提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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五ヶ丘提督のまたまたドタバタ大騒ぎな回になります。
もしも、五ヶ丘提督が酔っぱらったら…と言うお話です。


第二百八十三話

/???

 

「できたぞい!ていとくをへべれけにさせるおさけじゃ!」

 

「おお!ついにできたのか!?これがありゃ提督をベロンベロンに…クヒヒヒ♪」

 

「くれぐれもあくようしてはいかんのじゃぞー」

 

「だーいじょうぶだって!よーし、さっそく飲ませてみよーっと!」

 

 

鹿屋基地、五ヶ丘提督は着任して間もないながらも大規模作戦に参加。初めてのことだらけだったが、刈谷提督や堀内提督のサポートもあり、輸送から哨戒、さらには漣たちのトラウマになっている重巡棲姫の撃滅や基地航空隊の基地開設の手伝いなど、その作戦は多岐にわたった。

 

そうして論功行賞も終わり、ようやく大規模作戦を完了させた証として、丁勲章、そしてスリガオ海峡の作戦に参加したことにより、玲司ももらった海峡章と言うものをもらった。

 

丁勲章と海峡章を机の上に並べ、それを白雪や漣たちとしげしげと眺めていたのだった。

 

「ほー。ほーーーー!」

「漣ちゃん、落ち着いて?」

 

「いやー、我らがご主人様が前にもらった勲章とは違う特別な勲章をもらったんですぞ?しかもこんなかっちょいい海峡章をもらうなんて聞いてなかったんだもん」

 

「いや、オレも初めて聞いた…これをもらったのは三条君と、基地航空隊で応援した一宮君とオレだけだってよ…」

 

「ほーーーーー!!!」

 

「いやぁ…これ頑張った甲斐あったよなぁ、なあ鬼怒?」

 

「だね!提督にこんないい勲章がもらえたんなら、冥利に尽きるよ!」

 

「オレはこれをみんなに配ってほしいと思うんだよな。頑張ったのは鬼怒をはじめ、みんななわけなんだしよ」

 

「まーたそうやって漣チャンたちをアゲるー。漣たちが頑張れたのはご主人様のおかげ!はいはいやめやめ!このお話はおしまい!」

 

ここは若手提督と同じ考えだった。頑張っているのは艦娘。オレは単に座って指示飛ばしてるだけなんだから、といつも言っている。玲司と同じような発言だ。五ヶ丘提督は玲司がどういっているのかは知らないのだが。

 

それにしても、本当に大変だった。刈谷さんたち、もう何年もこんなことやってんだよな…さすがのオレでも胃に穴が空くんじゃねえか、と思うくらいだった。特に輸送に関しては鬼怒に頼りっぱなしで鬼怒を過労死させるんじゃないかとも思ったくらいだ。そのせいで鬼怒は2週間くらい休ませた。鬼怒自身は3日くらいでもう大丈夫と言っていたのが、いつもの提督の過保護システムである。

 

「オーッス提督!いい勲章もらったんだって?」

 

「隼鷹、おう。いいのをもらって帰ってきたよ」

 

「へえ、いいじゃん!かっこいいじゃん!」

 

「ああ。これをみんなにも見せてあげようと思ってな。まあ、えらく時間がかかっちまったが、これで本当にレイテは完了だ」

 

「おっ、それじゃあさ、もうすぐクリスマスもあんだろ?それをお披露目するためにパーッ!とパーティーしようぜ!」

 

「おお、隼鷹さん!名案だね!

 

「ま、またパーティーですか…?」

「いいじゃねえか!クリスマスもちけえんだしよ!」

 

「そういってまた正月にもパーッといこうよ!とか言わないよね?」

 

「………」

 

「考えてたんかーい!!」

 

「はは、いいじゃねえか漣。確かに、せっかくだからまた盛り上がるか!そのほうがまた艦娘と親睦も深められるだろ」

 

「で、ですがまた司令官のポケットマネーが…」

 

「オレの財布のことなら気にするな。みんなが喜んでくれるなら問題はないよ」

 

「あ、あうう…」

 

白雪は常々提督の財布事情を気にしているわけだ。この間のお疲れ様会でも結構な額を使ったのではないかと思う。さらにはイクやニムの服を買ってあげたりと食費だけではなくもろもろを惜しみなく使う。使えるときに使ってるんだよ、と言うことらしいが、将来赤ちゃんができたときにお金がないなんてことになると…ああ、私もそうすれば大本営で事務員にでもなれば…共働き…司令官と共同作業…うふふ…それも悪くありません…!

 

「わかりました。将来のことは考えましょう。霞さんたちも喜ぶでしょうし…」

 

「だよな!よっし、漣~、昼寝してサボってるであろう加古をたたき起こしてくれ、買い出し行こう」

 

「あいあいさー!おやつは300円までですか!?」

 

「いや、もっと買っていいんだぞ…白雪、明後日にパーティーするぞってみんなに伝えてくれ。んー、那智や隼鷹のために酒も買っておくか…」

 

「お、マジで!いいじゃんいいじゃーん!ま、そんな多くなくてもいいかんな!」

 

(………?)

 

この時白雪は妙な違和感を感じていた。あのお酒大好きな隼鷹さんが遠慮を…?失礼だけど…そこはもっとグイグイ押してくるはずでは…?白雪は訝しんだ。いいえ…でも…ううん…引いてくれたのならいいでしょう…そう思うことにした。

 

しかし、これが白雪の失敗だった、と気づくのはもう少し後の話。隼鷹は白雪たちに気づかれないようにしつつ、ニタァ…と怪しげな笑みを浮かべていた。

 

……

 

「ほー?」

「へ、へえ…」

 

「まあまあ提督ぅ?すごいわ~!こんな素敵な勲章をもらえるだなんて…さすがは私たちの提督ですね♪」

 

「司令官さん!すごいかも!です!ううん!すごい、です!」

 

「へー!これが勲章なんだねー!うちらの提督ってやっぱりすっごーい!」

「もち!」

 

「司令官!すっごーい!」

 

「ふふふ、わ・た・し・の提督ですものね~」

「大井さ、ち、ちが、しれ、司令は…あたし、たちの、司令…」

 

「………」

 

「ひっ!?」

 

「大井…駆逐艦を脅さないの!」

 

食堂に漣と白雪が満を持して、論功行賞から提督が持ち帰ってきた丁勲章と海峡章をみんなにお披露目となった。迅鯨や長鯨も提督が持って帰ってきたという誇らしい勲章を横目に、一生懸命料理を作っている。

 

「ふっ、名実ともに、やはり前の提督とは比較もしようもないな。私や足柄までしっかり起用し、勝利をもたらしてくれたのだからな。甲種勲章と言うものがあるのだろう?ならば、提督にはそれを取ってもらうしかあるまい」

 

「ああ、オレも楽しかったぜ」

「長良も思い切り戦えたよ!自分で考えて…司令官が指示をくれて…これが戦いなんだよね…」

 

みんなそれぞれ思いのたけを語った。何より、操られ、自分の思った通りに動けずに無駄な損害を被ったり、戦えなかった記憶があった。提督の「生きて帰ってこい」と言う言葉も嬉しかったし「よくやったな」とほめてくれたことも嬉しかった。

 

頑張ったな、と抱きしめられた夕雲型の一部を除く艦娘は喜んだし、加賀に至っては「気分が高揚します」と表情こそ変わらなかったものの、目がしいたけのようになっていたとか。

 

「しかし、また祝い事とはな。やりすぎではないのか…なあ、あしが…ら」

 

「はい、唐揚げ特盛ね!ふふん!揚げ物ならこの足柄さんにまかせなさーい!」

「ふふふ、足柄さんがいると助かります♪では、次は…スコッチエッグを揚げていただけますか?」

 

「任せて、迅鯨さん!艦娘も、提督も!胃袋をガッツリつかむわよー!」

「はい!」

 

ああ…と那智は少し頭を抱えた。そうだった…前回も足柄が揚げ物を担当し、提督と艦娘に絶賛されたのだった。ここまで躍起になっているのなら止めようもあるまい…陸奥は大量の揚げ物を見て胸やけを起こしていそうな表情をしている。駆逐艦の連中は目を輝かせているが…正直、私もきつい。どれだけ揚げるのだあいつは…。

 

「勲章もそうだけどさ、提督ってすごいよね!あさあさにきよきよにはやはや、藤波姉まで!夕雲型改二祭りだよね!」

 

秋霜がそういって勲章を大事そうになでながら笑顔で改二のことを言う。そうなのだ、わが基地は夕雲型が勢ぞろいしている。その夕雲型、今までは夕雲、巻雲、風雲、長波だけが改二なったのだが、この作戦中に朝霜に早霜と清霜、藤波と改二になって帰ってくると言う珍事が起きた。

 

「ふふ…司令への、ひとえに…強い思い…絆…ふふ、うふふふ…」

「はやはやこっわーい!」

 

「えへへー、これで司令官にもーっとほめてもらえるよね!」

 

「ふ、ふん、まあ…うん。司令官のおかげ、なのかな、もち!」

 

「へへへーん!あたいだってもっと頑張ってやんよ!しょうがねーから!」

 

謎の改二軍団…と言えばいいのだろうか。夕雲型が強力になり、対潜から輸送に大活躍だった。正直助かったというのが本音だ。

 

「いいなー!うちもばばーんと改二になりたいよー!」

 

「うふふ、大丈夫ですよ。私たち夕雲型に隙はないわ。全員改二になって、提督にもっともーっと!夕雲型に甘えてもらわなきゃ♪」

 

「甘えるってなんだよ夕雲姉…」

 

「し、司令官さんにもっと甘えたいかも…です!」

「高波ぃ?!」

 

「ふ、ふん!私だって…」

「何対抗心燃やしてんだよぉ、霞ぃ」

 

「燃やしてないわよ!私は私よ!!」

「まー霞も司令塔としてがんばったもんなぁ」

 

「当り前よ…前回のような…あんなこと…」

「あー…あれはなぁ…提督がわるいわけじゃねーし…でも、今回のでわかったよなー。提督があんなめちゃくちゃな指示ださねーって」

 

「…そうね」

 

大府にしてやられた作戦。あの時、霞は司令官を疑ったことを悔いていた。そして今回の作戦の指揮で確信した。あの司令官は絶対に信用できると。ふん、見てなさい。これから私もガンガン実績を積んで、長波や夕雲に負けないくらいの強い艦娘になって…私がいないと艦隊が運用できなくなるって泣きつくまでにしてやるんだから…そう霞は誓うのであった。

 

「さあ、料理ができあがりましたよ!どなたか提督を呼んできてください!」

 

「「「はーーーーーい」」」

 

「だあコラ!1人でいいだろうが!!!」

「出遅れて嫉妬はないんじゃないかしら、長波」

 

「霞、お前なぁ!」

「何よ!!」

 

こうして、にぎやかなパーティーが始まるのだった。

 

………

 

「みんなのおかげでこんな最高な勲章がもらえた!みんな、これはオレの勲章じゃない!みんなの勲章だ!」

 

五ヶ丘提督が普段とは違う興奮した様子でみんなに海峡章と丁勲章を見せる。すでにみんなそれを見ているのだが、提督がそれを掲げれば話は別。自分の信頼できる提督が勲章。それも特に「スリガオ海峡戦に参加した者だけがもらえる勲章」、これが白雪たちをはじめ、艦娘を高揚させた。

 

「まあ、この壁に飾っておくからまた見てくれな!それよか乾杯!みんな、今日は楽しもう!」

 

「うおおおお!!」

 

こうしてクリスマスパーティーは始まった。そして、騒ぎは起きるのである。

 

「よっ、提督!提督も飲もうぜ!とーっておきの酒あるからさぁ!」

 

そう言って酒を勧めてきたのは隼鷹。肩を組んできた。片方の手には酒瓶。隼鷹とはたまにガチで飲みあいをするのだが、もちろん那智と同じく、潰そうにも潰せないのが提督である。酔っぱらった提督が見てえ!それだけが動機である。

 

なお、もし酔っぱらって暴れて手が付けられないようになるなんて考えていない。それはそれでおもしれえ、とまで思っている。もしそうなったらこの基地が爆撃でも食らったように穴だらけになりそう、とは思っていたが。

 

「お、なんだ隼鷹。今日も勝負するか?」

「ほう、隼鷹、提督、おもしろそうじゃないか。私も混ぜてもらおう」

 

「いいぜぇ?好きな酒を飲めばいいさ。潰れたら負けってな!あ、提督はこれな!提督は普通の酒じゃ酔わねえからな!」

 

「ん?何だこの酒?『深海殺し』?見たことのない酒だな…まあいい。うん…いい匂いだな」

 

「司令官?飲みすぎないでくださいね」

「白雪、大丈夫だよ。よっし、じゃあいただきます!」

 

コップになみなみと注がれた日本酒…?を飲む。

 

「んっ!?ぷはぁ!これきついな!ウイスキーとかより強いぞ!?」

「うんめーだろー?まま、もっともっと、ニヒヒヒヒ!」

 

「お、おお…(まあ、大丈夫だろ)」

 

こうして提督は隼鷹の罠にも気づかずに、アルコールはきついがおいしいお酒を楽しんだ。そして…。

 

(ん、んー…?なんかふわふわしてきたな…)

 

提督は妙な浮遊感を覚えた。これこそが酔ってきている、と言うことなのだが、酔ったことがない提督にはそれがわからないのであった。

 

「ん?どうした提督。珍しいではないか。酒が止まっているぞ?」

「おお…そうだな。いやしかし、この酒うまいな…どこで作ってるんだろうな、隼鷹」

 

「いやー、適当にリンガから持ってきたやつだからなー(大嘘)」

「そうか。ん、ちょっと水でも飲むか…」

 

「なーに言ってんだよー、逃げんなよー!ほーら!飲まねえならあたしが飲ませてやるってー!ほれ一気一気!」

 

「ガボボ!!おい、じゅん!ガボボボ!」

「ひゃっはー!飲めー!!」

 

「ちょ、隼鷹さん!?」

「はははは!いいじゃないか!こうでもせねば提督は酔わんからな!!」

 

隼鷹のせいで一升瓶の中身が一瞬でなくなった。よい提督は絶対に一気飲みをしてはいけません。するのもダメ、強要するのもダメです。

 

………

 

「ほーら提督ぅ!たっぷり飲んだろー?あ、あれ?」

 

提督は俯いたまま動かない。あれ…これ、やばい?と思うも時すでに遅し。白雪の表情が恐ろしいことになっている。

 

「ご、ご主人様…?ちょっとー隼鷹さん、アルハラですよ!アルハラ!」

「提督、提督!大丈夫?お水持ってくるね!」

 

白雪が司令官!と肩をゆするも動かない。まさか、本当に急性アルコール中毒になったのでは…?と白雪は気が気でなかった。しかし、提督はようやく頭をあげた。そして、白雪たちはその表情の異様さに少したじろいだ。

 

「し、司令官…?」

 

優しい顔…優しすぎる顔。にこーっと笑みを浮かべていた。そんな笑みは見たことがない。何かが…おかしい。

 

「提…督…?」

 

「隼鷹」

 

「は、はい!」

 

「おいで」

 

「は、は?」

 

「おいでおいで」

 

にっこーと笑いながら手招きしておいでと言っている。こ、これは…断るとやばい気がする、と思い、隼鷹は提督に近づいた…次の瞬間。

 

「わひゃああ!?」

 

「「「「「?!!?!??」」」」」

 

鹿屋の艦娘が全員隼鷹の悲鳴に目を向けると…目を見開いた。

 

「じゅーんよー」

「あ、あわわ、て、提督!?何してんだよ!」

 

「んー」

「ひゃう…!ちょ…髪の匂いかぐな…!んぅ!」

 

隼鷹は提督に捕まり、膝の上に抱かれる形でいた。しかも、がっちり抱き着かれているから髪の匂いをかいでいる提督に抵抗すらできない。痛くはないがすごい力で逃れられない。もじもじと身をよじるしかできない。

 

「て、提督!?どうしたんだよぉ!?あたしなんか抱いてもさぁ!?」

 

「いいや?隼鷹は柔らかくていい匂いがするなぁ…んー…」

「ひぃうう!?ちょ、やめぇ!?」

 

「隼鷹、オレだからいいけどな?こんな強いお酒を無理やり飲ませたらダメだろ?いいか、絶対オレ以外にするなよ?」

 

「ひゃ、ひゃい…」

 

「はいだろ?わかったか隼鷹」

 

「は、はい…」

 

「よし、いい子だ。隼鷹はいい子だもんなぁ。よく周りに気が付いて気になることがあったらすぐ気を配る優しくていい子だよな」

 

「はいぃ…」

 

「よしよし、じゃあお酒を飲んでいなさい。んっ」

「んあ!??」

 

隼鷹の頬にキスをして膝からおろした。隼鷹はと言うと首から上を真っ赤にしてそのまま…。

 

 

「う。う~ん…」

 

気を失った。

 

「え、衛生兵!衛生へーい!!!担架担架ー!」

 

「んっんっ…あー、この酒うめえ…ん…霞~。かーすーみー、こっちに来なさい」

 

「は!?」

 

次のターゲットは霞らしい。霞も普段は提督に気が強く、嫌なものは嫌と言う性格なのだが…どういうわけか顔を紅潮させて…ちょっとおさげを整えて…提督に近寄っていく。

 

「で、何!?」

「よいしょー」

 

「ひゃあ!?」

 

捕まった。簡単に捕まり、抱き寄せられ、頭をなでなでされる。

 

「ちょ、何してんのよ!ヘンタイ!憲兵呼ぶわよ!?頭にゃでるにゃあ!?」

 

「んー、かーすーみー」

 

「ぴゃあああ!?」

 

(うおお、周囲を見回したらみんな固唾をのんで見守ってる様子ですね…あ、青葉、これは撮りたいです!ですが…撮ったらやばい気がしますよ…!)

 

「霞と長波は怖い目にあわせたよなぁ…本当にごめんな…オレがふがいないばっかりになぁ…グスッ」

 

「ちょ、な、泣いて…?」

 

「ごめんなぁ…ごめんなぁ…」

 

「ふぁあ!?」

 

思い切り抱きしめられてしまう。とっさになぜか提督をギュウ!と抱きしめてしまう霞であった。

 

「ふ、ふん!あれは大府とか言うクズのせいでしょう?司令官は…今回の作戦で私たちの安全を優先した指揮をしていたじゃない!あんたが泣く必要も謝る必要もないわよ!」

 

「…ほんと?」

 

「か、かわ!!!」

 

「かすみん…いや、かわいいですけども」

 

「うるちゃい!!だ、だから!こ、これからも…ずっと、ずっと私たちの指揮をしなさいよ!」

 

「霞!!!」

「いたっ!?このクズ…!力…つよ!で、でも…あったかい…」

 

「あ、堕ちた」

 

しばらく無言で抱き合って霞はふらふらしながら提督から離れ…頭からポオオオオオ!!!と蒸気を噴き出して倒れ、隼鷹が気を失って運ばれた処置室へと運ばれた。提督はまた「深海殺し」を飲んでいる。

 

「こ、これはやばいですよ…ご主人様の父性が酔ったことで天元突破してますぞ…!隼鷹さんもかすみんも…無自覚にキスされたり抱きしめられたりしたらそりゃあ…堕ちますよネ…」

 

「おい、これやべーんじゃねえのか…?いや、えっちなことには見えないけどさぁ…」

 

「加古さん、あのご主人様止められます?」

「無理」

 

「即答かーい!」

 

「てーとく、どうしたの?てーとく、お酒の飲みすぎなの?」

「イク…イクウウウウ!!!」

 

「ひゃっ!?」

 

ああ、次のターゲットはイクさんですか…まあ、イクさんはなんか…もうお着換えさせたりとかお風呂一緒に入ってたりとか…いやまあ、もうなんてーかただれてますよねぇ…と思う漣。でもそれ以上のことはないのだ。なぜならご主人様と入ってもエッチな気分にならない。ふつーに裸を見られようが、体を洗うために触られようが、一切そんな気分にはならない。

 

ではなぜ今、隼鷹や霞がリタイアしたのか。それは提督からキスをしたり抱き着いたりすることがないからだ。高波が勇気を出して頬にちゅーしたりだとか、イクが突撃兵のごとく提督に突撃して抱き着いたりはするのだが。つまりは艦娘からアクションを起こし「よし、おいで」となるのだが、今回は提督からおいで、と言ってその行為に走るのだ。予期せぬ出来事に霞たちは脳が完全思考停止し、オーバーヒートしたのだった。

 

「イクゥ…お前やニムは本当に…いい子だな…人間にろくなことされてねえのに…オレを信じてくれて…笑顔を見せてくれるんだもんな…」

 

「てーとく…?だって、てーとくはイクたちを助けてくれたの。あったかいお風呂にあったかいご飯、あったかいおふとん…てーとくのあったかいおてて…全部全部イクたちの宝物なの!そんな宝物をくれたてーとくを嫌いになんてならないのね!てーとく…大好きなの…ずっと一緒にいてほしいの」

 

「ああ、ああ!オレもイク達と別れる気はないからな!イク、みんなずっと一緒だぞ…!」

 

「なの!!」

 

そうしてお互いが頬にキスをしてイクはスキップしながらニム達のところへ戻っていった。イクずるいー!なんて言われていたが、えっへへ!と笑ってイクはごまかしていた。でも、青葉だけは気づいた。体全体が桜色に上気して、目が落ち着きがなくてきっとオロオロしているんだろうなと。かわいらしいですねぇ…さて、次の犠牲者は誰でしょうかねぇ…。

 

「加賀!加賀はいるか!」

 

酒をまた飲みながら今度はなんと…大人な艦娘をご指名だ。誰かの名前を呼ぶたび、秋霜や朝霜たちがなんで呼んでくれないんだとブーブー言っている。でもきっと、呼ばれたらパニックになるのだ。

 

「提督?飲みすぎではない?目が座っている…きゃっ」

 

「よーし捕まえたぞー。んー、加賀いい子いい子」

「提督…私もずっとついていきますよ」

 

「即落ち2コマかーい!!!」

「漣、落ち着け!」

 

「加賀…お前にはひどいことを言ってしまったな。お前の意見も聞かずに女性の提督のところに行かせようとしたこと…ごめんな…」

 

さっきから泣いては笑顔になってを繰り返して感情がぶっ壊れている。お酒のせいで感情が制御できていない。提督の貴重な涙のシーン。誰もが見入るし、その言葉を一言一句逃さないようにしている。

 

「いえ…私が提督を否定したことが原因ですので」

「いいや!オレが悪いんだ!加賀の気持ちもわからないで!」

 

「もう…気にしなくていいわ。今はこうして提督のお側にいられている。日本にも連れてきてくれた。私を大事にしてくれる。それだけで十分です」

 

「なあ、加賀さんの顔がとんでもなく真っ赤になってね?」

「朝霜さん…女性の変化を口に出してはいけませんよ?」

 

「夕雲姉…あーい」

 

全身イクの桜色とは比にならないくらい真っ赤である。表情こそ崩れていないが、内心バクバクで心臓が飛び出そうなのである。

 

「ん…加賀の体…熱いな…」

「ちょっと?」

 

「陸奥さん!大丈夫ですって!」

 

「…排熱が苦手なものですから…」

 

「加賀…お前も大切なオレの艦隊の一員だ…水に流してくれなんて都合のいいことは言わねえ…ついてきて…くれるか?」

 

「もちろんです。提督…抱きしめてもいいですか?」

「加賀?」

 

「陸奥さんストーップ!!」

「ねえ漣ちゃん!白雪ちゃんがやばいってー!」

 

「…………!」

「わー!!ダーク!!!」

 

「………ん…提督も…暖かいわ」

「そうか…ん」

 

「!??!??!」

 

また頬にキスをする提督。唇がワナワナしているがつとめて冷静にする加賀。

 

「提督。これからも、よろしくお願いします」

「ああ。こちらこそな!」

 

そうして加賀は提督から離れたわけだが…足取りがよろよろしている。そして…

 

 

ボーーーーーーン!!!!

 

 

水蒸気が加賀を白く包みこみ、そして加賀は「やりました」とだけ言って倒れ、隼鷹たちのところへ担架で運ばれた。陸奥はただただ頭を抱えるだけだったし、足柄もなぜかつられて倒れ、処置室で休むことになり、那智も頭を抱えることになった。

 

「そ、そろそろお開きにしましょうか!!もう2200です!!い、いつの間にか夜も遅いですねぇ!!」

 

迅鯨も顔を真っ赤にして倒れそうになりながらお開きにしようと提案した。このままでは艦娘の身がもたない。そう判断したうえでのことだった。

 

「んー?酒なくなったなー。よーし、白雪!おいで。おいでおいで」

 

「ふぁっ!?」

 

「しーらーゆーきー」

 

「わ。わた!わたひは大丈夫れふ!!わらひはらいりょうふれふから!」

 

「ゆっきー呂律が回ってない!」

 

「ん、なんだー、よーし、じゃあオレから行っちゃおうかなー」

「!?!???!!!??」

 

指名されてパニックになり、腰が抜けて動けなかった白雪に提督、襲来。そして素早く抱きかかえられ、頭をなでられ、逃げられなくなってしまった。

 

「はわ、はわわわ…」

 

「白雪ー…オレの白雪~」

 

「ふぁあああ?!??」

 

突然の爆弾発言に加賀と同じくらい白雪が真っ赤になっていた。

 

「いつも頑張ってるな。毎日事務仕事に艦隊の運用の補佐に…白雪がいなけりゃオレはきっと続けてられねえよ」

 

「えええええ?!?」

 

「くぅ、それに関しては何も言えねえ…」

「まあ、白雪がいねーとマジでなぁ…」

 

「うんうん、白雪ちゃんのおかげだよね!」

 

そう語るのは初期艦ズ。実際、白雪がいなければ事務作業は提督だけでは不可能である。白雪がいてこその艦隊運用。艦隊指揮の補佐もする。だからこそ、初期艦ズの中でリーダーなのだ。

 

「そ、そんなことはありません…!司令官は…司令官だからこそ…白雪たちは…」

 

「白雪たちがいてくれなければオレは鹿屋にも来れてなかったろうな…リンガであたふたして刈谷さんに大目玉を食らうとこだったよ。サポートしてくれるからここまでやってこれた」

 

「あ、あうう…」

 

「ありがとうな白雪…お前のおかげだ。いつもありがとう。こんな月並みなことしか言えねえけどな…」

 

「あ、ああ…司令官…白雪は…白雪は…」

 

「改二にもなったな。すげえよ。戦力大幅アップだ」

 

「そ、そんな…夕雲さんたちに比べれば…」

「誰かと比較すんなよ。白雪は白雪なんだ。白雪の戦力が大幅に見直された。すごいことだよ…」

 

白雪の改二の情報は今のところ五ヶ丘提督のところの白雪しかない。未知数の改二艦。それを言えば、早霜もそうである。清霜はちらほらと改二の報告があがっている。

 

「司令官…待って…待ってください…これ以上は…白雪は…」

 

「これからもオレの側にいてくれるか?」

「………司令官のお側以外なんて考えられません…」

 

「そうか…!ありがとう…ありがとうな…白雪」

 

そう言ってギュッとさらに抱きしめられた。はわ!?と言う声と共に、ポオオオオオ!!!!と汽笛のような音が聞こえると同時に黒煙が白雪からあがった。

 

「わーーーー!!!ご主人様ストップストップ!!!ゆっきーが轟沈しますううう!!」

「担架持ってこーーい!!!白雪はドックだーーー!!!」

 

「白雪ちゃんしっかりしてぇ!!」

 

「白雪は…しらゆ…き…は…」

 

白雪、退場。朝までドック入りコースとなった。

 

「提督ぅ?もう、飲みすぎですよ?提督は私たちの宝オブ宝…ですから、もうお休みに…ひゃあ!!」

 

「夕雲…無理してないか?お前はいつも甘えてくれていいと言うんだが…お前からオレに甘えることはないからな…ほら、オレが甘えさせてあげよう」

 

「ふああ…み、耳はだめぇ!!!」

「はわわわわ!!夕雲姉さんがぁ!!!」

 

「巻雲姉!提督から夕雲姉を引きはがして!夕雲姉も轟沈すんぞ!!!」

 

「そ、そうはいっても涼波!?これ、巻雲たちも捕まりそうですよぉ!?」

「ち、ちぃ、提督やべえよぉ!」

 

「夕雲姉!おい提督!何夕雲姉にセクハラしてんだ!きゃあ!」

 

「長波も甘えん坊だもんなぁ。ほーら、夕雲と一緒に膝枕だ!」

「あ、あわわわわ」

 

「提督ぅ?私も甘えたいですぅ♡」

「大井さん!ややこしくなるからやめてくれーーーー!!!」

 

夕雲と長波は仲良く大破。白雪と同じく朝までドック入りであった。大井はその後、ものすごい猫撫で声で膝枕してもらい、匂いを思い切り堪能している様を木曾にドン引きされた。

 

「オレの姉貴がやばすぎんだけど…」

「どんまい、木曾ちゃん…」

 

「長良、助けてくれ」

「無理!」

 

2330ごろ、ようやく提督が撃沈。眠りについた。後始末に提督を自分の部屋に連れていくために陸奥と那智が「なんで私たちが…」とため息を吐きながら運んだ。

 

「んー…」

「……気持ちよさそうに寝おって…私たちの気も知らずに…」

 

「やっと眠ってくれてホッとしたわ…これ以上は正直、大井が提督を襲いそうだったもの…」

「あれは駆逐艦にとって毒にしかならん…まったくひどい目にあった」

 

「ええ…まあ、これで大丈夫でしょ…ってきゃっ!?」

「陸奥!?」

 

「んー…」

「ちょ、提督!離しなさい!離してぇ!」

 

「んにゃ…」

「お、襲う気はないらしいが…がっちり…陸奥、貴様…抱き枕と思われているぞ…」

 

「は、は!?ちょっと那智、助けて!いやよ!あらぬ誤解を受けるじゃないの!ちょ!提督!首!首吸わないで!ちょ、ひゃん!?」

 

「なんという力で抱いておるのだ…これで陸奥が痛かったり苦しくないのが不思議なのだが…ぐっ!ぬっ!!!と、取れん…」

 

「な、那智、もっと力を入れて…!」

「艤装も持っておらんのにこれ以上入るか!」

 

「も、もしかしてこのまま朝まで…!?ひゃっ!首…くすぐった…んぁぁ…」

「何と言う声を出すのだ貴様は!?」

 

「そんなこと言ったって…!!!」

「くっ、陸奥よ…骨は拾ってやるからな…」

 

「ちょ、那智!見捨てる気!?嫌よ!お願い助けて!」

「私の力では…すまんな…」

 

「裏切者ー!!!」

「むにゃ…」

 

結局、加古や鬼怒、青葉も駆り出されて0300にようやく陸奥は解放された。なお、中破であった。

 

………

 

気を失って朝までドックで浮いて眠っていた白雪だったが、執務室で般若のごとき形相で隼鷹を正座させていた。

 

「妖精さんからすべてお話はお伺いしました。司令官に飲ませたあのお酒…妖精さんが作った深海棲艦ですら秒で酔っぱらう人間が飲んでいいお酒ではありませんでした。おかげで今朝から艦娘の皆さん全員の様子がおかしいのです。お酒と言えば隼鷹さん…ですよね?」

 

「い、いや、あたしは…」

 

「知らぬ、存ぜぬは通用しません。隼鷹さんが金平糖を渡して手に入れたとの情報はすでに入手済みです」

「げっ!?」

 

「なぁにぃ!?やっちまったなぁ!?艦娘は黙って!?」

「お説教!」

 

「漣さん、加古さん?」

「「あ、はい」」

 

提督は二日酔い、艦娘も夕雲や大井を含め、大勢の様子がおかしいので本日は休業となった。それを機に隼鷹は0800から1700まで飲まず食わずでの正座となった。

 

………

 

「うー…頭痛え…二日酔いなんざ初めてだけど…こいつはきついな…」

 

食堂へフラフラとやってきた提督であったが提督を見た瞬間ピシリと一部の艦娘がフリーズし、そして熱を帯びた目で見つめる始末。

 

「おー、おはよう陸奥…オレ、昨日のこと全然覚えてねえんだけど…何かやらかしたか…?」

「ふぇっ!?い、いえ!?何もないわ!?ええ、何もなかったわ!」

 

「そうか…おお迅鯨…シジミ汁か…すまねえ…助かる…」

(わ、私まであんなこと…全員のことを事細かく説明できるわけないでしょう!?)

 

「あ、あう…提督…あ、甘え…あまえても…」

「落ち着け夕雲姉!」

 

「………」

「わー!加賀さんがまた蒸気噴いたぞーー!?」

 

「さすが、さすさすさすさすがに気分がこうようようよう」

 

五ヶ丘提督はと言うと「あー…染みる…」と言いながら周りのことにはまったく気づかずにのんきにシジミ汁を飲んでいた。

 

これ以降、隼鷹はお酒を用意する係から永久に外されることとなった。

 

「ひー!許してくれよぉ!!」




五ヶ丘提督率いる鹿屋基地はこれくらいドタバタしているほうが楽しく書けていいですね。
もっと掘り下げたかったですが、長くなっても同じようにしかなりませんのでこれくらいで。

次回は…シリアスにしようかまだコメディで引っ張るか考え中です。

次回をお待ちいただけますと幸いです。

それでは、また。
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