提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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球磨、多摩による狂人姉妹
原初の艦娘4人からなるチート姉妹

一般枠の刈谷組の矢矧率いる艦隊。
そして瑞鶴や大淀がいる横須賀の艦隊。

それぞれの戦いを書いていこうと思います。戦闘よりもこの後の描写にチカラを注ぎたいので申しわけないですがエンガノ岬沖はさっくり終わるスタンスです。

本人が扶桑姉様だいしゅき提督なのでスリガオ海峡を書いて満足していると言うのもありますが(苦笑。


第二百六十九話

「さーて、それじゃあ始めるクマ」

「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…」

 

この改装を受けた私を相手に馬鹿にしているのか、と戦艦棲姫改は思う。戦艦棲姫。それは艦娘と深海棲艦との戦いが始まって以降切っても切れぬ因縁がある。過去多くの大規模な侵攻において何度も艦娘と戦艦棲姫はやりあっている。

 

その中でも戦艦棲姫や空母棲姫は沈めたり沈められたりする関係である。それ故にどこの艦娘からも恐怖の対象と見られることが多いのだが、このたった2人の巡洋艦は自分を獲物としてしか見ていない。

 

(ココマデ、艦娘ハバカニナッタトイウノカ…)

 

質が落ちたものだな。まあこちらも理性などない駆逐艦や毛が生えた程度の巡洋艦だらけであるし、量産を繰り返してこうなるのも無理はないだろうと戦艦棲姫はため息を吐いた。

 

しかし、彼女はわかっていないのだ。彼女たちが百戦錬磨。戦艦棲姫など2人で始末できるほど、強力で凶悪な軽巡洋艦の改二勢であると言うことを。

 

「矢矧ィ!おめーは大淀らとこいつらの第二艦隊の相手をしてろ!!!あと空母棲姫を適当に頼む!!!」

 

球磨がそう指示を出す。自分達との戦いに水を差す馬鹿を屠れと暗に命令しているのだ。矢矧は「はあ?」と難色を示していたが、龍田が「了解よ~」と手を振った。

 

「これで邪魔者はいねえにゃ。2対1で申し訳にゃい」

「カマワン。私ヲ相手ニ後悔スルトイイ」

 

「ふーん。その言葉、そっくりそのまま返すクマ。前にやった戦艦棲姫、泣いて喚いて助けてーって言ってたけど」

 

気に入らない。私を誰だと思っている。改装され、練度も火力も大幅に上がっているのだ。このような小さい艦にやられるとでも?

 

「なら、目の当たりにするといいにゃ。そんでもって、お前はレンコンにゃーーー!!!!」

 

ダダダン!!!と多摩の精密射撃かつ速射。大淀はその速射能力に目を奪われる。村雨さんのように正確であるが、そのスピードは村雨さんは真似ができないだろう。いや、彼女とは素質が違う。村雨さんは超長距離を正確に撃ち抜く射撃能力。どちらかと言えばアウトレンジからのサポートに長けている。

 

一方で多摩は接近戦を得意とし、その中で精密さと速射を選んだ、と言うことだろう。そして動きも速い。鹿屋…いえ、現佐世保の艦娘は…うちで言う女王並の実力を持つ艦娘がいる!

 

球磨、多摩はレ級戦の際に会ったことがあるが、ここまで本格的な戦闘は見たことがない。そもそもあの戦艦棲姫相手に姉妹2人で相手をすること自体が異常だ。

 

ガオン!!!!

 

戦艦棲姫の砲が球磨を狙う。しかし、煙が晴れた先に球磨はいない。

 

「球磨ちゃんを狙うなんて1000万年はえーでまんねん」

 

「キミ、それうちを馬鹿にしとんのか?」

 

「ぜんぜんばかにしてないでまんねん。とにかくあいつらぶっ殺すクマ」

 

(なんやめっちゃ馬鹿にされてる気ぃするわ…)

(いや馬鹿にされてんだって…姉ちゃん)

 

無視してもめているわけにもいかない。とにかく瑞鶴達をうまく戦わせるためにこの深海棲艦の取り巻き共をさっさと始末していかなあかん。

 

「おっしゃいくでぇ!」

「フン!せいぜい長持ちしてくれよな!」

 

龍驤が艦載機を発艦。木曾は魚雷を発射。すかさず川内と島風が消えた。龍驤と木曾は攻撃。川内は敵を攪乱しつつ攻撃。島風はデコイである。

 

川内がいつ現れるかもわからない状況で攻撃をすることで龍驤と木曾の攻撃の攻撃からの意識を逸らす。島風はその速さを活かして相手に切り込むふりをしてやはり龍驤と木曾の攻撃から意識を逸らすことが目的となる。

 

この抜群の連携は実によくできており、さらに島風は矢矧達刈谷提督の艦隊のサポートまで始める。川内も同様。どちらかと言えば川内は「あんなの放っておいてもお姉ちゃん達が勝つから」とのこと。結局龍驤たちの強さはサポートなしでも十分なのだが、後ほどの奥義を放つための布石となる。

 

大淀達も実際に龍驤がここまで本格的に動くのを見るのは初めてだった。龍驤の戦い方は未知数だった。いつもは鹿島と並ぶ教養艦だったこともあるし、そもそも龍驤は横須賀の艦娘を育てるために横須賀に来たのであって、自分が戦闘に立ってしまっては育成にならないからこそ戦わなかった。

 

一方で水雷戦隊は猫の手も借りたかったこともあるので島風は出した。川内もちょこちょこと参加していたが、やっぱり川内も軽巡の育成のために一歩引いていたらしい。

 

実は龍驤は非情に好戦的であるため、今回の戦闘はワクワクを隠して戦闘に参加していた。何せ数年ぶりの本格的な戦いだ。ようやく回って来た戦闘の機会にとても張り切っていた。

 

それと同時に、チラチラとたった2人で戦艦棲姫と戦おうとする軽巡、球磨と多摩を気にしていた。

 

(何や…?あの2人ほんまに2人で戦う気かいな。戦艦棲姫やで?大丈夫なんかいな…せやけど、あいつらの殺気はうちらにも匹敵するのう)

 

「グェッヘッヘッヘ…さぁて…戦艦棲姫ィ…覚悟はできたクマ?」

「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…さあ、現世に別れを告げるといいにゃ」

 

「オロカシイ…キサマラゴトキ、ワタシノアイテデハナイ」

 

対峙する戦艦棲姫がそう挑発した瞬間、矢矧や大淀たちが硬直するくらいの凄まじい突き刺すほどの殺気が戦場を支配する。

 

「!?な、なんですか!?」

「…!?

 

「あら~…球磨ちゃん達怒らせちゃった~。わたしし~らない☆」

「た、たたたた、龍田さん!?止めた方がいいんじゃあないかなぁ?」

 

「ダメよ阿賀野ちゃん。ああなった球磨ちゃんと多摩ちゃんは止めるの面倒だも~ん。それより~、わたしたちはわたしたちのお仕事をしないと、あとから球磨ちゃん達がこわ~いわよ~?」

 

「ひっ!?は、はぁい!阿賀野!いっきまぁす!きらりーん☆」

「よ~くできました~♪」

 

阿賀野たちが硬直しているが、龍田は涼しい顔をしている。それはそうだ。球磨達でさえ、龍田を怒らせるのはやべーと言っているくらいなのだ。龍田は球磨達の殺気程度では狼狽えない。

 

「ほーん。やるやんけ。ちょっちうちもやる気出てきたでぇ!」

「へっ、姉貴たちすげえじゃねえか!オレらも負けてらんねえな!」

 

「そう言うことや木曾!蹂躙じゃー!いくでー!!!」

 

無論、球磨、多摩や龍田よりも恐ろしい…いや、世界で一番恐ろしい姉の殺気を浴びている龍驤達にとってはやる気をあげるための発破材でしかない。陸奥の殺気を浴びていながら球磨や多摩の殺気で驚いていたらあの姉に殺されてしまう。

 

「ふーん?じゃあ、私の殺気をもう一度浴びさせてあげるわ♡」

 

それだけじゃない。頭を握りつぶされる。あの怪力ゴリラ姉やんめ。どこぞの対生物兵器特殊部隊のゴリラみたいに恐ろしいデカさの岩をフックやらタックルだけで動かせるんちゃうか…。そう考えていると姉のにっこりスマイルを浮かべた姉の姿が脳裏に出てきたので首を振ってかき消す。あかん、こんなんバレたらうちの命はない。

 

「フッ。ゲンショノカンムスダカシラナイケレド…イッコウニカカッテコナイリユウハ?オジケヅイタ?」

 

「寝言は寝てから言おな。それともキミ、うちらが怖すぎて夢見てんのとちゃう?」

 

挑発に等動じるはずもない。逆にビビってんのちゃうん?と挑発され返す始末。実際龍驤達にとって空母棲姫など取るに足りない相手。それよりか球磨たちの動きが見たいのだ。

 

「おっしゃ始めるクマー。挨拶代わりのいっぱーつ!」

「挨拶をする必要もないけど受け取れにゃー!!!」

 

ついに砲撃音が響きだした。球磨と多摩の攻撃を皮切りに、戦艦棲姫たちも動き始める。大淀が、矢矧が、自分達の艦隊に指示を飛ばし、そしてそれに併せて大きな砲撃をが戦場を取り巻く。

 

「シズミナサァイ!」

 

「シズメ…!」

 

「おおん?なんやぁ?」

「おい、オレら無視かよ」

 

「オマエタチヨリモヨワソウナアレカラシマツシテヤロウ」

 

「いや、好きにしたらええんちゃう?そんかわし、うちらそこら中で派手にやったる」

「サンキュー。そんじゃ、派手にいかせてもらうぜ!!!」

 

「お?艦載機が飛んできたクマー」

「にゃにゃ?これはおもしれーことになってきたにゃ」

 

球磨たちは戸惑うどころか怪しげな笑みを浮かべてやる気をあげた。球磨たちはむしろ自分達が不利なほどテンションがあがる狂人たちなのだ。間に合わせの艦載機と戦艦棲姫の砲撃など、球磨たちには通用しない。あっさり避けられ、横須賀の吹雪たちや自分の所の長月、菊月などが妨害に参加。

 

「チィ…」

 

「おっ?空母棲姫も参戦クマ?2on2クマ?わりーな龍驤!木曾!こっちで頂きだクマー!」

「有象無象が何隻来ようが相手にならねーにゃ。こっちで相手してやるにゃ」

 

「おいおいおいちょお待ちーや!うちらかて殺る気満々なんや!空母棲姫はうちらがやるって!」

「いいじゃねえかよ龍驤姉。無駄な手間が省ける」

 

「うちは久しぶりの戦闘なんや!ストレス溜めてんねん!!やらせぇや!!」

「いや、オレ達は大淀のサポートすりゃいいだろ」

 

「お姉ちゃん達よろしくー。あたしは引き続き球磨たちのサポートするからね」

「おうっ!島風もやるよー!」

 

「だー!うちもやるううううう!!!!」

「駄々っ子かよ!?落ち着けって!」

 

「さて、どっちからやるにゃ?戦艦棲姫のケツは言うまでもねえにゃ。空母棲姫のケツも小ぶりだけどもみがいがありそうだにゃ」

 

「ああん?空母棲姫の乳は小ぶりだクマ。空母棲姫からグリンするクマ」

「ああん!?誰や今ぺぇの話した奴!!!!うちの耳の届く範囲でぺぇの話した奴は誰やぁ!?」

 

「落ち着けって!!何だよぺぇって!!!」

 

「でかいやの小さいのやの!!貧乳は希少価値なんやぞ!!!!牛みたいにでかいぺぇ持ってんのと一緒にすんなや!!!」

 

「おい、落ち着けって!」

「乳の話をしていると聞いて」

 

「うおっ!?球磨姉何しに来た!?てか今戦闘中だろ!?」

「いや、乳の話となれば話は別クマ。龍驤、おめーの話もわかるクマ。ステータスであり希少価値だクマ。だけど、球磨ちゃんは別に小せえ乳のことを悪く言うつもりはねえクマ」

 

「………なんやと?」

「考えてみるクマ。確かにでけえ乳は夢と希望が詰まってるクマ。けどな、小せえ乳はな?ダイレクトにその娘の心に触れることができるクマ」

 

「………!!!」

「気づいたクマ?そう…心に直接触れるんだ。心臓の鼓動を身近に感じて…素直な思いを聞くことができるクマ…」

 

「おい、おい、球磨姉。そうやってなんかいいこと語ってるようにしてるけどな、龍驤姉の胸から手離せ。指をうねうねさせてんじゃねえよ」

 

「せやった…心に触れてもらう…これって、こんな…んっ!ええもんなんやなぁ…」

「おい、これ以上やったら打ち切りだぞ。聞けよ!!!」

 

「ぬう、球磨姉め。うらやましいにゃ…」

「羨んでねえで止めろよ!!!」

 

深海棲艦を完全無視して謎の世界を展開させる球磨たち。戦艦棲姫たちは啞然呆然…イヤ…だの、アノ…だのとドンビキしつつ球磨たちを見る。

 

「わかったクマ?乳には大きい、小さいにかかわらず無限の可能性があるクマ。さて、そろそろフィニッシュだクマ」

 

「あっあっ…」

 

ゴスッ!と殴打する音が聞こえた。顔を真っ赤にした矢矧が球磨の頭を思いきり殴った。

 

「そんなことしてる場合じゃないのよ!!!!あと、他の鎮守府の艦娘にセクハラをするな!!」

「うおおおお…」

 

「はっ!!う、うちは一体……」

「何を丸め込まれてるんだよ…」

 

「くっ…せ、せやけどうちのぺぇも負けてへんって言うのはわかったで」

「どういう話でそうなるんだよ…」

 

「球磨はうちのぺぇのことを理解してくれてるんや。木曾ぉ、キミもうちよりぺぇでかいから語り合うんは無理やな」

 

「は?」

 

「ちょっとー、あたしは?」

「川内も隠れてでかいやないか!うちは騙されへんで!くそ!それ言うたら球磨もでかいし…多摩は何なんそれ?」

 

「乳のでかさは興味ないにゃ。時代はケツだにゃ。ふむ…龍驤も木曾もダメだにゃ。そうだにゃ…」

「ひゃーん!?多摩さん!なに~?」

 

ゴッ!

 

「うぐぐぐぐ…」

「そう言って阿賀野姉のお尻をもむな!!」

 

矢矧、苦労してんだな…と木曾は矢矧に同情した。姉や仲間がハチャメチャだと苦労するよな…。磯風や利根姉を思い出し、さらには利根のイエスレディ、筑摩を思い出してため息をついた。

 

「ああ、それからな球磨。うちは貧乳やないんやで。品があるぺぇや。品乳って呼んでもらおか」

「ほーん……」

 

「「ヨシ!!」」

 

なぜか龍驤と球磨は親指を立て合って笑いあっていた。

 

「もう嫌…この鎮守府…」と矢矧が泣きそうになっていた。オレもわかるぜ…話を聞かねえ、わからねえ奴ら相手にしてるとマジ大変だよな…。

 

「キサマラ…」

 

ほれみろ、深海棲艦を無視してるからキレちまったじゃねえか。どうすんだよ!

 

「おっしゃああああ!!!やる気出た!!!おっしゃ!!!もう瞬殺する!!!」

「…ハ?」

 

何言ってんだよこの姉…いや、マジだ。式神が炎を纏いだした。まさか、いきなり奥義ぶちかます気かよ!?

 

「球磨のありがたい夢のある話を聞けたからな。特別大サービスや。見せたろやないか。『原初の艦娘』って呼ばれとる所以をなぁ」

 

夥しい数の式神が炎を纏い始め、龍驤の周りを狂ったように飛び回る。まるで玲司の命令を待っている夕立のようだ。

 

「あークソ!どうなっても知らねえぞ!おいそこの深海棲艦!オレたちの奥義喰らったらお前終わりだかんな!!」

 

「フフ…オロカナ…ヒカ、オモシロイ。ナラソノママ、ヒノカタマリトナッテ…シズンデシマエ…」

 

「クマ?何かすげえおもしろそうだクマ!!」

「見せてもらうにゃ」

 

「そーら!行くでぇ!!!!奥義!『四神・朱雀の型』!!!」

「そっちの戦艦棲姫をぶっ潰す!奥義!『四神・青龍の型』!!!」

 

炎を纏った式神が空へと駆けていく。さらには今空を飛んでいる龍驤の艦載機も炎を纏いだす。

 

「うおおおお!おうぎだ!りゅうじょうさんのおうぎだ!!」

「ふははははは!!!!やっぱひはいいのう!!!」

 

「いせなかがわをおもいだすわい!!!」

 

「な、何よあれ…」

 

矢矧が驚愕する。それはそうだろう。炎を纏う艦娘。龍驤の周りを燃えた式神が飛び交っているため、龍驤が燃えているようだ。炎上する様を思い浮かべ、身震いがする。大きな火は矢矧は苦手だ。火を好む艦娘、深海棲艦はこの世にはいないだろう。龍驤くらいだ。

 

炎に包まれながらも龍驤は笑っている。妹、と言う木曾もそれを見ても何も言わない。むしろ、空母棲姫を狙った龍驤を差し置いて、別の戦艦棲姫を狙っている。空母棲姫は目を大きく開いて怯えているようにも見えた。当たり前だ。炎は自分を焼き尽くす驚異の代物。タダでは済まない。

 

「ヴォオオオ!?かっけえクマ!!!よっしゃ多摩!球磨達も負けてらんねえクマ!!!」

「確かに。獅子搏兎*1…5秒やるにゃ。この世に別れを告げろ」

 

そうして球磨が戦艦棲姫めがけて走り出した。多摩は戦艦棲姫に砲を構える。狙うは機関部…心臓。強固な戦艦の機関を狙えるか?狙えるのだ。多摩の正確すぎる精密射撃ならば。

 

「クマアアアアアア!!!!!」

 

獲物を狙うヒグマの如く、大きく叫んで走り出し、懐へ潜り込もうとする球磨。そうはさせまいと戦艦棲姫が砲を球磨に向ける。

 

「バカメ…クダケチルガイイ」

「砕けるのはおめーの砲だにゃ」

 

ダァン!一発の多摩の砲が戦艦棲姫の砲塔を爆発させる。

 

「ガアァ!?」

 

(今、あの多摩さん、何発撃ったんですか!?)

 

チラリと見ていた大淀がうろたえた。どの砲が撃つかはルーレットのようだ。多摩は勘とその見事な速射。一発の発射音で2発を撃った。その一発がまさに姉である球磨を狙っていた砲塔を狙撃。多摩は涼しい顔をしているが、こんな芸当はうちの誰も真似ができないだろう。いや…あらゆる艦娘の技をコピーする響なら…無理か。彼女にもできない。

 

「多摩ァ!!よくやった!!!!オラァ!!!」

「ふん」

 

ダァン!ダァン!

 

球磨の砲撃に合わせて多摩が球磨と同じ砲撃箇所を寸分たがわずに狙い、それが戦艦棲姫の腹をえぐる。球磨はカウンターの砲撃を僅かに体を捻って回避。しかし、脇腹に赤い染みが浮かぶ。

 

「グウ!!」

「ちっ、やるな。おめーやるな。今のは完全にかわしたと思ったクマ。ま、ダメージはおめーのが上だクマ」

 

「フフ…タダデハシナナイワァ?ゼンインウミノソコヘオクッテアゲル」

「言うにゃあ。けど、多摩と球磨姉を前にそれは無理にゃ。沈むのはおめーにゃ」

 

「イッテナサァイ」

 

軽巡のこの程度の攻撃ではやはりびくともしないか。なら、やっぱここは…ハードグリンクマねぇ!!!その前にこいつムカつくわ。その余裕をぶっ壊す。

 

「多摩ァ!!!艤装全部ぶっ壊せクマァ!!!」

「言われるまでもにゃい。全部やる」

 

多摩の目が虎のように鋭い。球磨は球磨で本当に飢えたヒグマのようだ。もはや矢矧でも、木曾でも手がつけられない。矢矧は龍田に止めてもらおうと思ったが、どこ吹く風でナ級を斬り刻んでいるし、長門達も砲撃で手一杯だ。本当に大丈夫なのかと不安になる。

 

「ニャアアアアア!!!!!」

 

ダァン!!

 

その砲撃は戦艦棲姫の艤装の太い腕を撃ち抜く。

 

「南無阿弥陀仏…カアア!!!」

 

そこに連撃で砲弾の尻を撃っていく。強固な艤装を楔を打ち込むかのように砲弾が次々とめり込んでいく。苦痛に顔を歪める戦艦棲姫。最後には…。

 

「まずはその腕をグリングリーン!!!!!悪いおてては落としちゃうクマー!!!」

「ガアアアアアア!!!!!!!」

 

球磨がすかさず飛び込み、大穴の空いた背後から砲を突っ込み、中で砲撃。その結果、戦艦棲姫の艤装の腕がはじけ飛ぶ。

 

「ほれみろ。おめーくらい相手にはなんねークマ。さて、お楽しみはこれからだクマー!」

「ヒッ、ヒイイイイ!!!?」

 

戦艦棲姫が恐怖で顔を歪める。狂気の笑みを浮かべる球磨と、非常識な方法で腕を吹き飛ばされたからだ。混乱している。そして、こいつは相手にしてはならなかった、と言う後悔も追加。結果としてすくみ、硬直するしかない。

 

 

「ハードグリングリーーーーーン!!!!何もできずに地獄いきいいいいいいいい!!!!!!!」

 

バチュウウウン!!!!!

 

「うわ!グロ!!!!」

「皐月ちゃん、文月ちゃん!見てはいけません!!」

 

大淀と大和が皐月と文月の目を塞ぐ。こんなもの、特に皐月は不知火の一件もあるのでトラウマが蘇ってしまう。

 

「う゛ぉおおおおおお!!!すっきりしたクマアアアアア!!!!」

「ふん、この程度か。つまらんにゃ」

 

「何なの…この常識のない軽巡…」

「あ、あはっ…矢矧ぃ、これくらいで引いてたらぁ…うちの艦隊の旗艦は務まらないよっ☆」

 

「阿賀野姉!!顔が虚無なのにそんな楽しそうに言っても説得力ないわよ!!」

「うふふふ~♪終わったかしら~?」

 

「まだにゃ。あっちが終わってねーにゃ」

「そう~。じゃあまだいけるわねぇ?」

 

「待って龍田さん!!これ以上グロテスクなシーンを見たくないんだけど!」

「おっしゃぁ龍田!手伝うクマ!!グリンし足りねえクマ!」

 

「いやあああ!!やめてええええ!!」

「きらりーん☆阿賀野、がんばりまーす☆」

 

「阿賀野姉!虚無顔でやめて!!!!」

 

賑やかねぇ~♪と笑い、返り血で青くなっていく龍田をしり目に、矢矧は顔を真っ青にして戦闘を繰り広げるのだった。

 

一方で龍驤が放った『朱雀』は文字通り火の鳥となって空母棲姫めがけて突撃を開始。まるでそのまま襲い掛かり、空母棲姫を炎で包んでしまいそうであった。

 

「フフ、ヤレ」

「………」

 

無言で黄色のオーラを出す軽巡ツ級。こいつは防空巡洋艦だ。こちらの吹雪たち同様に彼女たちにもしっかりと対空に特化した深海棲艦がいる。flagship…こいつの防空能力はすさまじく、一航戦や二航戦の大編成でさえ撃ち落とし、枯らしてしまうほどだ。ツ級の対空砲火が朱雀を狙い撃ちする。炎の鳥の翼に穴が空いていく。そして、フラフラと安定しなくなっていく。

 

「ああっ!?龍驤先生の火の鳥がっ!?」

 

吹雪が空を見上げ、顔を青くする。龍驤先生の必殺技だと言うのに通用しないの!?

 

「ゲンショノ…ナニカハシラナイガ、タイシタコトハナイナ。ヤッテシマエ」

 

空母棲姫の命令を実行し、朱雀はハチの巣のように穴だらけになっていく。そして…力尽きたかのように弱弱しく一度羽ばたくと…海へと落ちていく。大淀達もああっ!と声をあげるが、龍驤は慌ても戸惑いもない。

 

「ククク。キサマノワザハソノテイドカ?ショセンケイクウボ。ヤハリ…ソノテイドダナ」

 

ハハハハ!と口に手をあてて笑う空母棲姫。策はもうないのか!?大和がそれに気づいて砲を空母棲姫に向けた時、龍驤もあはははは!と笑い始めた。

 

「ドウシタ。ジマンノヒッサツワザガフウジラレテオカシクナッタカ?」

「キキキ、笑わせなや。ほな、なんでうちがこないに焦ってないと思う?自慢の奥義があかんくされて、なんでこないして笑ってると思う?」

 

「………」

 

「阿呆が。勉強しなおしてこい」

 

龍驤がパチンと指を鳴らすと、墜ちた火の鳥は激しく燃え上がり、そして…飛び立った。

 

「ナ………ニ………?」

 

「朱雀っちゅうんはな。死んでもその炎からまた甦るんよ。なんぼでも。不死鳥なんや。そんで、聖なる炎で悪しき魂を焼き尽くすんや。お前らみたいな奴をな」

 

小さな火の鳥。それはいつの間にか空を覆い尽くさんばかりの巨大な炎の不死鳥と化し、優雅に空を飛ぶ。すご…と瑞鶴が息を飲むほどの巨大な炎の鳥に。さらに龍驤が指をパチンと鳴らすと、その日の鳥からはブロロロロロロ!!!!!とチカラ強いプロペラとエンジンの音が聞こえる。火の鳥が一斉に無数の爆撃機と化した!!!そして、一気に空母棲姫やツ級たちめがけて急降下!!!

 

「テッキチョクジョウ…キュウコウカ……!?」

「遅いわボケ。不死鳥の前に散れや」

 

防空に入ろうとするが間に合わない。一瞬で現れた艦爆の大編隊は、一斉に…無慈悲に腹に抱えた爆弾を落とす。

 

「ソンナ…ソンナハズガ…!!!タカガ…ケイクウボニィ!!!」

「死ぬまで言うとれ。そうやって誰も彼も見下すから勝たれへんねん。一生な。もう一回空母棲姫になっても、また焼いたるわ。お前は七面鳥や。なんぼでもローストにしたる。あっ、吹き飛んだらローストもでけへんなぁ」

 

「お姉ちゃん容赦なさすぎて活躍の場がないんですけどー」

「そない言われてもなぁ。弱いあのクソザコ空母おばさんに言うてや」

 

大爆発と共に空母棲姫の艦隊は跡形もなく吹き飛んだ。これぞ龍驤の奥義。しかし、この奥義はまだ本気を全然出していないのであるが。

 

一方で木曾はもう一隻の戦艦棲姫に「青龍」の魚雷を撃ち込んでいた。無数の魚雷。

 

「お前、鯉って知ってるか?鯉って言うのはな、でけえ滝を昇ろうとすんだよ。そんで、登り切った鯉は龍になるって話があるんだけどよ。それを参考にさせてもらったのが青龍だ。その魚雷の群れはさしずめ鯉ってとこかな」

 

解説に入る木曾。簡単に言っているが、この奥義を編み出すまでには文字通り、血反吐を吐くほどの練習を繰り返した。時には陸奥からも怒られ、大破するくらい。これは完全に木曾にしか真似のできないものなのだが、いかんせん横須賀の北上ならできるんじゃねえか…と言う不安に駆られている。だが、これは北上には真似ができない。

 

「コイ…フフ、サメデモナイサカナナンテ…ネェ?」

「言ってろ。こいつらは龍になるんだ。それをその体で体験しな!」

 

しかし、戦艦棲姫も余裕はない。夥しい数の魚雷。いかに戦艦の装甲とは言え、ひとたまりもない数である。回避をしようとするが、その魚雷はまるで本当に魚のように。意思を持ったかのように襲い掛かる。その泳ぎ方はまさに龍のよう。しかし、その魚雷の龍は一筋縄ではいかない。

 

ドバアアアアアアアアアアアン!!!!!

 

鼓膜を破らんばかりの勢いで爆発する魚雷。戦艦棲姫はその巡洋艦の無能さを笑った。それはそうだ。あれだけの魚雷を密集させて撃ったならば、何かの弾みで爆発した際に誘爆は必至だ。それは目の前で当然のように爆ぜ、大きな水柱を作り、虚しくもその必殺技とやらが失敗に終わったことを予期し、笑った。

 

この水柱が消えた瞬間にこの砲で肉片にしてやる。そう優雅に砲を構えようとした次の刹那。戦艦棲姫は聴力を失った。

 

「馬鹿が。言ったろ。鯉は滝を駆け上がるってな」

 

球磨や大淀達は見た。大爆発し、耳をつんざく轟音と共に上がった水柱を、我先にと昇っていく魚雷を。そして、それは魚雷の黒い塊となり、一匹の巨大な龍が天へ駆けるかのように大淀達は見えた。そして、その龍は…眼前の戦艦棲姫を敵と見なし、まるで食らいつくかのように意思を持って戦艦棲姫へと降りかかる。魚雷の雪崩。寸分たがわぬように魚雷を制御した木曾のチカラで、魚雷はぶつかったりせずに獲物へ全て降りかかる。そして…。

 

「龍の逆鱗に触れたんだ。お前はもう終わりだよ」

 

大淀達は吹き飛ばされそうに。そして、爆発でできた波で転びそうになりながらも何とか踏みとどまる。

 

「あー、やっぱちょっと改良、まだいるな…」

「このあほう!全員転ばせて戦闘不能にしたいんか!?やりすぎやっちゅうねん!!!」

 

「わり…オレも久しぶりの姫だったから…」

「う、うーん…ま、まあしゃーないなぁ…」

 

「仕方ないではありません!!!もう!!」

 

「大淀!ごめんて!!せやけど、もうあと厄介な姫級とかおらへんようになったから、そっち任せたわ!」

 

「あー!不完全燃焼!あたしそっちに混ざるー!」

「島風、いっきまーす!!」

 

「あー、うん、いっといで…」

 

圧倒的な「炎の女王」と「雷の女王」の実力はまさに敵を瞬殺。それが例え姫級であろうとも。まだまだ「原初の艦娘」の実力は衰えることがない。むしろさらなる研鑽により、その実力は横須賀の女王たちよりもまだまだ高いと言えるだろう。

 

「さって、邪魔者もいなくなったし、矢矧?そっちはどうクマ?」

「ええ、こちらも片付けたわ。これから第二艦隊は退路の確保よね?」

 

「にゃ。それじゃあ球磨姉と多摩が戦闘狂でないところを見せてやるにゃ。退路の確保なら宇宙一にゃ」

「任せろクマー。ついでにザコはいねーかなー。おーい龍田―。退路確保に移るから提督に連絡頼むクマー」

 

「………提督?聞こえてる?提督?」

「どうしたにゃ?」

 

「……………」

「龍田さん、どうしたの?提督は何と?」

 

「……繋がらないの」

「え?」

 

「うそっ。提督さん、絶対に1秒も経たないうちにお返事してくれるのに?」

「……」

 

その時、球磨の脳裏に提督とのやり取りが思い出された。

 

………

 

出撃直前、球磨はただ1人、提督に呼び出されていた。

 

「提督、用は何だクマ?ま、まさか球磨ちゃんにグリン禁止令を出すクマ?!ダメだクマ!ストレスで死んじまうクマ!」

 

「違えよ。それは好きにやれ」

 

そう言うと球磨はホッと胸をなでおろした。アレができないのは死活問題クマ。それほどまでに球磨にとって大事なものである。

 

「それで?じゃあ何?」

「テメエにしか伝えておかねえ。いや、テメエにしかこれはできねえと思ってる」

 

「おっ!?何クマ?球磨だけにってとこがそそられるクマ!」

「ああ。万が一だ。万が一俺に何かあって連絡が取れなくなった時の話だ」

 

その言葉の瞬間。球磨はヘラヘラした顔から一転、厳しい顔になる。まさか提督が?んなわけねーだろ。殺しても死なねえような奴だ。

 

「……提督になんかあったら、龍田はポンコツになるし、矢矧や多摩は取り乱して指揮が混乱する…か?」

「よくわかってるじゃねえか」

 

球磨はこういう時の頭の回転は恐ろしい。長年提督とやってきたこともあるだろうが、それだけではない。野生の勘だ。つまり、この作戦中に提督の身に何か起きる。そう言うことだろう。それも、もしかしたら提督の命にかかわるような。この提督に限ってないとは思いたいが…まさか。

 

「俺からの連絡が途絶えたら、大淀と連携してテメエらで戦場動かせ。多摩や矢矧、長門達のケツを蹴っ飛ばしてでも動かせ。そして全員で帰還しろ。帰還させろ」

 

多くを語っている暇はないし、詮索している時間もない。考えられる限りのことを考えて、諸々反論したいところではあったがそれどころではない。それを考えながらの作戦履行など、支障でしかない。十全でグリンをかますためには余計なことを考えず、目の前の敵を必殺する。それが球磨に与えられた仕事。そして、艦隊全員を安全に生かして帰すための退路の確保。これが球磨が大規模作戦の最終作戦に絶対参加させられる理由である。

 

「わかった。ないことを祈りてえクマ。けど、その確率、10割ちけーんだろ」

「ああ。間違いねえな」

 

「クマー。これ龍田にバレたら球磨ちゃん殺されちゃうクマ。顔にも出せないクマ。プリティでキュートな球磨ちゃんは絶対バレないように作戦を実行するクマー」

 

「悪いな」

「提督が謝ることじゃない。悪いのはアイツだ。もしできるなら、地獄へ叩き込んでほしいクマ」

 

「難しい注文だな。まあ、それは帰って来てからのお楽しみだな」

「クーマー。期待してるクマ。あ、あとあれ!おいしいサーモンが食べたいクマ!」

 

「そうかよ。用意しといてやるよ」

「楽しみだクマー!!!じゃあ、提督、行ってくるクマ………気をつけて」

 

「ああ、球磨もな」

 

テメエもな、とは言わなかった。名前を言ってくれたことがすごく嬉しかった。だから絶対に生きて帰ってくるクマ。だから提督も、生きていてよ?そう言いたかったが言えなかった。

 

「……提督?」

 

球磨も無線を送ってみた。だが、返事は1分待っても返って来なかった。

 

「退路を確保する!佐世保第二艦隊!用意!!!」

 

すぐさま切り替えて球磨はリーダーとしての役目を果たす。

 

「早くしろ!!!死にてえのか!!!!!!」

 

その言葉に慌てて龍田も矢矧も阿賀野も動く。龍田は震えていた。やっぱりこいつ提督の事になるとポンコツだクマ。しょうがねえ、だって嫁だもんな。嫁が心配してんぞ提督。返事くらい返してやれ。そうぼやきたくなった。

 

「球磨姉、多摩、突撃するにゃ」

「クマー。球磨も行く!!!」

 

不安を胸の奥底に押し込み、球磨は退路の確保へ向かうため、海を駆けた。

*1
ししはくと。獅子が兎を狩る時も全力で尽くす様に、些細なことや簡単なことでも全力で取り組むこと。




次回は佐世保鎮守府からのお話となります。
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