提督はコックだった   作:YuzuremonEP3

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第三十三話

大会議室へ向かう途中も、行き交う提督や職員、引率の艦娘の視線が大和に刺さる。誰だ、何だ。見たことがない。言葉には出さないがほぼすべての人間、艦娘の好奇の目により、大和は泣き出したい気分だった。

どう言うわけか大和は非常に気が小さく、すぐに泣き出す。しかし過去に例がないため、艦娘の大和がどのような性格だったかは把握ができない。とにかく初めてのことだらけなのでどうしようもない。けれど大和は泣いては提督に迷惑がかかる、と一生懸命に泣くのをこらえていた。

 

「大和」

 

玲司が自分を呼ぶ。その言葉に弱々しく「はい…」と応える。

 

「難しいかもしれないけど、全部無視しろ。どんな目で見られても全部無視しろ。声をかけられたら俺が応える。ごめんな、怖いだろうけど」

 

「はい…わかりました。提督、よろしくお願いします…」

 

ほっと優しい言葉をかけられると幾らか恐怖は和らいだ。おっかなびっくり大会議室へ向かう赤絨毯を歩く二人。会議室のドアの前には女性。玲司の顔を見るとやんわりと微笑んだような気がした。綺麗な人…と大和は思った。

 

「一ヶ月ぶりね、玲司君。今日はお疲れ様」

「久しぶり、高雄さん。今日はよろしく」

 

「ええ…そして、あなたが大和さんね。着任早々、こんな人の多い所へ呼び出してしまい、申し訳ありませんわ」

「ひゃいっ!?私は大丈夫です!」

 

「心配いらないわ。別にあなたを三条提督の所から、大本営や誰か別の提督のところへ行かせるわけではないから。行かせると言うと怒ると怖い人がいるからね」

 

「さーて、誰のことかね?」

 

「あら、聞こえていたの?まずいことを聞かれてしまいましたわ」

「あ、あうう?」

 

「まあ高雄さんのその言葉を聞いて安心した。大和、お前を誰かに渡すなんて俺が許さないから。お前はうちの艦娘だから。安心してくれ」

「は、はい。大和も…提督から離れるのは怖いです…」

 

「うふふ、かわいいですね。さあ、中へどうぞ」

 

ギイイイ…と重厚な音を立てて木製の大きなドアが開かれる。玲司はそれに物怖じをすることなく入っていく。大和はおどおどと、玲司の制服の裾をつまみながら入っていく。怯える小さな子供のように見える大和が何ともかわいらしく、高雄は口を押さえてクスクスと笑った。

 

会議室には既に何人かの提督がいた。胸に勲章をつけ、ふてぶてしい態度で腰掛けている男。目つきのきつい女。その視線はまずはかつてショートランドを生き抜き、消えたと思っていた玲司が再びこの場にやってきたこと。そしてその後ろをおどおどと歩く見たことがない何者か。大和はとにかく玲司の背中ばかりを見つめて周囲を見ようともしない、玲司は意にも介していない。

ふと古井司令長官と目が合う。いつもの優しい顔ではなく、やや目つきが厳しい。しかし、玲司と目が合うと少し笑みを浮かべ、一つ頷いた。その隣の熊のような大男とも会釈を交わす。そして司令長官と向かい合うように座る。

 

「すまん、座れる椅子がないんだ。大丈夫か?」

「はい。私でしたら平気です」

 

「その後ろの奴は誰だ?よもや久方ぶりに提督に就いたと思いきや部外者を連れてくるとはな」

「まったく。三条提督。貴方、ずいぶんと常識がないんじゃないかしら?」

 

「彼女はれっきとした艦娘であり、私の護衛でもあります。部外者とは失礼も甚だしいのでは?」

 

「では事前にわかるようにしておくべきよ。紛らわしい」

「それは失礼いたしました、少将殿」

 

ちっ…と露骨な舌打ちが返ってくる。嫌味を言う彼らは玲司がショートランドに居たときから知っている。そして、大失態を犯し、玲司に大きな借りがあるわけだがそれでも若造にフォローされたことが気に入らず、いつまでも根に持っている。二年間、大本営のコックとして働いていたことは知っていて清々していたが、今回再び提督として舞い戻ってきたことがひどく気に入らない様子だ。

 

「下らない言い掛かりはよしたまえ、見苦しい。ふむ、そろそろ時間だね。人も集まりだしたし、始めようか」

 

………

 

大本営会議は不定期に行われる。深海棲艦の大規模な侵攻。重要な海外へのルート解放。その他重大な事柄が起きた場合にのみ開かれる。大半は大規模侵攻時の対策、迎撃に関する話が多いが。

 

「それでは、今日は皆集まってもらってありがとう。今回は大湊の一宮提督が発見したロシアへの物資輸送ルートの安全性についてと、それに伴う他の諸外国へのルートの再確認を行いたい。しかし、まず先にもう一つ重要な事が発生したのでこの場を借りて報告をしておきたい。

私の向かいにいる彼。横須賀鎮守府に着任した三条提督だ。しばし休業をしていたが実力は確かだ。一つよろしく頼むよ」

 

司令長官の紹介により玲司は立ち上がり、皆に向けて一礼。拍手が起こるものの、一部の人間からの目は明らかに歓迎されていない様子が映る。彼はなぜこのような冷ややかな対応になるのだろうか?大和にはよくわからない。

 

「ご紹介に与りました三条玲司と申します。この度提督に戻り、横須賀で精一杯皆様の足手まといにならぬよう精進して参ります。どうぞよろしくお願いいたします」

 

「貴君の自己紹介はわかった。ところで、貴君の背後に立つ彼女は何者か?」

 

一人の初老の提督が慇懃な態度で玲司に問う。小さくため息をつき、玲司が口を開く。

 

「彼女は、かの大戦で最強、と言われた戦艦。大和型戦艦の『大和』です。横須賀鎮守府にて建造。邂逅しました」

 

大和だって!?と室内が一気に騒がしくなる。そんな馬鹿な。あの戦艦が、などざわざわと騒々しい。と、その騒がしさを止める拍手が鳴り響く。男は嬉しそうにしている。大和をいやらしい目で見つめながら。

 

「素晴らしい!素晴らしいぞ三条提督。誰一人として建造できなかったあの大和を!こうして現世に艦娘として顕現させるとはな!うむ、実にご苦労であった!!後の面倒はこの私が見ようじゃないか」

 

とある提督の声にまた騒がしい。なぜあなたが。いやいやそこは自分が。私こそがふさわしい。何を勝手に言っている!!

 

「静粛に!!静粛に!!!」

「お言葉ですが大和はどの鎮守府にも、泊地にも引き渡しはしません。大和は私が建造したのです。私があなた方になぜ大和をお譲りせねばならないのか、教えていただけませんか?」

 

「何を言っている?君はまだ着任したての言わば新米だ。二年前に提督をやっていたとしてもブランクがある。そんな君が大和を持つなど何をするかわかったものじゃない。大和は佐伯湾泊地で面倒を見ようじゃないか!うちは戦力が足りておらん。凶悪な深海棲艦が多くてな」

 

「それなら私にもいただく権利はあるわ。あなたがた野蛮な男性のもとに置くより、女性であるこの私のところに置くのが安全よ。汚らわしい者達に、この美しい子は相応しくないわ」

「何だと!そうやって大和を置いて自分の泊地こそが最強だと謳いたいだけだろう!」

 

「そういうあなたもでしょう!?興味のないように一瞥をくれてただけなのに、大和と聞いて目の色を変えて汚らしい!!!」

「何だと!!女の分際で偉そうにぬかすな!!」

 

そうして提督同士の醜い争いが始まった。最強の戦艦。長門型をも凌ぐ圧倒的火力を誇る伝説の戦艦。どうしても自分が所持することで大きなステータスとなるとしか大和を見ていなかった。大和を持っているだけで最高の戦艦を連れている。戦果も上がり自分が偉くなれる。もめている女性の提督とて同じだ。汚らしい男からと言うものの、男の提督の言っていることに間違いはない。大和を置くことでさらに男性を蔑むことしか頭にない。

 

大和の目にはこうして揉め合う人間たちのひどく汚れた感情を持つ汚物のようにしか見えなかった。ついていく気などありはしない。一層玲司の側にしかいたくなくなった。

 

「三条提督!大和はうちでしっかり面倒を見てやる!だから大和をうちに渡すんだ!」

「私の所よ!あなた達男に汚されていい子じゃないもの!!」

 

「いつどこでどうしてあなた方に大和を渡すことになってるのか、なぜ確定してるんですかね。さっきも言いましたが大和はうちの子だ。うちの子をあなた方のような大和を持ってるから偉いみたいにしか考えてない人の所に行かせるわけがないでしょうよ」

 

「何だと貴様!この私を誰と思っているんだ!!」

「そうよ!准将の分際で偉そうに!!」

 

「大和だろうと何だろうと、うちの艦娘です。大和でなくとも。誰一人としてあなた方に託す艦娘はいない。私の艦娘は私が面倒を一手に見ます。私は大和がいるから偉いとか、そんなものは関係ありません。こんなことで大事な会議の時間を長引かせる気はないですし、次の議題へどうぞ」

 

「待て!貴様、まだ話は終わっていないぞ!!」

 

「やかましいぞ。貴様、大和の建造に成功したと言う話をしているだけで、貴様らに大和を託すなどと誰が言った?戯けが」

「うっ…虎瀬中将…」

「くっ…」

 

「司令長官、次の議題を」

「うむ。では次に一宮提督の発見したロシアへの航路についてだが…」

 

各々の提督は大和が玲司のもとから動かないことに納得がいってはいないが、鬼も黙る大男、虎瀬と言う男には誰も逆らえない。実質彼は熱くなって揉めやすい提督のブレーキ役である。身長195cm。体重87㎏の巨漢。片目には大きな傷痕。そして、名の通り虎のような鋭く全てを威圧するかのような目。低く相手に恐怖を与えるような声。彼に目を付けられると大概はすくみ上ってしまうのだ。

玲司は大和の話を強制的に終わらせた虎瀬に軽く会釈をし、小さなため息を吐いて次の議題の話を気だるそうに聞いていた。

 

 

会議は一度休憩。昼食に入った。会議室の外で待っていた大淀、神通と合流して食堂へと向かう。食堂の手前で、何やら玲司めがけて一目散に走ってくる少女の姿。駆け寄って来て一気に飛びつく。

 

「お兄ちゃん、おっそーい!!!」

「島風ー!久しぶりだなー!」

 

とんでもなく際どい衣装をした島風と言う少女が玲司に抱っこされていた。それにしても…いろいろと見えすぎて破廉恥ではないか…?と大和は思った。

 

「おう!お兄ちゃん、久しぶり!今日はお兄ちゃんが来るって聞いてたからここで待ってたんだ、にひひー」

「そっかそっか。んじゃまあ一緒に食べるか」

「うんっ!早く早く!!」

 

玲司の手をぐいぐい引っ張って食堂へと向かう島風。これは何と言うか皐月か文月のような甘えん坊の駆逐艦のようだ。

食堂に入り、玲司は島風を連れて厨房の面子に声をかける。久しぶりだな!この野郎生きてやがったか!と言った久しぶりの来訪を喜ぶ厨房の面々。玲司がチーフと呼ぶ男の人がうおおおん!!と泣きながら出てきた。

 

「チーフ。まだ一ヶ月じゃないっすか。一ヶ月でそんな泣かなくても…」

「うるぜえ!俺にとっちゃ玲司が無事にここに来てくれることが嬉しいんだ!さあ、何でも言え!俺が作る!」

 

「んじゃあ八宝菜定食4つ。島風は?」

「チキンライス!!」

 

「あいよー!!」

 

威勢のいい声で返事をして厨房へ戻っていくチーフ。その顔は生き生きとしていた。

 

「あ、わりい、八宝菜でよかった?俺のオススメなんだ」

「提督がオススメと言うくらいですから気になります。私は構いません。と、言うかそれを今から変えて頂くわけには…」

 

「私も構いません。提督以外の方がお作りする食事。少し興味があります」

「わ、私も…」

 

「はいよ。んじゃまあ座って待とうや」

 

食堂の一角を陣取り、島風を含めて5人で座る。しかし大和と大淀は周りをキョロキョロと見渡して落ち着かない。島風はマイペースに水をチビチビ飲んでいる。

 

「あ、あの…提督。ほかの提督の艦娘達は…」

 

大淀がちらりと目をやると、周りの提督達の側に仕えている艦娘は皆椅子には座らず、後ろに立って待っている。食事は提督だけが食べている。その目はどこか寂し気な気がした。大淀と目が合い、驚く艦娘。なぜ座っているのか。と批難をしているような視線に変わった。

 

「大淀。立たなくていい。あいつらはああすることで主従関係を強固にしたいんだとさ。誰が上で誰が下か。そんなもん考えなくたってわかる」

 

バカバカしいと言いながら水を飲む玲司。そう。そうだ。そうやっていつも蔑まれてきたではないか。自分たちは「物」で「兵器」だと。兵器が人間と同じようにしていいわけがない。兵器は兵器らしく立って主人が食べ終わるのを待っていろ。そう言い聞かされてきたじゃないか。

玲司はやや怒ったような口調で大淀達に言う。

 

「上も下もねえよ。むしろ人間と艦娘なら艦娘のほうが立場が上、と俺は考えてる」

「そのようなことはありません。提督は私たち艦娘を使役するお立場。ですから…」

 

「それが間違いなんだよ、神通。俺はお前たちを使役しているつもりはないぜ。俺なんて深海棲艦が現れたって何もできやしない。殺されるだけだ。俺たちは艦娘がいてくれてこそ、こうして平穏無事に生きている。神通や大淀、それに時雨や電たちは自分の命を危険に晒しながら深海棲艦をやっつけるために海へ出る。

弾を食らえば痛いし、最悪死んでしまう。そんな恐怖を押さえつけて海を守ってくれているのは艦娘だ。立場の上下で言うなら、街や海、俺たち人間を守ってくれている艦娘のほうが上さ。人間なんざお前たちがいてくれなきゃ今頃誰も生きていない。だから、艦娘のほうが立場が上であるべきだ。人間。特に馬鹿な提督は自分たちが偉いって思いあがっていやがるけどな」

 

玲司の話に熱がこもる。いつも蔑まれてばかりいた大淀には目からうろこが出るほどの話だった。艦娘が人間を守ってくれている。確か、商店街の竹美おばさまも同じようなことを言っていた気がすると大淀は思い出した。竹美だけではない。魚屋の源だって、松子だってそう言っていた。その言葉に、どれだけ自分は救われたか。

 

玲司のような考え方を持つ提督は少ない。少なくともその鎮守府の最高権力者と言う見えない肩書が手に入った時点で、人は舞い上がり偉くなったように思うものだ。そして、命令を忠実に聞く艦娘。この時点でもう人間が上。艦娘は下に見る。そうなると思いあがった提督はやがては艦娘を蔑みだす。こうして安久野のような愚かな人間が簡単に出来上がる。

 

「俺は自分が偉いなんて思ってない。俺は艦娘に守られて生きている。今までも。これからも。だからこそ、俺はみんなと辛いことも楽しいことも分かち合いたい。共に生きたい。けど、俺がそれをできるのは今の横須賀でしかない。あそこで立っている子達には悪いけど、な…歯がゆいよ。あの子達だって幸せになる権利くらいあるはずなんだ。でも、俺はよその提督のとこには口出しができない」

 

そんなことをすれば揉めることになり、自分の艦娘にまで悪影響を及ぼすことがある。本当ならばみんな救いたいが、そんな本の正義のヒーローのように自分はなれない。だから、自分が腕を広げて守れる範囲でのみ、全力で守りたい。そう玲司は語った。

 

「俺はそう思ってるんだけど、他の提督はそうは思ってないんだよな。自分がほしいから勝手にこっちで面倒を見るだとか、引き受けるだとか、馬鹿言ってんじゃねえって思うよ。こっちには口出しすんなとかごちゃごちゃうるさいくせに、自分はズケズケと大和をよこせだもんな」

 

「や、大和ちゃんは渡しません!!」

「大淀。お前の言う通りだ。すっかり大和のお姉ちゃんだなぁお前は。そうだよ。誰にも託す気はない。大和だけじゃない。大淀だって。神通だって。横須賀にいるみんなは俺が面倒を見る。独占欲強いんだよ、俺」

 

「私も、あんな人たちのところへなんか行きません。行きたくありません…大淀さん、怖かったです」

「よしよし。大丈夫ですからね。私もいますし、提督が守ってくれますからね」

 

いつの間にか大淀と大和は姉妹のような関係になっていた。姉の大淀に半泣きで抱き着いている妹の大和。大淀はそんな大和を頭を撫でて慰めている。その光景をこれはすばらしい光景!と青葉が写真を撮ろうとするが、玲司がすかさず頭に強烈なチョップをお見舞いし、阻止。

 

「島風もよく言われるよ。知らない提督に。うちにくればもっと速く走れるぞって。だからうちに来いって。それを言うたび陸奥お姉ちゃんがすっごい顔してるけど。お姉ちゃんたちがいないと寂しいし、その人の艦娘遅いし、あっかんべーって感じ。あっ、でもお兄ちゃんのところになら島風行きたいな!」

 

「おやっさんを守る人が陸奥姉ちゃんと高雄さんと川内だけだと心配になるからだーめ」

「えーっ、つまんなーい!!お姉ちゃんたち3人で十分じゃーん!行きたい行きたいー!!だってそこの神通さんとかすごい速そうだし、おもしろそうだもん!!」

 

「私が…ですか?」

「そうだよ?私には追い付けないだろうけど、何だかいい感じがする!」

 

島風がそう言うのは珍しい、と玲司は思いながら島風と神通のやり取りを聞いていた。島風はほとんど他人をほめない。姉や妹(見た目は完全に逆だが)の明石しか認めていない。それ以外の艦娘を褒めたのは初めてではないだろうか?私が一番速い。そこは譲らないが、神通に対して何かを感じ取ったのか、神通を妙に評価している。

 

「島風。神通に何か思うことがあるのか?」

「んー、何だろ。よくわかんないんだけど、神通さんからは川内お姉ちゃんみたいな感じがするな!神通さん、原初の艦娘とかじゃないよね?」

 

「???川内、姉さん?」

「うーんとねー。とにかくばばーんって強いの!私たち『原初の艦娘』みたいに!」

 

神通の話は瑞鶴から聞いている。艦娘らしからぬ動きで敵を翻弄し、夕立と共にとんでもない強さで敵を屠ったと言う。宙を舞い、全速力からのどうやるのかわからない直角に曲がる移動など、とてもではないが軽巡と言うか艦娘とも違う力を見せた。夕立も凄まじかったが神通も凄まじい力を持っていると言っていた。神通が川内や島風と同格?

原初の艦娘は最強の10傑。どうやっても彼女たちに勝ることはできない。川内と神通がまともにやり合っても神通が瞬殺される。しかし…神通に関しては思い当たる話もある。

 

(兄さん。兄さんのところの神通、誰にもバレたことないのにあいつには一回気づかれたことがあるよ。あいつ、只者じゃない)

 

川内も神通のことを言っていた。島風も何かがあると言う。龍驤も明石もそうだ。

 

(この鎮守府、面白そうな奴だらけやな!絶対すごいのんに化けるでぇ)

(すごいね、この鎮守府。磨けばとんでもない宝石になる艦娘ばっかりだね!)

 

自分には今一つわからないが、原初の艦娘が一目置いていると言うことは、神通はよほどのものなのだろう。

 

「神通さん。今度島風とかけっこしようね!」

「は、はい。私でよければ」

 

いつの間にか島風に懐かれていた。島風は警戒心が強く、あまり人や他所の艦娘には懐かないのだが神通や大淀に、大和には気さくに話しかけている。玲司の艦娘だから、と言う理由だけではないらしい。

 

「そういえばさ、島風。島風はどうして俺たちを待ってたんだ?ほんとに飯を一緒に食うためだけか?」

 

「んーん。そうだった!ご飯を食べたら、司令長官室に艦娘とみんなでおいでって言ってほしいってお父さんに言われたんだった!」

「早くそれを言え!!!」

 

のんびりと食事をとっている場合ではなかった!島風のその言葉に玲司も、大淀たちも大急ぎでかきこむ。島風は呑気に速いのなら負けない!とスピードを上げた。

 

慌ただしい昼休み。結局せっかくの八宝菜をゆっくり味わうこともできずにかきこんでしまい、思い出に耽ることもこともままならなかった。島風に伝言を頼むと忘れるのも早いので大体アテにならないと、何度言っても聞かない司令長官を恨むしかない。

 

後で文句を言ってやる…と思いながらご飯をかきこむ玲司であった。




遅くなりました。

イベントが始まり、慌ただしく年を越して掘りも無事に終わり、やっと書くことができました
皆さんはイベントはいかがでしょうか。

次回で大本営での大和のお披露目編を終え、舞台を横須賀に戻していこうと思います。戻った際には、また暗い話になります。嫌な予告になってしまいましたが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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