「て、提督はイクを提督の色に染める気なのね…?イ、イク、提督にならいいの…でも…でも…やっぱり恥ずかしいの…」
「大丈夫だ。すぐに慣れるよ」
「て、提督…優しくしてほしいの…」
「わかってる。痛かったら言うんだぞ」
「う、ううう…やっぱり無理なのーーーーー!!」
「あ、こら!待ちなさい!!そのまま部屋から出るなーーーー!!!」
一糸まとわない姿で執務室から飛び出す伊19ことイク。大慌てでそれを追いかける五ヶ丘提督。やらしい展開なんてない。
「洋服を着るだけで何を捧げるんだイクーーーーー!!!!」
鹿屋基地は今日もドタバタと騒がしい日常を送っている。
………
「祝勝会っスか!?わーい!いいですねー!ご主人様素敵!シャッチョさん素敵!!」
「誰が社長だ。思えばいろいろありすぎて、懇親会みたいなのやってねえし、レイテって言う大規模作戦を一番易しい難易度とは言え、やりきったからな。心配すんな、経費とかじゃなく、オレの実費でやるからな。貯金ならいっぱいあるから」
(そんな無茶をせずとも経費である程度は落とせると思うのですが…司令官のお財布はこの白雪が管理しておいたほうが…それって何だか奥さんみたいですね…フフフ)
(ゆっきーまーた暴走してんなあれ…もういろいろとツッコミも疲れますお…)
「へー、おもしろそうだねぇ。提督、そんときゃお酒もがっつり頼むぜ~?」
「あのな…人の金だからってそんな注文するんじゃねえの。食い物はがっつり用意するけど、酒に関しては駆逐艦ばっかりだし、ちょろっとだけな」
「ちぇー…まあしゃあねぇ…あいつらが一番頑張ったもんなー。あと鬼怒」
「鬼怒さん…いまだに疲労が抜けきらないらしくて明石さんのメンテナンスを受け続けてますからね…」
「お鬼怒さん…おいたわしや…よよよ…」
「おう…鬼怒の頑張りを一番に褒めてあげなきゃな…」
(ってーか提督の出撃、帰投の度に抱きしめてたのもダメージに入ってんじゃねえかなぁ?)
レイテの作戦が終わり、日常に戻ってはいるものの、まだ艦娘たちは初めてのことだらけで疲労が抜けきっていない。今は軽めの哨戒と遠征だけにしてドック入りしてもらったり明石に診察してもらったりして少しずつではあるが疲労が抜けてきている状態な鹿屋基地。
そして、みんなと親睦をもっと深めたい。仲良くなりたいと言う五ヶ丘提督の思いもあって今回の懇親会、打ち上げを思いついたのだ。
「それじゃあ鬼怒もねぎらいたいし、迅鯨や長鯨に頼まないといけないな!」
提督は意気揚々と食堂へ向かう。
………
「まあ、素敵ですね。私の腕も鳴っちゃいます!」
「ですよね!よーし、私も頑張っちゃうぞ!」
「すまねえなぁ、2人にも輸送とか手伝ってもらって…疲れてるだろ?」
「いいえ、とんでもありません。その…鬼怒さんに比べれば…」
「そうですね…鬼怒さんや駆逐艦のみんなに比べれば…」
やっぱりここでも鬼怒の心配をされる。駆逐艦も輸送に戦闘にひっきりなし。刈谷提督から作戦終了を告げられてからから10日ほど。いまだに鬼怒はベッドでぐでーっとしている。
「あら、お料理なら私にも任せてよ!」
そういうのは足柄だ。彼女も戦闘の旗艦としてバリバリ手伝ってくれたものだ。ただ、足柄自身はピンピンしているが、付き添いの駆逐艦は結構ゲンナリしていた。なぜならハイテンションでとにかく「突撃よ突撃ーーー!!!提督に頑張ってうんとほめてもらうのよ!!!!」と突撃を繰り返す始末。
「いったん様子を見なさいって司令官に言われてたでしょ!?なんで突撃を繰り返すのよ!!!」
霞がブレーキ役になってくれて助かった。その後も足柄が旗艦の際は必ずブレーキ役として艦隊に加わっている。
「んにゃあ!?」
「ほら見なさい!失敗したら褒められるどころじゃないのよ!」
「うう…ごめんなさぁい!」
帰ってきてからも「お前は何をやっているのだ…」と那智に呆れられたとか。
さて、カレーの日には特別においしいと評判のカレーを振舞ってくれる足柄。実は人数が多くて苦労している迅鯨達鯨姉妹のお手伝いさん。特に揚げ物に関しては迅鯨も舌を巻くうまさを持つ。足柄も手伝ってくれるならありがたいな。
「足柄、カレーと唐揚げとか頼めるか?お前の揚げ物、うまいからな」
「ええ、任せて!でも、ちょっと数が多いから…」
「そこは私たちがフォロー致しますよ。ご安心ください」
「ほんと!?助かるわ!」
「よし、駆逐艦の子たちも皿並べたりしてくれるし、霞もなんか怒ってた感じだけど手伝ってくれるって言うから、オレは食材の買い出しに行くか!」
こうして五ヶ丘提督は近くのショッピングセンターに行くことになった。
………
「ぜーーーーったいうちらも行く!!!」
「何言ってんだよ!!あたしらは迅鯨さん達の手伝いがあるんだぜ!?行けるわけねえだろ!」
さてここでややこしいことになっているのは絶対ついていくと鼻息が荒い秋霜と、手伝いを任されているから無理に決まってんだろ、と止める長波達駆逐艦だ。
「やだやだやだーーー!!提督とお出かけするのー!」
「清霜もお出かけしたいよー」
「清霜さん…我慢しましょうね」
早霜や夕雲も止めている。清霜、朝霜、秋霜は絶対行くとワガママ全開。本当なら夕雲も買い物袋を提督と2人で持ち合って、夫婦みたいなことがしたい…と言う思いを持っているが、長女がそれを言ってしまっては絶対に秋霜さん達が突撃してしまう…と考えているので理性でそれを抑えている。あと、見えないように手の甲を思い切りつねって。
「ちょっと待て高波姉さん。いいか、みんなもよく聞けよ」
涼波がスッと立ち上がってみんなを見回す。なんだなんだと注目する姉妹たち。
「スズたちが任されてんのはパーティーの準備だろ?だったらそれをしっかりこなしたほうが提督に褒めてもらえんじゃない?ここで行くってワガママ言っちまったら提督を困らせるだけだ。みんなは褒められるのと困らせるの、どっちがいい?」
あらあら…涼波さんったらすっかり提督を好きになったのねぇ…と夕雲はニコニコと話を聞いていた。涼波の問いかけに行こうとしていた姉妹は「うーん…」と考え込んでしまう。
(藤波、よく頑張って迅鯨達の手伝いをしてくれたな。えらいぞ)
(もち、藤波はちゃんとできる子だし)
(ああそうだな。藤波はいい子だもんな。よし、頑張ったご褒美をあげような)
(マジ!?じゃあ…抱っこして頭なでなでしてほしい)
(よし、さあおいで)
(んっ…!)
涼波の問いかけに考えを巡らせていたら何かすごい妄想が出てきてしまってパッパッと手でその妄想を振り払い、真っ赤に茹る藤波。
「お姉ちゃんどうしたの~?」
「は、早ちん!?な、なんでもない!!」
藤波、むっつりである。
「しゃーねえなー。んじゃあ司令には今度連れてってもらうかな!」
「高波もお手伝いするかも!です!」
「おっ、いいねいいね!よーし、じゃあ提督にいーっぱいほめてもらえるように出撃だー!」
「「「おーーー」」」
涼波さん、いいお姉ちゃんになりましたねぇ。無理だったら風雲さんも出るつもりだったみたい。風雲さんが涼波さんをほめていますね。ふふ、これなら夕雲型は安泰だわ♪そして、いつかは提督とみーんなお嫁さんになればいいのよ♪
夕雲のとてつもない野望がそこにはあった。
………
「え?イク達とお出かけなの?」
「ああそうだ。よかったらでいいんだけど「ぜーーーったい行くの!!イク、行くのーーー!!」
「ニムも行くー!!」
五ヶ丘提督がショッピングセンターに誘ったのはまずは潜水艦だ。イク、ニム、ヨナ、フレイ、フーミィ。彼女たちも偵察などを行っていたので結構疲れた顔をしていたが、今はみな元気そうである。潜水艦の娘たちは夜うなされたり、時々フラッシュバックしてしまうことがあるらしく、特に念入りに提督が面倒を見ている。
今回は外へ出て息抜きでもどうだろう。いや…外で人間に会うのは怖いだろうか…と言う過保護もあったのだが、それは杞憂だったようだ。みんな、わぁっと顔を綻ばせて提督のもとへ集まった。これなら大丈夫だろう。ヨナ達も行きたいとのことだったので、人間への不信感はないか。いや、この子達に悪だくみを考えている人間は顔面陥没させてやりゃいいか、と言う危険な発想が飛び出る彼も危険がいっぱいである。
ちなみに、保護者の代わりとして呼んでいるのが、提督はいろいろと加賀に悪いことばかり言ってしまっている気がするので加賀を誘った。
「お、いたいた。加賀、ちょっと相談したいことがあるんだけどいいか?」
その瞬間、加賀はキラキラと少し輝いた気がした。
「何かしら、提督?」
表情こそ変わらないが、おさげをいじいじと触り、目をそらしてはちらちらと提督を見る。陸奥だけが知っている。おさげをいじいじするのは嬉しい時。最近これをすることが増えたことは、陸奥としては嬉しい。
「実は、イク達とお疲れパーティーの買い出しに行くんだ。で、オレだけじゃ心配だから加賀にも付き合ってほしいなって思ってさ」
付き合ってほしい。付き合ってほしい。付き合ってほしい。ええ、それはもう喜んで。お付き合い。つまり、私とそういう関係に。提督なら怖くないし、優しい人ですから。そうして結婚して…提督と素敵な子を…そうですね、3人くらいでいいかしら?女の子、男の子、女の子がいいかしら?ええ、もちろん頑張って産みます。夜のお仕事は怖い…ですが。はい、必ず提督を幸せに…。
「加賀…?加賀!」
「!?」
「提督の話、聞いてたの?買い出しのお付き合い、どうするの?」
「行きます。必ず」
その瞬間、三重キラどころか桜吹雪まで舞ったような気がして陸奥は頭を抱えた。そして少し待っていてと言われて待っていたらどこから出したのか、ばっちりの私服姿。青いワンピース。白いコート。なぜか「KANCOLEE」と印刷された紙袋まで持参。なんでも、横須賀からの風来の妖精さんが加賀のために作っていたらしい。何それ知らない。
「いつでも声を掛けて」
「よし、じゃあイク達のところへ行くか」
「ええ」
陸奥が見送った加賀の後ろ姿。時々スキップしてるように見えた。
………
「で、イクとニムはそのまま行くつもりか!?」
「え?これがイク達の服なの」
何言ってるの?と言う感じできょとんとするイク。いや、ヨナ達は私服持ってんじゃん…まずいまずい。いくら提督指定の水着だからと言って、水着で歩き回らせれば何考えてるんだ鹿屋の提督は、と風評被害がやばい。
「ダメだ、私服はないのか?それを着てもらう」
「は、はあ!?イクにお洋服を着せるだなんて提督はヘンタイさんなのね!!」
「なんでそうなる!?」
「イ、イクを提督色に染めたいの…?」
「いや、あのな?水着で街を歩くほうが問題だからな?」
「そんなことないの!きっと水着で歩いてる人がぜーったいいるの!」
「いねえよ!!!」
イクとニムは私服はあるものの、なぜか恥ずかしいというか、これを着るのはヘンタイプレイとまで言い出すほどであり、私服を着ることはなかった。ヨナやフレイたちはかわいいからと着ている。すでにお買い物に行くからと。
イクとニムは水着で行くつもりだ。断固として。
「ちぇー、じゃあニムも着替えてきまーす」
「ニム!?裏切るのね!?」
「提督とお出かけできないなら着替えまーす」
「ぬぬぬぬぬ」
「いや、唸ってないで着替えてくれよ…」
「じゃあ提督が着せてほしいの!!!」
「はあ!?」
「えっと、お洋服着るときは、ぶらじゃーとかつけるのね?つけたことないの…つけられないの…」
なぜかうるうると星の形をした瞳が揺れるほど目をうるうるさせて恥じらいのまなざしで提督にお願いをする。
「……わかった。オレも男だ(?)…服を持ってきなさい。着せてあげるから」
「うん…」
陸奥はまた頭を抱えていた。
………
そして冒頭である。イクはすっぽんぽんは恥ずかしくないが、ブラをつけようと胸にブラをあてがったら恥ずかしくて逃げた。
それよりも、男って…イクちゃんの体を見たりして、欲情するんじゃないの…?と陸奥は思ったが、提督はその気配が一切ない。むしろ「じっとしていなさい」とイクを窘め、おとなしくさせている。イクはと言うと顔を真っ赤にして、いつも朗らかな笑みを浮かべてご機嫌な表情ではなく、恥ずかしそうにモジモジしている。
「じゃあつけるからな。つけ方も教えるからな。いいか?まず肩にひもを通すだろ?それからこう、しっかり…お、サイズは合ってんのか。なら大丈夫だな」
「ひゃん!」
「お、冷たかったか?」
「ち、違うのぉ…」
提督はそのままイクの胸に顔を埋めてしまうんじゃないかと言うくらい近い。イクは提督の息が当たるたびに「ひうっ!」とか「ひゃっ?!」とか声をあげている。ヨナやニム達は食い入るようにその様子を眺めていた。
「んで、ここを寄せて…こうして詰めて…」
「あふぅん…」
イクの豊満な胸にダイレクトタッチ。しかし、その顔は真剣そのものでいやらしい感じは一切ない。
「姉1。提督がイクさんの胸触ってる」
「……でもスケベには見えない。あいつらとは違う」
「イク、いいないいなー」
「…ヨナも、ブラジャー、直してもらう…」
提督とイクを見てヨナ、フレイ、フーミィは胸を触っては、イクほどにないのを確認して瞳に光がなくなった気がした。
「フロントホック型だから、こうして留めて…よし、いいぞ。じゃあ次はパンツな。足上げて」
「は、はいなの…」
なんなのこれ?火遊び?と言うか…イクの下腹部を見て何にも思わないわけ?陸奥は混乱し始めている。加賀は「私も…やってもらおうかしら?」とかぼそっと言っているし、もうわけがわからない。
見届けること30分。イクはようやく服を着せてもらったのだった。ショートパンツ、サンダル、かわいらしいノースリーブ。健康的なイクのかわいさを惜しみなく出している五ヶ丘提督のセンス。
「寒くないか?」
「ううん、暑いのぉ…」
「ならちょうどいいな!」
「うう…提督にすべて見られたのね…」
「よし、じゃあ行くか!!」
そういって元気がいい提督だが気づいていない。イクが熱い視線を送り、加賀が…
「こら待ちなさい加賀。ブラのホックをごそごそして外そうとしないでくれる?」
「………してないわ?」
「今してたわよね!!」
加賀の暴走に陸奥は頭が今度は痛くなってきた。
………
「わー!おっきーーーー!」
最近できた大型ショッピングセンター。その大きさに加賀も、潜水艦のみんなも。そして一緒についてきた隼鷹も驚いた。
「へー、鹿屋にもこんなのあるんだなぁ」
「ここなら服を買ったりもできるな。今度イクやニムの私服も見繕うか」
「やっぱり提督はイクを提督の色に染める気なの…」
「提督ってエッチなんだー」
「お前らは何を言っているんだ…」
そんな談義を交わしつつ、ショッピングセンターを歩く。加賀は「私も染められたいわ…」とぼそぼそ言っているし、あたし、これツッコむ奴いねえじゃん…と隼鷹は天を仰いだ。案の定、潜水艦はおろか加賀までもがこれは何?あれは何?とうろうろ。おーい、食材買う時間なくなっぞーと言っても提督がいろいろ説明をしたりして時間は過ぎていく。いつの間にか加賀は服を買ってもらっていたり、イクたちもアクセサリーを買ってもらったりと普通にショッピングを楽しんでいた。
(いやー、これ漣や白雪が聞いたらまーた連れまわされるぞー…ま、ありがたーくあたしもピアスもーらい!)
いろいろ思いつつも隼鷹もちゃっかり買ってもらっていた。
ただ髪の色が人間とは違うイク達、注目を集めるのは無理もない。しかし、かつての鹿屋基地の主がかなり気を使って艦娘の印象を良くしていたので、艦娘に対して敵意をあらわにする人間はいない。新しい艦娘!?とかかわいい!とかの声が多い。
しかし、やっぱり艦娘に悪意を持つ人間は一定数いるもので、先ほどイク達にアクセサリーを買ってあげたお店で大声をあげて何かを叫んでいる。
「貴様らは軍国主義にしたいだけだ!!艦娘と言う兵器に物を売るなど言語道断!!!この店は戦争を賛美しているんだ!!」
「て、提督…?」
「隼鷹、加賀。イク達と下がってるんだ」
そういって揉めているアクセサリー屋の棚を蹴って壊し始めたり、店員の胸倉を掴んで殴ろうとしていた。それを見た五ヶ丘提督は走り出した。そして…。
「オラァ!女の子にアクセサリー買っただけで善良なお店の人に何さらしとんじゃあ!!」
棚を壊していた男の後ろから抱き着き…そして、100kgはあろう巨漢を持ち上げて…。
「オレらに手を出さずに弱い店員さんやお店を狙いやがって…ぬおおおお!!テメエは地面に埋まってやがれ!!!!」
「ほわ!あああああ!!!」
ドゴオオオオオン!!!!と凄まじい轟音が響いた。なんと提督は100kgの巨漢を軽々と持ち上げ、スープレックスをかました。男は轟音と共に首から上を地面にめり込ませた。
「て、提督ぅ!!!一般人にいきなり攻撃してんなよ!!!!わーやべえ!人がめりこんでる…死んだんじゃないだろうなぁ…」
隼鷹が慌てて提督を止めようとするが、すでに提督は次に店員の胸倉を掴んでいた男の手を握りつぶそうとしていた。男は「ギガアアアア!!!」と叫んでいる。提督の握力はリンゴを軽々つぶすくらいはある。鍛えていない人間の手など、潰すのはたやすい。それくらい彼の体格、筋力、握力は恵まれていた。
(提督って時々来るとこ間違えてんじゃねえかなって思うんだよなぁ…スポーツ選手やるべきだろ…!?)
「お前…オレたちに手出しせずにこの人とお店を狙ったのはどういうつもりだ?」
「ひ、ひいい…ぼ、暴力だ!!一般人に軍人が暴力をふるいやがった!!警察だ!警察を呼べぇ!!!」
「おう、警察呼ぼうじゃねえか。器物損壊、傷害でお前が逮捕されるぞ」
「じゃ、じゃああいつは…お前殺人じゃねえか!」
「殺さねえようにしといたぜ。ほれ、ピクピクしてんだろ」
「いや、痙攣じゃねえのか?!」
「鎧袖一触よ。さすがね、提督」
「いや、そこは救急車呼ぶとかしようぜ!?加賀ぁ!」
「いけいけ提督ぅ!悪い奴をやっつけちゃえー!」
「ううー!イク、うずうずするのー!」
「い、いけー!」
「おーい!おーい!提督煽んじゃねえ!!」
「あれはあの人間が悪い」
「提督の正義の鉄拳」
「お前らなぁ!!」
ダメだ、こいつら血の気多すぎ…加賀やフレイたちまで提督に熱い声援を送ってやがる。
「ああん?鹿屋基地に来た五ヶ丘君やん。何してんのん」
「ああ?お前は…え?どうしたんだ?大阪からどうして…」
「いや、鹿屋のほうに刈谷さんがおらんようになってから何や、過激な人らがようさん来とるって話やったからこっち来てん。うわ、かわいそ、五ヶ丘君来たんやったらまーこうなるわな」
現れたのは憲兵だった。隼鷹は終わった…と思った。提督が連れていかれちまう…白雪や霞たち大丈夫かなぁ…と逡巡した。
「あー、それでこいつ地面に埋まっとんのん。何したん?」
「スープレックス」
「ほなカウントしとこか。ワン、ツー、スリー。はい、ゴング。お前逮捕な」
「は、はあ!?こいつが一般市民に手をかけたんだぞ!?」
「いや、お前らが先に店の人に手ぇかけて壊してたんを止めたんやろ?正当防衛やん」
「意味わからねえんだけど!?」
「まあ話は聞いたるから。かつ丼食う?お前の実費やけど」
「いらねえええ!!クソが!!ふざけやがって!!!お前もぶん殴ってやるからなぁああああ!」
ゴキッと言う鈍い音がした。
「おあああああ!俺の!俺の手首があああ!」
「はい公務執行妨害な。ほら行くど。俺かつ丼食いたいねん。おごってや」
「ふざけんな!病院だろうが!!」
「ほな五ヶ丘君、今度お茶しよな」
「お、おう…」
この憲兵、「鋼鉄の憲兵」と呼ばれ、筋骨隆々。声は低いしドスが聞いているし怖い。だが話すと人情味あふれる関西を中心に動いている憲兵の一部隊長だ。部下には自称「リアルパーフェクトヒューマン」と言う憲兵もいる。
今回は憲兵たちのおかげで丸く収まった。お店はたまったものではないが、助かりました!と何とかなるそうである。犯人には賠償請求するそうだ。
「提督、かっこよかったの!」
「…さすがですね…結婚しましょう」
「おい加賀?」
「…何ですか、隼鷹さん」
「今すげえこと言ったよな?」
「そうかしら?」
「言ったよなァ!!」
こっちはこっちでひと騒動あったとか。
………
「みんな!大規模作戦頑張ったな!!」
ショッピングセンターで一悶着あったが、無事食材を買い込み、翌日お疲れ様会が開かれた。鬼怒もようやく疲れが癒えたのか、参加。みんな目をキラキラさせて目の前の料理を見ていた。
迅鯨、長鯨、足柄。そして霞や夕雲たちも手伝って豪勢になった。ちなみに五ヶ丘提督の実費である。
彼が提督として着任してからと言うもの、霞たちの知らないこと。そして嬉しいことがいっぱいあった。そして、今回は初参加となった大規模作戦。それを成功で終わらせたみんなを労うためのイベントである。前の提督の時にはなかったもの。
そして労ってもらえることなんてまずなかった。五ヶ丘提督はオレよりも頑張ったのはみんな、と話を続けた。その間、那智はウイスキーをあおりながら話を聞いていたが、その表情は穏やかで。中には泣いている艦娘もいた。
高波や浜波、秋霜。いっぱいいっぱいほめてもらって、そしてこんなにおいしそうな料理がいっぱい並んで。嬉しい気持ちがあふれかえってしまい、泣いているらしい。清霜も同じのようだ。
「見てくれよこれ!勲章だぜ!みんなが頑張った証だ!」
「それは提督も同じでしょう?私たちもそれは頑張ったけど…」
「大井、オレはただ指示してただけだ。それもヒヤヒヤしながらな…前線でしっかり戦ったのは大井たちみんなだ。まあ、オレも頑張ったってことで、みんなで取った勲章だな!」
のちに丁作戦を参加した勲章を別にもらえるらしい。これを見せたらまた大はしゃぎするんだろうなぁ…と提督は思った。
「これ以上は語るだけ野暮だな。食って飲むか!いただきます!」
「「「いただきまーす!!」」」
………
「うんめー!!足柄さんの作った唐揚げうんめー!」
「おい朝霜!自分だけガツガツ食うなよな!」
「岸波さん、このだし巻き…とてもおいしいですよ」
「…いただきます」
「今日ばかりは飲ませてもらおう!」
「那智姉さん、提督と飲んでた時みたいにならないでよ?」
「にゃ!?そんなことにはならん!!!」
「どうだか…」
「さすがに気分が高揚します」
「何よそのどんぶりに大量のチャーハン…」
それぞれが思い思いに食べ、飲む。五ヶ丘提督は「おう、食べてるか?」とかわるがわるいろんなグループの席に着く。
「霞、食べてるか?」
「何よいきなり…ええ、食べてるわよ」
「そうかそうか。ほら、ジュースも飲め」
「ちょっと!あたし炭酸飲めないのよ!」
「おほほほ、霞たそはおこちゃまですなぁ」
「そういう漣も飲めねえだろうが」
「ご主人様ぁ…」
「そうじゃなかったらリンゴジュースなんて飲んでないわよね。バッカみたい!」
「あー、じゃあこれはオレが飲んで…んっんっ…ぷはぁ。よし、じゃあリンゴジュース入れるな」
「あっあっ…か、間接」
「ひゅー♪」
「うるさいわね!!!!!なんでこうデリカシーがないのよ…(こ、ここに口をつけて…)」
「霞さん、そのコップは回収しますね」
「何でよ!これで飲むわよ!!んっんっんっ!!」
「おほーいったー!ゆっきーざーんねー…ちょ、怖い怖い!」
「ほら!飲んだわよ!!もう一回注ぎなさいよ!」
途中から妙に白雪が怖かったので退散した。
………
「長波、夕雲、楽しんでるか?」
「おー提督。あっちでなんか霞がすっげー目で見てくるんだけど大丈夫か?」
「ああ、漣が他も回ってこいってさ」
「いいのかよ…白雪たちといたほうがいいんじゃね?」
「長波達も頑張ったんだからさ。オレはみんなと話がしたいんだよ」
「そ、そうか、へ、へー、まあ、いいけどさ」
「うふふ、長波さんったらさっき、ずーっと提督のことを見ていたんですよ?」
「お、おい夕雲姉!!!やめろよーーー!!お、覚えてろよなーーーーー!!!」
「おーーーい!長波どこへ行くんだ!!?」
「いえーーーい!!!提督の隣いただ…いっ!?巻雲姉!?」
「秋霜、ここは巻雲の場所、いいよね?」
「うぁう…はーい…」
秋霜、作戦失敗。なお早霜がずっと怖かったらしい。
迅鯨と長鯨にお礼を言いに行ったら「いえいえ、妻として当然のことです」と言われた。「そうか、迅鯨と長鯨が奥さんだとオレも鼻が高いな!」と普通に返したら蒸気を噴き出して失神した。
加賀は一人でぱっと見富士山のようなチャーハンの3分の2を食べて非難された。
「イク、楽しんでるか?」
「提督!イク、ご機嫌なの!すごく!すごーーーく楽しいの!」
隣に提督が座るとイクはムギューと抱き着いてきた。その瞬間駆逐艦たちの視線がすごかった、と加古が語る。
「そうか。いっぱい楽しんでくれよ」
頭をなでてあげると目を細めて気持ちよさそうになでられているイク。ニムやヨナたちは食べるのに必死だが、イクは提督が来るとパァッと目を輝かせて甘える。
「イク達も頑張ったもんな」
「うん!イク、提督のためならもっともーーーっと頑張るの!」
「ははは、ありがとうな。でも、みんな大切な仲間だからな。無理して轟沈なんてやめてくれよ」
「もちろんなの!えへへ…嬉しいの…イク、嬉しいの…」
「よしよし…これからもっといっぱい、楽しいこと、嬉しいことを見つけていこうな」
「…はいなの」
イク達は本当に今の幸せをかみしめるように生きている。提督のおかげで。絶望から救い出してくれた提督を心から好きでいるイク。お父さん、と言うものを知らないが、いくらでも甘えさせてくれて、お世話してくれて…イクは幸せだった。これからも提督と一緒に歩んでいきたい。だから、もっと強くなるの…!とひそかに誓うのであった。
「提督~♪ん~♪」
「よしよし、よいしょっと」
「えっへへ♪提督のお膝の上、最高なの!」
今日と言う日をイクは忘れない。あの救い出してくれた日と同じように。これからも提督と素敵な思い出を作っていくの!素敵な提督でよかったのね!そう思うイクだった。
イクはかわいいですよね。無邪気で素直でかわいらしいです。
もうちょっと掘り下げたかったですが、五ヶ丘提督のお話はここまで。
次回は論功行賞のお話と、横須賀で大事件が発生します。
シリアス?いいえ、次回もドタバタです。
これをもちまして、2024年の投稿は終わりになります。今年もお世話になりました。
2025年もどうぞよろしくお願い致します。
それでは、また。