提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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「第二十二駆逐探検隊」こと皐月、文月を筆頭にテレビデビュー!?
そんなほのぼの回です。

頭の中ではナレーターの方は「若〇〇夫」さんをイメージしておりますが、どなたでも構いません。お好きな方を脳内音声で再現してくださいませ。


第二百七十五話

「皐月だよ!よろしくな!」

「あたしぃ、文月って言うの~!よろしくぅ!」

 

「皐月ちゃん、文月ちゃん!ちゃんとご挨拶しないといけませんよ!」

 

元気よく挨拶をする皐月と文月。それを窘める練習巡洋艦の鹿島。その横でクスクスと笑っている綾波。その姿が全国でテレビ放送されているのだ。

 

日本のお茶の間を今騒がせているこのテレビ番組は「突撃!あなたの街のいいところ」という全国で最近有名になっているスポットやお店などをレポーターが突撃取材。それをワイプでお笑い芸人やタレントが見て笑ったり癒されたりする番組である。

 

 

今回は「艦娘の良いところも放送できる良い機会」と言う艦娘に好意的な制作スタッフからの要望により、海軍の特別許可を得て放送が決まった。

 

その噂と言うのが「艦娘と直に触れ合える商店街」と言う噂。艦娘がやってきては艦娘とお話したりお茶ができると言う商店街があると聞き、番組制作スタッフとしても、艦娘の良いところを広められることができれば、と言うことだった。上層部とはかなりもめたらしいがこれでウケなければ番組は打ち切るとまで言われたものの、艦娘を否定的に見ているあなた方とは分かり合えないとスタッフも啖呵を切り、この取材に乗り出したという。

 

最終的に許可が出ないなら一同退職届を出して動画サイトでこれを制作して取材するとまで言い出し、現在このテレビ局では一番視聴率が取れている看板番組。スポンサーやら広告収入、視聴率などを考えれば折れざるを得なかった。こうして艦娘と触れ合える商店街の取材に乗り出した。

 

「艦娘のことを一言でも否定的な発言があれば即刻この取材を打ち切ってもらう」と言う海軍の最高トップ、古井司令長官と防衛省大臣の厳しい言葉があったが、必ずや艦娘の信頼と海軍の皆様の信頼を損ねるような制作はしないとのことだった。

 

そして、その件の商店街は神奈川県横須賀市にある。そう、玲司の管轄している横須賀鎮守府のことだった。最近、艦娘と触れ合える商店街が増えてきているとのことだが、その発端はここ。艦娘のおかげで来客が目に見えて増え、観光地にもなりそうな勢いだという。

 

そして、実際に出会った艦娘はとてもかわいらしく、生き生きとしていて商店街を紹介してくれたため、視聴率は爆上がり。最高瞬間視聴率30%超えと言う驚異の数字をたたき出した。

 

今回はそんな横須賀鎮守府が全面協力のもとで行われた商店街の紹介の様子をご覧いただこう。

 

………

 

「おおっ、始まったよみんな!」

 

『突撃!あなたの街のいいところ!こんにちはー、しーちゃんです!今日は神奈川県横須賀市に来ていますー』

 

瑞鶴の声とともに番組が始まった。女性リポーターの方が手を振って挨拶をしている様子が映し出されている食堂のテレビを一同が食い入るように見つめていた。

 

「ああ!これ商店街の北の入り口だねぇ!駄菓子屋さんが見えるもん!」

「いやー、知ってるところがテレビに映るとテンション上がるもんだな!」

 

摩耶や最上がはしゃぎながら見慣れた場所であることを理解した。まあ、玲司からちゃんと聞いているし、文月たちにも聞かされていたのだが。

 

『今日のこの横須賀のとある商店街の噂を検証するため、ある探検隊をご紹介致します!どうぞ!』

 

『皐月だよ!よろしくな!』

『あたしぃ、文月って言うの~!よろしくぅ!』

 

『皐月ちゃん、文月ちゃん!ちゃんとご挨拶しないといけませんよ!』

 

テレビに映るかわいらしい少女たち。テレビの前のみんなには見知った顔である皐月と文月。元気いっぱいで手を振って全力で挨拶をしている。

 

『艦娘。それは海からの刺客である深海棲艦から私たち人間を見守ってくれる守り神…』

 

男性のナレーターがそう語りだすと、また見慣れた場所。そう、自分たちの鎮守府、横須賀鎮守府だ。

 

『今回は防衛省、海軍…そして横須賀鎮守府の提督と艦娘の全面協力のもと、皐月ちゃんと文月ちゃん、「第二十二駆逐探検隊」に街を案内してもらうこととなった』

 

第二十二駆逐探検隊…それは皐月がリーダー、文月がサブリーダーの何か面白いことはないかなと常に探し回っている探検隊。これは艦娘のかわいらしさを前へ押し出し、それでいて全力で紹介してくれるだろう皐月と文月を大抜擢した玲司の功績である。

 

その第二十二駆逐探検隊はと言うと…。

 

「わあ司令官!本当にボク達がテレビに出たんだぁ!」

「しれ~か~ん!ほらぁ、文月にさっちんに~、鹿島先生に綾波ちゃんだよぉ~!」

 

「う、うわぁ…鹿島達、本当に…何だか恥ずかしいですねぇ…」

「ふふふ♪楽しかったですよ♪」

 

「綾波さんは強いですねぇ…」

 

皐月と文月はそれぞれ玲司の膝に座り、綾波と鹿島はソファーに座って執務室のテレビを見ていた。そこには翔鶴もいる。

 

「まさかおやっさんも大本営もゴーサインを出すとは思わなかったなぁ…刈谷提督なんか『やれ』の一言だったし…」

 

「艦娘のいいところを思い切りアピールしなさい…でしたっけ。司令長官も思い切ったことをなさいます。でも、鹿島まで出るなんて聞いてませんよ!?」

 

「そこは香取が鹿島も出れば注目も集まるって言ってたらしいぞ」

 

「か、香取姉ぇ!?」

 

「もーお!司令官!ボクたちの商店街の紹介ちゃんと見てよぉ!」

「大丈夫だよさっちん。ちゃぁんと録画もしてるらしいから~」

 

そう、執務室のテレビも食堂のテレビも瑞鶴の部屋のテレビもどれもハードディスク付き。そしてバッチリ録画してある。万が一どれかが壊れてもどれかで見れるのだ。そこは徹底している。

 

大本営は防衛大臣と相談しあった結果、全力のゴーサインであった。そして、刈谷提督も「おもしれえからやれ」との声。これはもう引き受けないと後が怖いということで玲司は受けた。

 

………

 

「それじゃあさっそく商店街を歩いてみましょうか!あっ、もう道行く人たちが手を振ってこられますね!」

 

「あら~皐月ちゃんに文月ちゃん!今日はどうしたの?」

「おばさんこんにちは~。文月たち、今日は商店街のいいところをい~っぱい紹介するリポーターなんだよ~」

 

「あらあらまあまあ!皐月ちゃんたちテレビデビュー!?えっ、今テレビ映ってるの!?やぁだぁ!早く言ってよぉ!」

 

「あはは!おばさん顔隠しちゃった!かわいいね!」

 

『この第一街人を皮切りに、皐月ちゃんたちはたくさんの老若男女に声をかけられたり手を振られる。この商店街、まさに艦娘と触れ合うという噂通りだった』

 

「皐月ちゃんたちが艦娘って言うのはご存じなんですか?」

 

「ええ、もちろんよ。かわいらしいでしょう?艦娘に見えないくらい!」

 

『彼女たちは艦娘と知っている。しかし、そこには巷で聞く恐怖心を抱いた街の人たちはいない…』

 

………

 

「今じゃ当たり前だけど初めて行った時はマジでツンケンされたもんだけどな」

 

「あの時は仕方がありませんよ…大淀さん達が…あの人たちのせいで」

 

「そうなんだよな。まあ、せっかくここでやっていくんだから地元の人と仲良くしたいなーってのはあったから北上や時雨連れて行ったんだけど」

 

「商品を持って逃げるじゃなくてお金を置いたのに逃げるっていうのは…」

 

「しょうがねえじゃん!お金受け取ってくんないんだもん!」

 

ファーストインプレッションは最悪だった。安久野のせいで提督はおろか艦娘まで邪険にされ、存在自体が凶器のように思われていたのだから。今でこそ、ウェルカムだ。それはひとえに玲司の努力と横須賀の艦娘の裏表のなさ、純真さ、誠実さが伝わった結果だ。何だか着任直後を思い出して懐かしい。

 

「ねえねえ司令官。皐月たちは商店街の人たちにどう思われているのかな?」

 

「皐月、よーくテレビを見てみな。このおばさん、茂さんとこの常連さんだよ。ほめてばっかりだろ?」

 

「うん。じゃあボクたち、嫌われてはないんだよね?」

 

「そうだぞ。こんなにかわいいとか嫌われてたら言われないよ」

 

「そっかー!えへへ!うれしいなぁ!」

 

皐月の頭をなでてあげると嬉しそうだった。しかし、このおばさんマシンガンみたいに喋ってんぞ。あ、カットされた。

 

「うふふ、恥ずかしいですけど嬉しいです」

 

綾波が恥ずかしそうに笑っていた。

 

………

 

『第二十二駆逐探検隊が到着したのは、お米屋さん』

 

「ここはねぇ、文月たちのおいしいご飯を用意してくれるところなんだよぉ~」

 

「ご飯ですか!」

 

「正しくはお米ですね。おにぎりに…炊きたてのお米に…はわぁ…素敵ですねぇ…」

 

『まず紹介してくれるのはよさみ米店。創業50年…親子二代に渡って北は北海道から南は鹿児島まで…日本全国のお米を知り尽くしたスペシャリスト。この店主…依佐美(よさみ)さんは父から譲り受けたお店を守って30年…艦娘たちの米事情を知り尽くしているのだろうか…?』

 

「おやおや綾波ちゃんに皐月ちゃんたち、いらっしゃい」

「こんにちは!突撃!あなたの街のいいところです!取材よろしいですか!?」

 

「おや~テレビですか?ほほほ、綾波ちゃんが?え?皐月ちゃんと文月ちゃんがメイン!おお~そりゃいいねぇ。どうぞどうぞ」

 

『快く受け入れてくれる依佐美さん…店内はいろんなお米がたくさん』

 

「うわぁ~、すごいですね~!見たことのないお米がいっぱい!」

 

「ほほほ、当店では珍しいお米も扱っております。例えばこれ…綾波ちゃんが来るということで炊いておいたのですが」

 

「ほわ~!」

 

「綾波さんの目が輝いています!」

 

『そういって依佐美さんがお茶碗に炊きたてのお米をよそうと…綾波さんの目が輝いた…きらきらと光る白米…ほっかほかの湯気…何ともおいしそう』

 

「これは愛知県の豊田市や岡崎市などの山間部で育てられているお米、ミネアサヒと言います。まぼろしの米とも言われているんですよ」

 

「はわぁ~」

 

「綾波さん!正気に戻ってください!語彙力がなくなっていますよ!」

 

「ほわ~」

 

鹿島が綾波をゆさゆさと揺さぶるが、綾波はそのままほわ~などと一切喋らない。綾波はお米に目がないのだ。玲司は飽きが来ないように、と依佐美さんには申し訳ないが米をかわるがわる品種を変えてみんなに提供している。本来これは間宮と茉莉しか知らないし、たぶん事務メンバーの4人が経理処理する際に知るくらいだろう。

 

しかし、この綾波は違った。

 

「司令官、今日のお米はなんだか味が違いました!おいしかったです!」

「司令官?今日、お米変わりました?甘味が昨日までのお米と違いました」

 

すさまじい味覚で玲司が米を変えていることを見破ったのだ。

 

「昨日までのお米と今日のお米ではお水も変えてますよね?」など、水の量の変化や水まで感知し、玲司を驚かせたものだ。そうして綾波はこれからのお米はどうだろう?と味見をしてもらい、詳細を知ってもらう担当となった、お米マイスター、ソムリエなのだ。この依佐美米店にも付き合ってもらっている。細かな味の違いや水分量を語らせれば、素晴らしい!と依佐美さんも言うほど。そして、今回希少なミネアサヒと呼ばれるお米を出してもらって語彙力が喪失した。

 

「じゃあおにぎりでも握っていきましょうかね。塩だけで」

「はわっ!」

 

「綾波ちゃんどうしたのぉ~?」

「綾波ってお米に目がないからきっと興奮してるんだよ!」

 

「さぁさ、どうぞ」

 

そう言って差し出されたミネアサヒのおにぎり。目を輝かせながら綾波たちはそのおにぎりをパクリと食べる。

 

「おいしい!すごく甘味があってもちもち…!こんなおいしいお米があったなんて!」

 

鹿島が目を輝かせて感想を言うと依佐美さんは目を細めて笑ってうなずいた。それに続いて皐月や文月もおいしい!の連発。夢中でかぶりつく。

 

「んっ、これ本当においしいですね!噛めば噛むほど甘味が出てきて…!お塩とお米の甘さがものすごくマッチしてます!

 

リポーターのしーちゃんもご満悦。夢中でおにぎりをほおばっている。一方で綾波はと言うと。

 

「ほわぁ…!とか「はふー」とかリアクションがほぼ同じなのだが、顔は至極幸せそうな顔でおにぎりをはもはもと食べていた。

 

これを見ていたお茶の間の人たちのSNS、Poitterでの呟き。

 

・うまそう

・こんなお米あるんだ?お取り寄せとかできない?

・かわいい。かわいい。

・綾波ちゃんだっけ?ほわーとかはわーしか言ってなくて草。

・なんでや!かわいいやろが!

・綾波ちゃんくっそかわいい。

・フミィ…フミィ…。

・綾波ちゃんそこらの芸人よりいいリアクションしてると思う。

 

おおよそ高評価。ちなみに、鹿島がただおにぎりをほおばっているところを撮影しているだけなのに、なぜかお茶の間の男子学生は脳が焼けた。

 

「ほわぁ…おいしかったです~」

 

『皆が幸せになる。やはり日本人にとって米とはなくてはならないもの…その中で格別なお米『ミネアサヒ』は通販でもお買い求めいただけます』

 

この放送直後、ミネアサヒを販売しているお店のサイトがほぼ接続できなくなるほどのアクセスになり、完売が相次いだという。ちなみに、転売ヤーたちが儲けのために買い占めようとしたが、なぜか「あなたがおさがしのさいとはみつかりませんでした」と言う文字とともに、正座するネコの後ろ姿が映し出され、ネコ現象と呼ばれる騒ぎになった。

 

………

 

「このミネアサヒ、マジでおいしかったな。一瞬でなくなったけど…」

 

「武蔵さんに霧島さん、果ては綾波ちゃんまで…ものすごい食べっぷりでしたからね」

 

依佐美さんのご厚意でいただいたのだが、まさしく秒殺。いつものコシヒカリに戻さざるを得なくなった。依佐美さんとしてはもっといろんな種類のお米を食べていただきたいという商売魂が入っていて、あえて少なめにしたのだとか。

 

「しれーかん!やっぱり依佐美さんのお店のお米はおいしいね~」

「ああ、そうだな。また珍しいお米を紹介されたら買おうかな。間宮も水の調節とか勉強になるって言ってたし」

 

「ミネアサヒ、また食べたいなぁ!」

 

「さーて、次は…おっ、次はお茶屋さんか。ここもお世話になってるもんな…」

「お茶と言えば武豊さんですね!」

 

こうして皐月たちは次のお店へと向かう。

 

………

 

『おにぎりでお腹を満たした探検隊一同は次なるお店へと向かう。歩くたびに皐月ちゃんたちは声をかけられ、笑顔でそれを返す。小さなお子さんはハイタッチ…本当にこの商店街に訪れる街の人たちは艦娘と親しい。これが本来、我々人間と海を守る守り神との正しい接し方ではないだろうか…?』

 

このナレーションには玲司は大きく何度も首を縦にうんうんと振った。艦娘と人間は対等であってほしい。人が上で艦娘が下などはありえない。そう思っている。なぜなら今の人々は艦娘がいないとまともに生きていけないのだ。魚などは取れなくなるし、貿易もできなくなる。かと言って艦娘が上と言うのもありえない。艦娘だって自分たち提督がいなければ生きていけないのだから。

 

『そうして歩いていると何やら良い香りがすると言い出すしーちゃん。その香りの正体とは…』

 

「くんくん!あっ、ほうじ茶のにおい!」

「今度はあのお店を探検だよぉ~!」

 

『しーちゃんと鹿島さんの手を取り、早く早くと歩き出す皐月ちゃんたち。まるで姉妹のようでほほえましいものがある。そして綾波ちゃんが後ろから笑顔で歩く。何とも幸せな光景…』

 

「おおっ、お茶屋さんですね!ええと…たけ…ゆた「たけとよだよ、お姉ちゃん!」」

 

『このお店は武豊(たけとよ)茶店。依佐美米店と同じく、日本各地から良質な緑茶を厳選。取り寄せている茶葉のエキスパート。そして店頭では茶葉を炒ってほうじ茶を作っているのだろうか…?濃厚なお茶の香りが漂う』

 

「武豊のおじさま、こんにちは!」

 

「いらっしゃい、鹿島ちゃん。皐月ちゃんたちも。お待ちしてたよ」

 

『この紳士こそ店主、武豊 國政(たけとよ くにまさ)氏。この商店街で茶葉のお店を開いて早40年とのこと。日本人に欠かせない緑茶をその経験と勘から選りすぐった茶葉だけを取り扱うこの道のプロ。その茶葉を特派員しーちゃんにいざ、味わってもらおう』

 

「まずはこれかな。おなじみ京都のお茶。その中でも『瑞雲』と呼ばれるお茶だよ。鹿島ちゃんたちにはなじみのある名前だね」

 

「よくご存じで!」

 

その名を聞いた途端、とある艦娘が大いに反応したという。

 

………

 

『んっ!すごい良い香り…いただきます…ほわぁ…渋みの中にぽっと甘味が…いつものお茶と全然違いますね!』

『そうでしょうそうでしょう。香り高く、それでいてほのかな甘みがある良いお茶です。おひとつお持ち帰りくださいな』

 

『いっ、いいんですかっ!?やったぁ!』

 

「提督。この瑞雲と言う緑茶を10kgほど取り寄せてもらえないか。瑞雲と聞いて私が黙っていられるはずがないのは知っているだろう?」

 

「いえ…10kgと言うのはやりすぎですよ…と言うか、今調べたのですが約100gで3000円です。これほど大量に買っても保存が利きませんし、長期にわたって置いておいても風味が飛んでしまいます。何より、由良さんの雷が落ちますよ」

 

「まあ、そうなるな」

 

「とりあえずおひとつだけ試してみましょうか」

 

「ああ、頼むよ…フフ…瑞雲…これを機に由良たちも瑞雲の魅力にはまってもらうとしよう」

 

(日向さんの顔が怪しい…やはりまだ瑞雲には並みならぬ執念がおありで…)

 

『この瑞雲、96gで3240円…ご興味のあるお方はぜひ下記のURLから』

 

隠す必要もないが大湊警備府の日向が瑞雲と聞いた途端に脊髄反射のごとく飛び上がり、テレビを凝視していた。全国放送と言うこともあって一宮提督たちも艦娘への人々の対応が気になっていたということもあり、テレビでリアルタイムで視聴。ほのぼのと道行く人たちとあいさつを交わす睦月型や綾波たちに思わず顔が綻んでしまう。

 

正直、自分たちが懇意にしている大湊の街の人たちよりももっと距離感が近い。うらやましい限りだ。誰もが手を振ったりハイタッチしたり…怯えている人は一人たりともいない。こちらではまだ若干の抵抗感があるのだが…どうなっているのやら。反艦娘の人間がどこから情報を仕入れているのかやってきてはうるさく罵る。そもそも艦娘の撮影など、格好の的だろうに…。

 

そう考えている一宮提督だが、横須賀の商店街にそのような団体が押しかけてこない、と言うか撮影の際にそれらがいない理由は、この横須賀には「いつか人を殺しそうな危険な憲兵がいる」と言うのがある。

 

横須賀は艦娘との交流が始まってから市民団体が毎日のようにやってきては騒音や業務妨害、さらにはごみのポイ捨てなどが相次ぎ、商店街の組合もどうすればいいのか困り果てていた。玲司に訴えかければ火に油を注ぐようなもの。だから玲司たちも実際に出会うまでは知らなかったのだ。

 

そんな中、艦娘と休みの日に触れ合った憲兵の一人が優しく、誰からもいい子いい子と慕われる艦娘に感銘を受け、俺は鬼になる、と言って市民団体排除に動き出したのだ。

 

「ここ3日、黙ってお前たちを眺めていたけど、お前たちのやってること、まったく羨ましくないねぇ」

「なんだ貴様!俺たちは一般市民だぞ!」

 

「一般市民なのは認めるねぇ。けど、商店街の人間じゃないねぇ。彼らの商売を邪魔する権利がお前たちにあるのかねぇ」

「あるに決まってるだろ!艦娘と交流なんざ暴力兵器を容認しているようなものだ!許されるはずがない!」

 

「ならお前たちは海産物を二度と食っちゃいけないねぇ。艦娘がいるから海に漁師さんが出れるし、うまい魚や貝が食えるねぇ。一杯やりたいねぇ」

 

「黙れ!!艦娘は暴力兵器なんだ!戦争を容認しているんだ!」

「話がまったく通じてないねぇ…羨ましくないねぇ」

 

口論の末、ついには反艦娘団体の一人の男が憲兵に向かって拳を振りかざした。そして、顔を殴られた。しかし…ぺきり…と何か骨が折れる音がした。

 

「い、いでえええ!!」

「…憲兵を殴っちゃいけないねぇ。うらやましくないねぇ。公務執行妨害と傷害だねぇ!」

 

「傷害ってこっちがけがをしたんじゃねえか!」

「そうよそうよ!」

 

「先に手を出したほうが悪いねぇ。お前ら…死んでいいねぇ!!!」

「構うこたねえ!ぼこぼこにしてやれ!!」

 

「こういう団体って暴力反対を謳っておきながら暴力に訴えかける。まったく羨ましくないねぇ!!!」

 

集団で殴り掛かってきた団体に対して警棒を取り出し…フルスイングで先頭の男の腹を打った。オゴォ!?と言う声と共に何かが潰れるような音がしたが…全員が吹き飛ばされた。怪力である。

 

「お前たちは全員公務執行妨害だ。全員しょっぴくねぇ」

 

こうして団体は排除された。どこからともなく現れてくる団体はそのほかにも「五七五」を読む憲兵。髪型に2万をかける憲兵。やたらと物騒で頭皮を剥いで河童にしようとする憲兵。センスの塊な憲兵など、数多くの武闘派憲兵のおかげですっかりと寄り付かなくなった。なお、その活躍は街の人たちにもみられているが、逆に助かっているので見て見ぬふりである。

 

………

 

さて、「瑞雲」と言うお茶を出された鹿島達。鹿島は緑茶が好きだ。よく玲司や大淀たちにもお茶を淹れては出している。ガリガリに事務仕事が進んだ後で出される鹿島の緑茶やほうじ茶。それはささくれ立った玲司たちの精神を落ち着かせるのには最適だった。この武豊氏はお茶のエキスパート。そのエキスパートに師事し、最高の緑茶の淹れ方を習得している。なお、摩耶は紅茶のエキスパートである。紅茶もこの武豊茶店では扱っているが、今回は緑茶だけを紹介。

 

「瑞雲…いただきます!」

 

ぷるんとした唇をアップにされてお茶を飲む鹿島。

 

Poitterの反応。

 

・エッッッッ

・まずいですよ!

・放送禁止待ったなし

 

などなど。さらに#鹿島さんと言うハッシュタグが20000ポストを超えるなど大盛況。それと同時にお茶の間の若い男性から初老の男性まで、そのなぜか漂う色気に脳を焼かれた。

 

「おいしいですね!渋みの中にほんのりと甘味が感じられます!」

「ははは、さすが鹿島さん。お目が高い!」

 

「はわ~…」

 

綾波はまた語彙がなくなっていた。

 

「ははは。お楽しみいただけているようですね。それでは、もう1ランク…いえ、2ランクは上がるお茶を飲んでいただきましょうかねぇ」

 

『そうして出されたのはまたしてもお茶…はたしてこれは何なのか…?』

 

「いただきます…ん!?」

 

『鹿島さんの表情が驚きに染まる…このお茶は一体何なのだろうか』

 

「すっっっっごくおいしいです!!!渋みも甘みも…香りもこんなお茶、飲んだことありません!!!」

 

「はわー!!!」

 

「おいしいよぉ~!でも、もったいないからゆっくり飲みたいねぇ~」

「おいしいよこれ!おいしい!!」

 

「すっごい!香り高くて…味も深いですねぇ!」

 

『しーちゃんも大喜び。日本人が誇るお茶…それでもやはり、飛び上がるほどのおいしいお茶があるのだ。日本はまだまだ広い』

 

「今お出ししたお茶はこちらです」

 

『なんと、高級ワインのようなボトル。そのお茶を武豊氏が語る』

 

「こちらのお茶は『いぶき』と言います。最高級のお茶でございます」

 

『最高級緑茶いぶき…それは製法、茶葉、水…全てにこだわったお茶…味、香り、すべてが数多くの賞をとるほどのお茶である。その味わいは…至福のひと時。最上位の癒しの空間を生み出すボトリングティー…お取り寄せはこちらから…』

 

ボトリングティー「いぶき」…なんと750mlで2万円を超えるお茶である。しかし、ナレーターの言う通り、至福のひと時を味わうことができるお茶である。

 

………

 

「武豊さん、こんないいお茶を提供してくれるなんてなぁ…」

「これは…おいしすぎますね…もったいなくてごくごくとはいけません…」

 

「妙高がものすごく喜んでたな。今たぶんゆっくり飲んでるんじゃないかな」

「ふふ、そうですね。ですが、摩耶さんがやきもちをやくのでは…」

 

「あ、これから紅茶もやるっぽいぞ」

 

『ニルギリ紅茶ですね!うーん…良い香り…』

『はわぁ…』

 

「クスクス、インターネットの反応を見ていると、綾波さんのこのはわーって言うのが好評なようですよ」

「本当においしそうな顔って確かにな」

 

「綾波ちゃん、かわいかったよ!」

「文月もはわ~ってなったよ~」

 

みんなしてはわーっとした顔をして、お茶の間を和ませた。なお、メインリポーターのしーちゃんもはわーっとなっていた。

 

ちなみに武豊さんに出された紅茶はニルギリ産の紅茶だった。これまた結構なお値段がする。

 

『お米、お茶…日本人に欠かせないものを扱うプロフェッショナルがこの横須賀にはいた』

 

「それでは皐月ちゃん、文月ちゃん、次はどこへ行きましょう?」

 

「んー…あっ、それならあそこだね!」

「あぁ~あそこだねぇ~!」

 

「ん?あそこ?」

 

そういって皐月と文月が指さした場所は…「Velvet Lounge」と書かれたお店。そのお店に鹿島は嫌な予感がした。

 

『何やらブティック…だろうか。そちらへ向かって走っていくのだが…お店の前で立っていた女性は…』

 

………

 

「なんか一部にモザイクかかってねえか?」

 

玲司が怪訝に思った。まさかと思いたいが…鹿島がうなだれて答えた。

 

「それ…たぶん松子さんです…」

 

「ああ…」

 

玲司は一瞬で理解した。そして、彼女自体が放送禁止になったようだ。ちなみにだが…。

 

………

 

『かつて天才と呼ばれたファッションデザイナー、黛松子氏が手掛ける女性にとっては夢の空間。そんな中に皐月ちゃんたちは入っていった…そして、1時間後』

 

「え?店内撮影しただけ?」

「………あまりにもセクハラ発言がひどすぎたので…」

 

「丸々カットかい!!!!」

「松子おばさん、最後にはけんぺーさんに連れていかれそうになってたよ?」

 

「しーちゃんのおっぱいとか触ろうとしてたしね」

 

「私は…なめまわすように見られましたし…触られました…」

「あー、アウトアウト」

 

結局松子はしーちゃんと鹿島の悲鳴によって駆け付けた憲兵に「これで今月47回目の問題行動だねぇ、羨ましくないねぇ」と言われ、後からこのことが竹美や梅にも憲兵から報告がいき、きっちり〆られたという。

 

『このお店でしーちゃん隊員も皐月ちゃんたちも大変身…続きはニュースの後で…』

 

「突撃!あなたの街のいいところ」。第二十二駆逐探検隊の商店街探索はまだまだ続く。




久しぶりに商店街をピックアップ。文月や皐月、綾波に鹿島のかわいらしいところをしっかりお伝えできればなと思います。
次回は後編。梅さんや竹美さん、茂さん達も登場。

ちなみにですが依佐美(よさみ)さんは愛知県刈谷市のフローラルガーデンよさみから。
武豊さんは愛知県武豊町から。

次回もかわいらしい商店街探検をお楽しみください。

それでは、また。
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