提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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夕雲と巻雲の視察が始まりました。そして、鹿屋基地に行くか否かの面談も始まります。

夕雲と巻雲は五ヶ丘提督をどう思うのでしょう?


第二百五十六話

「はーい!衣笠さん入りまーす!って、あれ?夕雲ちゃんに巻雲ちゃん?」

「ああ衣笠。ちょっと夕雲たちは俺の観察…らしいよ」

 

「そ、そう…」

「で、衣笠。さっそくだけど日本へは「行きます!絶対行きますー!」」

 

「はーい司令官!青葉も行きますよぉ!」

 

 

「お、おお…」

 

妙にテンションが高い衣笠と青葉のコンビにちょっと引く五ヶ丘提督。いや、それはありがたいのだがすごいテンションだな…。

 

(衣笠さん達の距離が近いですね…)

 

それを見た白雪が目を大きく見開いて見ていた。最近駆逐艦もそうだがみんなの司令官への距離が近い。漣さんたちならまだしも…霞さんや長波さん…いえ、最近は夕雲型の皆さん…衣笠さんや長良さん…よくない…非常によくない。

 

司令官のお世話をするのは私…この白雪以外にあり得ない。ここだけは、霞さんや迅鯨さん達には絶対に渡さない。でも…霞さんに大井さん。お茶くみやお洗濯のお仕事を奪われつつある。大井さんは危険だ。絶対にシャツの匂いを嗅いだりしている。それは白雪以外絶対許されない行為。司令官にお願いして私室にお洗濯かごを置いて、白雪が取ってお洗濯しますと言っておいて白雪がお洗濯をし、そして白雪が司令官の下着の匂いを…そう、それは白雪の物白雪の物白雪の物白雪の物…フフ、フフフフフフ…。

 

「白雪?おい白雪!」

「きゃあああああ!!!!!!!!」

 

「うおおお!!?」

 

突然の大声に夕雲たちも飛び上がった。ボーっとしていたと思ったが提督が声をかけた瞬間にい叫びだした。最近白雪の様子がおかしい…働かせすぎか…?いかん、オレが刈谷さんに怒られてしまう…でも休めと言うと濁った目で「何を仰っているんですか、司令官?白雪がいないと仕事が回りませんよね?」と言う。

 

確かに白雪がいないと仕事がはかどらないのは事実。しかし、ここまでボーっとしていると言うことは思った以上に疲労が溜まっているんじゃないか…。うーん…悩みどころだ。

 

「白雪…疲れてないか?ボーっとしてるんだから一週間くらい「司令官???」」

 

「はい…」

 

またしても濁った瞳で見つめてくる。だからその目怖えんだって。

 

「オホン。失礼しました。もう大丈夫です。はい。衣笠さんに青葉さんは司令官と共に日本へ来てくださるんですね?ありがとうございます。本当に助かります」

 

「は、はいぃ…(白雪さんが怖いんですよねぇ…)」

「う、うん(白雪ちゃん、目が濁ってる…何だか大井さんに似てる…)」

 

「ありがとう、衣笠、青葉。助かるよ。今後ともよろしく頼む」

 

「はーい!衣笠さんにお任せ!」

「お任せくださーい!」

 

まずは衣笠、青葉。衣笠は最初から。青葉は大府の一件から五ヶ丘提督を支持してくれる。衣笠には本当にあの出撃は本当に申し訳なかった。あわや轟沈…刈谷提督によって救われたのだが。漣の頭の回転にも助けられた。

 

「衣笠さん、青葉さんはまる、と…司令官、駆逐艦はほぼまるです。大井さんも大丈夫です。大井さん、司令官の上着をいつになったら返してくれるのか…」

 

「なあ、最近オレのシャツなんかが消えるんだけど…まさか大井か?」

 

大井さん。これは問いただす必要がありますね。司令官のシャツをくすねているのは彼女ですね。司令官の私物を無断で持ち出すのは規律に関わります。きっちりとご忠告をしなければ…。

 

大井は「ていとくぅ?私もついていきますぅ~。まさか、置いていくなんて…言いませんよね?」とドロリとした目で五ヶ丘提督にそう言った。彼女も…白雪と同類でしょう…と悟った。そう、ドロドロに司令官を愛している白雪と同様に…フフフ、ここは…相談といきましょう。司令官のものをシェア。良い考えですね。私も大井さんのように正直になれば良いのでしょうが…。

 

(白雪の目がなんか…やべえな。やっぱマジで疲れてんのかな…)

 

「なあ、白雪?「白雪は大丈夫ですよ???」」

 

やっべえ、これ以上はマジで地雷を踏み抜く。ただならぬ気配に野生の勘が働く。オレが提督になってから白雪は本当によくやってくれるんだけど…かなり無理させてるなぁ…と思う。だから18時以降は執務室に来ることをやめさせたのだ。言った途端ボキリと何本目かわからないボールペンを折った。

 

「なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんで????」

 

ぼそぼそとこう言っていた時の白雪は…やばかった。殺されそうだった。オレも仕事しないから!と何度言ってもなんでを繰り返した。

 

「司令官。白雪なら大丈夫です司令官のためなら72時間でも働けますですから白雪をお側に何でもしますよ?お茶くみでもご飯を作ることでもお掃除お洗濯なんでも白雪が全部やりますから。執務ももちろんお任せください。司令官はお休み頂いて構いません白雪がぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶやりますから」

 

「お、オーケー分かった…白雪。でも、な?オレもちゃんと仕事するし…白雪ばかりに任せてられない。それじゃあ提督として失格だ。えっと…家事とかは任せるけど…」

 

「はい。この白雪にお任せください」

 

淡々と言うんだけど重い…この時だけは朴念仁の五ヶ丘提督もさすがに激重な白雪に気づき、引いた。自分が何もしないのもよくないのでいろいろと分担すると言って落ち着いた。しかし、白雪は迅鯨や長鯨、霞。大井。いろんな艦娘に仕事を取られていく。さすがに最後の牙城、事務仕事だけは死守しているが、その間にも霞がやってきたり、最近は秋霜や朝霜、長波たち夕雲型がゾロゾロとやって来ては甘えていく。

 

自分ができない、抑圧していること。いや、それに身をゆだねると頭がおかしくなってしまうから必死で自重している白雪にとっては羨ましい以外の何物でもないことを見せつけてくる。極めつけには親友であり、古参の仲間である漣、頼れる先輩隼鷹に至っては一緒にお風呂に入ったなどとおおよそ正気ではいられないことをしでかしている。この間抱き抱えられた時は発狂するかと思ったと同時に幸せで脳内から興奮物質が過剰に分泌され、本当に狂うかと思った。ほら、やっぱり最後には私に帰って来てくれるんですよね司令官、うふふふふ…。

 

「白雪、巻雲が怯えてる」

「はっ!?し、失礼しました…」

 

白雪がドロドロした黒いオーラを出すものだから巻雲が怯えている。夕雲もなぜかどろりとした目で見ていたが…。

 

休憩に行っておいでと言うと必死で拒否したが、五ヶ丘提督も折れるわけにはいかないと必死で説得したらフラフラと涙目で出て行ってしまった。代わりに漣が入って来た。

 

「あーゆっきーまーた暴走したんですねー」

「なあ、白雪は本当に過労なんじゃねえか…?」

 

「うーん、ご主人様はさっさとゆっきーのクソ重愛情に気づいてあげてくださいねー」

「どういうことだよ…」

 

いつになったら気づきますかねぇ…あれだけクソ重い愛をご主人様に向けてるのになぁ。ま、漣チャンも負けてないですけどネと思っている。

 

「失礼します」

 

短い言葉と共に入ってきたのは加賀だ。思わず漣は身構える。なぜならご主人様を追い出そうとした犯人の1人だからだ。陸奥は謝罪し、提督についていくわ、と言っていたが加賀はまだその言葉を聞いていない。

 

「そんなに身構えないであげて。加賀も謝りたいって話だから」

 

陸奥も一緒に来ていた。1人でいくと何されるかわからない。そんなことは絶対にないと誰もが言うがやはり1人で行くのは不安だったようで、付き添いで陸奥が来た。加賀は極度の男性恐怖症となっていた。しかし…艦娘は1人では生きていけない。提督について行かねば…そうでないとどんな男が来るかわからない。

 

「加賀。鹿屋への異動の件だけど、もしお前が男性が苦手だと言うのなら女性の提督の所へ行くことも可能だぞ?ここはどのみち誰が来るかわからんしな」

 

話し出す前に五ヶ丘提督が加賀へ切り出した。陸奥はドキリとした。その発言はまずい。なぜなら、提督は加賀の事が嫌いで別々の道を行かせようとしているのではないか?と思ってしまう…。

 

実際には五ヶ丘提督も加賀に避けられてねえか…?と思っていて、白雪や鬼怒達と相談して、それなら…と刈谷さんに話を聞いてみたのだ。

 

『ああ。それなら七原のとこへ行かせてもいいぜ。それなら仕方ねえだろ。ただ、これは特別異動だからな。他の艦娘は認めねえぞ』

 

加賀以外に異動希望が居た場合はやべえじゃねえかよ…と五ヶ丘提督は焦りに焦った。そのほとんどは提督と一緒に行くと言ってくれているので助かった。怖いのは夕雲、巻雲。あとは加賀を抜いたらこの2人だろうか…。

 

五ヶ丘提督自身はオレと喋るのも億劫だろう。だからサラッと喋る前に提案を出したのだが、加賀からしてみれば自分を否定されたような気持になり、グサリと胸に包丁でも刺さるかのような痛みがした。ジワリ…と涙を流し始めた。

 

「そう…ですよね。私は…提督に対してとても失礼な態度を取りましたものね…グスッ…私は…いないほうが…いいですよね」

 

ん…?なんで加賀が泣くんだ?いないほうがいい?いや、それはオレの方じゃないのか?

 

「待て、加賀。待ってくれ。いないほうがいいってなんだ?」

(あー、また激鈍ちんが発動してる。これやばいんじゃないかなー?)

 

「私…あなたにひどいこと…言って…うう!」

「提督?あなた、加賀さんをそんな風に思ってたの…?」

 

「おい、ちょっと待て。何でそんな話になってるんだ?オレは加賀の事をそんなことに思ってないぞ?それよか、加賀の方が…」

 

「ご主人様。ちょーっと陸奥さんの話聞きましょ?」

「お、おう…」

 

あの加賀がグスグスとしゃくりあげるほど泣いているじゃないか。オレ、また女の子泣かせた…?最悪じゃねえかよ…自己嫌悪に陥る提督。

 

加賀自身は悪夢のような世界から助けてくれたのは提督で、信じられるのは提督しかいないと思っている。しかし、生来の表情が硬い、それから提督にまだ恐怖心があると言うことでうまくしゃべることができず、素っ気ない態度を取っているようになってしまっているのが嫌だったのだと言う。意を決して今回、提督についていくと言おうと思ったらまるで「さっさとどっか行け」と言ったような感じで先に言われてしまったと言う。

 

「誠に申し訳ございません…今まで…ひどい態度で…私の事がお嫌いでしたら…私は女性提督の所へでも…」

 

「加賀、落ち着きなさい。提督?本当に加賀をその提督の所へ行かせるつもり?」

 

そうなら私、あなたを軽蔑するわ。と言うような怒りの表情を陸奥は見せる。

 

「申し訳ない!!!」

 

大きな声で謝罪をするし、ソファから降りて地べたに土下座をする五ヶ丘提督。

 

「オレが加賀に大きな誤解をさせちまった!!オレはできれば誰一人として欠けずに鹿屋へ行きてえ!その中には加賀!もちろん夕雲や巻雲も入ってる!みんなはオレの仲間だ!加賀をよそになんてやりたくねえ!」

 

まーたご主人様が艦娘を勘違いさせそうなことを言ってるお…ほらぁ…加賀さん泣き止んでちょっとキラキラしてるじゃないですかぁ…。ゆっきーの苦労が増えそうですねぇ…。って言うかあたしも加古さんもお鬼怒さんも隼鷹さんも…本当はあたし達だけで…クヒヒヒ…♪なことを考えてたんですけどもう無理ッスねぇ…。

 

一方で夕雲も巻雲も今の提督の熱意を受け取った。巻雲はまだ少し恐怖を持っているが、夕雲はその熱意が本物だと気付いたようで、恐怖心はすっかりどこかへ行ってしまっていた。

 

「そう…ですか」

「すまねえ加賀!不安にさせちまった!できるなら…ついてきてくれねえか…」

 

提督は土下座をしたまま。普通の提督ならここまで下に出る者はいないだろう。玲司や一宮提督もそうだが、提督がこうも艦娘に簡単に頭を下げるのはまずない。プライドだけが肥大しているし、艦娘を下に見ているからだ。他の提督ならばならばどこかに行けと言うか、加賀が下手に出たものだからまた暴行を働くだろう。

 

「…提督、グス…頭を上げてください。提督が良いと言って下さるのなら…私は提督に…ついていきます…………ずっと…ええ、一生…

 

「ん?加賀、最後何か言ったか?」

「………いえ、何も。提督。日本へ行っても…どうぞよろしくお願い致します」

 

「おう。よろしく頼む。陸奥?どうしたんだ?顔色が悪いぞ?」

「いえ…何でもないわ…(加賀も落ちたのね…)」

 

はあ…と陸奥がため息を吐くが提督には何だかわからない。オレのせいで余計な気遣いをさせて疲れさせてしまったらしい、と激しく勘違いしている。漣はゆっきー属性かぁと遠い目をしている。うーん、ゆっきーのゴールは遠いなぁ…。

 

加賀は少しだけ足取りを軽くして部屋に戻って行った。この後食堂で一気に食欲を回復させた加賀はもりもりと、提督が見ていて気持ちの良いくらいにご飯を食べるようになったらしい。

 

この後、潜水艦たちが遊びに来て…秋霜や清霜達夕雲型が遊びに来て…。

 

「ひ、ヒエー!?夕雲姉さん!?し、失礼しましたー!」

 

なぜか逃げてしまった。夕雲に気を遣っているのだ。自分達が和気あいあいとしていたらなんであなた達は提督と仲良くしているの?とか言われそうだったので。それも秋霜たちの勘違いなわけだが。

 

他にも木曾や長良がやってきてついていくと回答。迅鯨、長鯨も何があってもお供しますと何か濁った目で答えていた。明石は提督は目を離すと何をしでかすかわからないからついていきますと。これで夕雲、巻雲以外はついていくと言う答えになった。

 

………

 

「で、夕雲姉はどうすんのさ?」

 

夕雲型が一同に夜を過ごす大寝室。夕雲が最初は1人でも欠けると提督に何をされるかわからないから一緒にいてくださいと光のない瞳でそう言うものだから一同が集まっている。特に困ることもないし、長波や朝霜は寝坊することが多いし、清霜は寂しがるしでこれはちょうどよかった。

 

「そうですね…」

 

「長波姉さん。あまり夕雲姉さんをせかしても余計に困らせてしまうだけは」

「でもさあ岸波。提督も早くしないとやばいんだろ?」

 

提督が言っていたように期限が決められているらしい。提督に実際に話を聞いてみたが、日本の基地に着任することでさらなるみんなの練度向上、さらには生活の改善が望めるらしい。

 

「アイスとかいっぱい食べれんの!?」

「マジで!?日本に行くといいとこだらけじゃん♪」

 

いつものコンビ、長波と朝霜。そして、陰から見つめる早霜。司令官大好きの秋霜聞き込みに来ていたのだ。

 

「わーい!うちアイスいーっぱい買ってね!」

「お。おお…」

 

「司令官。あまり私費でお菓子などを買わないでくださいね」

 

白雪にくぎを刺されていた。

 

「まーた長波姉と朝霜は提督んとこ行ってたのかよ。長波姉もほんと、提督のこと好きだよなぁ」

 

「はあああ?!!?!す、涼波何言ってんだよ!あたしは別にそんな好きじゃねえし!ただの聞き込みだよ!!」

 

「執務室から出てしばらくしてアイス♪アイス♪って言ってたのはだーれだ!」

「朝霜おおおおお!!!!」

 

「てーか、司令んとこ行こうぜって言いだしたのは長波姉だかんな!」

「はい。一言一句聞き漏らさずに聞いておりましたよ…」

 

「は、はやし、はやしー…」

「あはは…長波…ほどほどにね…」

 

「か、風雲姉。違うんだって!?んだよその優しい目はよぉ!」

 

賑やかになったわねぇ…夕雲は妹たちが元気にはしゃいでいるところを見て元気が出てきた。自分もいつまでも。あの人はあの人。提督は提督なのだから割り切らないと…と思ってはいる。思ってはいるけど…。

 

やっぱり怖い。

 

豹変する可能性がある。あの独特な話し方をする提督みたいに。提督の土下座を見なければ信頼できなかったかもしれない。食堂では加賀さんがかなり元気になっていたように見えた。まだまだ…提督を観察する必要があるだろう。

 

「夕雲姉さん、まだ、司令官様を観察するんですか?」

「ええ。まだまだ…もうちょっと…困らせてみようかしら?」

 

「はわわ…」

「朝霜さん、長波さん、あまり騒がしいと霞さんが来ますよ」

 

「そうは言ってもよぉ玉波!」

「うるさいわね!!今何時だと思ってんの!!??」

 

「おー、霞ー!司令官の話しようぜー!」

「は?何言ってんの朝霜?」

 

「って言いつつ座るんだな♪きひひ♪」

「はあああああ!!!!!?????」

 

「やっぱ提督大好きなのは霞だけだよなぁ!?」

「はーい!うちも好き好きー!」

 

「あんただけでしょ!?長波だけでしょう!?」

「霞もだろ!?」

 

「うちもー!」

「清霜もだよー!」

 

「ふふふ…賑やか…ですね」

「これって…また木曾さんに怒られるんじゃ…?」

 

「お前らまた騒いでんのか!?いい加減にしろよ!!」

 

「「「はい、すみません!!!!!」」」

 

木曾に怒られてしまった。そしてなぜか霞はそのまま秋霜に促されるまま、夕雲型の部屋で寝ることになった。清霜と朝霜に挟まれて。

 

「司令と一緒に日本って楽しみだな♪」

「ふ、ふん…」

 

素直じゃねえなぁ♪と言うとまた「はあああ?!」と大きな声を出そうとしていたので全力で風雲と藤波が口を塞いで事なきを得た。

 

………

 

3週間ほど、ほぼ毎日夕雲と巻雲は五ヶ丘提督を見ていたが、特に豹変することもなかった。まだたったの3週間なのでわからない…が提督の人の好さが溢れていた。夕雲や巻雲にも絶えず気にかけ、お茶を用意したり、巻雲が舟をこぎだしたら上着を掛けてあげたり。代わる代わるやってくる妹たちにも優しく接していた。

 

「しれいかーん!今日も汗をかく時間ですよー!」

「おい長良!まだ執務中だろうが!」

 

長良と木曾だ。なぜか長良は体操着にブルマ。それを見た提督は驚くこともなく白雪に声をかけて立ち上がった。

 

「おお長良。よーし、今日も運動するか!」

「きゃああああ!!?」

 

上着を脱ぎ、ランニングシャツ一枚になる。白雪が顔を真っ赤にしている。

 

「提督すげー筋肉…ってか何したらそうなるんだよ…」

 

腕の筋肉が凄まじい。ヒョロヒョロのようだった烏丸提督。汚い豚のような安久野の息子とは全く違う鍛え上げられた凄まじい筋肉。それに長良がほれぼれするくらいだった。

 

「司令官の筋肉すっごいよね!ほら、大胸筋とか腹筋も見て見て!」

「き、きゃあああ!!!きゃああああああ!!!」

 

長良が五ヶ丘提督のシャツをめくるとバッキバキの筋肉がさらに露になる。長良はうっとり見惚れてペチペチ触っている。白雪は目を手で隠しているけど、しっかりと指の隙間から提督の裸を見ていた。

 

「長良、くすぐったい…よし、行くか」

「はーい!」

 

「行くって…どこへですか?」

「夕雲ちゃんも来る?一緒にトレーニング!」

 

「え、ええ…」

「巻雲も行きます!」

 

「よしきたー!」

 

そう言うとニタァ…と長良が嫌な笑みを浮かべた。巻雲は…ふぇ?と言う声を出すだけだった。

 

………

 

「よし、まずはオレの日課だ」

「おう。お前のパンチは見ててマジでスカッとすんな」

 

「そうかよ。んじゃ、いくぜ!!!」

 

ドオオオオオン!!!!!

 

凄まじい音。まるで駆逐艦の砲撃音のようなパンチ。それが太い木にぶらさげたサンドバッグにヒット。大きく木を揺らすし、サンドバッグはどこかへ飛んでいきそうだ。

 

「フゥウウウ…」

 

猛獣のような表情に変わる五ヶ丘提督。彼のどこから湧き出るかわからないパワー。25kgのスレッジハンマーを軽々と振り回し、頑丈な鉄の塊を破壊し、壁を砕き、安久野の顔面を陥没させた恐るべきパンチ。

 

「提督、そのサンドバッグに貼り付けてる写真は何だ?」

「ああ、これは大府だよ。オレを殺そうとして…漣たちを沈めようとしたクソ野郎だ。絶対に許さねえ。オレはこいつの顔をへこませるまでは絶対に死なねえんだ。提督は銃で3回撃たれても死なねえよ」

 

「どういう理屈!?」

「いくぜ大府…歯ァ食いしばれ…じゃねえと死ぬ…!」

 

「おい何だぁ!?爆発事故か!?」

 

長波たちがやってきた。その時すでに提督は大きく振りかぶっており、長波や朝霜たちはこの轟音の正体を知らない。たまに聞こえてくる演習でもない轟音。この正体が…。

 

「オラアアアア!!!!顔面陥没しとけェええええええ!!!!!」

 

ドオオオオオン!!!!

 

「ピッ!?」

 

サンドバッグが大きく揺れる。そう。轟音の正体は五ヶ丘提督の強烈なパンチ。フウウウ!と残心のような。しかし、その勢いに朝霜も長波も腰を抜かした。その音と…提督の恐ろしい表情。

 

「すげえパンチだな…」

「ひ、ひいい…」

 

「オラアアア!もう一発じゃああああ!!!!」

 

ドオオン!!ベキィ!!バシュウウウウ!!!

 

「ああああ!!オ、オレのサンドバッグが!!!!!」

 

なんと提督のパンチでサンドバッグが破れ、中から砂がこぼれて壊れてしまった。しかも太い折れることのないだろう木に括りつけたのに折れてしまった。それだけ五ヶ丘提督のパワーが凄まじかった。

 

「す、すげえ…」

「司令官すごぉい…」

 

「オレの…オレのストレス解消が…」

「司令官!走ろ?走ればストレス解消ですよ!」

 

「お、おう…」

 

トボトボとグラウンドへ向かう提督。放置された長波は真っ白になってフリーズしているし、朝霜は腰を抜かしていた。

 

「あ、ああ…やべ、ちょっと…もれ…」

 

飛んできた風雲や岸波によって朝霜と長波は助けられたとか。

 

………

 

「じゃあまずは軽くですねー!」

「おう」

 

「はわわわ!!なんで巻雲までぶるまぁなんですかー!?」

「運動するならこれじゃないと!」

 

「巻雲走るなんて言ってないですよー!」

「えー?いいじゃんいいじゃん!」

 

長良の日課、走り込みに参加する提督。なぜか付き合わされる巻雲。夕雲や木曾。なぜか見に来ている隼鷹や秋霜。

 

夕雲はちょっと長良が羨ましかった。仲良くおしゃべりしながら走る。これは…ずっとこのお話しているところを見ていればよいのでしょうか…。

 

「司令官、ペース上げてもいい?」

「ああ、いいぜ。ウォーミングアップはできた」

 

「じゃあいくよー!長良についてこれるかな!?」

「はひっ!はひっ!司令官様ー!まってくださーい!」

 

「ほー?長良の走るペースについてこれる奴なんざ、この泊地にはいないぜ」

「いやー…提督、体力オバケだかんなー。陸軍の特殊部隊の訓練をサラッとクリアしたらしいし」

 

「それわかんねえよ」

「まあ見てなって」

 

「おお!司令官すっごーい!まだまだ行くよー!」

「おう。結構いい感じで汗かいてきたな」

 

長良も提督も軽く汗ばんでいる程度。さらにペースを上げていく。巻雲にはほどほどにして休めよとだけ伝えた。

 

「はひっ!はひっ!も、もう無理ー…」

「はや!?」

 

「巻雲さん、お水ですよ」

「あり、ありがと…んくっ!んくっ!ぷはぁ!死ぬかと思いましたです…」

 

「ま、あとで風呂に入ってゆっくりしとけよ。明日が大変だぜ?」

「は、はいい…司令官、すごいです…」

 

「ああ。あの長良のペースについていくなんてな。さて、何分もつかな?」

 

木曾が長良の勝ちを確信していたのだが、提督はペースを維持したまま休むことなく15分は経過しただろうか。長良の方が逆に息が上がってきている。

 

「はっはっ!(司令官、どうして…ペースが落ちない…!)」

「長良、大丈夫か?お前もそろそろペースを落としたほうがいいと思うぜ」

 

「まだまだぁ!」

 

ペースを上げてしまう長良。負けず嫌いらしいな…ついておかないと何かあると大変だ。提督もペースを上げ、長良について行く。そう、ついていけてしまうのだ。

 

「はあ!はあ!」

「おい長良、そろそろ限界だ。やめとけって」

 

長良は滝のような汗をかき、息も切れて限界が近い。一方で提督はまだ息一つ切らしていない。

 

「し、しれいか、なんで?」

「ああ、オレ?オレ、フルマラソン走れるし、富士山登山もやったし、レンジャー試験もやってみたことあるしな」

 

「なに、それ、わかんな…」

「とにかく、体力に自信あんだよ。これくらいならまだまだいける」

 

「う、ううう!じゃあ、最後の一周!全速力ううううう!」

「おいおい、無理すんなよ」

 

「!?」

 

こっちはもう顎も上がってひいひい言っている中でのラストスパートなのだが…提督は長良の様子を見ながら走っている。ええ…どういうこと…?

 

「よし、ゴールで待ってるからな。海軍のオルカの名はダテじゃねえぜ!」

「は、はやっ!?」

 

「嘘だろ…」

「あー、提督まだ本気じゃないぞ、あれ」

 

「!?」

 

ひたすらに体力オバケらしい。涼しい顔をしてこの泊地で一番足が速い長良をグングン抜いていく。速すぎる。

 

「おーい、長良、がんばれ!」

「はぁ!はぁ!!」

 

「よし、よく頑張ったな」

「は、はいぃ…」

 

肩で息をしている長良の頭を撫でる。達成感と褒めてくれた喜びでいっぱいになる長良。しかし…。

 

「ふー、汗だくー……???ひゃっ?!」

「おー、提督はラッキースケベ多いな♪?」

 

「ん?どういうこと…あ…」

 

汗でぐっしょりなため、長良の体操服が透けてしまい、健康的な黒のスポブラがしっかりと見えてしまっている。

 

「な、長良お風呂いってきまーーーーす!!!」

「おーい!ちゃんと頭とかも洗うんだぞー!」

 

まったくの的外れな忠告にずっこける隼鷹と木曾。違う、そうじゃない。

 

「ふふ、ふふふふふ♪」

「夕雲姉さん?」

 

「日本に行ったらもっと楽しくなるかしら?」

「さあなあ。そりゃ夕雲次第じゃねえかなー」

 

「そうですか♪」

「ふー…あちぃ…よいしょっと」

 

「わあああああ!!!??!?!」

「ん?何だ?」

 

「提督!!!何で脱いでんだよ!!!!(む、胸板に腹筋すっげ!!!)」

「おい、オレらいるだろうがよ!!(あの腕なんだ?背中もすっげ…!)」

 

「いや、暑くてな…オレもシャワー行ってくるか」

「おい提督!服着ろって!!白雪が死ぬゥ!!!!」

 

しばらくして、泊地中に白雪の悲鳴が響き渡ったとか。

 

………

 

数日後、観察を終わると言い出した夕雲と巻雲と一緒に中庭を散歩していた。嫌な予感がする…と白雪と鬼怒もついてきていた。鬼怒はどちらかと言うと暴走しそうな白雪を止める役だ。提督の上半身裸を見た(らしい)白雪が最近目に見えておかしい。隙あらば本当に艤装でも装備して提督を襲っちまいそうな。

 

「そうか。観察はもういいのか?」

 

「はい。もう答えを出しましたので」

「お。そうなのか。で、どうするんだ?」

 

「提督、夕雲と巻雲さん。2人は提督と一緒に日本へ参ります。そして、提督の指揮のもとで頑張りたいと思います」

 

「そうか!ありがとう、夕雲!巻雲!」

「ま、巻雲は夕雲姉さんが行くから行くだけでぇ…」

 

「あら?巻雲さんも司令官様じゃないと嫌ですから「わー!わー!」」

 

「ハハハ!そうか、ありがとうな、巻雲!」

「ふわぁ!!」

 

そう言って巻雲と夕雲を撫でる。それを影から見守る長波と朝霜と早波。

 

うらやましいなぁ…と黒いオーラを出しながらそれを見ている白雪と、いつでも止められる準備をしている鬼怒。そして…事件は起こった。

 

「ふふふ♪あら、提督?お顔に何かついていますよ?夕雲が取ってあげますね」

「ん?どこだ?取れたか?」

 

「いいえ?ほーら、こちらへ」

 

夕雲が手招きし、頭を下げて、とお願いする。こうか?と夕雲の背丈に合わせて顔に触れられるように高さを下げた時。

 

ちゅっ

 

「は??????」

 

「「はあああああああああ!?!?!?!?!?」」

「うわー、夕雲お姉ちゃんすっごーい!」

 

なんと…夕雲はそのまま五ヶ丘提督の唇と自分の唇を重ねたのだった。白雪の周りの空間が歪むほどナニカ出ているし、隠れていた長波と朝霜は大声を上げてしまうし巻雲は真っ赤になって蒸気を出しているし、鬼怒も硬直していた。

 

「うふふ♪提督ぅ?これからは、夕雲がいーっぱい甘えさせてあげる♪ですから、日本へ行ってもよろしくお願い致しますね♪」

 

「お、おお…」

 

「うわああああ!!!誰かー!隼鷹ちゃんと加古ちゃん呼んでーーー!!!白雪ちゃん、落ち着いてーーー!!!!」

 

「司令官まだお顔にゴミがついております白雪が取ってあげますから顔をこちらへ向けてください司令官司令官司令官司令官」

 

こうして、この後大急ぎでリンガから鹿屋へ移る手続きを済ませ、今に至るのだが…今日も新生鹿屋基地は修羅場になりそうな予感…である。

 




Q.何が始まるんです?
A.第三次大戦だ!

そう言うわけで五ヶ丘提督の鹿屋基地への異動が終わりました。レイテ沖海戦が始まります。
灼熱のレイテ沖海戦。戦闘など、飽きの来ない表現を書けるよう努力して参ります。大規模大作戦、玲司達に勝利を。そして刈谷提督の命を狙う大府の話など、まだまだ書きたいことが山ほどあります。
頭が爆発しそうですけど…(笑)

次回は横須賀のレイテの作戦について、です。そしてその作戦で浮足立ってしまう駆逐艦が1人。そして…それに対して今までの戦闘でもとある原初の艦娘にチラリとだけ本気を見せたある巡洋艦のお話になると思います。

次回もお楽しみにお待ちください。

それでは、また。
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