提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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リンガ泊地の五ヶ丘提督のお話になります。
心を病んだ夕雲と提督を警戒する巻雲がメインになります。

おや…?夕雲姉さんの様子が…?


第二百五十五話

/鹿屋基地

 

「司令官、作戦指示書はこちらにファイリングしましたのでいつでも確認ができます」

 

「おう、ありがとう。助かるよ」

 

滑り込みで刈谷提督がいた基地、鹿屋基地へ着任した五ヶ丘提督。来るレイテ沖海戦に向けて今必死で艦隊の編成や運用を勉強中である。かなり詰め込みで毎日休む暇がほとんどないが、疲れたとは一言も漏らさない。刈谷さんの役に立つんだ。その勢いで猛勉強だ。

 

「提督ぅ?お茶が入りましたよ~?あら、またお仕事ですか?もう、いけませんよ?提督が倒れでもしたら、妹たちも大騒ぎですよ?さあ、こっちで休んでください?膝枕、してあげますね♪」

 

「夕雲さん…昨日も膝枕をしてあげていましたよね?お気遣いなく。この白雪が膝枕を致しますので」

 

「あら?気にしなくていいんですよ?提督はうんと甘えてくれてもいいんですから」

 

「へ、へえ…」

 

ミシリ…とまた白雪がボールペンを折ろうとしている。鹿屋に来てから白雪と夕雲はいつもこんな感じである。

 

「おい、ケンカはすんなよ」

「はぁい。さ、提督?甘えてください?」

 

「む、むう…(このままだとまた仕事にならねえ)」

 

絶対に甘えさせるガール、夕雲。この存在は白雪や漣にとって脅威だった。あと霞と長波。

 

リンガでは夕雲は提督に怯え、心を病んでいたはずだがどうなっているのか…?提督が夕雲のために尽力したのは間違いないのだが。しかし、白雪がこの頃毎日鉛筆やボールペンを折る始末。漣は餅のように膨れるわ、迅鯨に長鯨もやばいのだ。修羅場ヤ沖海戦、始まる!

 

/リンガ泊地

 

『いつ鹿屋に来れそうなんだよ?その前に艦娘はまとめられたのか?』

「いえ…夕雲や巻雲がまだ…あの子達をまとめられたらすぐにでも…」

 

『だからいつだって聞いてんだよテメエ」

「必ず…会議までには…」

 

『言ったな?来れなかったらわかってんだろうなぁ?」

「はい…必ず…」

 

『じゃあ楽しみにしてるぜ?夕雲と巻雲、何とかしろよ』

「ウス…」

 

はああ…と大きなため息を吐く。やっぱり怖え…言っちまった以上期待には応えないといけない…。しかし、具体的な解決策はない。大本営会議まであと4ヶ月…。それまでに何とかしなければならない。

 

時期は鹿屋基地異動から遡ること約4ヶ月ほど前。刈谷提督からの脅迫…いや、要望に応えるために何とか大本営会議までには鹿屋基地に移りたかった。しかし、依然として夕雲や巻雲との和解は進んでいない。なぜか極度の怖がりだったり人見知りだったりする高波や浜波とは打ち解けている。髪型をおしゃれにするようにアレンジしてみたり、相変わらず清霜の髪の毛を乾かしてあげたり。

 

「司令官!またお風呂一緒に入ろー!」と言う清霜の爆弾発言で長波にえらく詰め寄られたり(と言うだけの嫉妬)、迅鯨や長鯨の視線が怖かったりしたが。

 

「ご主人様?今の刈谷のご主人様の電話はパワハラじゃないです?大本営に訴えるべきですお」

「その大本営のほとんどを掌握してるんだから無理だろ…」

 

「むおー…とんでもない大出世だけど…厄介だお…」

「司令官。このままでは司令官の司令官の立場が怪しくなってきますね…」

 

「ああ言ってっけど結局早く来いってことかー。やべーなぁ」

「刈谷提督は本気で言ってるよねぇ…パない…」

 

「刈谷さんの要望をすっぽかして期待に応えられないのはよくねえよな。って言いたいけど…どうしたもんか…」

 

「そこだよねぇ…」

「失礼するわ。司令官、お茶を持ってきたわ。どうせ働き詰めでしょ」

 

鹿屋への異動問題を初期艦ズと悩んでいると霞がやってきた。お盆には麦茶。人数分ある。よくわかったな…と思う。まあ、刈谷さんとの電話で喉がカラッカラだったので助かるな。

 

「ありがとな、霞。ふう…生き返る」

「またそうやって根詰めてるんだから。いい?あんたが無茶して体を壊すとここは回らないのよ?べ、別にあんたが心配だからとか、そう言うんじゃないんだけど…」

 

「かすみん。それはしっかり心配してるってことだよね」

「違うったら!!他のみんなが心配するのよ!長波とか朝霜とか!!」

 

「かすみんは心配してないの?」

「心配してるんだから言ってるんでしょ!?はっ!?」

 

「どうやらマヌケは見つかったようだな…」

「うるさいわねこのクズ!!」

 

「霞、心配かけて悪いな。けど、オレは大丈夫だから。霞が心配しない程度に頑張るよ」

「にゃっ!?」

 

霞の頭を撫でる。すると霞はもっと撫でろと言わんばかりに頭を五ヶ丘提督に寄せる。ちょっと気持ちよさそうに撫でていると漣はにまにましているし、白雪は瞳孔が開ききっている。

 

「な、撫でるなぁ!!!あ、あちゅい…ちょ、お茶…」

「ああ、それオレの」

 

「んぐっ!?ゲホッゴホッ!」

「おい霞、大丈夫か?」

 

(お、ナチュラルに霞の背中をさすってるなぁ。こういう時誰かがさすろうとしても振り払うのに、提督は振り払わねえんだなぁ)

 

「か、かすみんだいたーん…間接キスだお…」

「は、はああああああ?!?!?!?!?」

 

「間接キスだなんて…白雪もしたことがないのに…!」

「お、始まった始まった♪」

 

「霞…大丈夫か?」

「う、うるちゃい!!大丈夫よ!!!こ、このぉ!!あんたなんか…あんたなんかあたしがいないとダメにしてやるんだから!!!今回はあたしの負けでいいわ!このクズ!!クズクズクーーーーーーズ!!!!!」

 

「お、おーーい!!」

「で、出たーーwwwwかすみんのクズクズクーーーーーーズいただきましたーwwwwww」

 

何か…霞にも嫌われてないか、オレ?と勘違いなショックを受ける五ヶ丘提督。しかし、彼は鈍感すぎて気づいていないのだ。司令官いっぱいちゅきな霞に。逆に依存しないと生きていけないくらいになっていることに…。

 

………

 

クズクズクズクズクズクズ!!!!とガニ股大足でズンズンと顔を真っ赤にして食堂へ向かう霞。食堂に入ると夕雲や長波たち、夕雲型駆逐艦がいっぱい。どうやら司令官の話をしているらしい。

 

「おー、霞。まーたお茶くみかー?お前も健気だよなー。で、何を怒ってんだ?」

「何でもない!」

 

「また提督に髪の毛でも整えてもらったのか?ったく、お前は提督がいねえとダメなんだからなぁ♪」

「はああああ!?」

 

「そう言う長波姉だって、朝司令に髪の毛ふわふわにしてもらってご機嫌なんだよな」

「はああああ!?」

 

「あんた、またイチゴの匂いしてるわね。何よ、あんただってあいつがいないとダメなんじゃない」

「お、おおおお前と一緒にすんじゃねえよ!」

 

「あんたに言われたくないわよ!」

「キヒヒ、霞と長波姉は司令大好きだもんな!」

 

「「違うわ!!!」」

「朝霜さんも…司令官が…大好きです、よね…」

 

「お、おい!早霜!あたいは!」

「そういって…そのみつあみ…司令官にしてもらったんですよね…」

 

「…朝霜、あんた…」

「う、うっせえな!いいだろ別に!そうだよ!あたいは司令を認めてんだよ!」

 

うまく逃げたわね…朝霜、うまいじゃない。

 

「はーい!うちは司令官だーい好きだよー!」

「何ぃ!?」

 

「清霜も大好きー!!霞ちゃんは嫌いなの?」

「ちがっ!!」

 

「じゃあ大好きなんだよね?長波お姉様は?」

「うっ…あ、あたしは…」

 

「嫌い?」

「嫌いじゃねえ!」

 

「じゃあ大好き!」

「…う、ううううう…!!」

 

「た、高波は司令官の事!信用できるかも!です!」

「あ、あた、あたしも…信用…で、できる!」

 

「浜はすっかり提督にデレデレなってー…」

 

夕雲型は夕雲、巻雲を除いて提督に信頼を寄せているようだ。その中で秋霜と朝霜、早霜、清霜は好感度が振り切っている様子。毎日五ヶ丘提督に髪の毛をセットしてもらったり乾かしてもらっている。涼波が「あんま迷惑かけんなよ?」と言ったり、風雲も忙しいんだから…と止めるが聞かず、最近は浜波や高波も行くようになっている。つられて藤波や早波、巻波も加わっている。

 

高波や浜波は三つ編みをセットしてもらっているようで、ご機嫌である。秋霜もお願いしたらしいが、短いこととくせっ毛が災いして梳いてもらうだけになっている。朝霜も早霜もいろいろと髪型を提督にやってもらってるらしい。

 

その様子を夕雲は感情の消え失せた目で見ていた。どうしてそんなに提督が好きになるのかしら…?人間なんてひどいことしかしないのに…と思う反面、楽しそうにしている長波や清霜たちを羨ましいと思ってもいた。何だかんだで駆逐艦。さらには潜水艦のイクやヨナたちの甘えている姿を見ても羨ましいと思う。

 

(……でも、いつかきっと裏切るんだわ…)

 

その思いがあって提督には怖くて近寄れない。高波は長波に編み込みを見せて自慢している。朝霜と霞はまた提督のことでもめている。風雲がそれを止めているし涼波は呆れている。早波は「早波も司令に髪型決めてもらおうかなぁ、お姉ちゃん?」と聞いているし、藤波は「もち、いいんじゃない?」と自分も素直ではないらしく、髪の毛をいじっている。浜波の提督にセットしてもらったと言う三つ編みを見て羨ましそうだ。

 

「おー。今日も騒がしいねぇ、いいこったー!」

 

ぎゃあぎゃあと騒がしい食堂。そこに隼鷹がやって来たことで一旦喧騒が止まる。隼鷹は明るい食堂の様子を見ていい感じになってきたねぇ!と嬉しそうだ。

 

「隼鷹…?どうしたの、提督は?」

「おう陸奥ー。提督はまだ仕事だ」

 

「もう夕飯の時間じゃない…みんな集まってるわよ?」

「だよなぁ。ま、いろいろとあんだよ」

 

そのいろいろとは大体が駆逐艦の髪型のセットなどで執務の時間が少ないからだ。さらにはそのせいで徹夜までしてるとは口が裂けても言えなかった。後にこれがバレて霞や長波が怒鳴り込みにいく。

 

「飯の前にみんな集まってるから連絡だ。提督が伝えてくれってよ。飯は先に食ってていいって」

「あいつ…またご飯の時間を守らないで…」

 

霞がそう言って怒っている。隼鷹は後で頼むなーと霞に指示を飛ばす。

 

「それと業務連絡な。4ヶ月以内に提督は日本に帰るからな」

 

その時、駆逐艦達の顔が強張ったような気がする。逆に足柄や長良達巡洋艦は「おお!」と声をあげた。

 

「何だよ。提督日本に帰んのかよ。ずいぶんと早えな」

「ああ。急ぎの用があるんだってさ。次の大規模作戦に参加するかもしれないんだって」

 

「それは本当?提督って新米じゃないの?」

「贔屓にしてくれてる提督がいるからなー。ま、轟沈なしのしっかりした作戦を考えるはずだけど」

 

「そう…」

「ううー!イクの魚雷がウズウズするの!」

 

「イクちゃん、魚雷は…ない、よね?」

 

衝撃的な発言だった。司令官が日本に帰る…?それはつまり…あたし達は…もう司令官の側にいられない?

 

「詳細を説明していくぞー」

「いや…」

 

「ん?霞、嫌ってどうした??」

「いや…いや…いやいやいや!!!なんで!?あいつは…司令官はあたし達の事が嫌になったの!?」

 

「は、は?」

「嫌よ!そんな!!!あたし…せっかく司令官…信用できるって思って…嫌よ!!!あたし!素直になるから!!置いて…置いていかないでよ…あたしも連れてってよぉ!!!!」

 

「おい霞、落ち着いて話を聞いてほしいな…な?」

「嫌…司令官がいないなんて…考え…られ、う、ううう…いやよ…好き…しゅき…になった、のにぃ…うわああああああああああああん!!!!!!あああああああああああ!!!!!」

 

「か、霞ぃ!!????」

 

「うえええええええええんん!いなぐなっぢゃやだああああああああ!!!!!うわああああああん!!!!」

 

「長波ィ!?」

 

霞と長波がなぜか大泣きを始めた。隼鷹はどうしたらいいのかわからず、全部吹っ飛んでしまった。それにつられて清霜や秋霜も大泣きを始めるし、高波や浜波まで泣き出す始末。足柄や那智も泣き止ませようと必死になるが泣き止まない。やっべえ…あたしこれやばくね…?と隼鷹は焦りに焦った。

 

その姿を見ていた巻雲はあぜんとするし夕雲は…提督に興味が逆に湧いた。ここまで妹が慕う提督。その人徳はどんなものなのだろう?あの霞さんでさえここまで…と思う。

 

「おい!なんだ!?どうした!?」

「あ、提督!!助けてくれぇ!!」

 

「隼鷹!?これはいった…うぶっ!!!!」

 

霞と長波が五ヶ丘提督に体当たりのような勢いで飛び込んでいった。腹に頭が直撃。防御も取っていなかったので結構きつかった。

 

「いやあああああ!!!しれいがん、いっちゃやああああああああ!!!!!!!」

「あだじだぢをすてないでよおおおおお!!!!!」

 

「霞、長波!?ど、どうなってんだ!?朝霜や秋霜、清霜達も?!」

「あー…私が説明するわ…」

 

隼鷹がパニックになっているし、那智や足柄もパニック状態だったので陸奥と木曾が説明してくれた。なるほど、隼鷹がオレが日本に帰ることだけをまず言ったからか。ちゃんと説明するはずだったのを霞たちが早とちりしたわけか。

 

………

 

木曾も長良も笑いをこらえるので必死で提督の話を聞いていた。霞が膝に乗り、抱き着いて離れないし、長波も背中に抱き着いて顔を隠してヒックヒックとしゃくりあげているし、提督と隼鷹は困った顔をしているし、清霜も今にも飛びかかりそうだし。足柄も那智も恥ずかしそうに壁にもたれかかって話を聞くことにした。陸奥は呆れているし、加賀は無表情だ。

 

「あー…うん。隼鷹が言う通りなんだけどな…オレは4ヶ月以内に日本の鹿屋基地に行くことになってる」

 

「う、ううううう!!」

 

「霞…落ち着いて聞いて「いや!!!」」

「あのな…「いやだ!!!」」

 

ブーッと木曾が耐えきれずに噴き出した。これで5回目だ。遅れてやって来た漣も噴き出してしまった。

 

「えっと…鹿屋基地に行くなら…みんなと一緒に行こう。そう決めてる」

「…ふぇっ」

 

「ほんと…?」

 

ほんとってwwwwww長波様の口から子供みたいなwwwwwwと漣は思っていた。肩が震えていたので白雪に絶対零度の視線を飛ばされたが。

 

「ほんとだよ。行くならここのみんなと一緒だ。ここに来てすぐにさよならだなんて言えない。それに霞たちには助けられてるからな。精神的にも、支えになってるから鹿屋にも来てくれないと困るな」

 

「しれい、かん…」

「ていとく…」

 

「でも、嫌だと言う子がいたら教えてくれ。それはちゃんと考慮するから」

「そんなのいるわけない…」

 

「いるわけない…」

 

霞と長波はどうしてここまで信用が振り切ってるのかはわからないが…そう言いきってくれると助かるな。嬉しいな。実は霞や朝霜たちの髪の毛をセットしたりするのは提督のストレス解消でもある。それでぱぁっと喜んでくれる霞たちを見ていると嬉しい。最近は高波なんかも来てくれて本当に嬉しいのだ。

 

「そうか。でも、それはちゃんとみんなの口から聞きたいかな。じゃあ、みんなと面談がしたい。個人個人でな。ついてきてくれるでも、嫌でも、ちゃんとみんなの口から聞きたい。頼むよ」

 

霞の頭を撫でたり、長波の頭をポンポンしたりしながら話しているので割とそれが気になって頭に入らない。人の顔面を陥没させるくらいの恐ろしいパワーを持っていたり、霞たち駆逐艦の髪をセットしてあげたり…時には清霜のパジャマを着せてあげたりとよくわからない提督。その姿をしっかりと見たい。もっと見てみたい。青葉や長良はそう思っていた。

 

「はいはいはーい!!衣笠さんからお話聞いてくれませんか!?」

「おう。これは明日からにしよう。白雪。それで大丈夫か?」

 

「はい。構いません。ところで、霞さん達はいつまで…」

「安心するまでな」

 

「そう、ですか…(ずるいずるいずるいずるい)」

「ご主人様、あとでゆっきーをだっこしてあげてくださいね?」

 

「漣ちゃん…どうして…どうして…」

「ゆっきーしてほしそうじゃないYO!」

 

「………イッ」

「あ、想像して…」

 

「………」

「こわい!こわいってゆっきー!!!」

 

日本に行く。ここから離れられるのは嫌なことを忘れられるのでありがたいのかもしれない。残るか行くか…よく考える必要がある…。妹たち。特に朝霜や清霜は行く気満々だ。

 

「あたいはこの場で言っとくぜ。あたいは司令についていくかんな、よろしく頼んだぜーイヒヒ♪」

「うちもうちもー!」

 

「提督!イクも行くのー!」

「ニムも行くよ!」

 

「もち、あたしも行く」

「あた、あたしもい、いく…」

 

「お姉ちゃんが行くなら早波もいきまーす」

 

もうこの場で全員が行くと言っているようなものだった。特に駆逐艦は夕雲と巻雲以外はついていくとのことだ。全ては五ヶ丘提督が行ってきた日ごろの行いだろう。提督自身は少し嬉しそうだった。

 

食事の時間が来て、ひとまず解散。食事を摂り、再び提督は執務室で仕事を再開する。白雪たちはこの時間は絶対に仕事禁止。ああ、のんびりオレもくつろいでるよ、なんて言葉は真っ赤な嘘だ。もっとも、次の日に書類がえらく進んでいるので勘づかれてしまい、白雪に怒られるのだが。

 

怒られるのでソファーでのんびり、前の提督の置き土産、ウイスキーをのんびり飲んでいる。私室はソファーも安っぽいし落ち着かない。テレビは日本のようにないし、読む本もない。なのでのんびり晩酌だ。

 

「はあ…大変な目にあった…」

 

霞と長波に大泣きされ、しばらくひっつき虫になり…大井からも警告された。

 

「私もついていきますね、提督…よかったです、自分だけ帰るだなんて言わなくて…もし、私を裏切ったら…沈めますからね…?」

 

にっこぉ…ととてつもなく怪しい笑みを浮かべられた。迅鯨と長鯨も同じだった。家内ですから当然ですよね?と不安な言葉を残していった。はあ…ついてきてくれると言った娘が多かったけど、何か胃が痛いな…。

 

コンコン…グイっと酒を煽るとノック音。入室を促すと入ってきたのは…

 

「夕雲…に巻雲?」

「こんばんは、提督」

 

「お、おう…」

「今日は少しお話があって来たんです」

 

「ん?日本に行くかの是非か?」

「はい。そのことで少し…提督の事を教えてほしくって」

 

「オレのこと?」

「はい。数日の間、夕雲と巻雲さんで提督を監視ではないですけど…観察したいなと思いまして」

 

「はうう…ゆ、夕雲姉さん…やっぱり怖いですよぉ…」

「心配いらないわ…何かするつもりなら…もう何かしてますよね?服を脱げとか?」

 

「お前たちがされてきたことは知ってるよ。だから警戒されるのも無理はない。俺の事を見極めたならいいぜ。疚しいことは何もないから」

 

「ええ、ありがとうございます。では、明日からよろしくお願いしますね?」

「おう。期待には応えられないかもな。特に何もないと思うし」

 

(すでに朝霜さんや秋霜さんが明日はどのヘアゴムにしてもらおうかと選んでいるくらいですから…いろいろとお忙しくなりますよ…)

 

提督は何もないと言うが、忙しい毎日を送っていることに気づいていないのだ。本当に自分の妹がひどいことをされていないか…一応見させてもらいます。

 

………

 

翌朝。夕雲は朝6時から提督を執務室で待っていた。提督は…寝ているらしい。寝室には怖くて近寄れない。あそこはトラウマの場所だから…。

 

「ふぁあ…おはよ…早いな」

「おはようございます、提督。ずいぶんと遅いんですね」

 

「ああ…大体この時間だ…ふぁーあ」

 

大あくびをして洗面所へ向かう。前の提督は昼まで寝ていた記憶がある。裸の自分を抱いて。そして気が向いたら自分を犯して。巻雲も犯して。

 

「しれー!おはようさーん!!」

「朝霜、おはよう。今日も一番乗りだな」

 

「ヒヒー♪あたいの髪、長いからセットに時間かかんだろー?」

「そりゃお前があーしろこーしろってうるさいからだろ?」

 

「いいじゃねえかよー!んお?夕雲姉さんに巻雲姉さんじゃねえか!?くっそー!あたいは3番かよー!!」

 

「いや、それがな?」

 

提督が事情を説明する。その間、朝霜は提督の膝の上に座り、ぼさぼさの髪に霧吹きで水をかけられ、櫛で梳かれていた。当たり前のように膝の上に座り、髪を梳いてもらっているじゃないか…朝霜さん…ずいぶんと仲が良いのね…。

 

「ふーん。なあ夕雲姉さんもやってもらったらどうだ?めっっっっちゃ気持ちいいんだぜー!」

「なあ、目を隠してる髪をあげてみたらどうだ?かわいいと思うぞ?」

 

「はあ!?ダメに決まってんだろ!!あたいの隠されたチカラが目覚めるだろ!!」

「何だよ、膨大な魔力でも解放されちまうのか?」

 

「そ、そうだよ!!だから上げるんじゃねー!」

「浜波も一緒かな」

 

「むっ!今は浜波姉さんは関係ねーだろ!早く結べよ!」

 

やってもらっているのに何という態度…怒られるわよ…?提督は「はいはい…」と言って髪を結い始めている。

 

「おっはよー!あー!あさあさにまた負けたーーー!!次はうちだかんね!うち!!」

「あ、あの、はま、はまな…浜波が…2番…」

 

「うおっわーーー!!ナンデ!?浜波姉さんナンデ!?」

「うっせえなぁ…秋霜は朝っぱらからよー」

 

秋霜さんが来た。そしていつの間にかいた…浜波さん。浜波さんの髪は寝ぐせでボサボサ…秋霜さんは普段からああだったかしら…?いいえ、あれはわざとひどくボサボサにしてるわね…。

 

「三つ編みとかするか?」

「ん、んやぁ…あたいにゃ似合わねえよー、えへへ」

 

「まあそう言うなよ。朝霜は美人なんだからちょっとオシャレしようぜ」

「ふぇっ!?ええええ!?おい、司令!ちょ、ま!わあああ!!」

 

私、夕雲のような髪型にされてしまいました。朝霜さんったら顔が真っ赤ね…。

 

「わー、あさあさかわいいー!」

「や、やめろおおおお!!!司令、ほどいてくれよー!!」

 

「んー、かわいいな。もったいないから今日はそのままな」

「……う、うううううう!!」

 

「あ、あーちゃん、にげ、逃げた…」

「よし、あれでいいな。さ、次は浜波だな。浜波はどうしたい?」

 

自分の好みを押し付けるのではなく、自分の好きなように髪型を決めてもらう…艦娘の意思を無視するやり方ではない…。

 

「きょ、今日は…に、にほ、二本、おさげ、して、ほ、ほしい…」

「ん。編み込むか?」

 

「は、はい」

「よし、腕が鳴るな。いっそ巻雲みたいな髪型にしてみるか?」

 

「い、いい…いいです…」

「はいよ」

 

提督はきれいに浜波さんの髪を梳かし、サラサラにしていく…そして、丁寧に三つ編みを作っていく…。なんでも漣さんや白雪さん、大本営の艦娘の皆さんの髪型をいじっていたら髪型をセットするのが得意になったとか。

 

「ぶーぶー、秋霜さんもかわいい髪型したいぞー」

「秋霜は髪が短いじゃねえか…浜波くらい伸ばしたらどうだ?かわいいと思うぞ?」

 

「まったまたー!そうやってうちをおだてるのが得意なんだからー!」

「いてえ!おい!加減しろって!」

 

「あ、あーちゃん、髪の毛、くず、くずれる…」

 

秋霜にバシバシ背中を叩かれながらもきれいに三つ編みを完成させた。浜波は満足そうに手を振って出て行った。

 

「提督…あの、朝ごはんは…」

「食べてきていいぞ。たぶん、これから高波や霞、漣に清霜に…長波も来るだろうからな」

 

「い、いえ…提督のお側に今日は…」

「なになに!?夕雲姉、今日は司令官に密着取材?青葉さんみたいだねー!」

 

「そ、そう、ね…」

「にひひ、司令官はねー、一緒にいると楽しいんだよー!司令官、おにぎり取ってこようか?」

 

「ああ、頼むよ」

「はーい!うん!今日もサラサラー!じゃあ夕雲姉、巻雲姉、ごゆっくりー!」

 

その後も代わる代わるやってくる自分の妹たち…高波さんも丁寧な編み込みにご満悦で「嬉しいかも、です!」と言っていたし…藤波さんは「あたしがかわいい?もち!」とご機嫌。早波さんは姉の藤波さんとお揃いにしてもらってニコニコしていたわね…。

 

清霜さんは…パジャマのお着替えから…?いえ、自分でできたはずだけど…甘えたいのね…。

 

「ふっふーん!司令官!清霜は今日もかわいい!」

「ああ、今日も元気でかわいいな」

 

「むふー!えへへ♪司令官、ありがと♪」

「どういたしまして」

 

「どうイタ飯屋ー♪」

「違うくねえか?」

 

本当に…私の妹は全員が懐いているのねぇ…涼波さんや岸波さんまで…?玉波さん、いつもは自分で髪を梳いていませんでしたか?私を見てかなり驚いていて、恥ずかしそうだったけど…。

 

「ていとくぅ…助けてくれぇ…」

「長波…ふふ、お前今日もすごいな」

 

「うるせー…っておわああああ!!ゆ、夕雲姉!?巻雲姉まで!!?」

「おはようございます、長波さん。今日も寝相がすごかったですもんね。女の子がしていい寝相ではなかったわよ?」

 

「それを提督の前で言わないでくれよー!」

「長波はスカートじゃなくてちゃんとしたパジャマで寝るべきです。パンツ丸出しで寝てたら巻雲まで恥ずかしいです」

 

「パンツ言うなー!!」

「腹冷やすなよ長波」

 

「うるせー!ほっとけ!!は、早くしてくれよ!」

「む、今日は何だか生意気だな。夕雲たちがいるからか?お仕置きが必要だな」

 

…きた。虐待かしら。この長い髪を引っ張ったりして…ん?でも長波さんはおとなしい…。提督は何か鼻唄を歌いながら長波さんの長い髪の毛を梳いていく…いい香り…。

 

「またイチゴかよー…」

「長波のイメージにピッタリなんだよ」

 

「あたしはもっとこう…バラとかのほうが似合うだろ?」

「……ふっ」

 

「あー!何だよ!今鼻で笑ったろー!?」

「いや、気のせいだよ」

 

「絶対嘘だ!あたしをこんな巻雲姉が好きそうな子供っぽい匂いでー!」

「むっ!?長波、それどういうことですかー?」

 

「あっ、やべ…」

「どっちかって言うと夕雲や巻雲の方がバラの匂いは合うかもな」

 

「ふふーん!さすがは司令官様!はっ!?」

「クスクス…」

 

あらあら、巻雲さんったら。でも、打ち解けてくれそうでよかったわ…。長波さんには申し訳ないですけど、長波さんのかわいらしさで少し距離が縮まったかしら?

 

「ほい、できたぞ。どうだ」

「うー…どれどれ…ってわあああああ!!!??!?!何だよこれ!?!?!?巻雲姉じゃねえかあああああ!?!?!?」

 

「黒とピンクのコントラストがぴったりだな。これはいい髪型だ。長波のイメチェン大成功だな」

「大成功じゃねえよおおおお!!!」

 

「今日一日それな」

「ぷぷぷ、長波、いいじゃないですかー!今日はそれで過ごすのです!巻雲とお揃い♪」

 

「う、ううううう……提督!これで勝ったと思うなよおおおおおおおお!!!!!」

 

な、長波姉!?その髪、何!?と言う巻波さんと大笑いしている涼波さんの声が外から…うるせえええええ!!!と叫ぶ長波さんの声。

 

「ちょっと!長波のあの髪は何!?羨ましいんだけど!?」

「霞…はぁ…ちょっと短いなぁ」

 

「にゃっ!?あ、あたしはできないって言うの!?」

「巻波みたいにはできるかもな」

 

「ふ、ふん!別にやらなくていいわ…いつも通りで…って、何でヘアゴムをいっぱい…にゃあ!?」

 

あの霞さんも提督の前ではこんなことになっているのねぇ…足柄さん達にきつい言葉で指示したりしているけど…かわいい駆逐艦ねぇ…。

 

「う、うう…」

「うん、かわいくできたな。今日はそれでいってくれよ。結構苦労したんだからな」

 

「う、ううう!このクズ!!!クズクズクーーーーーーーズ!!!!」

「霞ちゃん…」

 

膝の上に自分から乗って…足をパタパタさせて…されるがままだったのに…霞さん、骨抜きにされてしまったみたいね…。

 

「ふう。漣と白雪はまた寝過ごしたのか…?」

 

そういえば見かけない…漣さんはともかく…白雪さんは提督より早く起きていそうなのに…。

 

「し、しれいかぁん…髪のハネがぁ…」

「あー…」

 

一生懸命直そうとして全然直らなかった…そんな感じのボサボサ頭…涙目になってやってきた白雪さん…こっちおいで、と普通に促す提督。

 

ああ、わかった。この提督は…お世話好きなんだ…白雪さん、モジモジしているけれど大丈夫かしら…?2つのおさげにしてもらって…慌ててどこかへ行ってしまったけど…大丈夫かしら?

 

「ふう、漣や加古を叩き起こして飯にしようか」

「はい」

 

「はい!」

 

この後、漣さんと加古さんはきっちり怒られました。髪の毛のセットをしてもらえず、漣さんは不貞腐れていました。

 




五ヶ丘提督率いるリンガの日常です。駆逐艦のお世話で大変そうなおとん提督…と言う感じです。
少しだけ夕雲と巻雲の距離が近づいたでしょうか?

そして、まだモヤモヤしている陸奥と加賀とは和解できたのでしょうか?その辺りは次回に続きます。次回もおとん魂炸裂な回になりそうです。

ちなみに、霞と長波はあんな態度ですがしゅきしゅき好感度が振り切っておりますのでご安心(?)ください。

それでは、また。
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