提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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ほのぼの回第二弾「商店街に衝撃走る」

はたして商店街で何が起こるのでしょうか?


第二十九話

玲司が着任してちょうど一ヶ月。横須賀鎮守府は新しい一年を迎えた。とは言え、今まではそのようなこともわからない。けれど今年は提督も気持ちも。心も全てが入れ替わった一年の始まりとなった。

 

「今年は一年、仲間は増えれど誰一人いなくならないよう全力で努めていくから。よろしく。みんな全員でまた新しい一年を迎えることができるようにがんばろうな」

 

食堂に集まった全員と一人ずつ握手を交わし、共に戦い生き抜いていけるようにエールを送る。おどおどとしていた吹雪も、ここでは攻撃されたり暴言を吐かれたりと言うことがないとわかったためか、落ち着いて雪風や村雨達と雑談をしたり、遊んだりしている。しかし、着の身着のままで横須賀に連れてこられたため、寝間着や下着が借りものだったりと不便なことが多そうなのが気になった。

扶桑や翔鶴、瑞鶴。それから鳥海もまだ商店街に連れて行っていない。それならば、と玲司は思いつく。

 

「吹雪。お前の下着や寝間着を買いに行こうと思う。借り物だと気を遣うだろ」

「司令官。はい、汚したりしないか心配で…。下着はその…新品を頂いていますがやっぱりサイズが合わなくて…」

 

「あ、悪い…変なこと聞いちまったな」

「い、いえ!大丈夫です!でも、やっぱりぴったりしたのがほしい…です」

 

「よしわかった。じゃあ、扶桑たちも連れて一緒に行くとしますか。あー、うーんと。三が日はやってないだろうから…。正月明けにな」

「はい!よろしくお願いします!」

 

何やら嬉しそうな吹雪。今までにない新しいことに期待が隠せないでいるらしい。頭を撫でてやるととても嬉しそうにしていた。初日に頭を撫でてもらってからと言うもの、頭を撫でてもらうととても安心するのだそうだ。真面目で食堂の皿並べや材料運びなどをここ数日手伝い、そのたびに頭を撫でてもらってはキラキラと輝いているような気がする。

 

「司令官、楽しみにしていますね!」

 

そういって駆逐艦寮に戻り、雪風や皐月たちと遊ぶらしい。もう少し正月らしいことを何かしてやれればと思ったが、着任から一ヶ月と言うこと、濃密とも言えるくらいの事態が多く発生していたために何かと準備不足に陥った。名取達を連れて行ったときに買い出しもできたが、あまりにも量が多くなりそうだったので断念。次回の正月は、もうちょっと何かをしてやりたいと思う玲司だった。

 

商店街に誘おうとしているのは吹雪、扶桑、翔鶴、瑞鶴、そして鳥海。まだこの5人は行っていない。もっと早くに全員済ませてあげたかったのだが…。

 

/3日後

 

5人に話をつけて昼食もまた「ルーチェ」でとろうと約束した玲司。鎮守府の外に出るに当たっては、緊張する翔鶴と鳥海。楽しみでしょうがない瑞鶴と吹雪。マイペースにボーっと海を眺める扶桑。

 

「もう最上達から聞いてたから楽しみでしょうがなかったんだよね!楽しみだね、翔鶴姉!」

「え、ええ…。でも、ちょっと緊張するわね…」

 

「摩耶は楽しいと言っていたけれど…、緊張するわね…大勢の人と交流するだなんて…」

「きっと大丈夫ですよ…みなさん、悪意はないと仰っていましたし…」

「わあ、楽しそうですね!」

 

それぞれ異なる思いで商店街へと向かう。やがて車はいつもの駐車場に停まり、助手席と後部座席のドアが開かれる。

助手席から吹雪。後部座席からは翔鶴達。その瞬間、商店街から大きなどよめきがあがった…。

 

……

 

「さーて年も明けたしまた今年も頑張るかな!なぁ、徳ちゃん!」

「おうよ。今年も一年またよろしく頼むよ、源ちゃん!」

 

八百屋の主人徳ちゃんこと徳三(とくぞう)と魚屋の主人源(げん)が新年早々元気に店頭に顔を出して雑談をしていた。ここに肉屋の茂(しげ)が加わりさらにやかましくなる。

 

「今日はよう、玲ちゃん来るかな?」

「年明けたんだし、顔くらい見せに来てほしいよなぁ」

「そうそう。できれば摩耶ちゃん連れてきてほしいよなぁ!」

 

「なんだよ徳ちゃん。徳ちゃんは摩耶ちゃん推しかい?何言ってんだよ。摩耶ちゃんもいいけどよぉ、俺は五十鈴ちゃんだね。あの気の強そうなところがいいんだよなぁ」

「甘えなぁ徳ちゃんも茂ちゃんもよ!やっぱりおしとやかな神通ちゃんで決まりだろ!あれくらいおしとやかな子とデートしてえなぁ!」

 

「お、噂をすりゃありゃ玲ちゃんの車じゃねえか?」

「来た来た!さあ来い、摩耶ちゃん!」

「いいや、五十鈴ちゃんだ!」

 

あまりに下らない男3人の会話にため息をついていた肉屋の女将竹美(たけみ)。誰でもいいから玲司と、そして艦娘の元気な表情が見たいと思っていたところだった。

 

「まったくやだねぇ男どもは…。みんなかわいいんだから贔屓にしちゃだめだっての」

 

そう言って竹美に話しかけてくる八百屋の女将、梅。玲司の車が来たと言うこともあって店から出てきたようだ。

 

車を停めて助手席が開いて降りてくる小柄な女の子。これまた見たことない艦娘だ。それにしても素朴でかわいらしい顔をしている…。何と言うか…田舎から出てきた少女と言うか。

 

「あらま、かわいい子だよぉ梅ちゃん」

「うんうん。何かこう、頭を撫でたくなるねぇ」

 

そして次に後部座席のドアが開く。そしてまず降りてきた女性に男たちが口をぽかーんと開けて固まった。お腹周りが見え、胸元もややきわどい。そして極端に短いスカート。黒く長い髪に飾り気のない眼鏡の女性。眼鏡美人。その美しい顔にまず徳三が「いい…」と謎の言葉を漏らす。

 

次は活発そうな両方のおさげがかわいい子。それでも顔は十分に整っており、やや気の強そうな感じを受ける。その子を見て茂が「うっ」と言いながら左胸を押さえる。

 

さらに何とも美しい銀色の髪のおしとやかな美人が現れた。美しくたなびき、太陽の光に眩しく照らされる銀髪。その髪を上品に掻き分け、空を仰ぐ女性。その女性に「女神だ…」と呟く源。

 

最後に現れたのがどれをとっても美しい、という言葉でしか表現できないような和服の女性。長く美しい黒髪。吸い込まれそうなほどきれいな紅い瞳。最上級の美人が降りて来て、男たち3人はうおおおおお!と雄たけびを上げた。

 

「あんたらいい加減にしな!!」

「何を見惚れてんだいこの馬鹿男ども!!」

 

「な、なんだ。どうしたんだよ竹おばちゃんも梅おばちゃんも」

「ああ、玲司君。あけましておめでとう。いやね、この馬鹿どもが艦娘ちゃん達見て興奮してんだよ。まったくバカバカしい」

 

「そ、そうなのか。おめでとう竹おばさん。今年もよろしく梅おばさんも」

「はい、よろしくね。あらぁ、今回は随分と美人ぞろいねぇ。あたしはこの子が気に入ったんだけどさ」

 

そういって少女の頭を優しく撫でる梅。その表情はとてもご満悦のようだ。

 

「は、初めまして。吹雪と申します!」

「あら、いい名前だねぇ。いやぁ、かわいいねぇ。あたしゃ梅だよ」

 

「いつも艦娘と提督がお世話になっております。扶桑と申します。どうぞよろしくお願いいたします」

「あらまあ見た目通りおしとやかな子だねぇ。私は竹。よろしくお願いね。ううん、あなたほんとに美人ねぇ。私の若いころそっくりだわ」

 

「はい?」

「何か言ったかい?」

「いえ…何もございません」

 

「私は瑞鶴って言います!よろしくお願いします!」

「翔鶴と申します…。いつも提督がお世話になっております」

 

「可憐だ…」

「お黙り」

「はい…」

 

「私は鳥海と申します…。どうぞよろしくお願いします」

 

「初めまして鳥海さん。私が魚屋の店主をしております源と申します。魚介のことでしたら私めにお任せください」

「は、はあ…ありがとう、ございます?」

 

三者三様の様相を見せる男たち。その行動に女将たちは白い目を向けている。そうこうしていると買い物に来ていた通りがかりの人も、扶桑たち美人が集まっているために立ち止まりざわめきだす。

 

「わあ、艦娘だって。全然怖くないじゃんね」

「うっわーすっげえ美人!あんな彼女ほしいなぁ」

 

「かんむしゅー。きれー」

 

小さな女の子が手を振っていたので吹雪が振り返すとにぱっと笑った。その顔に吹雪もにこっと微笑み返す。商店街の一角がまさかの大盛況。衝撃的な美人達の集まりに老若男女問わず集まってくる。

 

「うお、何だこれ…」

「最近近所の人たちに話題になってんのさ。艦娘が来る商店街ってな。玲ちゃんが摩耶ちゃんや霰ちゃん連れてきたろ?じいさんばあさんが霰ちゃんを座敷わらしだって言いだして拝みだしたりとかさ、少し前のことでみんな気にしてんだとよ」

 

「こう言っちゃなんだけどよ。玲ちゃんや艦娘の子たちのおかげで商店街、ちょっと活気が戻ってきたって言うか。ありがたいよ。ほんの数日の話だからまだあんまわかんないけどさ。でも確かに人が増えた気はするよ」

 

「中にはやっぱり、艦娘は暴力装置だ。平和の妨げだなんて言う奴もいるけど。あたし達はそうじゃないんだよね。あたしから見ればほんとにかわいい女の子だねぇ、愛想もみんないいし、挨拶はしっかりしてるし。人間より素直だよ。いい子すぎて脆い。そんな気がするよ。あんたがしっかり守っておやり。それからあんたが最初に連れてきた子達。また連れておいで。冷たくしちゃったからね…」

 

この商店街の人たちは艦娘に好意的だった。悪く言う人はいないし、優しく歓迎してくれる。かつて砲を向けられたことも、人間が悪いと言うことで艦娘を悪くは言わなかった。だからこそ、北上達を邪険にしてしまったことが悔やまれていた。どうも提督と言うものは横柄な態度の者が多く、辟易していたところに安久野であった。新しいのがきても不安になるのは仕方のないことだ。

それでも艦娘に罪はないと考えている街の人々にとって、最初の子達への態度は彼らをひどく後悔させた。

 

「近々連れてくるよ。別に北上は気にしてないだろうけどさ」

「それでも一言謝りたいじゃないかい」

 

「わかったよ。必ず連れてくる」

「頼むよ。ああ、その時に電ちゃん連れてきてくんない?あの子ほんとかわいくてさあ」

 

 

駆逐艦が主婦には人気のようだ。曰く、娘が大きくなったらこうなってほしい。娘ができた気分だ。かわいい。次は頭を撫でたいなど人気は高い。反対に摩耶や五十鈴、名取などは男性から人気だ。

 

そんなことを言っていると一人の女性が人込みをかきわけてやってきた。そして玲司の前に立つ。

 

「頼みがある。あの黒髪の眼鏡の子ともう一人の髪の黒い子、私に貸しておくれ。振袖の着付けの練習台がいなくて困ってんだ…なんなら全員貸してくれ。代わりにあの子たちの下着や服。お代はいらないから」

 

「え、ええ?だそうだけどどうする?」

「提督がよろしいのであれば…お困りの様子ですし…」

 

「振袖って何ですか?私着てみたいです!」

「私も気になる!ね、一緒に着てみようよ、翔鶴姉も!」

「私も構いません。司令官さんにお任せします」

 

「だそうだよ。俺は扶桑たちがいいなら構わないよ」

「よっしゃ!ありがと!ついてきて!」

 

そう言うと扶桑と翔鶴の手を掴み、強引に連れ去っていくかのように店へと消えていく。瑞鶴や鳥海、吹雪も後を追う。

 

「やれやれ、相変わらずだねぇ松は…まあ、悪くは扱わないだろうから待ってればいいよ。あれでもプロだかんね」

「そうそう。えらい別嬪になって出てくるさね」

 

一体何が起こるのかわからない玲司は、扶桑たちが出てくるのを待つしかなかった。

 

「松子はねぇ、有名な会社でデザイナーをやってたんだけど、突然やめてきたんだよ。都会でやりゃいいのに都会はつまらないって、こんな辺鄙なとこで店開いて…。20年前に来てからずっとここで女手一つで店やって。書斎にゃ最新のファッション雑誌がこれでもかって置いてあるくらい勉強してるよ。普段はその辺の女子高生や主婦つかまえては着せ替えやってるだけなのにねぇ」

 

まあ、おもしろい子だよと笑っていた。そんなすごい人が着付けかと思うと玲司の期待も高まる。

 

……

 

竹美や梅と話をしつつ待つことしばらく。松子がものすごい得意げな顔ででてきた。竹美たちに親指を立てながら近づいてくる。

 

「アメージング…最高だよ!玲司君。あんたは最高にアメージングな子を連れてきてくれたよ。あたしゃもう最高にいい仕事ができたね。これなら成人式もばっちりだ。さあ、心して見な道行く野郎ども!見惚れて彼女に振られても知らないからね!!!」

 

そう言って手を上から振り下ろすと店の中から現れた扶桑たち。赤や白。ターコイズグリーンにブルー。黒のそれぞれ振袖を着た美女が5人現れた。その姿に茂や徳三、源を含めた何事かと歩みを止めた男たちのうおおおおと言うどよめきが沸き起こった。見たこともないような美人とかわいい少女が5人、これまた美しい振袖をまとっていたとなると無理もない。

 

「司令官!どうですか?私、もうかわいくってすごく嬉しいです!」

 

吹雪がくるくるとその場で回転して全身を披露する。その顔は満面の笑みで心底嬉しそうだった。

 

「よく似合ってる。かわいいぞ吹雪」

「わあ、司令官!ありがとうございます!」

 

黒の生地に雪の結晶があちこちにちりばめられた振袖。雪は吹雪のイメージに文字通りぴったりだった。梅が吹雪のはしゃぎようにメロメロになっている。周りの吹雪を見る目も温かい。

 

「司令官さん…どうでしょうか。似合っていますか…?」

 

鳥海がもじもじとしながら玲司に話しかける。緑に色とりどりの牡丹が咲き乱れている。髪はきれいに纏められ、桜をあしらった金のかんざしが光る。普段露にならない白い細いうなじが見え隠れし、恥ずかしがるも色気はすさまじい。その姿に徳三が感動して涙を流していた。竹美に蹴りを入れられている。

 

「きれいだな。髪を上げるのも新鮮でいいな」

「やだ…やめてください…恥ずかしい…」

 

眼鏡をくいくいあげながら恥ずかしがっている。けれど少しはにかんでいるところがかわいらしかった。

 

扶桑は白地に梅や牡丹、桜が咲き乱れたかなり派手な振袖だ。これでもかと言うくらいの咲き乱れた花により、扶桑の美しさがより引き立てられている。長い髪も編み込みを用いてうまくまとめられ、椿のかんざしで留められている。白い雪のような肌と紅い瞳。その美しさは女性も引き込まれるほどだった。

 

「うわあ、あの人すっごい美人…いいなぁ…きれい…」

 

手に持った赤い傘。ルーチェのマスターがカメラで真剣に扶桑を写す。傘を両手で持ち、差す。そしてその憂いを帯びた表情は誰も彼もを虜にする。あんぐり口を開けて見惚れる若い男。あらぁと言いながら笑う主婦。お姉ちゃんきれいだねーと言う子供。名取が絶対に安久野に渡さなかった美しき花だった。

 

玲司はそれよりも気になる存在なのが…真っ赤な生地に桜と鶴があしらわれた振袖を着た翔鶴だった。赤に翔鶴の美しい銀色の髪がさらに映えた。翔鶴は鳥海や扶桑のように髪はまとめておらず、そのままだった。それがまた飾らない美しさで、玲司はその美しさに惹かれていた。それと同時に先日右手の甲にキスをされたことを思い出し、余計に固まっていた。

 

「提督さん!瑞鶴の振袖どうかな?あー…翔鶴姉に見惚れてるなー?にしし!って、提督さん?提督さん!!」

「あ、あ?お、おう…瑞鶴。きれいだな。どうした?」

 

瑞鶴は青に翔鶴と同じく鶴と桜をあしらった柄。瑞鶴も髪はツインテールのままだ。飾らない性格だからこそだとも思えた。これまた瑞鶴も女性に人気が出るようになる。飾らないかわいらしい性格が女性を惹きつける。特に女子高生に人気になる。

 

「私の話聞いてないじゃん!翔鶴姉に見惚れてばっかりで!ふてくされるぞー!」

「す、すまん瑞鶴…。うんうん、いいじゃないか。ちゃんと着こなせるんだな、瑞鶴も」

 

「何をー!?ひどいひどい!翔鶴姉!提督さんがいじめる!」

「もう、そんなに怒らないの。ちゃんと見てくれてるじゃない」

 

「違うの!めっちゃ上の空じゃん!ボーっと翔鶴姉見てさ!あーあ、どうぞ仲良くね!」

 

ズンズンと振袖で歩いていい歩き方をせずに扶桑や吹雪と話をしに行った。翔鶴は見逃さなかった。自分に対してウインクをして去っていくところを。気を利かしてくれたのか、と翔鶴は思った。

 

「どう、でしょうか…玲司さん。私の振袖姿…」

「あ、ああ…。きれいだよ…本当に」

 

「ふふっ…よかった。こっちに行くと神社があるようですよ。一緒に行きませんか?」

「いいぜ。い、行こっか」

 

そう言うと玲司は右手を翔鶴に差し出す。翔鶴は嬉しそうにその手を取り歩き出す。転ばないように無意識に手を差し出した玲司だったが、いざ手を繋ぐととても恥ずかしかった。雪風や文月と手を繋ぐのとは訳が違った。柔らかくすべすべで…ぎゅっと強く翔鶴も手を握る。

 

「転んでしまうと大切な振袖を汚してしまうので…転ばないように…」

 

そういう翔鶴の顔は真っ赤だ。それでも手は離さない。カラコロと鳴る下駄。玲司もどうしていいかわからず無言だ。

 

「ふむ、実に素晴らしい。理想のカップルですなぁ。これは広報に載せれば良い写真になりますぞ」

 

マスターが初々しい感じで歩く玲司と翔鶴を写真に納めていく。その姿を見た街の人たちも微笑ましく見守っていた。

 

「あらあら…うふふ。翔鶴さん、嬉しそうですね…」

「司令官と翔鶴さん、本当にお似合いですね!」

 

(翔鶴姉…よかったね。提督さんが来てくれて本当によかった。幸せそうだなぁ)

 

この後、しこたま写真を撮られた玲司と翔鶴。それから扶桑たち。約束通り着替え終えた後、あれこれと服や下着を頂いた。松子は鳥海をいたく気に入り、摩耶の妹だと知るとド派手な下着を摩耶に持ち帰らせようとする。

 

「サイズはこの間見たからわかってんだ。お願いだよ鳥海ちゃん。これを摩耶ちゃんに渡して!」

「ふぇええ!?何ですかこの下着!?」

 

「このバカタレ!何てもん持ち帰らせようとしてんだい!」

「あいてえ!これを着た摩耶ちゃんを見るのがあたしの桃源郷なんだ!竹!邪魔だあ!どけえええ!!」

「やめないかい!!」

 

「このお魚のパジャマかわいいなぁ」

「あ、吹雪ちゃん。瑞鶴とお揃いにしよっか」

「はい!嬉しいです!」

 

「ならこれを瑞鶴ちゃんに捧ぐう!」

「ちょ、松子おばさん何考えてんの!?す、すけ…すけ…爆撃されたいの!?」

「松うううう!こっち来な!今日はもう勘弁ならないよ!」

 

相変わらずのドタバタな下着選びとなっていた。振袖であまりに興奮した松子を取り押さえる竹美と梅。素早く当面の夕飯の材料も買っていくと、今度は実に晴れやかな顔をした肉屋、八百屋、魚屋の主人達に大量のおまけをもらって帰ることになった。

 

二人が手をつないで並んで撮ってもらった写真は、マスターに頼み込み手に入れた翔鶴。机の引き出しに仕舞い、大切に保管することを決めた。ふとした拍子に過去を思い出したとき、気分を落ち着かせるために大切に。翔鶴の心の中では玲司の存在が大きくなりつつあった。幸せそうに写真を眺める姿はまるで乙女だと瑞鶴は笑っていた。

 

ちなみに扶桑達の写真を載せた商店街の広報は爆発的な人気となり、艦娘と触れ合える数少ない名所として商店街に活気が戻ってきたと言う。




日常パートって難しい(二度目)

商店街に舞い降りた女神たちと言うことで商店街でのお話はいったんお終いです。

次回はほのぼの回第三弾「駆逐艦の恩返し」です。何をするのかお待ちいただけましたら嬉しいです。

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