提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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鹿屋基地の五ヶ丘提督のお話になります。
初の大規模作戦。新任なのに大変だったでしょうね。鬼のような先輩のせいで(笑)

そして、艦娘たちはどんな気持ちだったのでしょうか?


第二百七十七話

「司令官、この書類にハンコをお願いします」

「はいよ」

 

「ご主人様ー!遠征から帰ってきた子たち、どうしますかー!?」

「お風呂に案内してあげてくれ。ご飯を食べてもいいってな」

 

「ほいさっさー!」

 

 

「司令官様~!こっちの書類、ファイル終わりましたよー」

「サンキュー巻雲!休憩してくれ!」

 

「はーい!」

 

レイテでの大規模作戦を終えた鹿屋基地、五ヶ丘提督と艦娘たち。作戦が終わったとしても、毎日書類やら遠征での資材確保など、忙しい毎日を送って早1ヶ月が過ぎた。

 

かつて不信感しか持っていなかった艦娘も、懐いていた艦娘も、この大規模作戦を通してより信頼を得て一歩前進したように五ヶ丘提督は思っていた。

 

特に最初から信頼が高かった潜水艦の伊19ことイクと伊26ことニムの愛情表現は、司令官超ラブの白雪の胃を大破させるんじゃないか、と漣や鬼怒たちを心配させるくらいに過剰になったように思う。

 

「てーとく!帰ってきたのー!!」

「おっと、おかえりイク。今日もありがとうな」

 

「えっへへ!イク、提督のためなら24時間でも資材を取ってくるのね!」

「いや、それはダメだ。ちゃんと休まないとだめだぞ」

 

「はーい!なの!」

「ねえねえねえ!!ニムも頑張ったよ!」

 

「ああ。ほら」

「えへへ~♪」

 

「提督?ヨナも、頑張った、よ?」

「それなら私も」

 

「私も」

 

「おう。ヨナもフレイもフーミィも頑張ったな!」

 

そう言って1人1人にハグをする。このハグをする、と言う行為もレイテの時から始まったものだ。以降、すっかり特にイクやニム、秋霜や清霜、高波までもがせがむようになり、出撃前、帰還後に必ず彼女たちはハグすることが必須になった。

 

五ヶ丘提督に下心なんてものはない。強面のおとんとまで隼鷹に言われるほどの父性あふれる提督であり、優しさで溢れかえっているからこそ、怖がりの高波までもがやってほしいと言うまでになったのだ。

 

………

 

「よし、俺たちも出撃するぞ。出撃するのはオレじゃなくてみんななんだけどな…オレは初参戦だ。正直ブルってる…けど、オレよりもみんなのほうが怖いよな…でも、オレはみんなを沈んで来いとか、勝つまで帰ってくんなとかは言わねえ」

 

真剣な面持ち。そして、嘘は言っていない目。それを見た夕雲たち。陸奥も加賀も。イク達潜水艦もみんな頷いていた。その頷きは「信じている」と言う証だ。この提督(司令官)はそんなことはしない。この数ヶ月で確信したことだった。

 

前の提督?そんなの知らない。私たちはこの提督を信じる。裏切らないって信じてる。

 

「オレは見ての通り1年もやってない提督だ。至らない点だらけだ。間違っている指示をしたら遠慮なく違うと言ってくれ」

 

「心配しなくてもそんなことを言ったらひっぱたいてやるわよ」

 

「おう、霞。頼んだぜ」

 

「ふん…!しっかりしなさいよね!」

 

「まああたしらも提督と一緒で自分らで動くの初めてなんだよな…あたしらも間違ってるかもしんねーから、フォロー頼むぜ」

 

「長波…そうだな。お互いにフォローしあっていこう。よし、刈谷さんから指示された輸送からやっていこう。水雷戦隊。旗艦は鬼怒!」

 

「よしきたー!任せといて、提督!」

 

旗艦鬼怒、藤波、早波、浜波、涼波、漣。

 

「おっ、ご主人様、漣チャンをご指名ですかにゃ?」

「ああ。練度が高く戦闘慣れしてる。お前は土壇場で冷静に指示できるからな。藤波達に指示を頼む。みんな、漣の指示を聞いてれば安全だからな」

 

「ちょ!?プレッシャーなんですけど!?」

「もち。漣さんの言うことはよく当たるし、ちゃんと聞くよ」

 

「漣、頼んだかんな!」

 

「涼波っちまでー!?う、うーし、漣チャンはやれる子…やれる子…わっ!?」

 

緊張でちょっと震えている漣を提督が抱きしめた。漣はちょっと前の大府の罠によって自分を含め、全員が轟沈するかもしれない恐怖の出撃があったため、こういった大きな作戦にトラウマが少し残ってしまっていた。

 

その話は漣と2人きりでしっかりと話を聞いていた。涙ながらに本当に怖かったこと。もう提督に会えないのかもしれなかったことが一番怖かったという。その時も漣を膝の上に乗せ、頭をなでてあげたりお腹をポンポンしてあげたりして落ち着かせたものだ。

 

「大丈夫だ漣。今回はあのクソ野郎の指示じゃねえ。信頼できる人だ。だからオレも信頼してくれ」

 

「……うん……よし!」

「いけるか?」

 

「任せてくださいな!お鬼怒さんもいますしNE!」

「なんか鬼怒、幽霊さんみたいじゃない?」

 

「鬼怒。鬼怒も頼んだぜ」

「はわああああ!?!?!き、鬼怒までーーー!?」

 

鬼怒は大混乱であったが、このハグが藤波たちには好評。帰ってきたときも「よく頑張ったな」とハグと頭をなでてくれる行為に浜波が感激。

 

「し、司令…こ、今度も、今度、しゅつ、出撃したとき、また、お、お願い!」

 

ずいぶんと興奮した様子で語った。藤波ラブな早波も…。

 

「あー!お姉ちゃんや浜ちゃんだけずるいー!早波もして!早波もー!」

「よしよし、落ち着け、ちゃんとするから。頑張ったな、えらいぞ。ありがとうな」

 

「早波たちのお仕事ってこれでしょ?当たり前だもん!」

「その当たり前で轟沈して帰ってこれなくなるかもしれないんだ。ちゃんと帰ってくれてよかったよ」

 

「提督はなんてーか過保護だよなー。まあ、スズとしてはうれしいもんだよ。ちゃーんと、アイツみたいに沈もうがボロボロになろうが知らねーって感じじゃないし」

 

「烏丸…か。艦娘を沈んでも仕方ねえなんて言い方にやり方。許せねえよな。生き返らせて顔面陥没させてやりてえな」

 

「いいっていいって!そこまでしなくても!」

「そうだよ。もう顔も見たくないしさ」

 

「司令が司令でいてくれればいいよ!」

「あた、あたしも、そう…思う」

 

「ありがとうな、みんな!」

 

漣は抱きしめられることに慣れているからムフーと言いながら喜んでいる。鬼怒は汗臭いからー!と言うが、提督にそんなデリカシーはない。抱きしめられてはわはわしていた。

 

烏丸が提督の時は洗脳されながらも記憶だけはしっかりと残っている元リンガの艦娘たち。出撃して大破してもお構いなし。帰ってきたら暴言は吐かれるわ、殴られたり蹴られたりも日常茶飯事だと藤波たちもそうだが、口々に艦娘たちがそういうのだ。陸奥や加賀、潜水艦に夕雲や巻雲は尊厳さえ奪われた。

 

反省してますという言葉は嘘に違いない、と話を聞くたびに五ヶ丘提督は怒りをあらわにする。自分たちのために怒ってくれる、悲しんでくれる。そして大事にしてくれる五ヶ丘提督。そんな彼のことを信頼するのは当たり前のようになっていた。

 

中には無事帰ってこれたことに感激、そして安堵から泣く艦娘もいた。

 

「ううっ、うえええええ!!」

「おかえり、長波。怖かったな…でも、よく出撃すると言ってくれて、ちゃんと帰ってきてくれたな」

 

「ううううう!ごわがっだ!でも…でいどぐがぢゃんど…大丈夫だって!!」

「長波姉…よしよし。もう帰ってきたよ」

 

「巻波、ありがとな。そうだ。帰ってきたんだよ。さあ、疲れたろ?風呂に入って、飯食って、もう寝ような」

「うん…」

 

…「死んででも勝ってきなはれ!別に替えはいくらでもおりまんねや!」

 

艦娘を鉄砲玉のようにしか扱わない烏丸。死んだら仏、とは言うが、こんな奴は仏でもなんでもねえ、と怒る。長波もよく記憶では怒鳴られ、「使えるんはその乳くらいでんな!」と言われたことがある。そうして長波は普段強気で提督に話をするが、いざ出撃となるとそれがよみがえり、恐怖に支配された。巻波や漣、白雪などになだめられつつ何とか敵の排除を行ったのだ。

 

『こちら本部。敵の殲滅を確認。戦闘終了だ。お疲れ様。気をつけて帰ってこいよ』

 

「はーいご主人様!で、も!帰りも警戒を厳ですよね!」

 

『ああそうだ。母港に帰ってくるまで気を緩めるなよ』

「任せておくんなせえ!さ、みんな帰ろ帰ろ!」

 

この時長波は中破してしまっていた。リ級の執拗な攻撃を避けきれなかった。中破をした。それによって本当はまだ進撃できるはずだが撤退をしているのではないか、と長波は思ったわけで。

 

「な、なあ、提督、怒ってなかったか?」

「ほよ?ナガナミン?ぜーんぜん?だって、本当に漣たちのお仕事はここまでだお」

 

「ほ、ほんとか?て、提督…帰ったら…あたし…」

「大丈夫だってー。ほら、少し前の出撃で浜波たちがめっちゃ嬉しがってたろ?だからほめてもらえるって」

 

「で、でもさ加古さん…あいつらは…何の問題もなかったろ?でも、あたし、中破しちまってるし…」

「だいじょぶだいじょぶ!ちゃーんとほめてもらえるってー!」

 

加古と漣になだめられつつ長波はずっと「怒られる…」とか「解体…かな」などと言って非常にネガティブである。

 

結果としては、笑顔で帰りを喜んでくれて、抱きしめてもらえた。そして暴言などはなく。

 

「長波、痛かったな。よく頑張ったな。疲れたよな?」

 

その言葉に長波は感極まって泣いてしまったのだ。夕雲型はそのポテンシャルの高さから出撃過多とも言える数をこなされていた。特に長波や夕雲、巻雲はそれが特にひどかった。暴言を投げつけられたり、暴力を振るわれてばかりだった。出撃がトラウマでもあった。

 

「そんなことにも気を利かせられねえとはな。オレは…未熟だな」

 

五ヶ丘提督はそれを気に病んだが、巻波がやってきて。

 

「提督!長波姉、提督のことすっごくうれしいって言ってたよ!」

「ん?オレを?」

 

「そう!優しくて、あったかくてー、うれしかったって!」

「そうか…それならよかったよ」

 

「また髪の毛を梳いてもらえるって期待してたよー!」

「そうか!いつでもおいでって伝えておいてくれ!」

 

「はーい!」

 

こういったやり取りがあり。

 

「な、なんで提督に言うんだよおおお!!!!な、なんか今日は妙に丁寧にしてくれて気持ちよ…わーーーー!!ちがーーーーーう!!!」

 

「うるさいわね長波!!!静かにしなさいよ!」

 

「わーーーーーーー!!!!」

 

「よかったね長波姉!イチゴの匂いも今日も素敵!」

「巻波やめろおおおお!!」

 

「あんたたち何時だと思ってんのよ!!うるさいわね!!!」

 

駆逐艦寮は大騒ぎだったとか。

 

………

 

「玉波が大発を積めるのはでかいな。輸送作戦、頼んだぜ」

「はい提督。玉波にお任せください」

 

「しれーかん!清霜も任せてね!」

「清霜!改二になって初めての出撃だな。よし、気を付けて行ってくるんだぞ」

 

「はーい!しれーかん!任せてね!んー!」

 

意気揚々と清霜は提督に抱き着き、なんと頬にキスまでする。彼女は高波同様に小柄で烏丸曰く、いじめやすかったらしい。しかし、五ヶ丘提督に関してはまるで妹か、まだ結婚していないが娘のようにかわいがっている。清霜はその五ヶ丘提督の惜しみない愛情にすっかり懐いてしまい、割といつでも一緒のことが多い。

 

「しれーかん!お風呂入ろ!」

「ちょっと!清霜!だめに決まってるでしょう!?」

 

「えー!?霞ちゃんなんでぇ?しれーかんとお風呂入りたいよー!しれーかんに髪の毛洗ってもらうの好き♪」

「は、は?え?」

 

「よし清霜。今日も頭を洗おうかな」

「わーい♪よろしくお願いしまー!」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!このクズ!何入ろうとしてんのよ!」

「いや、オレが入る風呂があるから大浴場じゃないぞ」

 

「そういう問題じゃないわよ!!なに清霜とお風呂に入ろうとしてるのよ!!!」

「いつものことなんだが…」

 

「は。はああああああ!?!?!?」

「あ。わかった!霞ちゃんも入りたいんだね!しれーかん、高波お姉さまも呼んでいい?」

 

「おう、いいぞ」

「わーい!じゃあ霞ちゃん、いこー!」

 

「わ、私は行かないわよ!!!こ、このぉ!!!クズ!!!クズクズクーーーーーズ!!!!」

 

実はこれは霞の嫉妬と恥ずかしさが入り混じった渾身の叫びだったとか。ちなみに、お風呂には清霜、高波、秋霜が加わった。漣も加わった。漣だけ白雪に絶対零度の目で見られたとか。

 

「漣チャンだけとかひどくない?!」

 

………

 

「てーとく!戻ってきたの!」

「ただいまぁ。はー疲れたー」

 

「イク、ニム。おかえり。ほかの子たちは?」

 

ある日は潜水艦であるイク、ニム、ヨナ、フレイ、フーミィが哨戒任務を行った。これにより、安全に一宮提督に情報が行き、作戦が実行できるようになったというかなり重要な任務だった。

 

「みんなお風呂に行ったの!イクとニムはてーとくのお顔を早く見たかったの!」

「そうだよ!ニムもだよ!」

 

「そうか。大丈夫か?けがはないか?疲れてないか?」

(過保護だよなぁ、マジで…でも、この子らにゃあそれがいいんだよな)

 

隼鷹はいろんな提督の話を艦娘から聞いている。前の提督のような暴力もない。暴言もない。頑張ったらほめてくれる。エッチな目で見ない。底の見えない優しさと惜しみない愛情が艦娘たちの心を開いた。そして見返りを求めないその姿勢も好感度が上がったものだ。

 

怖がりの高波や浜波、清霜が心から提督を慕うのは、提督が心から彼女たちに愛情いっぱいに接するからである。しかしやましいものは何もない。顔は怒ると怖いけど、優しいお父さんみたいな存在。だから好かれるし、お風呂に入っても気にしないらしい。

 

そんな中でも絶望の中から救われたイクやニム達、潜水艦娘たちは特に懐いているのではないだろうか(実際に好感度が振り切れている中には霞や長波もいるが)。

 

「提督?いる?」

 

「ああ。ヨナか。風呂に行ったんじゃないのか?」

「やっぱり…提督に、会いたかったの」

 

「そうかそうか。よしヨナ、おいで」

「はい…えへへ♪」

 

「ヨナ、抜け駆け禁止」

「提督、私たちもするべき」

 

「なんだ、みんな来たのか。よしよし。白雪、休憩しようか」

「はい。司令官。お茶を淹れますね」

 

「悪いな」

 

「むふー。てーとくにぎゅーってされると疲れもなくなっちゃうの!」

「ははは、そうか。でも、体はちゃーんと疲れてるからしっかりお風呂に入って休むんだぞ」

 

「はーいなの!」

「ねえねえ、今日はお風呂入ってくれないの?」

 

「悪いな、今日はなしで。仕事がなぁ…」

「そっかぁ…ざーんねん」

 

「ごめんな」

 

そう言ってニムをしっかり抱きしめる。残念そうな顔がぱぁっと綻んで笑顔になる。イクとニムはあの闇から救い出してくれた提督を本当に大好きでいる。裏表がない性格なのだ。

 

………

 

イク達を救い出したあの日からしばらく、霞たちもそうであるが、イク達のケアに奔走した。

 

「イク達…ご飯、食べてもいい、の?」

「これ食べたら、出撃…ですか?」

 

「いや、出撃はしばらくないよ。お腹へったろ?食べていいんだぞ」

 

迅鯨と長鯨に作ってもらったごく普通の白いお米にお味噌汁に卵焼き。リンガと言う他国、そして島であるということから食材については考えて使用しないといけなかった。しかし、イク達に何とか温かいご飯を食べてほしいという願いから無理を言った。そこまで無理でもないのだが、五ヶ丘提督はそう感じていたのだ。

 

「いただきます、なの…」

 

おそるおそると言った感じでご飯を食べ、みそ汁を飲む。ふっくらと柔らかく焼かれた卵焼きも口へ運ぶ。ぽろぽろとイクやニムは涙を流していた。

 

「……あったかいの…。あったかくて…おいしいの…!」

「ぐすっ…おいしい、なぁ!」

 

「提督…お風呂、あったかかった…よ?」

「うん。毎日入っていいからな」

 

「うん…ありがと…提督」

 

(烏丸の野郎…こんな子たちをひどい目にあわせやがって…!!!)

 

怒っている暇があるならこの子たちをケアしないと…!そう切り替えたのだった。「お布団、あったかいなぁ」などと温かさ、暖かさを知らないリンガの艦娘たちに暖かさを教えたのは五ヶ丘提督だ。惜しみない愛情に愛情で。特に激しく返してくれるのがイクとニムだ。

 

「てーとく、お顔にしわができてるの!今日はお仕事をお休みするの!」

「ん、んんっ…!そうだな、今日は疲れたな!ゆっくりするかな」

 

「えへへ!てーとく、イク達のお話し相手になってほしいの!」

「ああいいぜ。いっぱいお話ししよう」

 

「わーい♪なの!」

 

こうして潜水艦との親睦を深めていった。

 

イクやニムが主に提督にくっついているかと言うとそうでもない。ヨナもそうだし、クールでツンツン、表情をあまり変えないフレイやフーミィも提督の膝の上に座ったり、お風呂に入ったりもしている。

 

「提督。私も頑張った。抱っこ」

「フレイ、お疲れ様。よしよし、頑張ったな」

 

「……んふー」

「姉1。抱っこの時間が5秒過ぎた。次はフーミィの番」

 

「何を言っているの?時間なんて設定していない」

「……むー」

 

「こらこらケンカすんなよ。フーミィ、もうちょっと待ってくれな」

「…ヨナ先輩の目が怖い」

 

(なんかもう駆逐艦と潜水艦のご主人さまの膝の上争奪戦が激しすぎませんかねぇ…?)

 

こうして潜水艦は駆逐艦と一緒に優しさや愛情を知った。五ヶ丘提督は「艦娘の人への優しさってすげえよな。あんだけひどい目にあってたのに、こうしてオレを信じていろいろと言ってくるんだ。そりゃちゃんと優しさなんかを返さなきゃだめだよな」と白雪たちに語っていた。

 

白雪たちも提督の底なしの優しさは知っている。しかし、最近過剰では?一緒にお風呂に入ったり抱っこにほっぺにキスに…許せない…白雪が全部最初にしてもらうはずだったのに…と思ってはいるが

 

「じゃあ白雪も一緒にてーとくとお風呂に入るの!」

「えっ!?ええええ!?心の準備が…!きゃあああああ!!!!」

 

「あー、白雪ちゃんきたきたぁ!」

「おお白雪。一緒に入りに来たのか?ちょっと待っててくれ、ニムの体を洗ったらお前もな」

 

「あ、う、ああ…」

 

白雪は天にも昇る気分になり、嫉妬がばかばかしくなったらしい。

 

ちなみにイクは誰彼かまわずてーとくとお風呂に入るの!と長波や霞、はては陸奥や加賀まで巻き込んだ(さすがに陸奥は辞退。加賀は気分が高揚しますと入る気満々だったが陸奥によって阻止された)。

 

………

 

こうして士気がとてつもなく高い鹿屋基地のメンバー。刈谷提督や一宮提督の指示を的確にこなし、輸送、哨戒、戦闘。時に潜水艦による斥候。情報収集なども指示された。

 

『いいか、ここはこうして第二艦隊を動かせ。ああ?指示は俺がしてやる。テメエはそっちの艦隊の指揮に専念しろ。ミスったらわかってんだろうな?』

 

『はい、五ヶ丘提督。良い動きです。次の輸送作戦は私も援護いたしますのでご安心ください』

 

「支えがねえとマジでどうにもならなかったなぁ…」

「いやぁ~、ありがたいねぇ!これなら早く終わってぱぁ~っと酒飲めっかなぁ!」

 

「隼鷹はまた酒か…」

「いいじゃんかー!提督も飲むだろ?」

 

「あー、まあ祝杯くらいは…」

「何杯いく?」

 

「あー…しこたま飲みてえなぁ、たまには」

「提督のしこたまって考えたくねえなぁ…」

 

これくらいの余裕はあった。それでも戦闘ではしっかりと気を引き締めた。時に弱気になった霞の士気を鼓舞したり、自分が弱気になったときは霞に怒られたりもしたが。

 

そして、ある日刈谷提督から連絡が入った。

 

「はい、鹿屋基地です」

『よお。生きてるか?』

 

「いやいや、生きてなきゃ今も作戦の指揮できてねえっすよ…」

『へっ、そりゃいいことだ。ま、新米でよくやってくれたぜ。お前に任せて正解だったぜ』

 

「ウッス…」

『ほめてんだよ。そう縮こまるなって。んで、お前への作戦はこれで終わりだ。エンガノ岬沖周辺のカスどもはお前が殲滅してくれた。あとは俺と三条で頭を仕留めりゃ終わりだ』

 

「えっ、もういいんスか…?」

『ああ。お前のおかげで俺らはエンガノに集中できる。お前の作戦はここで終了だ。よくやった。勲章に期待しとけ』

 

「あ、はい…」

『おい、呆けてんじゃねえぞ。艦娘に知らせてやれ。お前が提督で初の大規模作戦だ。前のバカの時にろくな目にあってねえんだろ?だったら目いっぱいほめてやれ。いいな」

 

「……はい!」

『フッ…じゃあな。俺は俺の役目を果たしてくるぜ』

 

「はい!刈谷さん…ありがとうございます!!!」

『ああ、こちらこそありがとよ。一足先にあがっていいぜ。お疲れ』

 

刈谷提督との通話は終わった。途中での中止ではない。五ヶ丘提督は自分が与えられた役割を完遂したのだ。着任1年未満で。こんなにも神経が磨り減るとは思っていなかった。この数ヶ月、長い戦いだった。

 

みんなに支えられた。艦娘、刈谷提督、一宮提督…みんな。終わった…これでしばらくは…のんびりできるだろう。それよりも、みんなが無事であったことに喜びを隠しきれずに…

 

「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

 

感極まって野獣のような咆哮をあげてしまった。白雪は驚いてフリーズするし、加古は飛び起きたと言うかソファから転げ落ちた。

 

「うおお…頭打ったー…なんだよ提督ー…」

「加古!!!白雪!みんなを食堂に集めてくれ!!!終わったんだよ!!!」

 

「司令官、落ち着いてください…終わったって、何が終わったんですか?」

 

「作戦だよ作戦!!今の電話、刈谷さんからなんだ!!!オレたちの作戦は完了!終了!成功なんだって!!」

 

「はえー…ってマジかよ!!」

 

「ええええ!?お、終わった…せ、成功!?きゃっ!?」

 

もう我を忘れて白雪を抱き上げ、笑う五ヶ丘提督。

 

「そうだよ!!終わったんだ!!!!やったーーーー!!!」

 

「きゃああああ!!司令官!わかりましたからおろしてくださいー!!!」

 

嬉し恥ずかし、白雪をパニックに陥れた。

 

………

 

白雪と加古によって食堂に集められた艦娘一同。白雪は顔を真っ赤にしていて何を言っているかよくわからなかったし、加古は半分寝ていて呂律がおかしく、意味が分からなかったがそれを翻訳した隼鷹の言葉で、ようやく食堂に全員集まるように、と言う意図が伝わった。

 

「何よ…緊急招集って…まさか…何かあったのかしら」

 

霞が不安げに椅子にちょこんと座って待っている。長波はまた何だか泣きそうな顔をしている。今回の作戦が失敗、提督がどこか左遷されるのではないか、と言うよくわからないマイナス発想である。長波はこういう時、プレッシャーに弱かったりする。

 

待つことしばらく、五ヶ丘提督がやってきた。目が心なしか輝いているように艦娘たちには見えた。

 

「みんな、今から大事なことを話すから聞いてくれ!」

 

そういうと全員が提督に傾注する。しかし、もうイクやニム、清霜はすぐにでも提督に飛びつきたい、そんな衝動に駆られていた。彼女たちは提督がきっととてもうれしいことがあったに違いないと感じていた。

 

「実はさっき、刈谷提督っていう偉い人から連絡があった。その内容なんだが…オレたちの作戦は成功!終了した!」

 

「おお!?ご主人様マジっすか!?」

「はぁ~…終わったかぁ…」

 

その言葉に鬼怒はようやく肩の荷が下りたような気がした。輸送任務においては鬼怒は出撃しっぱなしだった。提督は謝っていたが、鬼怒の役割は大きく、予想以上に資材などの物資輸送が鬼怒のおかげでできたのだ。疲れはしたが、達成感はパない。

 

「みんな!お疲れ様!!オレたちの勝利!!成功だ!!!」

 

もう一度提督がそういうと、わっと大きな声がみんなから上がり、やったー!とか嬉しいという声が出た。陸奥はふぅ、と息を吐き、加賀は無表情のようで喜んでいるというのが見て取れた。

 

「司令官…お疲れ様、でした。この早霜を…改二にしてくれて…清霜さんも…フフ、司令官は…本当に…素敵な、人」

 

「早霜!清霜もそうだけどみんなが頑張ってくれたおかげだ!ありがとう…ありがとう!」

「………!?ふふ…司令官…痛いです…けど。幸せな…痛みですね…」

 

早霜は突然、横須賀の艦娘のように改二になった。清霜もそうだ。明石も「わかりません!!」とのこと。玉波が大発を積めるようになったのでそれで輸送で活躍したこと。連戦でありながらも文句ひとつ言わずに戦ってくれた夕雲型。まさに鹿屋の主力オブ主力だった。

 

「提督、お疲れ様です!」

「明石、助かったよ。おかげでみんなが万全で出撃できたからな!」

 

「えへへ、しばらくはゆっくりできますかねー」

「ああ!ゆっくりしてくれ!」

 

「てーとくーーーー!」

「イク!!ニム!ヨナ達もお疲れ様!哨戒大変だったな!ありがとうな!!」

 

「えへへへ!!!うれしいの!!」

 

そうしてみんなで喜びを分かち合っていると。

 

「うわああああああああああん!!!!!!」

 

大きな泣き声が食堂に響き渡る。声の主を探してみると、長波だった。涙をボロボロと流して泣いている。

 

「長波姉!?」

「長波姉さま、どうしたかも!?です!」

 

「ああああああん!!!!」

「長波!どうした!!!」

 

「あああああ!!だっで!!!だっでよがっだんだもおおおん!!!」

 

「よかった!?あ、ああ!作戦が終わったことか!」

「うん……」

 

「そうか。長波も頑張ったしみんなも頑張ったもんな。みんな無事で作戦を終えることができた。本当にお疲れさまだ…」

 

「うん…ううううううう!!!!」

「よしよし、長波。泣くなよ…」

 

「何よ…もう。情けないったら…ぐすっ…みんな、無事で…よかったけど…」

 

霞も涙を目に浮かべてそれを見ていた。これは今後、イジるネタになるだろうな…と提督は思った。長波もみんなも、大きな作戦を自我を持った状態での作戦成功。そして提督からのねぎらいの言葉…みんなが嬉しいことは作戦だけではなかった。信頼できる提督のねぎらいの言葉も大きな喜びの素なのだ。

 

鹿屋基地の五ヶ丘提督と艦娘たちの絆が深くなった瞬間であった。

 

………

 

「えっ!?大府が!?」

『ああ、これで不穏分子が一個消えたし、邪魔だったからな、清々したぜ』

 

後日、刈谷提督との電話で大府逮捕の話が出た。しかも、刈谷提督の艦娘、愛宕や能代を撃っただけでなく、刈谷提督本人も撃ったとのことで呆然。

 

「い、いや…刈谷さんにケンカ売った時点でそもそも負け…」

『クク。テメエとの殴り合いじゃ負けそうだけどな』

 

「い、いや、恐れ多いっす…」

『ま、とにかく大府との戦にも勝ったし、レイテは大成功だ。まだ未定だが論功行賞はやるからよ。その時テメエ、時間作れよ。またやるぞ』

 

「ああ…堀内さんや三条君たちと飯ッスか」

『そうだ。鳳翔にいいもん作ってもらうからよ』

 

「楽しみにしてますよ。あの、酒飲まないッスよね…?」

『………ククッ』

 

「ああ!?飲む気ッスね!?」

『いいや、俺ぁまたその時司令長官と打ち合わせだかんな。飲まねーよ』

 

(ぜってー嘘じゃねえか)

『お、テメエ疑ったな?今度覚えとけよ』

 

「え、ええ!?理不尽な!?」

『いいんだよ。俺は当面上機嫌なんだ。テメエと三条イジんのおもしれーんだからよ』

 

「パ、パワハラ…」

『あー?聞こえねー』

 

「かー…わかりましたよ。オレはその時なんも見てねえんで…」

『よし、それでいい。んじゃ、俺も書類が多くてな。あとバカのせいで論功行賞の手筈整ってねえんだ。その辺急ぎたいんでな』

 

「無理しないでくださいよ」

『おう。気持ちだけ受け取っておくぜ(司令官!うーちゃんの豆大福取ったぴょん!!!うーちゃん楽しみにしてたのに!!鬼!悪魔ぴょん!!!)ああ?知らねーよ。ったく、今電話中なのにうっせーな。ほれ、これやるからこれ食って機嫌直せ。(わーい!伊良湖さんの最中だぴょん!しれーかん太っ腹ー!!)』

 

電話の向こうでうーちゃん…卯月か…と甘味でもめてる…。なんつーか、刈谷さんも艦娘思いっつーか…まあそうでないと三条君を含め、部下はついてこねえだろうしな…。艦娘もちゃんと信頼してるみたいだし。やっぱいい上司だよな。そう提督は思う。

 

『あー…いうんじゃねえぞ』

「恐ろしくて言えねえッス」

 

『そうかよ。チッ、こうなったらテメエの秘密も知っておきてえところだな』

「いやいや、オレにはないっすよ」

 

『そうか?テメエ艦娘とイチャコラしてねえのかよ』

「してるわけないっすよ…」

 

『本当だな?テメエ後でバレたとき怖えぞ?』

「い、いや、ほんとに「てーとくーーー!イク達帰投したのー!!さ、一緒にお風呂に入るのね!頭をゴシゴシしてほしいのね!!」いいっ?!い、イク!!」」

 

「てーとく!何してるの!イクたち疲れてるの!早くてーとくとお風呂入って、いーっぱい疲れをいやしてほしいの!!」

 

「あ、ああ…」

『クク、ククククク…!!!そりゃあ待たせたらかわいそうだよな?まあ、ごゆっくり』

 

「ああ!?刈谷さん!?刈谷さん!?」

「ねーえー!てーとく!早くするの!ニムたちも待ってるのね!!」

 

「あ、ああああああああ!!!」

 

結局、刈谷提督が秘密にしていることよりもヤバイことがバレてしまった五ヶ丘提督は今後、刈谷提督にこれ以上の失態がバレないことを祈るしかできなかった。これよりやばいことなんてないと思うが。




うーちゃんに甘い刈谷提督よりもやばい秘密を知られてしまった五ヶ丘提督ですが「いや、別に疲れた艦娘の疲れをいやしてあげてるだけなんだからやましいことなんてないよな?」と言い出してしまい、刈谷提督を唖然とさせた五ヶ丘提督でしたとさ。

次回は「初めての祝勝会」をお伝えしたいですね。陸奥、加賀たちとももっと親睦を深めたい五ヶ丘提督。お買い物をしたりと楽しい時間を過ごしたいのですが、一般人にジャーマンスープレックスをかましてみたり…とはちゃめちゃなお話にしたいです。
次回も楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

それでは、また。
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