ここからリンガ泊地は一気に動き出していきます。
伊19達を助け出したリンガ泊地は騒然となっていた。慌ただしく動く漣や隼鷹。そして悪臭を振り撒きながら廊下を駆けずり回る提督。背中には潜水艦…。青葉はすぐさま動き出し、臭いを我慢しながら必死の形相で潜水艦をおぶったり抱いたりして走る提督を写真に収めていく。
何かあったに違いないが、彼がまた艦娘を助けたのだろう。青葉にとって彼はもはや正義のヒーロー、と言う認識だった。洗脳装置を破壊し、大府から身を挺して艦娘を守ろうとし、自分を逃し…汚い臭い男が陸奥や加賀達の弱みを握って脅しをかけ、今五ヶ丘提督を追い出そうとし、挙げ句の果てに自分達に凌辱の限りを尽くそうとした男の顔面を陥没させ…今度は幽閉された潜水艦の救助。もうヒーロー以外何がある?青葉はずっとついていきます。そう誓うのであった。
………
ドックは野戦病院のような様相だった。五ヶ丘提督が必死に漣と隼鷹に指示を出し、とにかく汚物まみれになっている潜水艦に優しく声をかけながら丁寧に洗っていく。
「イク、きれいになってきたぞ。臭いもすぐ取れるからな。洗ったらドックに入ろうな。まずは体を癒さないとダメだから。ごめんな…こんなことになっているのに気がつかなくて…ごめんな…」
「……あったかいのね…幸せなの…あったかいなぁ…」
「ご主人様ー!伊201さん!ドック100数え終わりましたー!」
「隼鷹!フレイの体を拭いて乾かしてあげてくれ!タオルは他の洗濯物と一応分けろ!陸奥!迅鯨と長鯨にお粥を作らせてくれ!米の形が残らないくらいドロドロにしたやつと言ってくれ!」
「わ、わかったわ!」
「よーしイク、きれいになったぞ。さあ、ここに肩までゆーっくり浸かるんだ。漣…」
「ほいほい。んーと、ちょっと長いですねー。600秒!見てまーす!」
「おー提督!あそこはもう閉じたってよ!それから全部汚物とか綺麗にして消毒も完了してるってよ!」
「わかった!ここも全員入渠が終わり次第全部洗って全部消毒するぞ!手伝ってくれ!」
「あいよー任されたぜ!」
「ほいさっさー!」
「提督!なんか手伝えるか!?」
「加古!ありがてえ!今隼鷹がパジャマに着替えさせた娘達を寮の一階に空いている部屋があるらしい!ベッドも5人分揃えてあるらしいからそこへ1人1人運んでやってくれねえか!?」
「まっかせとけー!白雪と鬼怒が事務処理は任せろってよ!」
「あの子達にもお礼を言わねえとな…」
初期メンバーが走り回る。見たことのない女の子を抱えて走る加古を見た霞が走ってきた方向へ向かう。
「うえっ!?なに…このにおい………」
強烈な悪臭が浴場…ドックから漂う。思わず食べたものを吐きそうになるくらいだ。
「漣!イクはまだか!?」
「あーと120秒ですー!隣にニムさん入れてください!」
「わかった!オレはフーミィを洗うからな!」
「こっちはお任せー!」
「あたしも時間かかるなら参戦だーい!ニムだっけ?熱かったら言ってくれよな!」
大きな声が聞こえる。司令官に…漣、隼鷹さんだろうか。一体なにが起きていると言うの…?霞はドックへ駆け寄る。近づくたびに酷くなる悪臭。ドックの脱衣場には茶色い何かがべったりと身体中についた艦娘…だろうか、が1人横たわっていた。見たこともない。水着…潜水艦?
「司令官!」
「霞!入るな!ここは衛生的にやばい!入るな!いいぞって言うまで誰も近づけるな!いいな!」
「っ!?わ、わかったわ!」
司令官の鬼気迫った表情と言葉に従うしかなかった。またか。私はまた司令官のために何もできないのか。ギリリ…と唇を噛む霞。助けられてばかり。お世話されてばかり。悔しい。本当なら私がお世話してお世話して私がいないとダメだと泣きつくまでお世話してやろうと思っていたのに。
しかし、司令官達の鬼気迫る表情と必死さに、自分は怖気づいてしまったのも事実だ。そしてあの信じられないくらいに汚物に塗れた艦娘。とてもではないが…触ろう…なんて感覚が湧かなかった。アレに触れなくてよかった、と思う邪な感情と仲間があんなことになっているのにその言いぐさは何よと言う天秤が揺れ、ただただ霞は泣きながら廊下を走った。
何だ何だと艦娘達がドックに向かおうとするが、手を広げてそれを制止する。
「みんな!ここから先は行っちゃダメ!!!今ドックは大変なことになってるから!出撃とかもないし部屋に戻って!!!!
「霞ちゃん、どういうこと?陸奥さんがすごい剣幕で食堂に走って行ったのと何か関係があるの?」
「私にはわからない!ただ、司令官が衛生的にここに近づいちゃダメとしか聞いてない!でも…でも艦娘を助けているような感じだった!!!司令官を信じてここから先には行かないで!!!!」
これまた廊下に響き渡る怒号にも感じる声に、足柄はおろか那智までたじろいだ。ただごとではないことが起きている。事情を知りたいが知っているであろう者は全員慌ただしく何かをやっている。白雪や鬼怒は執務を優先しているが故もあるが、提督に敵対心を持っていたがために白雪たちからはやや冷たい反応が返って来てしまう。もどかしい。隔靴搔痒。早く事情が知りたいものである。
「仕方があるまい。皆!各自の部屋に戻るぞ!霞が言うのなら間違いなかろう!」
那智が一旦その場を取り仕切る。那智はこういう時冷静な判断ができる。僅かに漂う異臭を感じ、それでいて提督が動いているのならきっと何か艦娘のためになることをしているのだろう。私は提督についていくと誓った。それを覆すのは私の理念に反する。いろいろと忙しいものだ。あの男はしっかり休めているのだろうか?今度は心身を休める目的で酒にでも誘うとしよう。
そうしてゾロゾロと寮へ帰ろうと思ったが寮も立入禁止状態。
「たちいりきんし はいったものにはのろいがあるぞ」
子供が書いたような字で書かれた張り紙、ロープ…どうしようもできん。仕方なく食堂に行くことになった。食堂では目をキラキラ…いや、ギラギラさせた迅鯨と長鯨が何かを作っていた。
「うふふ…うふふふふ。やっぱり提督には私達がいないと…頼ってくださるなんて…天にも昇る気分だわ…ねえ?」
「はい…これはもう…指輪を頂ける日も近いですね…」
なんなのだこいつらは…いや、それはどうでもいい。粥…か。しかもかなり煮詰めている。お粥と言うよりはもはや重湯だろう。それほどまでにひっ迫した艦娘…おそらくはあの男ではない。先日提督が殴り飛ばした男がやらかしたことだろう。人間というものは醜いモノだらけだが、その中であの提督だけは違う…いや、他にもいるのだろう。あのようにまっすぐな提督が。人間が。私はそれを信じてみよう。那智はそう思う。
できあがった重湯はすぐさま今度は鬼怒と白雪がやってきて寮へと持って行った。
「消毒は済んでいるし、潜水艦の皆さんもきれいになったとのことですので持っていきましょう。わたし、鬼怒さん、加古さんで食べさせて休んでいただきましょう」
「りょーかい!じゃあいこっか!」
カラカラとカートに重湯の鍋と5つの器、スプーン。運ばれた潜水艦というのは5人か。潜水艦…確かにいたような…記憶が定かではない。ううむ、わからん。あいつらは許可が出たらしいが私たちはまだまだか。そこいらで今回の件の話で持ちきりだ。
「司令官、一体何があったのかな…気になるね」
「鬼畜なことはやってねえだろ。アイツはオレが認めた提督だオレはあいつについていくぜ」
「木曾ちゃんいつの間に…?」
「と言いつつ長良もだろうが。アイツの動向、気にしてばっかじゃねえか。司令官司令官ってよ」
「ぎくっ。だって、青葉さんのあの新聞とか読んでたらさぁ。やっぱり信じていいかなってなるよ」
「あのぶん殴ってる瞬間を撮った青葉さんもすげえな…アイツのパンチ、この目で実物を見たかったぜ…」
長良と木曾は提督につくつもりか。足柄と私もそうだが…だがまだ話しかけるきっかけが作れないことを残念がっている、気にせず話しかけにいけば良いのだがな。奴は気さくに話を聞いてくれるだろう。
「夕雲お姉様…」
「また…またあの方達なのね…もう…嫌…」
「ちくしょー、また夕雲姉が病んじまった…」
「これじゃあどーどー巡り?だぜ。知らねえけど」
「はうう…司令官さんは怖い人じゃないかも…ですけど怖いかも…です」
「どっちなのさ高波姉さん…」
「藤、早、浜はどうすんだ?あたしはもう決まったぜ。夕雲姉さんにゃ悪いけど…」
「お姉ちゃんがいいなら…」
「はー!?あたし待ち!?ちょっと勘弁してよ!」
「は、はま、浜波は…し、司令、司令をしん、信じ、たい…です」
「岸波は問題ありません。夕雲姉さんにもお近づきになってほしいものですが…」
夕雲型は概ねついて行く気らしい。ただ、あの豚によってつけられた傷のせいで夕雲と巻雲はまだ懐疑的だ。説得で落ちるのも時間の問題だろうが…ん?清霜はどこへ行った?見当たらんが…。
「皆さん!大スクープ!大スクープですよ!」
青葉が飛び込んできた、号外!と書かれた青葉の新聞。
「青葉、見せてくれ。何があったのか我々もわからず、寮にも戻れずで困っている」
「はい!それがですね…!」
事の顛末を聞いた一同は絶句。先ほどから慌ただしいのはその潜水艦5人を救い出し、きれいにし、食事を与えて休ませているのを提督が行なっていると。あの男はどこまでも艦娘にまっすぐだな…おそらくだが艦娘がそのようなことで妙な感染症にかかることもあるまい。それよりも提督の方が問題ではないか?
「提督はどうしているの?提督の方が私たち艦娘より感染症なんかの危険が高いじゃない!」
私が言おうとしていたことを足柄に取られてしまった。そこに長波や玉波たちがうんうんと頷いている、夕雲は虚ろな目で話を聞いているが…大丈夫なのだろうか。最悪の場合、提督の自作自演と捉えてしまう可能性があって厄介だな。
「消毒は完了したわ。全員、部屋に戻っても大丈夫らしいわ」
長らく話し込んでいたせいか消毒、清掃が終わったらしい。陸奥がやってきた。どこか疲れきっているな。その言葉を聞いてガヤガヤと食堂を去って行く艦娘達。
「陸奥。一体なにがどうなって潜水艦が汚物まみれになったのだ。聞かせてはもらえぬか」
「那智…ええいいわ。今回は…提督に本当に助けられた。私の心もこれで少しは落ち着く…」
「救われるではないのだな」
「あの子達を見殺しにしたんだもの。すっきりはしないわ」
「そうか。して、なにがあった?」
陸奥から語られた話はどうも足柄曰く、顔を真っ赤にして今にも怒鳴り散らしそうであった、という事だ。人間はやはり…おぞましい生き物であるな。
………
「お、終わった…」
デッキブラシを杖代わりにガックリと頭を下げる五ヶ丘提督。同時に漣も隼鷹も疲労困憊と言った感じでへたり込んでいた。
「もぅマヂ無理…疲れた…」
「体洗って…風呂入れて…体と髪の毛拭いて…汚物を拭いた雑巾の始末…徹底的な掃除と消毒…オレら特殊清掃員でも…やれるんじゃねえか…」
「ぜってー嫌…」
潜水艦達を救助し、徹底的に汚物を洗い流し、完了、その後がまた地獄だった。運んできた廊下は汚物が靴の跡になって続いているし、脱がせた水着も汚物まみれ。体も汚物まみれ。悪臭は残るわそれを放置しておくとどんな感染症になるかわからない。なので妖精さん印の超⭐︎強力消毒剤(まぜるなきけん)を使って今の今まで徹底的に掃除と消毒をしていたのだ。
特にドックはとんでもないことなっていたので念入りに念入りを重ねた徹底的な作業。しかも蒸し風呂のような暑さの中での作業ゆえ、熱中症で倒れるかと思った。そうしてなんとか終えたのであった。
「ご主人様…髪洗ってください」
「オレかよ…まあいいけどよ…隼鷹、お前も入るだろ?」
「いっ!?て、提督はどうすんだよ!?」
「オレも入る…体が臭くてたまらん」
(やべーどころじゃねえじゃん!?提督と風呂!?いや、今ここでイモ引いたら今後2度とチャンスはねえじゃん!入るしかないだろこれはよ!)
この間、わずか0.3秒。
「おーう…入る…あたしも疲れちまった…」
(白雪、鬼怒、加古、すまね…くひひ♪)
抜け駆けを詫びたがそんなことより提督と一緒に風呂!それにより隼鷹のテンションは最高にハイってやつだ!
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「ああ~生き返るわぁ~」
「漣おばんくせえなぁ…」
(てーかあたしまで髪も体も洗ってもらっちまったけど…なんか複雑…あたし女に見られてない?)
漣の髪や体を洗う…のも問題だが、隼鷹などさらに問題ではないだろうか?隼鷹のスタイルは抜群だ。一度バシッと化粧をし、ドレスを着てみたこともあるが男性職員からはスタンディングオベーション状態。気さくな性格。パーッと明るい(時にハイになりすぎてヒャッハー!とか言うけど)し、コミュニケーション能力も高い。それゆえに隼鷹の人気は男性には高い。
しかし、この提督は「ほら、泡を落とすぞ。目をんーってしてくれ」など、まるで子ども扱いだった。あたしって魅力ねえの?漣と同等に子どもに見られてる…?いや、漣だって人間で言うと中学生くらいだ。それもまずいのだが…。
「仕方ねえッスよ。だってご主人様はおとんですもの」
「だよなぁ…」
「隼鷹さんはスタイル抜群のイイ女ですYO!」
「ありがとよ…漣。あんたもいい女になるぜ…」
「漣チャンもセクシーダイナマイツになる!あっ、ごっ主人さまー!お背中お流しいたしますおー!」
「おー、悪い。じゃあ頼むわ」
しかし…うら若き女の子が裸で(提督は腰にタオルを巻いているが)…普通ならば理性を失うか…その…アレが20.3cm砲になってもおかしくないんじゃないかとも思うんだけどウンともスンとも言わない。なんか…こう、腹が立つんだよな。鋼の精神力。オイッ、あたしらみてえな女が2人と一緒に風呂入ってんだぞ!間違いでもいいからこうパンパカパーンってしろよ!!と隼鷹は悶々とするのである。
それと同時に恐ろしいまでに鍛え上げられた筋肉質な体が隼鷹をより誘惑するのだ。ウホッ、イイ男!と危ない男性職員にまで目を付けられるほどのごつい身体。腹筋なんて見た日にはもう埋もれたい。鍛え上げられた大胸筋を枕に温かみを感じたい…ああー!提督とパンパカパーンしてえなあああ!!と隼鷹の理性が外れそうだった。
悶々とする隼鷹だったが、脱衣所へ続く扉が開かれる音で我に返った。やっべー…大変なことになる所だった…と安堵した。
しかし隼鷹は少し驚いた。今は確か出入り禁止にしていたはずでは…?そこにいたのは夕雲型駆逐艦の末っ子「清霜」であった。
「ん、んお?清霜…か?どうしたんだ?」
「司令官、どうして漣ちゃんや隼鷹さんとお風呂に入っているの?」
「あ、あー…2人とも潜水艦の子を助けたり洗ってあげたり、掃除をしたり…いろいろとクタクタでな…オレも入ろうって言われたから…だけど…まあこの状況はまずいよな…」
「………」
まずい、これはもしかして悲鳴をあげられて大変なことになるパターンだろうか…。そうなると大変なことになるのだが…。
「司令官、清霜もお風呂入りたい」
「「は?」」
これには漣も隼鷹も驚きだった。清霜はどちらかと言えば提督を怖がっていた夕雲型の1人。それがなぜいきなりこうも近づこうとするのか?隼鷹は一目で罠ではないと看破した。漣は疑っているようだが、疑いようもないくらい純粋な目をしている。
「いいんじゃねえかー?提督に髪の毛洗ってもらうのは気持ちいいぜー」
「ちょ、隼鷹さん」
(だーいじょうぶだって…清霜に悪意はねえよ)
(むー…隼鷹さんの人を見る目はありますからそれを信じるとしますかネ)
「よし、おいで。髪はいつもはどうしてるんだ?」
「いつもは長波姉さんや早霜姉さんに洗ってもらってる。洗えるようになったのも最近だし…」
「そうかそうか!よし、おいで!洗ってきれいにしような!」
で、でたー!いきいきとおとん魂炸裂するやつーーーーwwwwwwwと漣と隼鷹が笑いあう。ああいう子犬のような目で見られた時の提督は本当に父性がやばい。そうして清霜は「うん!」と嬉しそうに服を脱ぎ始めたのだった。
しかしまあ…と隼鷹は思う。いくらなんでも人の事は言えないけど…無防備にすっぽんぽんで提督に近づいたらこの間の豚なんかの即行で餌食になるよなぁ…と思う。提督はここに後ろ向いて座って、と促し「うん!」と嬉しそうに座る清霜。
「よーし、お湯をかけていくからな。目をんーってしてくれ」
「はーい。んー!」
「よーし。熱かったら言うんだぞ」
「うん!ちょうどいいよ!」
「そうか。じゃあ洗っていくな」
「お願いしまーす!」
清霜の髪を丁寧に洗う提督。これが漣を。そして先ほど隼鷹を虜にした抜群の洗髪の腕である。髪を優しく。頭皮を労り、そしてほどよくもみほぐす。これが抜群に気持ちがいい。どうしてこんなに面倒見がよく、それでいてこういうことがうまいのかは…謎である。
「むふー!司令官、気持ちいい♪」」
これだけ聞いたら憲兵案件である。しかし、実際はただ髪を洗っているだけなので…セウト?
「うん、朝霜といい早霜といいみんな夕雲型はきれいな髪だな。秋霜はちょっとクセが強いけど…」
「えへへ、お姉ちゃん達の髪の毛はみんなきれいなんだよ!特にねー!夕雲姉さんのあのみつあみはうらやましいんだ!」
「そうなのか」
「うん!あれが夕雲姉さんを美人にしてるよね!でも…元気がないのが寂しいな…」
「そうだな。でもきっとすぐ元気になるさ」
「ほんと!?うわっぷ!ぺっぺっ…!ううー、泡が口の中にー…」
「ほらじっとしてなさい。お湯だ。口の中をゆすいで」
「んっんっ…ぶぇえ…ふぅ、苦かったよぅ…」
これまたやべー発言じゃねえか!と思う隼鷹。いや、不純な考えを思いつく当たり…あたしの心は汚れちまってんなぁ…と遠い目をする。漣は自分よりも丁寧に髪を洗ってもらっている清霜に嫉妬しているのか提督を見つめて頬を膨らませている。
「よし、次はトリートメントだ」
「とりーとめんと?」
「清霜の髪を大事に守ってくれるんだ。さらさらできれいな髪のままにな」
「そうなんだ!じゃあお願いしまー!」
親父ィ…と言いたくなる。まるで本当に親子みたいだな。ああ…平和だなぁ…。
「うっし、終わったぞ。さて、清霜…体「体も洗って司令官!」」
その言葉にザバァ!と漣が立ち上がる。いけません。いけませんぞきよしー!それは漣チャンでさえやってもらっていないと言うのに!!!抜け駆けだ!横暴だ!ご主人様はもちろんそんなのはダメだっていいますよネ!!!!
「ん?体も洗ってもらっているのか?しょうがねえなぁ…じゃあ前からいくぞ」
「はーい!」
「ダニィ!?」
「おい落ち着けって漣…」
「これが冷静でいられますかってんだ!漣ちゃんもしてもらったことがないって言うのに!!!あーあーあー!すっぽんぽんで真ん前なんか向いて…くぅううう!うらやま…!」
「そのつるぺたじゃ提督も欲情しねえだろ…」
「何おう!?そんなどでかいスイカぶら下げても提督の12.3cm砲がピクリともしなくて20.3cm砲にもならなかったくせに!!」
「んだとぉ!?あたしがその気になりゃかーんたんに41cm砲にならぁ!!!!」
「………!?ご、ご主人様って大きくなるとそれくらいいきそうですネ…」
「お、おう…ま、まさか…」
「「51cm砲に!?!?!?!?」」
「何言ってんだお前ら?」
「あーいえ、ナンデモナイデス」
「お、おう。清霜に集中してやってくれ」
「???まあいいや。清霜、ばんざーい」
「ばんざーい?こう?」
「そう」
「んふふふ!あははははは!司令官くすぐったいよー!」
無防備ここに極まれり…提督に全てを見せて…きよしー、恐ろしい子ッ!!!漣は新たなライバルが現れたのでは…とギリギリと歯を鳴らすのである。背中もちゃんと洗ってもらっている。むむ…胸はそうでもないけどプリっとかわいいおちり…ふふん、ここは漣チャンの勝ち…と変に対抗心を燃やしているのであった。
「ふう…」
「提督、お疲れー」
「おう…これでゆっくり風呂に浸かれる…」
「なんだかいい匂いがするね!」
「なんか妖精さんがラベンダーの香りがする入浴剤を入れてくれたらしい…さっきまで最悪な匂いをずっと嗅いでたからこの匂い…落ち着くわ…」
「途中からマヒしてなんか匂い感じませんでしたけどネ」
「だよなぁ…しっかしまあ疲れたわ…マジで…」
「助かった…ありがとうな、漣、隼鷹」
「へへへ…水くせえって!今更だろ!」
「そうですよー。そうじゃなかったらここまでお手伝いしませんって!」
「ありがとう…ありがとうな…」
少し泣きそうな顔をしている提督。潜水艦たちの惨状を見た後なので少し心が参っていたのだろう。そういうのを支えるのも初期メンバーの役目だ。これが一番大きな役目ではないだろうか。
「司令官、元気ないの?」
「ん?おお、ちょっと疲れたな、今日は」
「そうなんだ…なのにごめんなさい。わがまま言っちゃって…」
「いやいいんだ!清霜からああいってくれて嬉しかったよ」
「ほんと?」
「ほんとだよ。清霜は優しい子だな」
「えへへ…♪」
むー、とまた漣が嫉妬しているじゃないか。そして…。
「くらえっ」
「わぷっ!?」
「何するの、漣ちゃん!」
「ふふふ、漣ちゃんのみずでっぽう攻撃!」
「むうう、えーい!」
ザバア!と清霜が漣にお湯をぶっかける。水鉄砲よりひどいものがあるが、清霜は水鉄砲のやり方なんて知らないし、こっちのほうが被る量も多い。これはいい攻撃だな、と提督は思う。
「あはははは!漣の負けだな!」
「何をぉ!まだ負けてない!湯船のお湯!オラにチカラを分けてくれー!」
洗面器を用いて清霜にぶっかける。それに清霜も手を使って必死に掛け合う。泥沼の試合だ。すると提督がおもむろに立ち上がり…。
「ガオオオオオ!!ウッホウホホホホホ!!!!」
ゴリラのように胸を拳で叩いたかと思うと一気に飛び上がって着水。その勢いは凄まじく、水の壁が漣と清霜。ついでに隼鷹を襲う!
「わああああ!?」
「きゃーーーーー!!!」
「うわっぷ!あたしもかよー!!!!」
「ぷぷ!あはははははは!!!!はははははは!!!!司令官、もう一回やってー!きゃーーー♪」
「ご主人様ー!アンコール!アンコール!!!!」
「お前ら静かに入れ!!!!」
楽しい風呂の一時になった清霜。あがったあともしっかり髪を乾かし、梳いてもらってむふー!とご満悦でお部屋に戻るね!と帰って行った。
………
「詳しく、説明してください。私は今冷静さを欠こうとしています」
絶対零度以下の冷気を纏って白雪が正座させられている漣と隼鷹…そして提督を見下ろす。
「あのな白雪…これにはわけがあってな…?」
「私も司令官と入ったことがないと言うのに…この…この…泥棒猫!!」
「あーゆっきー…これはデスねー…不可抗力と言うか…なんといいますかー…」
「私達がイクさんたちのお食事、寝かしつけなどをしている最中に裸のお付き合いですか…それで…満足はできましたか?漣さん。隼鷹さん?」
「あーいやー…その…提督のアレは…うん、見えてないし…裸だけならセーフってことで…見逃してくんねえかなぁ…」
「はい?何か?」
「ナンデモナイデス」
「ん?白雪も洗ってほしいのか?じゃあ今から行くか」
「ふぇええ!?な、何でそうなるんですか?」
「いや、洗ってほしいからこうやってるんだよな?そうだな、漣だけだとフェアじゃないな。よし、行くか」
「ああ、ちょっと!?司令官!?待ってえええええええ!!!!!」
お説教モードが始まると思ったら提督が強引に白雪をドック…浴場へ連れて行った。大丈夫だろうか?白雪の愛が大爆発しそうでやばい。襲われることはないだろうけど理性がもたない。本当に冷静さを欠くだろう。まあ…がんばって…そしてご主人様…ナイスです…。あのままだとたぶん夜通し説教を食らっていたのではないだろうか。
「ふぁーあ…あーつっかれたー…お?あんたらなんで正座してんの?あー、風呂入ったの白雪に知られたんだな。清霜が食堂で大騒ぎしてたからなー」
「え、マジ…やばくねえか?」
「長波たちは顔まーっかにしてたぜ?」
バァン!!!
「おい提督!!!!清霜と風呂に入ったってどういうことだ、ああ!?」
「ご主人様ならゆっきーとお風呂ですよー」
「はあああああああああ!?!?!?!?!」
「うちちょっと用事思い出した―」
「おら待て秋霜!突撃しようとしてんだろ!!!ったくあのアホ提督ううううう!!!」
「ちょっと!清霜とお風呂ってどういうこと!?あたしを差し置いてどういうつもりよクズ!!!!」
「おーおー騒がしくなってきたなぁwwwwww」
「ご主人様強く生きてくださいねwwwww」
もはや笑い事になった漣と隼鷹。清霜の件は実際には清霜が突撃し、そのまま洗ってもらった、と言うことだったのだが、(まだ気づいていないが提督LOVEになりつつある)長波と(デレデレ)霞が飛び込んできたわけだ。
「私も行くわ!!」
「おーい!待てっつーの!!!!!」
執務室はてんやわんやの大騒ぎ。白雪はグルグル目になって帰って来て、そのまま虚ろになって部屋に戻ってお休みとなった。なんだかんだと目が回るような忙しさだった1日…今日だけはゆっくり寝かせてくれ…。今日はベッドに誰もいなかった…ああ、穏やかに眠れる…。
しかし、潜水艦がされたことを思い出すと怒りで眠れなくなる。どうしてあんな仕打ちができるのか。うん、明日からは優しく…優しく幸せになってもらえるような生活を送れるように努力しよう。そう思っていると怒りも醒め、眠りにつけた。
………
翌朝、朝食をいい加減食堂で食べてくれないと迅鯨さんたちがやばいと足柄が駆け込んできたのでよくはわからないが食堂に行くことにした。
日本本土とは違い、食料の仕入れが難しいが故に何とかやりくりをしながら作ってくれる迅鯨と長鯨には感謝しかない。その言葉を伝えたら何かこわい笑顔を浮かべて長良達が怯えていた。
「うん、和食はやっぱりいいな…毎日味噌汁でもいいな」
「毎日お味噌汁が食べたい…?それはもう…ええ、ええ…これで正妻の座は頂きですね…」
「くうう…姉さんに負けてられない…」
ざわ…ざわ…と食堂の雰囲気がおかしい。それをまた凄まじい形相で阻止しようとしている白雪。ある意味ドロドロしたブラック鎮守府になりかねない。そこにまだ目覚めていないが長波。自覚ある霞、足柄などが加わりもはや修羅場ヤ海域である。
うん、ご飯がうまいな。もくもくと箸を進める。
「てーーーーとくーーーーーー」
後ろからすごい衝撃がきた。いや、首にはむにゅうんとすごく柔らかい感触がしたが。隣に座っていた白雪がガタン!と立ち上がった。
「えっへへ!提督、おはようなの!」
「おー、イクか。おはよう。もう大丈夫なのか?」
「明石さんが言うには安静しなさいって言ってたけど、提督に会いたくなったからここに来たのね!」
その正体は伊19ことイクだった。提督にしっかりと抱き着き、頬ずりまでしているではないか。イクは助けてもらったことにとても感謝しているのと、生来の甘えん坊、構ってちゃんなのでこうなることは明らかだ。元気になってよかった。
しかし、まだ艦娘としては長期間のドックへ入ったりなどの行為をしていないため、まだまだ経過観察が必要、と明石には言われている。ひとまず毎日ドックに入り、燃料などもしっかり摂り、回復させてから戦闘や遠征に参加させる必要があると言うが、提督自身はしばらくは出撃させない予定でいるため、ゆっくりしてほしいと思う。
「なんだイク。髪の毛の結い方がガタガタだぞ。ちょっと待ってろ。すぐ飯食って髪を整えてあげよう」
「えっへへ♪楽しみなのね!」
すぐさま食事を終わらせ、イクの髪を梳く。足をパタパタさせてご満悦なようだ。結局清霜や秋霜たちも加わり、髪のセット大会が開催された。今日も提督は隼鷹や加古に「おとんだなぁ」とほんわかその様を眺めているのだった。
イベントに掘りに何だかバタバタしていたので遅くなりました。完遂+掘りも終わったので再開です。私的には白雲ちゃんがかわいすぎるので横須賀に着任させようか悩むレベルですね。ジャベリンは確定ですが。
イク達の救助も終わり、何だかサービスシーンが多いですね。憲兵さん、私です。
ひとまずイクたちを救助したここで五ヶ丘提督のお話は行ったん切ります。これ以上は本当に玲司が空気になってしまう…。
とは言っても…次回は第二の主人公、刈谷提督のお話になるわけですが…。
その次の回こそは横須賀に話を戻します。お願い許して。
それでは、また。