提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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これからしばらく戦闘シーンはほぼありません。
まずはほのぼの第一弾。雪風の日記帳です。改二になって少し大人になった雪風の日記。実はちゃんと毎日続けているんです。

それでは、どうぞ。


第二百七十四話

駆逐艦、雪風の部屋。いろいろなぬいぐるみなどがベッドに並び、艦娘のみんなや大好きな司令と一緒に写った写真が所せましと並べられている。

 

その机には一冊のノートが置かれている。「雪風の日記帳」と丁寧な文字で書かれたそれは文字通りの日記帳だ。妖精さんに作ってもらった本棚にはこれまでの日記帳がいくつも並べられていた。

 

最初のころは「雪風のにっきちょう」や「雪風の日記ちょう」など、漢字が書けなかったのだろうことが伺えるが、ここ最近、改二になってからはしっかりと「雪風の日記帳」と書かれており、成長が垣間見えた。

 

内容も玲司が来てからの日記はとても子供っぽく書いてある。読んでいる玲司も大淀もほほえましいものであった。今はしっかりした中学生か高校生のような…そんな印象を受ける日記だった。

 

それでも雪風は「しれえ!今日も日記を書いたので読んでください!」とニコニコしながら日記帳を渡してくる。玲司はそれを受け取り、赤のボールペンでしっかりと返事を書くのが通例になった。戦闘や遠征の報告から今日のご飯の感想、皐月たちと遊んだことなどの他愛ない話まで。雪風が元気ならば鎮守府は活発だな、とも思える「雪風指針」なんて呼ばれることもある。ここ数ヶ月はレイテの大規模作戦のせいで雪風もギスギスしていたし、玲司はもちろん、作戦の司令官として忙しかったのでだいぶ間が空いてしまった。

 

レイテの作戦が終わり、横須賀鎮守府にも日常が戻ってきた。だから今日も雪風は日記を書く。

 

………

 

9月△日 晴れ!

 

今日から日記も再開です!

司令、大きな作戦が終わりました!みんなお疲れさまでした!司令もお疲れさまでした!

出げきする前から今まで、本当に…むさしさんや時雨ちゃん、ずいかくさん。みんなみんなが頑張ったおかげですよね。だれもいなくなることなく、全員でこの喜びを分かち合えるのはとっても幸せなことです!雪風は幸せ者です!

 

司令!ありがとうございます!

 

司令のお返事。

雪風、本当にお疲れ様。長かったなぁ…いろいろとみんな疲れたよな~。

ちょっとまだばたばたしているからできないけど、落ち着いたらみんなでお疲れ様のパーティーをしような。何か食べたいものを決めておいてくれな!

 

………

 

「あっ、雪風ちゃん!司令官に日記を見せていたの?」

 

「吹雪ちゃん!はい!やっと書けるくらい落ち着いたので書きました!」

 

「むむむ、私も書こうっと!でもあれだよねぇ、この大きな作戦が始まってから心が休まらないし…練習も多かったし忙しかったよね~」

 

「そうですね…あっ、間宮さんのところへ行ってお茶にしませんか?」

「うんうん!いいね!行こっか!」

 

「はい♪」

 

日記を書く仲間である吹雪とまた日記のことを語らえるのは雪風にとっては素直にうれしいものだった。吹雪とは日記を見せ合う仲だ。司令官のコメントを見てお互いにいいな~と言ってみたり、似た内容の日記を書いて司令官に笑ってもらったりと本当にいい仲になった。

 

吹雪もレイテで頭がいっぱいでなかなか日記が書けないでいたので雪風と何を書こうかを相談できるのはありがたかった。冷蔵庫からリンゴジュースを取り出し、コップに注ぐ。そして2人してぷはーっ!と一気にまずは飲み干す。

 

「はふー…ほんと…なんか落ち着いて雪風ちゃんとお話しするのも久しぶりな気がするー…」

 

「そうですね。作戦会議や練習で忙しかったですもんね…息苦しかったです」

 

「ほんとほんと…ふにゃあ~…疲れたよね~…」

 

ぐでーっとテーブルでふにゃふにゃになる吹雪。それを見て雪風もぐでーっと真似をする。そう、とにかく鎮守府全体がピリピリしていたのだ。大規模作戦なんて当然参加したことはない。安久野の時にもたびたび大規模作戦や中規模作戦などはあったが、当たり前のことであるが、戦果が低すぎて召集されることはなかった。

 

「儂さえおればどんな作戦も簡単に攻略可能だ!ふふん、儂は虎の子として扱うわけだな」

 

なんてことを言っていたようで、呼ばれもしない作戦の最終的切り札として颯爽と登場できる、などと思っていたらしい。その後大本営会議に呼ばれることもなく、期待は裏切られたと執務室で暴れ倒していたらしいがこの男にそんな召集がかかるはずもなかった。

 

「今までもなんだかんだで大きな戦いに出たりしたけど…今回はほんとに…すごかったねぇ…」

 

「しぐがあんな風になって北上さんに怒られるくらいでしたもんね。あのしぐの言ったことは許せませんので雪風もちゃんと怒りました」

 

玲司の命令を忘れて北上に激怒されたことがあったが時雨に対しては雪風もしっかりと駆逐艦寮で正座させて怒ったのだ。吹雪は「北上さんにこってり怒られたんだから…」と言ったのが「雪風からも言いたいです!」と激怒。時雨も「もうあんなことを言うのはごめんだよ…」と懲りた。しかし、因縁の戦いであったということも考慮はされたのだが(9割は吹雪のフォローである)。

 

「司令官もしばらくは軽めの遠征と哨戒くらいでいいって言ってるし…あっ、それとお庭で何かパーティーしよって考えてるらしいよ!」

 

「パーティー!!何をやるんでしょうか!楽しみです!」

 

パーティー。レイテお疲れ様パーティーを玲司、間宮、茉莉総出で何か料理を作ってやるそうだが、どんなことをするのかを聞いても絶対に教えてくれない。島風や文月、皐月が聞いてもダメ。摩耶や最上が聞いてもダメ。果ては翔鶴が玲司に聞いても「内緒」と返されてしまったらしい。

 

「今は大淀さんたちも目いっぱい事務仕事でまだちょっとパーティーはお預けっぽいねー」

 

今レイテの報告、それと同時に溜まっていた書類などを大淀、鳥海、霧島、妙高が加わって必死に早く終わらせるように頑張っている。かつて朝潮たちの着任の時のように睡眠を削り…をやろうとしたら間宮に激怒されてしまったので0800から1800まで。休憩1時間でせっせと書類を片付けている。満潮や朝潮、名取たちも手分けすることで大いにはかどっているという。

 

「昨日、しれえに聞いたら今日には全部片付くらしいので、明後日くらいには準備できるそうですよ!」

「わあ!楽しみだね!」

 

「あら、パーティーの件ですね?ふふ、明日から私と茉莉ちゃんは準備に取り掛かるので楽しみにしておいてくださいね♪」

 

間宮の話ではみんなにバレないように間宮と玲司とで買い物に繰り出したらしい。よく隠し通せたものであるが、とにかく作戦は成功。北上も参加したり、大和も参加してどっさりといろいろと買い込んだようである。ただ、間宮はニコニコしながら「どんなものかは秘密ですよ♪」と笑ってはぐらかされてしまった。

 

「うう、気になりすぎますぅ~」

「うふふ♪そのほうがパーティーが始まったらぱぁっと楽しめるでしょ♪」

 

「間宮さんはいけずです!」

「あら、秘密にしておいたほうが楽しいこともあるんですよ♪」

 

だめだ、絶対にこれは口を割ろうとはしない。だから吹雪と雪風は押しに弱そうな茉莉に質問攻めをしたのだが、「あう…あう…ひ、ひみつ…こ、これは、言っちゃ…だめ」とこれまた黙秘。最終的に間宮を呼ばれ、危ない笑顔になっていたので駆逐艦寮に逃げてきたのだった。

 

「はー!茉莉さんまであそこまで教えてくれないなんてぇ…」

「あれ以上は間宮さんが危なかったです!逃げるが勝ちです!」

 

「雪風ちゃんは強いなぁ…」

「えへへ…でも、やっぱり知らなくてもいいです!」

 

「え?」

「ぜーったい楽しいって決まってることです!だから雪風、我慢できます!」

 

「ふふ、そうだね!だって、ぜーったい楽しいもんね!」

「はい!」

 

例えばだが作戦のことで隠し事をされればそれは非常に困る。もちろん、玲司は作戦内容はすべてもれなく説明する。そうでなければ轟沈の危険性が格段に跳ね上がるからだ。そして、一番信用を失うのは誰かが轟沈したことを秘密にされること。安久野がいたときは誰が沈もうがあの男はほとんどの艦娘の名前を把握していなかったので秘密にしようもなかったのだが「貴様らに誰が沈もうと関係があるのか!?ええ!?」などと言ってごり押しされただろう。司令官がそんな隠し事をするはずがないのだ。

 

でも司令官は時々いじわるで、明日の晩ご飯は何ですか?と聞くと「ないしょー」と返ってくることがある。すると文月たちが延々と司令官の周りをまわって「なーにっかなー!」と質問をする。それでも内緒を通される。でもそれは悪い気はしない。すると摩耶や最上も加わって明日の晩ご飯の大予想会が始まる。

 

唐揚げ!オムライス!うどん!あらゆる考えをもってして万全で誰かは絶対当たる!と思っていたら出てきたのは…

 

「今日は島風の好きなカレーコロッケだー」

「わーい!お兄ちゃんだーい好き!!」

 

全員外れ。司令官はそれすらも予想していたみたいでこっそり島風に食べたいものを聞いていたりする。しかも「みんなには内緒だかんな!」と言って口外しないようにするのだ。たしか最近だと蒼龍が「アスパラのベーコン巻き」をリクエストしたようで、これまた全員が外れた。ブーイングの嵐だったが司令官はニヤニヤしながらベーコン巻きを食べていた。

 

「しれえは最近いじわるです!」

「あはは…ま、まあわくわくするからいいと思うけどね…」

 

「あたしも何かいじわるがしたいです!消しゴムの角を全部丸くなるまでごしごしするとか!」

「地味な意地悪だねぇ!?」

 

あははは!とでも吹雪は笑っていた。

 

………

 

9月〇△日

 

今日は間宮さんにもまつりさんにもパーティーのことを聞いたんですけど教えてくれませんでした!

司令もずーっと内緒と言って教えてくれませんでした!

しれえはいじわるです!だからしれえのシャープペンの芯をHBから3Bに換えるいじわるをしました!!

でもパーティーは楽しみです!

 

司令のお返事。

なんかみょうに書きにくいと思ったら雪風のいたずらか!

こんなことで司令官はくじけないぞ!パーティーの内容はナイショだナイショ!!

雪風のクレヨンの緑をビリジアンに換えてやった!にひひひ!!!

 

………

 

「むっすー!」

「ゆき…ゆきもやったことなんだから怒ったらだめじゃないか…」

 

「むっすーーーー!!」

 

クレヨンの緑がビリジアンになっていた件で雪風がフグのように頬を膨らませて怒っているのだ。パーティーの内容は教えてくれないわ、ビリジアンに換わってるわ、しれえは意地悪です!とぷんすかしているのである。

 

「しぐはパーティーの内容が知りたくないんですか!?」

「僕は別に…楽しいことになるのはわかってるからさ…料理の内容なんてその日に見たらどうせみんな大はしゃぎするよ」

 

苦笑する時雨。商店街にいっても「しっかりした美人なお嬢さんになったねぇ」なんて言われ、大人びてきれいになり、挨拶もしっかりできる素敵なお嬢さんとして通っている雪風だが、改二になっても鎮守府内では子供っぽい、皐月や文月なんかとあまり変わらない感じだ。

 

暇つぶしに絵を描いていたら緑の色がどうもおかしい…まさかと思って色を見てみたらビリジアンだった。ふつう気づくはずであるのだが、雪風は一切気が付かなかったのだという。日記を見たらしれえにイタズラされました!と時雨の部屋に乗り込んできてフグになった。

 

「雪風のクレヨンの色を入れ替えるのはずるいです!」

「提督のシャープペンの芯もたいがいじゃないか…」

 

これに関しては子供のケンカだ。時雨は適当にぷんすかしている雪風をなだめる。提督を怒ることもできないし…まあ最初にやったのは雪風だし…とため息を吐く。

 

「ぷすー…」

 

膨れた頬を指でつついたらおもしろい音がして空気が抜けた。雪風の怒りがヒートアップしたので逃げた。ちなみにこの雪風の怒りは茉莉がおやつに出したわらび餅(きな粉が甘くておいしい)を出したら簡単におさまった。

 

………

 

9月〇×日

 

司令がほめられる日はまだなんですか?

司令は雪風たちだけでなくてしぐや山しろさん、ふそうさん達がいっぱいがんばったスリガオ海きょうやずいかくさん達エンガノ岬沖、むさしさんたちのシブヤン海。みんなを沈ませないためにいっぱいいっぱいがんばったんです!ほめられないのはおかしいと思います!

雪風たちくちくかん一同は大本営にこうぎしたいと思います!!

 

司令官からのお返事。

雪風、司令官のために怒ってくれてありがとうな。

その準備はちゃんとしてくれているらしいよ。でも、何かいろいろと忙しいらしいんだ。

たぶん、11月くらいにはちゃんとほめてもらえるからちょっとだけガマンしてくれないかなぁ。

 

いやです!!!

 

………

 

「しれえ?しれえは大本営に行かないんですか?」

 

パーティーの準備のために料理の仕込みをしていると雪風が疑問を引っ提げて食堂へやってきた。特に用事もないけど雑談を交わす場としては食堂はもう定番の場所となっているし、提督がいる場所といえば執務室か食堂(厨房)だ。雪風は直感を信じて食堂に来たら間宮と茉莉と忙しくパタパタしていた。

 

そういえば、と雪風が思ったのだ。大体大きな作戦があったら大本営に行ってしまうのだが…今回は行く気配がない。おかしいなと思って玲司に聞いてみたのだ。

 

「あー、まだ何の話もないなぁ」

「え?しれえは頑張ったなってほめてもらえないんですか?」

 

「いやいや、ちゃんと刈谷提督からはほめてもらったよ。大丈夫」

「勲章は?もらえないんですか?」

 

「うーん、今のところは…ないな」

「そんなのだめです!!!!」

 

「うお!?」

 

突然雪風が顔を真っ赤にして大きな声を出した。その言葉に間宮や茉莉もびっくり。北上もうとうとしていたのが何事かと飛び起きてしまった。

 

「雪風ちゃん、なんですかなんですか?」

「どうしたの?」

 

皐月と文月もやってくる。

 

「実は…」と雪風が皐月と文月にお話をすると「えーーー!?」と2人も大きな声をあげた。

 

「そんなのないよ!!司令官、めちゃくちゃ頑張ってたじゃないか!」

「そうだよぉ!それなのに勲章がないっておかしいよぉ!!」

 

「いや、だからな?あのぉ…」

 

「そんなの絶対許せないです!!しれえはいーっぱい頑張ったんです!!許せないです!!」

「そーだそーだ!司令官に何もなしっておかしいよね!」

 

「そうだよぉ!文月たちが頑張れたのは司令官のおかげだよぉ!!」

「しれえ!電話させてください!」

 

「いや、だから話を聞いてくんねえかなぁ…」

「そうだそうだー。なんで勲章もないんだー。これには甚だ遺憾の意であるー」

 

「北上ィ!余計なこと言うんじゃねえぞ!?」

 

「提督に勲章をわたせー」

「「「わたせーーーー!!!」」」

 

「なのです!!!」

 

「うお!?電!?どっから出てきた!」

「お話は全て聞いたのです!司令官さんの頑張りを無視するのは許せないのです!!!!」

 

「ウラーーーー!」

 

「司令官が不当な扱いを受けていると聞きましたが本当なのですか!?くっ、それなら大本営をこの朝潮の牙で破壊…「やめてよ姉さん!物騒なこと言ってないでちゃんと司令官の話を聞きなさいよ!」」

 

「あらあら~?司令官にひどいことをするならぁ、こ、れ!」

「ドーンとやっちゃいましょー!!!」

 

「はあ!?ちょ、ちょっと!大発なんか持ってこないでよ!!!司令官!!!ちょっと止めてよ!!!!」

「俺に言うなよなぁ!?」

 

「ふふふ…司令に勲章も何もなしですかぁ…大したものですねぇ!」

「霧島!?ちょっとそれは大丈夫じゃないです!!!」

 

雪風を発端に大本営に襲撃をかけようとか爆破しようとか牙を撃ち込もうとかもうめちゃくちゃである。これはまずいと思った玲司は全員を食堂に集め、今大本営は非常にゴタゴタしていると説明した。論功行賞…つまり、勲章などはこれが落ち着いたらちゃんともらえるからとしっかりと説明した。そうして雪風や皐月たちは「なぁ~んだぁ~」と言って落ち着いた。こうでもしないと落ち着かなかった。玲司はため息どころか魂までも吐きそうだった。

 

ちなみに、これを扇動した北上は妙高に脳汁が出そうなくらい怒られたらしい。当たり前である。

 

………

 

9月〇△日 晴れ!

 

今日は待ちに待ったレイテおつかれさまパーティーでした!

中庭で焼き肉!ぶ、ぶっへ?自分で好きなだけおかずをとって食べるのは何を食べようかすごく困りました…でも、からあげにやきそばにお肉!お刺身もありました!おなかがぱんぱんになるくらいさつきちゃんたちと食べました!しれえはちゃんと食べましたか?お肉を焼いているところしか見ていませんでしたよ?

 

ちゃんと食べてないってわかったら雪風、泣いちゃいますからね!

 

雪風はこんな楽しいことがあるってこと。こんなに幸せになれることが生きていてあるんだなぁって思うとしぐと幸せになってずっとわらっていました。えがおは大事です。笑顔にならなきゃ幸せはにげてしまいます。きっとしれえは幸せを雪風たちにはこんでくれる幸運の神さまなんだと思います。

 

しれえ、いつもありがとうございます。雪風は幸せです。しれえ、大好きです!

 

司令官のお返事。

 

待たせてごめんな。いっぱい雪風やみんなの好きなものがあって目を回していたのが見ていておもしろかったよ。司令はちゃんと焼きながら食べてたよ。しょうかくにも持ってきてもらったりしたしな。雪風は何が一番おいしかったかな?→ローストビーフがおいしかったです!!

 

そうだな。幸せはかんたんに逃げてしまうものだ。笑うだけではだめかもしれない。けど、雪風やみんなが笑ってくれているなら、横須賀にはいっぱい幸せが舞い込んでくるのかもな。雪風やみんなを悲しませないようにこれからもよろしくたのむよ。いっしょにいっぱい、幸せな思い出をもっともっと作っていこう!

 

………

 

食べすぎて苦しいおなかを抱えつつ、雪風はニコニコと日記を読み返していた。幸せな思い出をもっともっと作っていこう。雪風だって同じだ。司令官と、北上さんやしぐやみんなと幸せな思い出をうんと作っていきたい。今日もまた幸せな思い出ができた。おいしいご飯。楽しい会話。北上さんとお肉を食べさせあったりもした。楽しかった。ここ数ヶ月はかなり張りつめていたために久しぶりに大笑いしたなぁ…思い返すだけでクスクス部屋で笑っちゃう。

 

日記帳を本棚に戻す。すると「雪風ちゃぁん、入ってい~い~?」というのんびりした声。文月だ。

 

「文月ちゃん!大丈夫です!」

「お邪魔するね!」

 

「お邪魔…します」

 

やってきたのは皐月、文月、霰。いつものちびっこ仲良しトリオだ。一緒にご飯を食べていただけなのだが、どういうわけか一緒に寝ようとなった。もちろん断る理由はない。何なら雪風は北上と一緒に寝ようかと考えていたくらい、1人で寝るのはさみしいなと思っていたからよかった。特に皐月たちとお話しするのは楽しいし。

 

「島風も寝るー!」

 

島風もやってきた。これでにぎやかになる。今日は楽しく眠れるかな。そう思うとまたニコニコと笑顔になった。

 

「雪風、どうしたの?」

「ううん!何でもないよ。雪風は幸せだなぁって」

 

「えへへ~、文月もぉ、雪風ちゃんと一緒におやすみできて幸せだよぉ~♪」

「ふふっ、雪風かわいいね!ボクも幸せ!」

 

「霰も…です♪」

「おうっ!島風もー!だから雪風の隣もーらい!」

 

「わわわー!島風ちゃんずるいよ~」

「霰、となり、もーらい♪」

 

「あー!霰までー!」

「あはははは!!!」

 

この日はまた摩耶に怒られるまでお話に花が咲いたという。

 

………

 

「はい、いいかー。みんな、グラスは持ったかー?」

 

はーいと言う艦娘たちの声。待ちに待った横須賀鎮守府、レイテ沖海戦作戦成功おめでとうパーティーすぱしーばが始まった。何か玲司が褒章がないから大本営を爆破しようなんて声も出たがそれは絶対にやめなさいと言ったらとりあえず落ち着いた。妖精さんまで「ちきゅうはかいばくだん」とか言う変な爆弾を危ない顔で持ち出したり「でーもんこあをはんのうさせてやるです」とか非常に危ない発言が飛び交った。ひとまず彼女たちは金平糖マシマシで手を引いてもらった。

 

「じゃあみんな、ここ数ヶ月…ほんっとうにお疲れ様!みんな、本当によくやってくれた!俺も鼻が高いよ!!俺は近々すんごい勲章をもらえるはずだから、それまで我慢な!!」

 

「はーあ…ほんまにここの子らが敵に回ったら刈谷のおっさんとこ以外勝たれへんのちゃうか…」

「大和に武蔵、北上姉…んで新しい女王だ?勝てるかよ…?」

 

「無理無理。労力やばいよ、勝てたとしても。っていうか、あたしたち10人で神通を含めたあれ相手にしろって?絶対いや」

 

「島風はお父さんが無事なら別に雪風たちの仲間になってもいいかな!」

「あー、私も玲司君につくかな」

 

「う、裏切りぃ!?」

「うーん、うちも玲司につくかな…」

 

「いいのかよそれでぇ…」

「たぶん、高雄も大淀がおるからこっち側やなー」

 

「陸奥お姉ちゃんもつくんじゃない?」

「待ってくれ…利根姉や磯風たちも絶対つくじゃねえか!じゃあオレも…」

 

「骨は拾ったるでな…」

「いやオレもつくって言ってんじゃねえか!」

 

「んじゃあ楽しく食べて飲もうな!かんぱーい!!」

 

かんぱーーーーい!!!と始まったパーティーは中庭で大々的に行われた。中でも見ものなのはドラム缶を半分に切って炭を入れて網を敷いただけのバーベキュー…商店街でがっつりもらった上質な牛、鶏…海鮮に野菜を玲司が焼いていく。炭は妖精さんが仕入れてきた最高級の備長炭。

 

そのほかにローストビーフに唐揚げ…野菜のサラダ。お刺身。食べきれるのか?と言うくらいのものだ。いや、食べる。なぜなら大食いの武蔵、蒼龍、霧島…駆逐艦たちだってモリモリ食べる。

 

「うおおおお!うっめーーーー!」

「このお肉、すごいですわ!!解けてなくなるんですの!!お肉とは呼べない何かですわ!!」

 

「んあー!熊野汚いなぁ!はい!」

「焼いたニンジンを入れるなですわ!?」

 

「扶桑さん、このタン、おいしいですよ!」

「まあ名取さん、おいしいわねぇ♪」

 

「ぐぬぬぬぬ!!なんで名取さんが姉様のお肉を取っているの…!」

「見苦しいわね…はいロース」

 

「あむあむ…う、うう…おいしいわ…私…帰ってこれて幸せだわ…!」

「忙しいわね…!食べるか泣くか嫉妬するかどれか1つにしなさいよ!」

 

「響ちゃん、飲みすぎなのです」

「あるのがいけない。あるのがいけない」

 

「あははははぁ!なんでぇ、大潮姉さんが3人になっているのかしらぁ?」

「あわわわ!荒潮、それはお水ではなくウォッカよ!!」

 

「………」

「大潮!遠い目をしていないで助けて!!!」

 

「おーおー、盛り上がってんなぁ」

 

始まって早々にものすごい盛り上がっているのを見て玲司は目を細めた。やっぱりうちの子らは食って遊んで寝てをしているときが一番輝いているしかわいいな。しかし、本当にいろいろあったなぁ。大府の件でいろいろとおやっさんもゴタゴタしているし刈谷提督もゴタゴタしている。本当に迷惑な奴。南方海域で雪風を失いかけたようなふざけた作戦をした奴だ。死んだって許さねえ。

 

刈谷提督には「あんなクソのこたぁ放って艦娘ねぎらってやれ」と言われたのでこうしてパーティーを開いたのだ。山城や最上たちはスリガオ海峡お疲れ様パーティーを毎日シャンメリーで大量に空けて開いてた気もするけど、それとは別だな。

 

瑞鶴も憑き物が落ちたような顔をしている。武蔵はどこか張りつめた空気がなくなってひたすら食ってる。大和はようやく泣き虫がなくなったし、時雨も顔つきが柔らかくなった。鳥海も摩耶も笑顔だ。レイテに関わったすべての艦娘にいつもの笑顔が戻った。

 

「鹿島~。お色気役~」

「ま、またですかぁ!?」

 

「北上ィ!」

「なーにさー。あ、コンパニオンは翔鶴がいるか~」

 

「榛名ー!北上の目の前の料理全部持ってっちゃってー」

「やーめーてー。あたしだって頑張ったでしょー!」

 

「うるせー!」

「も、もう…だめですよ玲司さん…はい、あーん」

 

「ん、おう。んっ、うめえなぁ」

「はい!今日も茂さんのところのお肉はおいしいですね♪」

 

「翔鶴もどんどん食べてくれよー」

「はーいいただきまーす!」

 

「おらぁ瑞鶴!てめっ、翔鶴のためにとっておいたイチボを!!」

「いいじゃないですか!瑞鶴がエンガノ岬ですごく頑張ったんですから!」

 

「へっへーん!ありがと翔鶴姉!んじゃあ次はー」

「ほらよ」

 

「焦げたラードじゃん!!!爆撃するわよ!」

「翔鶴姉!提督さん!……愛してる!」

 

「んあああああああ!!!!!」

「ぶっはははははは!!!!!瑞鶴んなこと言うたんかいなぁ!!かわいいとこあるんやなぁ!!!!」

 

「もうやめてえええ!!!」

「ああ、瑞鶴!?」

 

玲司も楽しむ。もちろん翔鶴も。

 

「おーいちー!!しれーかん!おいちー!!」

「そうかそうか!霞もいっぱい食べるんだぞー!」

 

霞ももちろん、横須賀の一員。いっぱい食べて笑顔を見せてくれるのが玲司にとっては何よりの幸せだった。

 

………

 

夜。宴もたけなわ。大量の洗い物を終えて自分の部屋に戻ってきた玲司。翔鶴が出迎えてくれる。

 

「玲司さん、お疲れさまでした」

「いやー久しぶりに食った飲んだ笑ったー!楽しかったな!」

 

「うふふ、はい。みんなの笑顔でご飯がおいしかったです」

 

そう言って翔鶴もようやくひと段落できたんだなぁと思う。夫婦の時間をつぶさざるを得なかった。しかたがない。戦うことが自分の使命であるし、手を抜いて帰ってこれなくなってしまうことのほうが恐ろしいのだから。一緒に寝ることはあっても、営みはまったくなかった。こうして落ち着いていると、なんて私っていやらしいのかしら…こんなこと知られたら玲司さんに軽蔑されるのでは…などと思っていたのだが…。

 

「やっとゆっくりできるなぁ。書類もとにかく終わらせたし…これで、翔鶴とゆっくり夫婦らしいこともできるといいな。デートしたりな!」

 

「そうですね…また、どこかに連れて行ってほしいです。あ、そうだ。また玲司さんのご両親にご挨拶を…無事に終わりましたよって」

 

「そうだなぁ。そんでまたどっかでのんびり飯食ってドライブすっか」

「はい!」

 

言いなさい!言うのよ翔鶴!ただやっぱり引っ込んでしまう。うう…。

 

「翔鶴」

「はい?あっ…」

 

名を呼ばれたと思ったら抱きしめられた。温かい。

 

「ごめんな、ここんとこ何もしてあげられなくて…」

「い、いえ!そんな!玲司さんは提督、私は艦娘…大規模な作戦だったのですから…」

 

「でもこれでやっとしばらく翔鶴とイチャイチャできるなぁ。実を言うと、翔鶴を抱きしめたりできなくてさみしかったんだ、はは」

 

そう言われて翔鶴の思いはより強くなった。言わなければ伝わらない!

 

「私も…私も寂しかった…仕方ないってわかってた…手をつないで眠るだけでは…いやらしい女って思われるかもしれないけど…物足りなくて…抱きしめてほしかった…その…お風呂も一緒に入ってましたけど…すぐ上がっちゃうし…お話も出撃とかのお話ばっかりでしたし…」

 

一度言い出したら止まらなかった。いろいろとしてほしいことがたくさんあった。我慢は体に毒だよ翔鶴姉!提督さんにガツガツいかなきゃ!と瑞鶴に前に言われたことを思い出した。

 

「玲司さん…あの…」

「よっし!風呂入ろっか、翔鶴!ゆっくり、な!」

 

「あっ…んっ」

 

なんとキスされてしまった。そして、翔鶴はわかってしまった。玲司さんも…一緒の思いだったんだ、と思うと心がつながってると思ってうれしかった。

 

「お背中!お流ししますね!」

 

声のトーンが跳ね上がったってしるもんか。今はこの時間を大事にしたい。

 

「じゃあ俺は翔鶴の髪を洗おうかな」

「はいっ、お願いします♪」

 

夫婦の素敵な時間。一糸まとわずに2人で抱き合って眠る幸せな時間。翔鶴にとっては幸せで胸がいっぱいになった。

 

/???

 

どこか海岸にいる。見たことのないところだ。なんで?私は玲司さんと…一緒に眠っていたはず…。夢?

 

明晰夢とどこかで読んだ気がする。ふわふわとしているので歩いているのか浮いているのかさえわからない。でも不快感はない。

 

「おーい翔鶴ー!何やってんだよ!」

 

愛しい人が私の名を呼ぶ。そうして手を振ったときだ。

 

「おかあたーん!」

 

誰かが私を呼ぶ。前にもあったような気がする。誰だろう…。

 

「おー、〇〇〇も呼んでるぞー!」

 

名前が聞こえない。でも私はその姿を見て言いようのない愛しさを覚えた。目の前が白くなっていく。待って。いなくならないで。

 

「だいじょーぶだよ」

 

そうなの?

 

「こんどこそ、あえるね!」

 

そうなの?あなたに私も会いたい…!

 

「やくそく!」

 

そう女の子が言うと、白い世界になった。

 

目が覚める。まだカーテンの向こうは暗く、そう眠りについてから時間が経っていないことを理解した。胸が何か幸福感で満たされている。愛する人に愛された時間を思い出し、顔が熱くなる。それと同時に夢の中の女の子を抱きしめたときの幸福感も胸にあった。あの子は誰なのかしら?

 

誰なのかわかるのはもう少し先。翔鶴はなぜかわからないが無意識にお腹をさすっていた。翔鶴の幸せな生活はまだ始まったばかりなのだ。




数ヶ月ぶりの平和な日よ、こんにちは。

やっぱり横須賀の子たちがわいわいしてるのはいいですね。
あ、翔鶴姉、おめでとうございます(目そらし)

これからしばらくは平和な日常をよその提督のところも交えて書いていければと思います。
次回は皐月、文月、島風からなる「第二十二駆逐探検隊」が登場です。

楽しく書けるようにしていきたいと思います。

それでは、また。
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