相変わらずキャラ崩壊気味です
年が明け、数日。横須賀鎮守府では通常の運営を再開し、水雷戦隊による遠征や重巡も織り交ぜた近海の野良深海棲艦の討伐などの活動が始まっていた。以前では想像ができないほどの軽い運用。いつも玲司が見送る際には全員が玲司に傾注する。
「あー。今日も寒いけどいい天気だ。出撃、遠征。どちらもそう難しくはない近海の仕事だけど、油断は絶対にしないようにな。大雑把に命令を出すぞ。死ぬな。以上だ」
「了解!」
その言葉に艦娘が大きな声を出して返事をし、敬礼する。玲司も敬礼を返す。艤装は明石の修理、改装もあり、新品のようだ。妖精さんがいつの間にか各艤装にたくさん。やる気も十分である。
「司令官さん、いってきます」
「ああ、名取。今日の遠征の旗艦、頼んだぜ」
「じゃあ提督。ボクたちも近海のはぐれ艦隊の討伐に行ってくるね」
「最上、みんな。気をつけてな」
玲司がみんなを見えなくなるまで見送る。そして帰ってくると母港で待つ玲司の姿。姿を見つけると全力で手を振って出迎えてくれる。この安心感がみんなのモチベーションを大きく上げた。吹雪もさっさと行けと言われたり、出迎えなどなく、矢継ぎ早に次の出撃に向かわされたりと言ったことしかなかったので新鮮で、そして嬉しかった。
工廠では明石が素早く、そして完璧に艤装を修理。そして調整を施すので次回も万全で出撃できる。横須賀の艦娘も、吹雪も最高のコンディションで出撃ができる。おかげで横須賀鎮守府の雰囲気はとても良くなった。
「おふろそうじおわったよー」
「ゆかがこわれていたのでなおしました」
「つぎのしゅうりかしょはどこだー。みなのもの、われにつづけー」
それに比例して妖精さんがいつの間にか増えている。玲司が見たことのない妖精さんがわらわらと。長らくほったらかしであったボロボロの床や窓。部屋。あちこちが不思議と修繕されていたり。埃まみれの空き部屋がぴっかぴかになっていたり。
明石の工廠にもスパナがほしいと思ったらいつの間にか置かれていたり、改修のネジをどこからか持ってきたり。お礼に金平糖を渡すと次の日にはまた数が増えていたり…。
鎮守府の運用には提督、艦娘、そして妖精さんの存在が不可欠である。鎮守府の修繕、維持、艤装の性能を十全に引き出すには妖精さんがいればいるほど安泰、安定するのだ。提督と艦娘の仲が良いほど多く集まると言われている。逆に安久野の時のように雰囲気が最悪であったり、妖精さんをぞんざいに扱うといなくなる。いなくなると艤装の性能が引き出せず工廠や鎮守府の維持が難しくなる。
かつてどこかの泊地では妖精さんをぞんざいに扱いすぎて運営が傾き、泣いて詫びるまであらゆるトラブルに巻き込まれる人間もいたと言う。妖精さんを怒らせてはならない。これは鎮守府の運用には絶対であった。
「れいじさん。しざいがいっぱいはいってきたよー」
「け・ん・ぞ・う。しましょ?」
工廠の建造炉を動かそうと妖精さんが躍起になっている。玲司が着任してから一つも動かしていない。司令長官が早くも資材を工面してくれたおかげだ。三が日が明け、横須賀も本格的に運用を開始した翌日には戦艦を何人も建造できるほどの資材が送られてきた。その時、これで建造ができると言う玲司の言葉に期待を膨らませたが、一週間経ってもまるでその気配がないことに痺れを切らし、直談判にやってきたようだ。
「お、おお…そういえば建造するって言っておきながら一つもやってなかったなぁ」
「れいじさん。うそつきはぶらっくていとくのはじまりです」
「わたしたちはもういらないこなのでしょうか…しくしくしく」
「違うってば。ごめん、忘れてた…そうだな。じゃあさっそくやりますか」
「そうこなくては。ではさっそく、れっつけんぞう」
はやくはやくーと急かす妖精さんに負け、工廠へと向かう。大淀も付き合う。
「あ、しれえ!しれえ!」
「おう、雪風」
「提督、雪風ちゃんに変な挨拶を教えないでください」
「おっと。こんにちは雪風」
「はい、こんにちはです!大淀さんもこんにちはですっ」
「うふふ、こんにちは。提督に何かご用が?」
「いいえ。しれえをお見かけしたのでどこへいくのかなって!」
「工廠で初建造をしにな。雪風も来るか?」
「はい!お供いたします!」
びしっとなぜか敬礼をする雪風。何事にも今は全力で振る舞う姿がかわいらしい。雪風を肩車して工廠へと向かう。雪風はご満悦だ。皐月たちに見つかったらまた大変な目にあうのだが、今は遠征中だ。これからとんでもない事態が工廠で起きるとは誰も知らないまま、玲司達は工廠へと向かった。
/工廠
「さあさあ、はやくはやく」
「きぶんがこうようします」
妖精さん数人がとんかちなどをもって急かしている。早く動かしたくてたまらないのかふんすふんすと興奮気味である。
「わかったわかったって。じゃあ、戦艦を建造したい。頼むよ」
「ほほう。りょうかいしました。では、わたしたちもひさしぶりですからうでがなります」
そう言うと妖精さん達はわーっと資材を溶かしたりとんかちをとんとんしたりと忙しく動き出した。……資材の量が多くないか…?何か仕組みが変わったのか…?
「そのとおり。しくみがかわったのです」
「ですのでこれくらいいるのです」
ニヤリと笑っている様が怪しすぎる。いや、ここで変に妖精さんの機嫌を悪くさせるわけにはいかない…。訝しむもとりあえず黙っていることにした。やがて準備ができたのか、一列に整列した。
「じゅんびができました。さあ、このぼたんをおすのです!」
建造開始のボタンを押せという。スッと押そうとした。
「しれえ!雪風が押したいです!」
雪風が手を挙げる。そしてはいはいと両手をあげてぴょんぴょんし始める。せっかく付き添ってくれたのだしと雪風を抱えた。
「よーし、じゃあぽちっといってくれ。戦艦を頼むぞー!」
「はいっ!絶対、大丈夫!」
ぽちっと雪風が手を伸ばしてスイッチを押す。その光景は親子のようだった。微笑ましい光景に大淀が口を押さえて笑いをこらえている。どんな艦娘が産まれるのか。みんなで期待をする。
「ほう、これはこれは」
「これはちょっとじかんがかかりますねー」
「へえ。じゃあ当たりかな?どれくらいかかるんだ?」
「われわれのみつもりでは4じかんです」
「4時間…金剛型か…」
金剛型…ショートランドにいた時に一番身近だった戦艦。いつもハイテンションで何かと迫っては妹に怒られる長女「金剛」。料理を作っては姉と暴走するトラブルメーカー「比叡」。いつも控えめで、でも何かと世話をしてくれた頼りになる「榛名」。事務仕事の相棒、暴走しがちな長女と次女を止める役の「霧島」。
皆目を閉じればすぐに思い出せる。楽しかった日々。そして、彼女たちの最期の言葉も。金剛型には強い思い入れがあった。はたして誰がやってくるのか…誰でもいい。また会えるのなら。
「ていとくさん、あぶっちゃいますー?」
「ん?ああ、高速建造材のことか。頼む」
「きょかがでたぞー!」
「あぶれー!」
高速建造材から盛大に炎が吹き出す。妖精さんは火を恐れない。強烈な炎(を具現化した何か?)で炉を炙る。全て吹き終えた妖精さんがどや顔で玲司達を見る。後ろでは事の成り行きを見守っていた複数の妖精さんが万歳しながら飛び上がっている。
「れいじさん、できました」
「わーいわーい。ひさしぶりだけどちゃんとできたー」
「お、おう…。よし、出てきてくれ」
煙の中から煙をものともせず出てきたのは懐かしい緑の眼鏡をかけた巫女服のような姿をした大きな艤装を持つショートカットの艦娘。
「おほん、マイクチェック!ワンーツー…よし!初めまして、司令。金剛型戦艦四番艦の霧島と申します!」
「久しぶりだな、霧島」
「えっ?司令…私は今建造されたばかりですが…」
「…っ!あ、ああ。すまん。初めましてだな。横須賀鎮守府の提督。名前は三条玲司だ。よろしくな、霧島」
いけない。ボーっとしていて久しぶりと言ってしまって困惑させてしまった。彼女は別の霧島だ。ショートランドの霧島ではない。
(司令!!また雪風ちゃんにアイスを食べさせて!お腹を壊したらどうするんですか!)
(この書類とこの書類を今日中に処理願います。お茶?そんなもの飲んでいる暇はありません!もう、麦茶でよろしいですか?本土から取り寄せるの面倒なんですから、がぶ飲みしないでくださいよ!)
(司令。貴方といた時間はとても楽しかったです。どうか、この戦いに勝利を。我ら霧島艦隊。そのために死ぬと言うのなら本望!お別れです、司令。さようなら)
れい…しれえ!!!
はっと飛び上がる。昔を思い出してどこかへ行ってしまっていたようだ。
「提督。いかがなされましたか?霧島さんの顔を見つめてボーっと…」
「しれえ、どこか具合が悪いんですか?」
「いや…悪い。ちょっとボーっとしてた」
「提督…ご気分が優れないのでしたらお休みになられたほうが…」
「大丈夫。すまん、問題ないよ。よし。これからよろしくな」
「はい…何でしょう…司令は初めてお会いするはずなのですが…何かこう…司令を見ていると胸がザワつくと言うか…この胸の焼けるような感覚は…何なのでしょう?」
霧島は玲司を一目見た瞬間から何かがのどに突っかかるような。寂しいのか、嬉しいのかよくわからない感情が胸を焦がしていた。何かを思い出そうとして思い出せない。一体この気持ちは…何なのだろうか?わからない…。
「うん、何もなかったと言うことにしましょう。改めて、どうぞよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく頼む。高速戦艦は貴重な存在だ。これで扶桑の負担も少し減らせるだろう」
「せんかんってやっぱりかっこいいですね!はじめまして!駆逐艦雪風です!」
雪風がキラキラした目で霧島を見つめている。新しいお姉さんができた気分で嬉しいようだ。
「ふふ、よろしくお願いします。雪風ちゃん」
「はい!」
ぼふっと霧島に抱き着く。雪風なりの親愛の印だ。霧島もそれに応えてしゃがみこんで雪風を抱きしめる。その瞬間霧島の頭を閃光のようなものが走った。
(霧島さん!おはようございます!)
(はい、おはようございます。さあきなさーい!)
(いきます!えいっ)
(うふふ、今日も元気いっぱいね!)
…なんだこれは。雪風を同じように抱きしめて笑っている…自分?そんなはずはない。自分は今建造されたばかりで。でも、これも自分「霧島」で…。一体どういうことだ?
(私はあなた。あなたは私。司令を頼みました。頼んだわよ、『横須賀の私』)
目の前の闇がパァン!と割れ。光があふれる。そこは工廠。そう、自分が生み出された炉がある横須賀鎮守府の工廠だ。今自分の声が…どこから?頼んだとはどういうこと?突然のわからないことに頭が混乱する。雪風を少し強く抱きしめ、片手で頭を押さえる。頭が痛い。
「提督。建造したてでまた意識がはっきりしていないようです」
「みたいだな。たまにいるからな。顕現して間もないからいろいろと記憶が混濁してるんだろう」
「霧島さん。大丈夫ですか?」
「え、ええ。大丈夫よ。うん。もう…大丈夫。よいしょっと」
「ひゃあ!高いです!」
「お姫様抱っこよ。雪風ちゃん、好きでしょう?」
…その雪風の抱き方をよくやっていたのは霧島だった。金剛や榛名の抱き方ではいつもお気に召さないのか、自分か霧島に抱っこをせがむことが多かった。比叡は高い高いしようとして手がすっぽ抜けて落とされそうになって以来抱っこしようと言っても近づきもしなかったが。
「なんだか安心します…」
「不思議ね。私も何だか落ち着くのよね」
一体何が起きている?俺にそれを見せてどうしたい?自分も頭が痛くなってきた。
「れいじさん、もうひとつはどうしましょー」
妖精さんが考え事を中止させる。ちょうどいい。今考えても頭が痛くなるだけだ。頭を振って切り替えていこう。
「お、もう一つはどうだ?また戦艦か?さすがに連続はきついだろ」
「ふむふむ。おお、これはなにやらすごいエネルギーをかんじます。すさまじいです。こんなものはみたことがない」
何か物凄く興奮している妖精さん達。10人ほど炉の前に集まり、いろいろと調べている様子だ。玲司の顔の前に飛んできた妖精さんがやっぱり興奮しながら状況を伝えてくれる。
「わたしたちのみつもりがただしければ、かんせいまで8じかんかかるでしょう」
「8時間!?」
玲司の頭の中のデータベースでは戦艦でもそんな数字は聞いたことがない。せいぜい長門型の5時間が最長と思っていた。空母の6時間は聞いたこともあるが…。8時間はさすがに夜になってしまうし、明日は会議があるため一日鎮守府にいない。これは困った…。
「ちょっと待ってられねえなぁ…」
「では、こうそくけんぞうをおこないましょう。よろしいですか?」
「ああ。頼む。8時間なんざ聞いたことがないぞ」
「はい…私の記憶でも、翔鶴型の6時間が最長だったと思いますが…」
「わくわく、楽しみです!」
「きょかがおりたぞー!」
「ひゃっはー!がまんできねえ!」
謎のハイテンションで炉に高速建造材であるバーナーを使う。凄まじい炎が炉を包む。火が消え、もやもやと煙が今度は炉を隠す。
「おっといれぎゅらーですな」
何やら不穏な言葉を発した妖精さん。煙が晴れ、中から現れた艦娘は…見たことのない艦娘であった。目を閉じている。手には傘のような何か。黒く美しい髪が桜の髪留めでまとめられている。その風貌の何たる優雅なことか。それよりも目を引くのが長門型よりも大きな艤装。凄まじい火力を持っていそうな巨大な砲がたくさん。大淀も誰なのか分からず、目を白黒させていた。眉目秀麗な艦娘が目を開く。真っ先に玲司を見つめる。にこりと笑うと彼女は言った。
「初めまして。大和型戦艦一番艦、大和と申します。どうぞよろしくお願いいたしますね、提督」
「「はい?」」
玲司と大淀は気の抜けた声しか出せなかった。
/執務室
椅子に座って難しい顔をし、眉間を指で押さえてうんうん唸る玲司と頭を抱えて窓から外を眺める大淀。呆然と立ち尽くす霧島とおろおろとしている大和と名乗る艦娘。
大和。そう、あの大和だ。日本海軍において最強と呼ばれた最大の戦艦。その艦娘が顕現してしまった。艦娘が現れてから十数年。古井司令長官をはじめ、今までにありとあらゆる手を施して建造をしたとしても。鎮守府から資材を尽かしてまで執着しようとも。誰一人として顕現させることができなかった最強の戦艦の魂を持った艦娘。
「大和型戦艦」
どういう理由かはわからないが、その一番艦「大和」が生まれてきた。一緒についてきた妖精さんは凄まじい快挙に涙を流しながらさっきからひたすらに大和に向かって万歳を唱え続けていた。
「うっうっ…こんなにどとあるかもわからぬすばらしいできごとにであえたことにかんしゃします…」
「あなたにさそわれここへきてよかった…うれしい…うれしい」
「ばんざーい!れいじていとくさんばんざーい!!やまとさんばんざーい!!」
どれほどの資材をつぎ込んだのか、古井司令長官からもらった資材はすっかり使い果たしていた。たった二人の戦艦で、きれいさっぱりと。いわゆる大型建造と言うものを妖精さんは行ったらしい。玲司と妖精さんとで建造が噛み合っていなかった。玲司は資材を多く蓄えつつ普通の建造を行って、その中で戦艦が来てくれればいいなと思っていた。
一方で妖精さんは古井司令長官からの資材を全部使ってでも戦艦を欲したのであろうと思っていたようで。妖精さんはありったけの資材を放り込み、建造を開始。一つは玲司が。一つは雪風が建造スタートのボタンを押した。大和が現れたのは雪風がボタンを押した炉。雪風の幸運が何かに働いたのか…。
「あの…私ってもしかして…ここに居てはいけないのでしょうか…?」
大和が泣きそうになりながら玲司に問いかける。その言葉に慌ててフォローを入れる。
「いやいや、そうじゃないんだ!そうじゃなくて、その…大和型が生まれたのがこの海軍史上初のことで、さ…どうしたもんかと思って…」
「あ、あの…私、お料理でも何でもしますので…お願いします。ここに居させてください。暗くて寒いところにずっといて…私怖くて…。そしたら、誰かがおいでって…私を暗闇から出してくれるって!それなのに…また暗い所に…帰りたくない…帰りたくないよぉ…ぐすっ…うえええええん!!!」
不安になったのか泣き出してしまった。見た目に比べて非常に精神が幼いのか、へたりこんで泣く様は小さな女の子のようだ。
「ちょっ、待て!な!別にどこかにやったり解体したりなんかしないから!ここにいていいんだから!ご飯作ってくれるのは助かるけど、俺がちゃんと作るからな!」
「わあああん!やっぱりわだじはおじゃまなんだああああ!!!あああああん!!」
「げっ、や、大和!違うって!おい大淀!見てないで助けろ!!」
「て、提督!女の子を泣かせるなんて最低です!見損ないました!」
「はあ!?何言ってんだお前!いいから大和を泣き止ませてくれ!」
「女泣かせ!鬼畜!クソ提督!」
「お前な!覚えてろよ!」
何もしない。お前が必要だ。と何度言ったことか。雪風のフォローもあって何とか泣き止んだ大和。これはとてつもない子がやってきた、と本当に頭痛が酷くなった玲司であった。
「ぐずっ…ずびばぜんでじだ…」
「こっちこそ悪かったよ…言い方が悪かった。歓迎するよ。何と言っても最強の大和だからな」
「は、はい!不束者ですがよろしくお願いします…」
「わかったから鼻水をどうにかしてくれ…」
雪風がすかさずティッシュを用意。ちーんと鼻をかむ姿に姉妹が逆ではないのか、と思うくらいしっかりしている小さな姉雪風。必死に鼻をかむ大きすぎる妹、大和。不思議な光景に霧島は笑うしかなかった。ちなみに大淀は散々玲司を罵るだけだったので頭ぐりぐりの刑となった。
……
古井司令長官に大和が顕現したと伝えると、きっかり30秒無言となった後に「は?」とだけ返ってきた。3度ほど言い直したがそのたびに「は?」と返ってくる始末。埒が明かないと陸奥が受話器を代わり、事の顛末を聞き納得。翌日の会議に大和も連れていくと伝えて電話を切った。
「ふう…さ、晩飯を作る準備をするか…」
「提督。食事の準備でしたら私も…」
「いや、大和は大丈夫。今日はせっかくだし俺、が…」
断ろうとするや否や、大和の目からじわぁっと涙が溢れだし、また大泣きしそうになっていた。何と言うか、本当に子どものようだった。
「よ、よし、大和。間宮と俺とで一緒にがんばろうな!!」
「はい!よろしくお願いしますね!」
途中で遠征や出撃していた艦娘を出迎えるために席を外したりしていたが、どういうわけか異様に手先が器用で玉ねぎを簡単に細かくみじん切りにしたり、炒めるのもかなり手際がいい。かつてホテルと呼ばれていた名残か?
帰ってきた艦娘も。演習を終えてきた艦娘も。見慣れない二人に戸惑ったが建造されたと聞くと嬉しそうに自己紹介をお互いにやっていた。大和がどういう存在かは知らず、霧島と合わせて戦艦が増えたことに大喜びの駆逐艦達。美しい姿に見惚れる摩耶。霧島と眼鏡同士と言うことで意気投合する鳥海。大和は扶桑を見てきれいな人と言ってみたり、貴女もお綺麗ですよと返されてやんやんと照れていたり。幸先は良さそうであった。
和気あいあいとした中出来上がったオムライス。以降、新たに仲間が加わった日はオムライスが定番となる。
「あー。もう自己紹介は終わってるだろうけど。今日から新しく仲間に加わった大和と霧島だ。みんな、仲良くな。扶桑は後に寮へ案内してあげてくれ」
「かしこまりました」
「んじゃあ、今日もみんな、お疲れ様。手を合わせて!いただきます!」
『いただきまーす(なのです)!!」
皆がオムライスを食べる中、霧島は固まっていた。その形に何を思いを馳せているのか。
「霧島、どうした?口に合わないか?」
「い、いえ…違うんです。なぜ…なぜか私は…これを知っている気がするんです。どこかで見た…懐かしい、感じ…私は今日…建造されたのに…」
「お前…食べてみな。とりあえず」
玲司に促され、おそるおそる口にオムライスを入れる。柔らかい卵。そしてきゅっと少し酸味のあるチキンライスの味が口の中に一気に広がると…霧島は涙を流した。ゆっくり噛み締め…そして飲み込んだ。
「私…この味…どうして…どうして涙が止まらない…」
泣きながら食べる霧島に間宮たちも驚いていたが、嫌な涙ではないと分かり、玲司と共に様子を見る。霧島はガツガツとオムライスをかきこんでいく。
(やっぱり司令の夕飯はオムライスが一番ですね。うん、おいひい!)
…あいつもこうやってガツガツ食べるのが好きだった。書類を片付けてる最中や、戦闘中は凛々しく艦隊を率いるのに、オムライスを食べている時は子どものようにガツガツと頬に米粒つけて食べていたっけ。
カラン!と空いた皿にスプーンを置く。まだ泣いていた。やがて落ち着いた霧島が顔をあげ、玲司を見た。
―――ただいま、司令―――
霧島の言葉に艦娘の全員は意味がわからなかった。けれど玲司にはその言葉は伝わったらしい。玲司も霧島の目を見て返した。
――おかえり、霧島―――
「わ、私…何を…」
「いいんだ。霧島。お前は気にしなくていいよ。クク、あいつめ。わざわざそれだけ言いに来やがって」
「???」
キョトンとしている霧島。何でもないよと笑う玲司。何事もなかったかのように談笑が始まる食堂。玲司もオムライスをゆっくり食べ始めた。
(ゆっくり食ってきゃよかったのに)
そう思いながら自分はゆっくりとオムライスを食べる。ゆっくり食べていないでと怒られていた頃を懐かしみながら。目の前の霧島はそれを怒ることがなかったので、ちょっと寂しかった。
雪風が大和をもたらした、と言うのは私の実話です。旗艦雪風で「雪風の幸運にあやかろう」と大型建造をしたら大和さんがやってきてくれました。
実際の大和とは違い、かなり子供っぽく、泣き虫になりました。どうしてこうなった。霧島は記憶は引き継いでいません。
次回こそ大和を引き連れての大本営会議。また一波乱ありそうな予感がしますね。次回もご期待いただけましたら嬉しいです。