提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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ついにきました論功行賞。玲司、初の甲勲章!
それと同時に横須賀では新たなトラブル発生?


第二百七十九話

ある日の横須賀鎮守府。レイテの大規模作戦からだいぶ経った。時期はもうすぐクリスマス。夏から秋を飛ばして冬になってしまっていた。そうしていつまでも論功行賞の知らせも来ず、雪風たちがいい加減本当に大本営に乗り込むんじゃないかと思ったころ、ようやく論功行賞を行う知らせがやってきた。

 

刈谷提督いわく、俺や堀内からのクリスマスプレゼントとでも思っておけと言うことらしい。

 

「遅すぎるのです!!!大本営を爆破するのです!」

「ウラー!!!」

 

電や響がぷんすかしていたがそれも玲司は何とかかわしつつ…。大本営召集となった。やっとのことで行われる勲章授与に雪風や電たち駆逐艦たちに盛大に見送られながら、ため息交じりで「ようやく雪風たちが落ち着く…」と大淀にぼやきながら大本営へと向かった。

 

………

 

大本営会議よりさかのぼって1週間ほど前。冬は寒いがしっかり体を温めることができる入浴の時間。しっかり体を温めてから湯冷めしないようにしっかりと体を拭いていた翔鶴と瑞鶴。

 

「…………?」

「…瑞鶴?どうしたの?わたしの体をじっと見て…ちょっと恥ずかしいんだけど…」

 

「翔鶴姉、太った…?」

 

突然の瑞鶴の無神経かつ遠慮のない質問にピシッ…と翔鶴は石化した。青天の霹靂…いやいや、そんなレベルではない。

 

「瑞鶴…突然そんなことを言いだして何…?」

 

口をひくつかせてめったに怒りをあらわにしない翔鶴が瑞鶴に尋ねた。

 

「い、いや、ごめん…無神経よね…でもさ、翔鶴姉。お腹がちょっと出てきてるような…」

 

ピシッと再度石化する翔鶴。そ、そんな…演習に出たり出撃したり、そんなグータラした生活は送っていないのに…。と、言うか…。

 

「艦娘って…太るのかしら?」

「それよね。まー、瑞鶴たち、そんなグータラできる時間なんてここ最近なかったし、太るにしては何ていうか期間足りなくない?」

 

「そう…よね。わたしたち、何というか走り続けているに等しいっていうか…」

「でしょ?翔鶴姉もずーっと出撃とかしてたし、毎日鍛錬はしてるわけだしさ。太るってことはありえないと思うんだけど?」

 

「そうよねぇ…それに最近、何だかご飯を食べようとすると匂いだけでも気分が悪くなる時があるのよね」

 

「ええ?それ結構大事じゃない?」

「うーん…そうなのかしら…それに妙に疲れやすかったり…眠気が取れなかったり…」

 

「翔鶴姉、一回明石さんに診てもらったほうがいいと思うよ?」

「そうね…ひどくなるようなら診てもらうわね」

 

「提督さんがぽんこつになるんだから体調崩したりしないでよね~」

「そ、そうよね…と言うか、瑞鶴。玲司さんがぽんこつってどういうことかしら?」

 

「ゲッ、やべ!」

「こら、待ちなさい!うっ…!」

 

逃げる瑞鶴を追いかけようとしたが、胃の中のものが上がってきそうになったので止めた。

 

「……ふう……?」

 

翔鶴は確かに少しだけお腹が出ているんじゃ…?と鏡に横向きになって確認してみた。何度も何度もお腹をさすったりしてみたが、何かが変わったわけではない…ような気もするし。心なしか胸も少し張っているような…?

 

この時、翔鶴の身に何が起きているのか。それは玲司たちも、明石も。翔鶴自身さえまだ知らない。

 

………

 

「それではこれより、論功行賞を行います」

 

堀内提督の司会進行で始まった大本営での論功行賞。実は電たちを窘めるのに必死で口には出していなかったが、これは大淀も待ちわびていたものだった。大和や武蔵(大和に口止めされていたのだが)も、摩耶や最上たちも思っていたこと。思っていたのは駆逐艦だけじゃない。あれだけ激しい戦いを轟沈も出さずに勝ったのだ。それに対して大本営から何もないのはおかしいじゃないか。

 

もともと大本営への不信感が高い摩耶達。ようやくその不信感が拭えてきたのかな、と思っていた大淀だったがこれではまた高まってしまうじゃないか。不満が爆発しないか心配だった大淀の心配事がこれでなくなった。

 

「では刈谷提督、お願いします」

 

堀内提督がそういうとマイクを持った刈谷提督が何だか嬉しそうな表情で語りだした。

 

「お疲れさん。随分と待たせちまったがおかげさんでレイテの深海棲艦のボスを潰して東南アジアの一部を深海棲艦の包囲網から解放できたんで、それぞれの働きに応じて勲章を渡していく。今回は全員が一丸となってくれたおかげだ。ありがとうな」

 

刈谷提督がお礼を…明日は槍が降るんじゃないかと思う提督一同。いや、そういうとこ素直だよなと思っているのは玲司と堀内提督と五ヶ丘提督くらいじゃないだろうか。

 

全員、と言う言葉が提督たちに引っ掛かりを覚える。もっとも、玲司や五ヶ丘提督は彼なんぞいないほうがいい、と言うことで彼を抜いた全員でと言う意味だと捉えている。そう思っていたら刈谷提督自身から、その答えを出してくれた。

 

「ああ、全員って言うのはここの奴らのことな。まあ知っての通り、大府はクビになった」

 

どよ…と会議室は騒然となる。メールでの通達はあった。大府提督は諸事情により海軍を除籍となった。とだけ提督たちは知っている。

 

「諸事情って言ったけど、理由としては俺の艦娘を撃ち、俺を撃ち、海軍の秩序を著しく乱した罰だ。それと同時に、清州元副司令長官を艦娘を使って殺害したのが決定的だ」

 

今度はどよどよではない。ガヤガヤと騒々しくなった。清州副司令長官の謎の死。その犯人があれほど目にかけてもらっていた大府提督だったとは…嘘だ、そんなはずがない。信じられない者がほとんどだった。

 

「これがあのクソ野郎の本性だ。奴は俺らの命なんざその辺の石ころ、アリと同じくらいの価値だ。結果としてこういう始末だ。まあ消えた人間のことなんざ放っておけ。追求しようとして、喉笛かみちぎられても知らねえぞ?」

 

玲司から見れば、刈谷提督は大府のことはもはやそれこそ刈谷提督が言う通り、アリくらいの価値でしかないのだろう。玲司からしてみれば、自分のところの艦娘を沈めて自分の戦果を得ようとした奴のことは「こちらに害しかないやつが消えた」とあれば喜ばしいとしか思わなかった。

 

「じゃあまずは五ヶ丘だ。着任して間もないくせに頑張ったじゃねえか。通常の勲章とほらよ、丁勲章だ」

 

「押忍!!!」

 

海軍では難易度に応じた文字を刻んだ勲章を授与する。五ヶ丘提督…ああ、刈谷提督の直の後輩だから、と言うのもあるが、そのわずか数ヶ月で現鹿屋基地の艦娘をまとめあげたカリスマ。そしてまだ難しいだろう艦隊運用をこなし、玲司たちの作戦をサポートした功績は大きい。新米提督にしては大戦果だろう。

 

「よくやったじゃねえか。まあ、そうでなきゃお前を作戦に出しはしなかったからな」

「…刈谷さん、ありがとうございます…!オレ…オレ…!」

 

「これしきで泣くんじゃねえよ。お前にゃもっと頑張ってもらうからな?」

「…はい!」

 

刈谷提督から直々に提督へのお誘いが来たこと。今回の作戦においては簡単、と言ってはいたが、轟沈の危険がないわけではなかったし、初めてのことだらけで何回刈谷提督に連絡を取ったかもわからない。

 

電話をした際はめんどくさがらずに「いいから全部聞け」と懇切丁寧に艦隊の動かし方、輸送部隊の組み方などを教えてもらったそうな。

 

「不安です」と言えば「俺だってミスったらって思うと不安でたまらねえ。これを余裕ぶっこいて考えてるようならやめたほうがいいな」と彼なりの優しさがあった。決して無理はさせず。されど時々は尻を蹴とばす勢いで励まし(?)続けた。そうして任務完遂。五ヶ丘提督には大きな第一歩となった。

 

「次、丙な。まずは…」

 

そうして次々と勲章を渡しては労っていく刈谷提督。玲司から見れば「丸くなったよなぁ…」と思う。いや、最初からこうなんだろう。西方海域で初めてタッグを組んだ時は苛立ちを覚えた言い回しも、今はこれが刈谷提督なりの労い方なんだよな、と思っている。

 

「司令官…いつまで泣いているんですか…」

「うう、けどよ…けどよ?みんなの頑張りがこの勲章2つに表されてるんだぜ?だからよぉ…オレ、嬉しくってよぉ…」

 

「違います。これは司令官の努力の成果なんですよ。ですから、白雪たちが誇らしくなります」

「じゃあ、これはオレ、こっちの勲章はみんなってことで…うおおおお!!!」

 

「大きな声で泣かないでくださいよ…っ!」

 

白雪に背中をさすられながら泣いている五ヶ丘提督。みんなの頑張り。うん、そうだよな。だって俺らは安全な執務室で命令飛ばしてるだけだもんな。勲章を誰にって言うなら間違いなく艦娘たちへ送りたい。

 

「提督。私も五ヶ丘提督の白雪さんと同じ考えですよ…」

 

大淀には考えがバレてしまった。ジトーッとした目でわき腹をつつかれた。いや、でもなぁ…と口には出さなかったが頭をポリポリ。ああ、ジト目がきつくなった…高雄さんには笑われてるし…。おやっさんも何だかニコニコとこっちを見ているし…あーもう…とまた頭をかいた。

 

………

 

「じゃあ次は待たせたな、甲種勲章を渡す奴らだ。防衛に攻撃、とにかくきつい場所を任せた奴らだ。よくやった。まずは九重」

 

「はぁい」

 

九重提督。パラワン水道や深海鶴棲姫が現れる前のエンガノ岬沖の偵察、戦闘。さらにレイテ湾において護衛棲水姫の撃破などかなり激戦だったようだ。輸送船団の妨害、殲滅。これにより、エンガノ岬沖への深海棲艦への資材などの供給阻止などの大きな戦果をあげた。

 

「よくやったな。0点からまあ80点だな」

「あら嬉しいわ!そこまで点数が上がったのなら、100点も頑張ろうかしらねぇ」

 

「頑張ろうじゃなくて取れ。いいな」

「わかりました。ご期待にお応えしまぁす」

 

そうして古井司令長官の手で左胸に甲種勲章をつけてもらった。見ていた天龍も感極まったのか口を押えて目を潤ませている。

 

「なぁんで天龍ちゃんが泣いてるのよ~」

「らって…だって…オレ…ううう!」

 

「はいはい…ありがとうね」

 

天龍の頭をぽんぽんと撫でる。嬉しくないわけがないのだが、ここではしゃぐのも大人げない。それでも、ここまでやってきて最初は0点とバッサリ切り捨てられた提督から、一気に80点をもらえるとは思っていなかった。泥臭いやり方にはなったが、トライアンドエラー。試行錯誤を繰り返してようやくここまでやってきた。ここまでできた。個人的には100点だったのだけれど、厳しい採点の人から80点と言われて九重提督も感極まっているのだ。天龍にバレないようにそっと涙をぬぐった。

 

「次、一宮。さすがだな。お前と組んだらやっぱ楽だわ」

「ありがとうございます。ですが、刈谷提督の知恵をお借りしなければ危険でした」

 

「そうかよ。じゃあ次は1人でできるようになれ。それがお前への課題だ」

「承知致しました。ご期待に添えるよう精進を続けましょう」

 

涼介。刈谷提督や堀内提督が一目置く期待のブレイン。だが今回の大規模作戦では一歩足りなかったらしい。それでも刈谷提督が全幅の信頼を置くくらいにはやはりうまくいったようだ。オルモック沖を七原提督と。サマール沖東方を刈谷提督と。ほかにもサマール沖やシブヤン海においてもちょい役で動いていた一番過酷な仕事を任されたのではないだろうか。

 

普段はそう喜びなどを体で表示はしないのだが、席につく直前にグッとガッツポーズを取った。日向が随分熱っぽい目で見ているな。お熱いことで。玲司と目が合うとニッと笑った。玲司はそれに親指を立てて二カッと笑った。

 

「次、七原。よくやった」

「ヴァイ!!!!!」

 

七原提督はすでに泣いていた。九重提督や一宮提督の授与を見て感激していたらしい。ボロボロ涙をこぼして前へ。

 

「おい大丈夫かよ?こりゃ最初の一歩だ。テメエの左胸、甲種勲章でいっぱいにしてもらうからな。それまでへこたれんなよ?」

「ヴァイ!!!!」

 

ヴァイしか言ってない七原提督。彼女は玲司のサポートがほぼ。ボスまでの哨戒、殲滅。これも激しかっただろう。時に執務室で千歳や瑞穂に幼児退行するくらい煮詰まっていたらしい。それでも絶対にへこたれず、時に刈谷提督に泣きつきながらも、「守りの上郷」と言われていた上郷提督の防衛戦術を展開。玲司や刈谷提督の艦隊への被害を極限まで抑えた。

 

「うわああああああああああん!!!!!!」

「だああ!提督!泣くんじゃねえや!あたいだってなぁ…あたいだって…うええええええん!!」

 

「うるせえなテメエら」

 

涼風と抱き合って大泣きしている。プレッシャーからの解放。刈谷提督からのお褒めの言葉。そして絶対に自分には縁がなかったであろう最高の誉、甲種勲章。いろんなものが重なって爆発してしまったのだろう。うるさいな…と思っているような顔をしている提督もいれば、ほほえましく見守っている提督もいる。

 

「ほらほらすみれっち。頑張ったわね」

「ヴぁああああああ!!!」

 

「きたな!ちょっと!鼻水つけないでくれる!?暁じゃあるまいし!!」

 

九重提督の制服に鼻水がネバーッと…ほほえましい…のか?まあ、見ていて面白い光景である。堀内提督が後ろを向いている。たぶん笑っているなあれは。

 

「最後だ。三条」

 

「はい」

 

ゆっくり立ち上がったがなぜか大淀が緊張のあまりに直立不動。なんでお前がそうなる。

 

「三条、お前がこのレイテを勝利へ持っていった代表だ。誇れよ」

「いえ、私だけではありません。刈谷提督をはじめ、すべての提督とそして艦娘のおかげです」

 

「提督……!」

 

自分ではなく、私たちの活躍のおかげと…いつも言ってくださっているが…今回は…今回だけは…!大淀はすでに涙を目にためていた。いいえ、今回はみんなをしっかりとまとめ上げ、適材適所でしっかりと運用をしてくれたおかげだ。それ以外にない!

 

「三条提督…いや、玲司…よくやったね。うん、よくやった」

「司令長官、ありがとうございます。これからも艦娘の轟沈0でやっていきます」

 

「うむ。期待しているよ」

 

誇らしげな顔で玲司は父に勲章をつけてもらった。これで帰っても雪風たちがぷんすかせずに済む…とそっちの方向へ玲司は安堵した。

 

………

 

今回は昇進はなかった。大きな作戦だったのだが、ゴタゴタでそこまで回らなかったらしい。それでも次が期待できる内容だ。刈谷提督も「まあ昇進は期待しといてくれ」と言っていたし、よしだろう。

 

そうして論功行賞が終わり、いつものように4人の若手提督が集まって喋っていると、またしても首に手を回されて引きずられている五ヶ丘提督と、優雅に歩く堀内提督。そして楽しそうにしている刈谷提督がやってきた。

 

「よお、飯行くぞ飯」

 

それだけ言って五ヶ丘提督を引きずりながらいつもの鳳翔のところへと向かうのだった。

逆らうこともない。刈谷提督たちとの食事は楽しいって言うのもある。あと五ヶ丘提督が不憫…。

 

「いらっしゃいませ。皆様、大きな作戦お疲れさまでした」

「鳳翔さんとは言え、作戦のことをお話したのは守秘義務に違反していると思うのですが、刈谷君?」

 

「こまけーこたいいだろ。ジェネシスの鳳翔。別に喋ったところでこいつが漏らすこともねえよ」

「規律は守ってもらわないと困るんですがね…」

 

「いいって。五ヶ丘や三条らを労うためだ。がっつり労うための必要経費だ」

「まったく…すみませんね、鳳翔さん」

 

「あはは…いえいえ…私は何も聞かなかったことにしますので…」

「おい鳳翔、ウイスキー。山崎18年」

 

「そんな高いお酒はありませんよ。と言うか、お昼からお仕事でしょう?」

「ああ?今日はんなもんねえよ。じゃあポートアスケイグ」

 

「刈谷君?」

「……ビール」

 

「鳳翔さん、彼にほうじ茶を」

「ああ?堀内テメエなにテメエだけアサヒプレミアムビール持ってんだよ」

 

今日もこんなお酒のやり取りから始まるのだった。いや、堀内提督…そのプレミアムビールも結構いい値段するんすけど…。

 

「なんだ、テメエらは飲まねえのか?つまんねえな。泊ってけ、なあ五ヶ丘?」

「う、ウス…」

 

「無理にとは言いませんよ」

「じゃああたしたちは飲もうかしらねぇ」

 

「は、はい!七原すみれ!飲みます!」

「すみません、私は下戸ですので…」

 

「あー、俺は最近翔鶴の体調が悪くて食ったら帰ります」

 

「ほう、翔鶴さんが?」

「嫁だろ。こいつリアルに結婚してっからな」

 

まあ隠す必要もないんだけど…。

 

「そういう刈谷君は龍田さん、葛城さん、愛宕さんとケッコンカッコガチですよ」

 

堀内提督がそういうとブバーッと七原提督がビールを噴いた。

 

「重婚!?なんばしよっとや!?」

「艦娘とは重婚できませんなんて法律ねえだろ?気にすんな」

 

「あらあら、お熱いわねぇ。っていうか…元気ね…」

「フン。好きになっちまったんだからしょうがねえだろ?」

 

「うふふ♪天龍ちゃんも提督と結婚すればいいのよぉ~♪」

「んなぁ!?オ、オレは…」

 

「なんかみんなすげえっすね。あ、鳳翔さん。唐揚げおかわり」

「刈谷さんのお弟子さんも唐揚げ信者なんですか…」

 

話題は結婚話。と言っても彼らは艦娘が嫁、と言う者ばかりだ。五ヶ丘提督は外堀を日本海溝くらい埋められつつあり、逃げられそうもないが気づいていない。

 

「堀内もさっさと浦風とくっつけよなぁ?寂しがってるぜ?」

「むぐ…」

 

「く、駆逐艦と!?」

「あら、駆逐艦とでも愛があればいいんじゃない?浦風って駆逐艦に見えない時あるし」

 

「まあ、子供は作れねえが艦娘は人を裏切らねえからな。浮気もしねえ、見限りはよほどがない限りしねえ。いい嫁だぜ」

 

「か、刈谷さんがそんなことを言うなんて…」

「五ヶ丘ァ、テメエも艦娘で嫁作れ。世界が変わるぜ?」

 

「いや、オレ怖がられてばっかりで好きでいてくれる艦娘なんていねえんじゃ…」

「司令官?白雪はお慕いしておりますよ?」

 

「おーおー、熱烈」

「刈谷君、酔ってますね?」

 

「んなおもしれー話飲んでなきゃ楽しくねーだろうが。鳳翔、白州」

 

楽しそうな刈谷提督と肩をすくめて「ダメですねこれは…」と言うジェスチャーをする堀内提督。ちなみに「おう、オレも白雪が好きだぜ」と言った五ヶ丘提督に対し「言質は取りました。フフ、フフフフフ…」と怪しい笑みを浮かべる白雪にちょっと寒気がした玲司だった。

 

………

 

「刈谷提督、大府提督はどうなったのですか?」

 

楽しい話から一転、聞いてよいものか、楽しい話を切ってしまって申し訳なさそうに一宮提督が聞いた。

 

「クビだ。副司令長官を一度は殺害。二度目は殺人未遂。証拠は全部あがってる。言い逃れなんざできねえよ。今はきっちり四宮達憲兵が取り調べ中だ。黙秘だが、俺を撃ちやがった件は言い逃れできねえなぁ」

 

佐世保鎮守府襲撃。これは海軍を震撼させた。その前の清州副司令長官を艦娘が刺殺した件も大激震だったのだが。事のいきさつを初めて聞いた玲司たちは大府への怒りを露にした。

 

「自分の昇進欲求のために?それなら人が何人死のうが…」

「死のうが関係ねえなあいつは。清州のおっさんを殺したのも自分の昇進の邪魔になったからだろうよ」

 

「人を人と思っていない…」

 

大府は人ですら昇進の道具だ。艦娘も、父や祖父でさえも道具としてしか見ていなかった。必要がなくなれば壊す。すなわち殺す。そうして昔から生きてきた。そうして、逮捕されなければこれからもそうしていったのだろう。

 

「あの大府社長の大捕り物も…」

「ああ、グルだったからな。祖父殺しの証拠隠滅をしてやがったからな。殺しまでやってたんだ。まあ、親子そろって黙秘。ダンマリだってよ」

 

「どうしようもねえクズだな…あいつら…!」

「ほっとけ、んな奴ら。社会的に死んだんだからよ。親父のほうはエベレスト並みにプライドがたけえ。そのうち死ぬだろ」

 

「じ、自殺ですか…?」

「それか、息子が手配した殺し屋でも来るんじゃねえか?ククク!!」

 

ブルリと七原提督が体を震わせる。大府とは直接かかわりがないが、うすら寒い雰囲気をしていたので敬遠していた。

 

それとは真逆で、自分が100発でもぶん殴りたいと思っているのは五ヶ丘提督。敵とみなすか、関わりたくない相手とみなすか。それは人それぞれ。

 

「まあいいんじゃないすか。社会的だろうとこの世から本当に死のうと、巨悪は死んだ。俺たちは俺たちであいつの邪魔をされずに艦娘と一緒に戦う。それでいいんじゃないかな」

 

玲司がだし巻きを食べながらそう言った。それを聞いた刈谷提督が笑う。

 

「そういうこった。お前らはあんなクソのことは気にせずにお前らはお前らで仲良くやっとけ」

 

唐揚げを食べ、白州をグビグビ飲みながらそう言った。

 

「どうあがいても無駄だ。逃げようが地獄の果てまで追いかけてあいつは消す。タダで死ぬとは思ってねえ。だが…勝つのは俺だ。何度でも勝つぜ」

 

「ふふふ、楽しみね~♪」

 

この仕事は自分たちではできない。こればかりは刈谷提督の仕事だろう。あー、クソつまんねえ話はこれで終いだ、と大府の話は切った。

 

………

 

「そういえば、翔鶴ちゃんは元気ですか?三条提督」

「ん?おお、あの時は助かったよ」

 

「あはは、わたしも辛いからぁ…」

「あ?なんかおもしろそうな話してんな。よし、話せ」

 

おもしろそうな話だと刈谷提督が食いついた。それは翔鶴の話。刈谷提督の龍田も関わっている話だ。

 

「あー、その答えを教えたのは七原だったのか。うちの龍田も翔鶴と一緒だからな、助かったぜ」

「え、ええ!?」

 

「うふふ、ありがとうね、すみれちゃん♪」

 

玲司と刈谷提督は深海棲艦の血が反発せずにそのまま残っている。それが艦娘の女性器官を目覚めさせた。

 

「そういえば最近葛城も愛宕も始まったな」

「分かり合えるお友達がいて嬉しいんだけどねぇ…この痛みは戦闘で受ける痛みよりつらいのよねぇ」

 

「ええ…刈谷提督…」

「んだよ。うちは重婚してるっつったろうが」

 

「アッハイ」

 

「ふむ、そんなことになっていたのですね。やはり、刈谷君が目を付けた提督には何かありますね」

 

堀内提督はのんきにそんなことを言った。よく見ると堀内提督の周りにはビール瓶が何本も転がっていた。

 

「いいですか刈谷君。三条君も。女性には真摯に接するのですよ」

 

「なんだいきなり。おい鳳翔、なんでこいつにはビールをたらふく飲ませて俺にはねえんだよ」

「刈谷さんは飲んだら絡むじゃないですか」

 

「だったら今のこいつを見ろよテメエ」

「また鳳翔さんにそんなことを…まったく刈谷君、君はですね。三条君も聞いておいてくださいよ」

 

「ほ、堀内さん!水ッス!飲んでください!!三条君!離れたほうがいい!こうなった堀内さんやべえから!みんなも!解散解散!」

 

「お待ちなさい五ヶ丘君、私の話は終わっていませんよ」

「オレが聞きます!!」

 

「ふむ、では聞いてもらいましょう。刈谷君はですね」

 

ヤバイと直感を感じた玲司と一宮提督によって鳳翔に謝りつつみんなを連れて店を出た。

 

………

 

「はあ…堀内提督は酔うとああなるのですね…」

「明らか夜まで語らうつもりだったよな」

 

「はー、飲んだ食ったわねぇ。天龍ちゃん、ホテル帰りましょっか」

「おーう」

 

「わたしたちも戻ろっか涼風ちゃん」

「あいよー」

 

「さすがに今から飲み直し…と言うわけにもいきませんし、三条君はどうしますか?」

「んー、ちょっと電たちにお土産でも選んで帰るか」

 

「はい提督」

 

そういっていた矢先、玲司のスマホが鳴る。緊急用の電話だ。なんだ、襲撃か?

 

「もしもし?」

『あ、提督さん!!瑞鶴だけど!翔鶴姉が大変なんだよ!!』

 

「翔鶴が!?どうしたんだ!!」

『なんか前にもこんなことあったようなー…とにかく早く帰ってきて!』

 

「わかったすぐ戻る!」

『えーと…急に吐いたりとかして大変なんだってー!』

 

「わかったって!!」

 

本当に焦っているように一宮提督たちには見えた。案の定であるが

 

「悪い!翔鶴の体調がやばいらしいんだ!帰る!」

「提督、翔鶴さんは一体?」

 

「わかんねえ。なんか戻したりしてるらしいんだよ。ったく…最近生理も止まって安定してたのに…とにかく、急いで戻るぞ!」

 

「ふぁーーーー!?」

「びっくりしたぁ!?何よすみれちゃん!」

 

「せ、生理が止まったぁ!?」

 

その時もう玲司はいなかったが、七原提督はあることに思い当たった。

 

「ああ、翔鶴のお話?何か思い当たるの?」

「三条提督、もうちょっと女の子のこと知っておいてほしいなぁ…」

 

「どういうことですか?」

「あのですねぇ…三条提督のところの翔鶴ちゃん…もしかして…赤ちゃんができたんじゃ?」

 

「うっそでしょー?艦娘は妊娠とかしないって話だけど?そもそも、その女の子の日って言うのがあるのも驚きだったけどさ」

 

「わ、私がこれを聞いてもよいものか…」

「聞いておいて損はないぞ提督。私たちもまさかがあるかもしれんからな」

 

「う、うう…」

 

七原提督から衝撃的な話が飛び出した。

 

「でもよー提督。あたいらとその翔鶴さんってなんか違うんだよな?」

「うん。きっと三条提督が関わってるから…」

 

「ってーことはあたいも三条提督と何かしたら赤ちゃん産めるのかー!?提督!あたいも赤ちゃんほしい!」

「だめー!!!!だめだめだめだめだめだめだめ!!!!ぜーったいダメ!!!!!!」

 

「えー!?なんでだよー!!!!」

 

七原提督と涼風が妙なケンカを始めた。日向と一宮提督は日向がにっこりと一宮提督に笑いかけ、一宮提督は真っ赤になっていた。九重提督はやれやれ…と肩をすくめた。天龍は何かわかっていない。アナタはそのままでいてね、と思う九重提督だった。

 

………

 

「おかーさん」

 

………

 

「おとーさん」

 

………

 

「はやくあいたいな」




毎回恒例、刈谷提督たちの食事会でした。それはそうと、翔鶴姉がまたまた大変なことに。
その真相は次回ついに明らかになります(棒読み)

次回こそ、横須賀のドタバタ再び!!

それでは、また。
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