ。大府一派って呼ばれてた連中が動いていたのは爺、亀一郎の影響でしかない。馬鹿親、康介や大府の馬鹿の威光なんざねえよ。リスクがでかすぎるんだ。亀一郎ならもみ消せたかもしれねえが馬鹿親や大府はそんな頭はねえし、チカラもねえ』

 

馬鹿だよな、と刈谷提督は少し笑っているかのように聞こえた。関わってられるか。命がいくつあっても足りない、と降りた人間が多かったようだ。目先の金に釣られた阿呆だけ動いたようだが人の少なさも相まって刈谷提督の情報網に全てかかった。

 

古井司令長官も堀内提督でさえも掴めなかった情報。彼は恐ろしい程の大きさの網でこれらを全てからめとった。恐怖で動かしたわけではない。金で動かしたのは多少ある。しかし、それらは全て刈谷提督の人徳にある。そして、『未来視』の高雄でさえ唸るほどの頭の回転、機転の利かせ方。全てが今刈谷提督は絶頂にある。

 

自分があわや殺されかけたときも「悪いが今回の件は俺と堀内、古井のおやっさんだけの内密にさせてもらう。これだけじゃあいつを海軍から叩き出せない」と保留にした。本来ならばすぐさま逮捕するべきだ。しかし、それだけでは彼はどんな手を使ってすぐ海軍に戻って来るかわからないし、それよりもさらに上のポストに就く可能性もあるからと危惧した刈谷提督の判断だった。

 

「今になってわかったことですが…あいつはもう逮捕しても何もできないのでは…?」

 

『馬鹿親もろとも消さねえと無理だ。だから大府康介にもいろいろやらしてもらって共々消えてもらう。大府コンツェルン自体ももう不要だ。あいつのマネーロンダリングの場にされても困るからな。調べてみたら結局洗浄の場にされてただけだ』

 

…とんでもねえな。国家機関をマネーロンダリングの場にするとは…それだけ大府亀一郎の影響は大きかったのか。

 

『亀一郎の影響が消えたおかげで鬱陶しい連中を全部叩き出してやった。もう60も過ぎた老害が何もできねえくせにうるさくてたまらなかったんだ。馬鹿がアレを殺してくれたおかげで俺らがやりたい放題できるようになった。おまけに俺と堀内は大将、あいつは少将。権限は俺らの方がでけえしな。人事権を持ってた奴らも全員追い出した。いい風が吹きそうだぜ』

 

大本営ではかなり大きな動きがあったらしい。日本から離れた離島だと何が起きているかもわからないが…とにかく大きな改変があったようだ。

 

『お前も俺と堀内の権限で鹿屋へ移す。で、問題なのがそこで烏丸や安久野の馬鹿におもちゃにされちまった艦娘の問題だ。短期間でお前に信頼を寄せる艦娘はある程度いるだろうがそうでないのもいるだろうからな』

 

そこが問題なのだ。霞や衣笠、長波たち…一部は信じてくれたが未だ夕雲型の半分ほど。陸奥に加賀…巡洋艦…まだまだ問題は山積みである。

 

「…今回の一件であわや霞や衣笠からの信頼を失いかけました。漣たちまで…失うところでした…!それに…陸奥や加賀は安久野のせいで…大井の話も聞きました…あいつら…マジで許せねえ…!」

 

『怒りもほどほどにしとけよ。お前は直情すぎんだよ』

 

「……なんで…なんで艦娘はこんな扱いが雑なんでしょうね…女の子じゃねえか…ちょっと海に出て戦う女の子じゃねえか…」

 

『そうだな。そんな艦娘に守られているってことをわからねえ馬鹿が多すぎる』

 

「オレは…この深海棲艦との戦いが終わるまで…白雪たちと戦いながらも…そうでないときはワイワイ騒いで楽しくやりたい。性的なおもちゃや…捨て艦…奴隷…そんなの…死んでもごめんです!」

 

「司令官…」

 

「ちょ!?司令官!?」

 

おもむろに霞を抱きしめていた。霞は顔が真っ赤になっていた。白雪と漣がどうして自分ではないのか…と目がおかしくなっている。

 

「髪の毛を乾かしてあげたら気持ちよさそうにしてるんです。甘いもの食べておいしいって笑うんです。って大井、お前なんだその薄着は…これ着とけ。それ…オレの上着か?」

 

「え?ええ…あ、ありがとうございます…スンスン…はぁああああ♡」

 

「……大井さん臭い…」

 

「は?」

 

「これは洗濯するわ。あたしが。きっちりと。大井さん、司令官の服を盗んだりしたら承知しないわよ」

 

「ふん…正妻ぶってんじゃないわよ…」

 

「なんですって!?」

 

「いいえ~、なんでもありませ~ん♪クンクン…♡」

 

「こらケンカすんな」

 

「ぴゃっ!頭撫でるなぁ!!」

 

『ククク、おもしろいことになってんな。せいぜい刺されんなよ?』

 

「どういう意味ッスか…」

 

『いや、気にすんな』

 

どういう意味なんだろうか…てか白雪や漣…鬼怒の目が怖えけど…。

 

………

 

陸奥は思う。霞が提督に臆することなくがなり立てているし、それでも頭を撫でられている光景をボーッと見ていると…胸が痛い。彼女は人間の優しさを知らない。いきなり身の自由を奪われ、暴言を馬鹿みたいに浴び、性的なことまで…。あの子は人間の怖さを知らないのね…どうせこいつも…と思いつつも、彼が連れてきた漣や隼鷹が笑っている所を見ると羨ましかった。

 

加賀も同じようだった。那智も…どことなく今の光景を眩しそうに見ている。これが本来の提督と艦娘のあるべき姿なんだろうか…?あの提督や次の提督と言っていた男たちが…違う存在だったのか…?わからない…加賀はもう混乱して目を回しているようだ。

 

巻雲はまだあれが演技であるのではないかと疑っている。彼女も暴言と暴力しか受けていないからだ。しかし…霞や漣…白雪が羨ましい…そう心の底では思っていた。

 

「霞はほーんと司令大好きだなぁ」

 

「朝霜ぉ!変なこと言うんじゃないわよ!!!ちょっと!なでる手が止まってるわよこのクズ!!!」

 

「お、おお…嫌じゃあないんだな?」

 

「嫌だったら近寄りもしないわよ」

 

「かすみん、いい加減変わってくださいませんことー?」

 

「嫌よ」

 

「司令官、詳しく説明してください。私は今、冷静さを欠こうとしています」

 

「白雪はまたそれかよ…」

 

「朝霜も撫でられたらいいのよ!そうしたらわかるわよ!」

 

「はああああ!?なんであたいまで!?」

 

「あー!じゃあうちが撫でられまーす!」

 

「白雪ちゃんストーーーップ!!!!目がパなくやばーい!!」

 

巻雲は妹である秋霜やいつのまにか撫でられている早霜を見ていた。司令官の顔は優しかった。さきほど男を殴り飛ばした時の顔とは全然違う。

 

「むふー!なんかこれ…落ち着くなぁ…ふわぁ…」

 

「ふふ…ふふふふふふ…素敵…素敵…です」

 

「おい早霜、目ぇ怖いって…ってわああああ!あたしを撫でるなああああ!アホかかああああああ!!あぅあぅ…」

 

「え?撫でてほしいから近寄ったんじゃないのか?」

 

「違うわアホー!!!!」

 

「長波姉、でも何か頭をちょっと下げていってなかった?」

 

「巻波ぃ…あたしがそんなこと…」

 

「ふふ、素直ではありませんね…霞さんと…一緒…」

 

「「一緒にするな!!!!!」」

 

巻雲もあそこに入りたいな…でも…司令官に近づこうとすると…足が震える…。

 

『あー、お取込み中悪ぃが…五ヶ丘。テメエにとって艦娘って何だ?』

 

その言葉にぴたりと喧騒が止む。これは刈谷提督の究極の質問だろう。今後の運用、そして五ヶ丘提督への扱いがガラリと変わる。逃げ出そうと思った巻雲も、逃げたい気持ちを思いきり抑え込んでまたドアからのぞき見をする。気が付くと沖波や涼波までいた。風雲もいる。高波は夕雲お姉様と一緒だろうか…?

 

「オレにとっては…かけがえのない仲間です。一緒に戦う仲間であって、一緒に釜の飯を食う家族であって、一緒に笑いあう戦友(とも)です。ですから…ここにいる子達に危害を加えようとする奴は敵です。人間なら俺がぶっ飛ばします」

 

眉間にしわを寄せ、先ほどの男のこと、前の司令官の事、そして今の司令官を撃ったり白雪さんたちを撃ってケガをさせたあの人の事を思い返して怒っているんだろうな、と思った。ヒュウと長波は口笛を吹いた。朝霜は頭を撫でられたことで顔を真っ赤にして頭をずっと触っている。秋霜や早霜はご機嫌らしいし、今の言葉を聞いて嬉しそうだった。

 

「にひひ、ご主人様はお兄ちゃんみたいな人ですからねー。家族、かぁ。嬉しいですぞ、お兄ちゃん!」

 

「なんだよそれ…」

 

「キヒヒ、確かに兄貴っぽいよなぁ。漣の髪を結ったり疲れて寝落ちした白雪を抱っこして寝室へ運んだり、あたしらに小言言ったりさー」

 

「ふぇえ!?わ、私は司令官にそんなことをされていたんですか?!」

 

「おう、お姫様抱っこでしっかり抱かれてな!提督の服しっかりつかんでむにゃむにゃ言う白雪はかわいかったぜ」

 

「あーあったあった!あの時の白雪ちゃん、幸せそうだったよねっ!」

 

「い、いやああああああ!!!!

 

「おーい白雪!どこ行くんだよ!!!!まだ刈谷さんの話は終わってねえぞー!!」

 

わひゃあ!と白雪にぶつかりそうになって回避する巻雲。これは…一度お姉様や高波とお話をしてみる必要がありそうです…。

 

「巻雲姉さん…夕雲姉さんとお話…する?」

 

「それしかないかなぁ…夕雲姉さん、大丈夫だといいけど…」

 

多少司令官への信頼は上がった。しかしまだ怖い。夕雲姉さんは必要以上に恐怖を抱いている。当たり前だ。あんなことをされたんだから。風雲が言うように…姉さんにお話をしてみよう。こんなことをしてた。言っていたって。

 

「長波!みんな!夕雲姉さんとお話を夕雲型みんなでしますから集まってほしい…です!」

 

「くっそー、超はずい…巻雲姉?ああ、わかった。提督、一旦あたしらは出るわ」

 

「ああ、わかった。その…夕雲や高波…清霜…頼んだよ」

 

この場にいない妹を気にしてくれているのか。ちょっと嬉しい。夕雲姉さんがいい方向に向かってくれるように頑張らねえとなーと朝霜は笑顔で言っていた。巻雲もそうあってほしいです。また…笑ってほしいです、夕雲姉さん…。

 

『で、次の話にいくぞ』

 

最後に電話の向こうの司令官がそう言う言葉を言っている。続きが気になるが…一応司令官の思いは聞けたのでここまでだ。そのあとのことは霞ちゃんにでも聞こう…そう思って駆逐艦寮へ向かう巻雲たち。希望の光が少しだけ灯った気がする夜だった。




夕雲型に少しだけ明るきい兆しが見えてきた…そんなお話でした。艦娘はなんでみんななでなでに弱いんでしょうね(すっとぼけ)

長くなりますので次回も五ヶ丘提督のお話です。刈谷提督が大府一族への怒りを五ヶ丘提督にぶちまける話になります。同時に陸奥や加賀、那智など駆逐艦とは違う大人な考えを持つ艦娘達の思いも交えて話を続けて行こうかと思います。

刈谷提督の野心。それを吐露します。もちろんこれは事前に玲司にも話してあることです。

次回もおまちいただけますと幸いです。個人的に霞がキャラを大きく崩壊させていますがデレ霞は私の癒しですのでこのスタンスは崩しません(キリッ

それでは、また。
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